バスカヴィル家の犬29

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プレイ回数1870難易度(4.2) 5969打 長文 かな 長文モード可
シャーロックホームズシリーズ
アーサーコナンドイルの作品です。句読点以外の記号は省いています。

関連タイピング

問題文

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(かれはこうやのみちをよんぶんのいちまいるほどいったところにいた。かれのそばに)

彼は荒野の道を四分の一マイルほど行ったところにいた。彼のそばに

(いるじょせいはすていぷるとんじょういがいにはありえなかった。ふたりがまえもって)

いる女性はステイプルトン嬢以外にはありえなかった。二人が前もって

(やくそくしたうえであっていたことはめいはくだった。ふたりははなしこみながらゆっくりと)

約束した上で会っていたことは明白だった。二人は話し込みながらゆっくりと

(あるいていた。かのじょはひじょうにねつをこめてはなしているようで、てをこきざみにすばやく)

歩いていた。彼女は非常に熱を込めて話しているようで、手を小刻みに素早く

(うごかしていた。そのあいだ、かれはじっとはなしにききいっていたが、いち、にど、はげしく)

動かしていた。その間、彼はじっと話に聞き入っていたが、一、二度、激しく

(こばむようにくびをふった。わたしはいわのあいだにたち、このあとどうしたらいいのか、とほうに)

拒むように首を振った。私は岩の間に立ち、この後どうしたらいいのか、途方に

(くれたまま、かれらをみつめていた。ふたりのあとをおいかけて、したしいかいわに)

くれたまま、彼らを見つめていた。二人の後を追いかけて、親しい会話に

(わりこむのは、ひんしゅくをかうこういだとおもった。しかしいっしゅんたりともかれから)

割り込むのは、ひんしゅくを買う行為だと思った。しかし一瞬たりとも彼から

(めをはなさないのが、わたしのしめいだ。もちろん、ゆうじんをこそこそのぞきみするのは)

目を離さないのが、私の使命だ。もちろん、友人をこそこそ覗き見するのは

(ふゆかいなしごとだ。それでも、わたしはおかのうえからかれをかんさつし、あとで、じぶんのこうどうを)

不愉快な仕事だ。それでも、私は丘の上から彼を観察し、後で、自分の行動を

(こくはくしてざいあくかんをかいしょうするしかほうほうがなかった。かれがとつぜんきけんなめに)

告白して罪悪感を解消するしか方法がなかった。彼が突然危険な目に

(あっていたとしても、このばしょはとおすぎてたすけることができなかったのは、)

あっていたとしても、この場所は遠すぎて助ける事ができなかったのは、

(まちがいない。しかし、わたしがひじょうにむずかしいたちばにたっていて、これしかほうほうが)

間違いない。しかし、私が非常に難しい立場に立っていて、これしか方法が

(なかったことを、きみもなっとくしてくれるものとしんじている。さーへんりーと)

なかったことを、君も納得してくれるものと信じている。サー・ヘンリーと

(じょせいはみちにたちどまり、むちゅうではなしあいながらたっていた。そのときわたしはとつぜん、)

女性は道に立ち止まり、夢中で話し合いながら立っていた。その時私は突然、

(このばめんをもくげきしているにんげんがほかにもいたのにきづいた。ふとみると、みどりいろの)

この場面を目撃している人間が他にもいたのに気づいた。ふと見ると、緑色の

(くものようなものがくうちゅうにただよっているのがめにとまった。もういちどみなおすと、)

雲のようなものが空中に漂っているのが目にとまった。もう一度見直すと、

(みどりのものはやわらかいじめんをいどうしているおとこがもったぼうにぶらさがって)

緑のものは柔らかい地面を移動している男が持った棒にぶら下がって

(うごいていた。それはむしとりあみをもったすていぷるとんだった。かれはかなりちかくの)

動いていた。それは虫取り網を持ったステイプルトンだった。彼はかなり近くの

(ばしょまできていたが、どうやらかれらのほうにむかっているようだった。このしゅんかん、)

場所まで来ていたが、どうやら彼らの方に向かっているようだった。この瞬間、

など

(とつぜんさーへんりーがすていぷるとんじょうをだきよせた。すていぷるとんじょうはかおを)

突然サー・ヘンリーがステイプルトン嬢を抱き寄せた。ステイプルトン嬢は顔を

(そらせ、かれがまわしたうでをおしもどそうとしているようにみえた。さーへんりーが)

そらせ、彼が回した腕を押し戻そうとしているように見えた。サー・ヘンリーが

(じょせいのほうにあたまをかたむけると、かのじょはそれをこばむようにかたてをあげた。つぎのしゅんかん、)

女性の方に頭を傾けると、彼女はそれを拒むように片手を上げた。次の瞬間、

(ふたりはぱっとはなれ、いそいでむきをかえた。すていぷるとんがきたためだった。)

二人はパッと離れ、急いで向きを変えた。ステイプルトンが来たためだった。

(かれはじめんをふみならしてふたりにむかってはしっていた。ばかでかいあみはうしろに)

彼は地面を踏み鳴らして二人に向かって走っていた。馬鹿でかい網は後ろに

(たれさがっていた。かれはこいびとたちのまえまでくると、なにかはなしているようなみぶりを)

垂れ下がっていた。彼は恋人達の前まで来ると、何か話しているような身振りを

(したが、こうふんのあまりほとんどおどっているようだった。なにをはなしているかは)

したが、興奮のあまりほとんど踊っているようだった。何を話しているかは

(わからなかったが、さーへんりーがいいわけをすればするほど、)

分からなかったが、サー・ヘンリーが言い訳をすればするほど、

(すていぷるとんはなっとくせずにあたまにちがのぼり、よけいにさーへんりーを)

ステイプルトンは納得せずに頭に血が昇り、余計にサー・ヘンリーを

(どなりつけているようにみえた。じょせいはすましたようにしずかにたっていた。)

怒鳴りつけているように見えた。女性は澄ましたように静かに立っていた。

(ついにすていぷるとんはかかとをかえし、うむをいわさぬたいどでついてくるように、)

ついにステイプルトンは踵を返し、有無を言わさぬ態度でついて来るように、

(ゆびでいもうとにさしずした。いもうとはさーへんりーをためらいがちにちょっとみてから、)

指で妹に指図した。妹はサー・ヘンリーをためらいがちにちょっと見てから、

(あにとならんであるいていった。はくぶつがくしゃのおこったたいどをみると、かれはいもうとにたいしても)

兄と並んで歩いて行った。博物学者の怒った態度を見ると、彼は妹に対しても

(おこっているようだった。じゅんだんしゃくはいっぷんほどかれらをみおくってたっていた。)

怒っているようだった。準男爵は一分ほど彼らを見送って立っていた。

(そのあと、あたまをたれて、まさにらくたんそのものというようすで、ゆっくりときたみちを)

その後、頭を垂れて、まさに落胆そのものという様子で、ゆっくりと来た道を

(もどっていった。いったいぜんたい、なにがどうなっているのか、そうぞうもつかなかった。)

戻って行った。一体全体、何がどうなっているのか、想像もつかなかった。

(しかしわたしはゆうじんにかくれて、こんなないみつなばめんをもくげきしたことが、ひじょうに)

しかし私は友人に隠れて、こんな内密な場面を目撃したことが、非常に

(はずかしかった。そのためわたしはおかをかけおり、じゅんだんしゃくとふもとであった。かれのかおは)

恥ずかしかった。そのため私は丘を駆け下り、準男爵と麓で会った。彼の顔は

(いかりでまっかになり、ひたいにしわをよせてこまりはてたひょうじょうをしていた。)

怒りで真っ赤になり、額に皺を寄せて困り果てた表情をしていた。

(やあ、わとそん!どこからあらわれたんだ?かれはいった。まさかあとをつけて)

「やあ、ワトソン!どこから現れたんだ?」彼は言った。「まさか後をつけて

(きたというんじゃないだろうな?わたしは、じぶんがいえにのこっていられないとかんがえて)

きたと言うんじゃないだろうな?」私は、自分が家に残っていられないと考えて

(かれをおいかけ、どのようにいちぶしじゅうをもくげきしたかをつつみかくさずうちあけた。)

彼を追いかけ、どのように一部始終を目撃したかを包み隠さず打ち明けた。

(いっしゅん、かれのめにいかりのいろがみえたが、そっちょくにはなしたことで、そのいかりは)

一瞬、彼の目に怒りの色が見えたが、率直に話したことで、その怒りは

(おさまった。はなしがおわると、かれはちょっといたましいわらいごえをあげた。だいそうげんの)

収まった。話が終わると、彼はちょっと痛ましい笑い声を上げた。「大草原の

(まんなかなら、ぜったいにひとめにつかないあんぜんなばしょだとおもうものじゃないか)

真中なら、絶対に人目につかない安全な場所だと思うものじゃないか」

(かれはいった。しかし、はらがたつな。このいなかのじゅうにんぜんたいがわたしがきゅうこんする)

彼は言った。「しかし、腹が立つな。この田舎の住人全体が私が求婚する

(ところをみに、いえからでてきたようだな。それにしてもなんというみじめな)

ところを見に、家から出てきたようだな。それにしてもなんと言う惨めな

(ぷろぽーずだ!きみのよやくせきはどこだ?あのおかのうえだ やけにうしろだな、)

プロポーズだ!君の予約席はどこだ?」「あの丘の上だ」「やけに後ろだな、

(かのじょのあにはましょうめんのさいぜんれつだったぞ。わたしたちにむかってきたのをみたか?)

彼女の兄は真正面の最前列だったぞ。私たちに向かってきたのを見たか?」

(ああ、みたよ あいつのあたまがおかしいとおもったことはないか、 かのじょの)

「ああ、見たよ」「あいつの頭がおかしいと思ったことはないか、-彼女の

(あにのことだが?それはないとおもう まさかとはおもうがな。きょうまでずっと)

兄のことだが?」「それはないと思う」「まさかとは思うがな。今日までずっと

(かれはまともだとおもっていた。これはしんけんだが、あいつがおかしくないなら)

彼はまともだと思っていた。これは真剣だが、あいつがおかしくないなら

(わたしのほうがおかしいことになるな。それはともかく、わたしになんのもんだいがある?)

私の方がおかしいことになるな。それはともかく、私に何の問題がある?

(きみはなんしゅうかんも、わたしといっしょにくらしているだろう、わとそん。さあ、そっちょくに)

君は何週間も、私と一緒に暮らしているだろう、ワトソン。さあ、率直に

(いってくれ!あいするじょせいとけっこんして、よきおっとになれないりゆうがわたしにあるのか?)

言ってくれ!愛する女性と結婚して、良き夫になれない理由が私にあるのか?」

(そんなばかな しゃかいてきちいがふまんということはないだろうから、かれが)

「そんなばかな」「社会的地位が不満ということはないだろうから、彼が

(はんたいするりゆうはわたしじしんにあるはずだ。なぜわたしにてきたいするんだ?わたしはおとこでもおんなでも)

反対する理由は私自身にあるはずだ。なぜ私に敵対するんだ?私は男でも女でも

(つきあったにんげんをきずつけたりしない。それなのに、かれはわたしにかのじょのゆびさきさえも)

付き合った人間を傷つけたりしない。それなのに、彼は私に彼女の指先さえも

(ふれさせようとしない そんなことをいったのか?ああ、それどころでは)

触れさせようとしない」「そんな事を言ったのか?」「ああ、それどころでは

(すまなかったがな。いいか、わとそん、わたしはかのじょとしりあってまだすうしゅうかんだ。)

すまなかったがな。いいか、ワトソン、私は彼女と知り合ってまだ数週間だ。

(しかしはじめてであったときから、かのじょはわたしのためにうまれてきたとかんじた。これは)

しかし初めて出会った時から、彼女は私のために生まれてきたと感じた。これは

(かのじょもおなじだ。ちかっていえる。かのじょはわたしといっしょにいるのがしあわせだったはずだ。)

彼女も同じだ。誓って言える。彼女は私と一緒にいるのが幸せだったはずだ。

(じょせいのめのひかりはことばいじょうにゆうべんだ。それなのに、あいつはけっしてふたりだけに)

女性の目の光は言葉以上に雄弁だ。それなのに、あいつは決して二人だけに

(させようとしない。やっときょうになって、はじめて、かのじょひとりのときにちょっと)

させようとしない。やっと今日になって、初めて、彼女一人の時にちょっと

(ことばをかわすきかいがつくれた。かのじょはわたしにあえてうれしそうだった。しかしきょう)

言葉を交わす機会が作れた。彼女は私に会えて嬉しそうだった。しかし今日

(あったとき、かのじょはあいじょうについてはなしたがらなかった。しかも、かのじょはわたしにも)

会った時、彼女は愛情について話したがらなかった。しかも、彼女は私にも

(なんとかそれをいわせまいとするんだ。かのじょはずっと、ここはあぶないばしょだから)

なんとかそれを言わせまいとするんだ。彼女はずっと、ここは危ない場所だから

(わたしがここをはなれるまでけっしてあんしんできないといいつづけている。わたしはかのじょに)

私がここを離れるまで決して安心できないと言い続けている。私は彼女に

(こういった。きみにであったいじょう、すぐにでていくつもりはない、もしほんとうにわたしに)

こう言った。君に出会った以上、すぐに出て行くつもりはない、もし本当に私に

(でていってほしいのなら、わたしといっしょにきてくれ、そうでなければここから)

出て行って欲しいのなら、私と一緒に来てくれ、そうでなければここから

(はなれないと。それとどうじに、わたしはかのじょにけっこんしてほしいといっしょうけんめいぷろぽーず)

離れないと。それと同時に、私は彼女に結婚して欲しいと一生懸命プロポーズ

(した。しかしそのへんじをきくまえに、あにがきょうじんのようなぎょうそうでわたしたちのほうに)

した。しかしその返事を聞く前に、兄が狂人のような形相で私達の方に

(はしってきた。かれはいかりでちのけがひき、めはふんがいにもえたぎっていた。わたしがあの)

走ってきた。彼は怒りで血の気が引き、目は憤慨に燃えたぎっていた。私があの

(じょせいになにをしていたというのだろう?いをけっして、けっこんをもうしこんだのが)

女性に何をしていたというのだろう?意を決して、結婚を申し込んだのが

(かのじょにはふゆかいだったのか?わたしがじゅんだんしゃくだから、なんでもおもいどおりになると)

彼女には不愉快だったのか?私が準男爵だから、何でも思い通りになると

(うぬぼれていたとでもいうのだろうか?もしあのじょせいのあにでなければ、わたしは)

自惚れていたとでも言うのだろうか?もしあの女性の兄でなければ、私は

(もうすこしれいせいにたいしょできていたとおもう。しかしあのときわたしは、かれのいもうとにたいする)

もう少し冷静に対処できていたと思う。しかしあの時私は、彼の妹に対する

(きもちはけいはくなものではなく、ぜひけっこんしたいとおもっているとうったえた。ここまで)

気持ちは軽薄なものではなく、是非結婚したいと思っていると訴えた。ここまで

(いっても、まったくきくみみをもたないたいどだったので、わたしもれいせいさをうしない、)

言っても、まったく聞く耳を持たない態度だったので、私も冷静さを失い、

(じょせいのめのまえだというのに、ひつよういじょうにかんじょうてきにいいあってしまった。そのけっか)

女性の目の前だというのに、必要以上に感情的に言い合ってしまった。その結果

(きみがみたとおり、かれはいもうとをつれてさっていった。それでいま、わたしはこのとおり、)

君が見たとおり、彼は妹を連れて去って行った。それで今、私はこの通り、

(どうしていいかわからなくなった。いったいこれは、どうなっているのか)

どうしていいか分からなくなった。一体これは、どうなっているのか

(おしえてくれないか、わとそん。ほんとうにおんにきるよ)

教えてくれないか、ワトソン。本当に恩に着るよ」

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