怪人二十面相49 江戸川乱歩

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少年探偵団シリーズ1作目

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問題文

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(どくしゃしょくんは、それがだれだか、もうとっくにおさっしのこととおもいます。そうです。)

読者諸君は、それが誰だか、もうとっくにお察しの事と思います。そうです。

(おさっしのとおりあけちたんていのめいじょしゅこばやししょうねんです。こばやしくんはれいの)

お察しの通り明智探偵の名助手小林少年です。小林君は例の

(ななつどうぐのひとつ、まんねんひつがたのぼうえんきょうで、ほてるのまどをのぞきながら、なにかのあいずを)

七つ道具の一つ、万年筆型の望遠鏡で、ホテルの窓を覗きながら、何かの合図を

(まちかまえているようすです。 「あ、こばやしのこぞうだな。じゃ、あいつはいえへ)

待ち構えているようすです。 「あ、小林の小僧だな。じゃ、あいつは家へ

(かえらなかったのか」 「そうだよ。ぼくがどのへやへはいるか、ほてるのげんかんで)

帰らなかったのか」 「そうだよ。僕がどの部屋へ入るか、ホテルの玄関で

(といあわせて、そのへやのまどを、ちゅういしてみはっているように)

問い合わせて、その部屋の窓を、注意して見張っているように

(いいつけているのだよ」 しかし、それがなにをいみするのか、ぞくにはまだ)

言い付けているのだよ」  しかし、それが何を意味するのか、賊にはまだ

(のみこめませんでした。 「それで、どうしようっていうんだ」)

呑み込めませんでした。 「それで、どうしようっていうんだ」

(にじゅうめんそうはだんだんふあんになりながら、おそろしいけんまくであけちにつめよりました。)

二十面相は段々不安になりながら、恐ろしい剣幕で明智に詰め寄りました。

(「これをごらん。ぼくのてをごらん。きみたちがぼくをどうかすれば、このはんかちが、)

「これをご覧。僕の手をご覧。君達が僕をどうかすれば、このハンカチが、

(ひらひらとまどのそとへおちていくのだよ」 みると、あけちのみぎのてくびが、)

ヒラヒラと窓の外へ落ちていくのだよ」  見ると、明智の右の手首が、

(すこしひらかれたまどのかぶからそとへでていて、そのゆびさきにまっしろなはんかちが)

少し開かれた窓の下部から外へ出ていて、その指先に真っ白なハンカチが

(つつまれています。 「これがあいずなのさ。すると、あのこどもはえきのじむしつに)

包まれています。 「これが合図なのさ。すると、あの子どもは駅の事務室に

(かけこむんだ。それからでんわのべるがなる。そしてけいかんたいがかけつけて、)

駆け込むんだ。それから電話のベルが鳴る。そして警官隊が駆け付けて、

(ほてるのでいりぐちをかためるまで、そうだね、5ふんもあればじゅうぶんだとは)

ホテルの出入り口を固めるまで、そうだね、五分もあれば十分だとは

(おもわないかね。ぼくは5ふんや10ふん、きみたち3にんをあいてにていこうするちからはあるつもりだよ)

思わないかね。僕は五分や十分、君達三人を相手に抵抗する力はあるつもりだよ

(ははは・・・・・・、どうだい、このゆびをぱっとひらこうかね、そうすればにじゅうめんそうたいほの)

ハハハ……、どうだい、この指をパッと開こうかね、そうすれば二十面相逮捕の

(すばらしいだいばめんが、けんぶつできようというものだが」 ぞくは、まどのそとに)

素晴らしい大場面が、見物出来ようというものだが」  賊は、窓の外に

(つきだされたあけちのはんかちと、ぷらっとほーむのこばやししょうねんのすがたとを)

突き出された明智のハンカチと、プラットホームの小林少年の姿とを

(みくらべながら、くやしそうにしばらくかんがえていましたが、けっきょくふりをさとったのか、)

見比べながら、悔しそうに暫く考えていましたが、結局不利を悟ったのか、

など

(ややかおいろをやわらげていうのでした。 「で、もしぼくのほうでてをひいて、)

やや顔色を柔らげて言うのでした。 「で、もし僕の方で手を引いて、

(きみをぶじにかえすばあいには、そのはんかちはおとさないですますつもりだろうね。)

君を無事に帰す場合には、そのハンカチは落とさないで済ますつもりだろうね。

(つまり、きみのじゆうとぼくのじゆうとの、こうかんというわけだからね」 「むろんだよ。)

つまり、君の自由と僕の自由との、交換という訳だからね」 「無論だよ。

(さっきからいうとおり、ぼくのほうにはいまきみをとらえるかんがえはすこしもないのだ。)

先刻から言う通り、僕の方には今君を捕らえる考えは少しもないのだ。

(もしとらえるつもりなら、なにもこんなまわりくどいはんかちのあいずなんかいりゃしない)

もし捕えるつもりなら、何もこんな回り諄いハンカチの合図なんかいりゃしない

(こばやしくんに、すぐけいさつへうったえさせるよ。そうすれば、いまごろはきみはけいさつのおりのなかに)

小林君に、すぐ警察へ訴えさせるよ。そうすれば、今頃は君は警察の檻の中に

(いたはずだぜ。ははは・・・・・・」 「だが、きみもふしぎなおとこじゃないか。そうまでして)

いた筈だぜ。ハハハ……」 「だが、君も不思議な男じゃないか。そうまでして

(このおれをにがしたいのか」 「うん、いまやすやすととらえるのは、すこしおしいような)

この俺を逃がしたいのか」 「ウン、今易々と捕えるのは、少し惜しいような

(きがするのさ。いずれきみをとらえるときには、おおぜいのぶかも、ぬすみためた)

気がするのさ。いずれ君を捕える時には、大勢の部下も、盗み貯めた

(びじゅつひんのかずかずも、すっかりいちもうにてにいれてしまうつもりだよ。すこしよくばり)

美術品の数々も、すっかり一網に手に入れてしまうつもりだよ。少し欲ばり

(すぎているだろうかねえ。ははは・・・・・・」 にじゅうめんそうはながいあいだ、さもくやしそうに)

過ぎているだろうかねえ。ハハハ……」  二十面相は長い間、さも悔しそうに

(くちびるをかんでだまりこんでいましたが、やがて、ふときをかえたように、)

唇を噛んで黙り込んでいましたが、やがて、ふと気を変えたように、

(にわかにわらいだしました 「さすがはあけちこごろうだ。そうなくてはならないよ・・・・・・)

俄かに笑い出しました 「さすがは明智小五郎だ。そうなくてはならないよ……

(まあきをわるくしないでくれたまえ。いまのは、ちょっときみのきをひいてみたまでさ。)

マア気を悪くしないでくれ給え。今のは、ちょっと君の気を引いてみたまでさ。

(けっしてほんきじゃないよ。では、きょうは、これでおわかれとして、きみをげんかんまで)

決して本気じゃないよ。では、今日は、これでお別れとして、君を玄関まで

(おおくりしよう」 でもたんていは、そんなあまいくちにのって、すぐゆだんしてしまうほど)

お送りしよう」  でも探偵は、そんな甘い口に乗って、すぐ油断してしまう程

(おひとよしではありませんでした。 「おわかれするのはいいがね。)

お人好しではありませんでした。 「お別れするのはいいがね。

(このぼーいしょくんがしょうしょうめざわりだねえ。まずこのふたりと、それからろうかにいる)

このボーイ諸君が少々目障りだねえ。まずこの二人と、それから廊下にいる

(おなかまをだいどころのほうへおいやってもらいたいものだねえ」 ぞくはべつにさからいもせず)

お仲間を台所の方へ追いやって貰いたいものだねえ」  賊は別に逆らいもせず

(すぐぼーいたちにたちさるようにめいじ、いりぐちのどあをおおきくひらいて、)

すぐボーイ達に立ち去るように命じ、入り口のドアを大きく開いて、

(ろうかがみとおせるようにしました。)

廊下が見通せるようにしました。

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