怪人二十面相52 江戸川乱歩

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少年探偵団シリーズ1作目

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問題文

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(いまにしけいじはあまりのことに、あけちたんていのしょうきをうたがいたくなるほどでした。)

今西刑事はあまりの事に、明智探偵の正気を疑いたくなる程でした。

(「ぼくにすこしかんがえがあるのです」 あけちは、すましてこたえます。)

「僕に少し考えがあるのです」 明智は、澄まして答えます。

(「かんがえがあるといって、そういうことを、いちこじんのあなたが、かってにきめて)

「考えがあるといって、そういう事を、一個人の貴方が、勝手に決めて

(くださってはこまりますね。いずれにしてもぞくとわかっていながら、にがすというては)

下さっては困りますね。何れにしても賊と分かっていながら、逃がすという手は

(ありません。ぼくはしょくむとしてやつをついせきしないわけにはいきません。やつはどちらへ)

ありません。僕は職務として奴を追跡しない訳にはいきません。奴はどちらへ

(いきました。じどうしゃでしょうね」 けいじは、みんかんたんていのひとりぎめのしょちを、)

行きました。自動車でしょうね」  刑事は、民間探偵の一人決めの処置を、

(しきりとふんがいしています。 「きみがついせきするというなら、それはごじゆうですが、)

頻りと憤慨しています。 「君が追跡するというなら、それはご自由ですが、

(おそらくむだでしょうよ」 「あなたのおさしずはうけません。ほてるへいって)

恐らく無駄でしょうよ」 「貴方のお指図は受けません。ホテルへ行って

(じどうしゃばんごうをしらべて、てはいをします」 「ああ、くるまのばんごうなら、ほてるへ)

自動車番号を調べて、手配をします」 「ああ、車の番号なら、ホテルへ

(いかなくても、ぼくがしってますよ。13887ばんです」 「え、あなたはくるまの)

行かなくても、僕が知ってますよ。一三八八七番です」 「え、あなたは車の

(ばんごうまでしっているんですか。そして、あとをおおうともなさらないのですか」)

番号まで知っているんですか。そして、後を追おうともなさらないのですか」

(けいじはふたたびあっけにとられてしまいましたが、いっこくをあらそうこのさい、)

刑事は再び呆気に取られてしまいましたが、一刻を争うこの際、

(むえきなもんどうをつづけているわけにはいきません。ばんごうをてちょうにかきとめると、)

無益な問答を続けている訳にはいきません。番号を手帳に書き留めると、

(すぐまえにあるこうばんへ、とぶようにはしっていきました。 けいさつでんわによって、)

すぐ前にある交番へ、飛ぶように走って行きました。  警察電話によって、

(このことがとないのかくけいさつしょへ、こうばんへと、またたくまにつたえられました。)

この事が都内の各警察署へ、交番へと、瞬く間に伝えられました。

(「13887ばんをとらえよ。そのくるまににじゅうめんそうががいむしょうのつじのしに)

「一三八八七番を捕えよ。その車に二十面相が外務省の辻野氏に

(ばけてのっているのだ」 このめいれいが、とうきょうぜんとのおまわりさんのこころを、)

化けて乗っているのだ」  この命令が、東京全都のお巡りさんの心を、

(どれほどおどらせたことでしょう。われこそはそのじどうしゃをつかまえて、きょうぞくたいほの)

どれほど躍らせたことでしょう。我こそはその自動車を捕まえて、凶賊逮捕の

(めいよをになわんものと、こうばんというこうばんのけいかんが、めをさらのようにし、)

名誉を担わんものと、交番という交番の警官が、目を皿のようにし、

(てぐすねひいてまちかまえたことはもうすまでもありません。 かいとうがほてるを)

手ぐすね引いて待ち構えた事は申すまでもありません。  怪盗がホテルを

など

(しゅっぱつしてから20ぷんもしたころ、こううんにも13887ばんのじどうしゃをはっけんしたのは)

出発してから二十分もしたころ、幸運にも一三八八七番の自動車を発見したのは

(しんじゅくくとつかちょうのこうばんにきんむしているいちけいかんでありました。 それはまだわかくて)

新宿区戸塚町の交番に勤務している一警官でありました。  それはまだ若くて

(ゆうきにとんだおまわりさんでしたが、こうばんのまえを、きていいじょうのそくりょくで、やのように)

勇気に富んだお巡りさんでしたが、交番の前を、規定以上の速力で、矢のように

(はしりぬけた1だいのじどうしゃをひょいとみると、そのばんごうが13887ばん)

走り抜けた一台の自動車をヒョイと見ると、その番号が一三八八七番

(だったのです。 わかいおまわりさんは、はっとして、おもわずむしゃぶるいをしました)

だったのです。  若いお巡りさんは、ハッとして、思わず武者震いをしました

(そして、そのあとからはしってくるくうしゃをよびとめるなりとびのって、)

そして、その後から走って来る空車を呼び停めるなり飛び乗って、

(「あのくるまだっ、あのくるまにゆうめいなにじゅうめんそうがのっているんだ。はしってくれ。)

「あの車だッ、あの車に有名な二十面相が乗っているんだ。走ってくれ。

(すぴーどはいくらだしてもかまわん、えんじんがはれつするまではしってくれっ」)

スピードはいくら出しても構わん、エンジンが破裂するまで走ってくれッ」

(とさけぶのでした。 しあわせと、そのじどうしゃのうんてんしゅがまた、こころきいたわかものでした)

と叫ぶのでした。  幸せと、その自動車の運転手がまた、心きいた若者でした

(くるまはあたらしく、えんじんにもうしぶんはありません。はしる、はしる、まるで)

車は新しく、エンジンに申し分はありません。走る、走る、まるで

(てっぽうだまみたいにはしりだしたのです。 あくまのようにしっそうする2だいのじどうしゃは、)

鉄砲玉みたいに走り出したのです。  悪魔のように疾走する二台の自動車は、

(みちゆくひとのめをみはらせないではおきませんでした。 みれば、うしろのくるまには、)

道行く人の目を瞠らせないではおきませんでした。  見れば、後ろの車には、

(ひとりのおまわりさんが、およびごしになって、いっしんふらんにぜんぽうをみつめ、なにかおおごえに)

一人のお巡りさんが、及び腰になって、一心不乱に前方を見詰め、何か大声に

(わめいているではありませんか。 「とりものだ、とりものだ!」)

喚いているではありませんか。 「捕り物だ、捕り物だ!」

(やじうまがさけびながら、くるまといっしょにかけだします。それにつれていぬがほえる。)

弥次馬が叫びながら、車と一緒に駆け出します。それにつれて犬が吠える。

(あるいていたぐんしゅうがみなたちどまってしまうというさわぎです。 しかし、じどうしゃは)

歩いていた群衆が皆立ち止まってしまうという騒ぎです。  しかし、自動車は

(それらのこうけいをあとにみすてて、とおりまのように、ただ、さきへさきへと)

それらの光景を後に見捨てて、通り魔のように、ただ、先へ先へと

(とんでいきます。 いくだいのじどうしゃをおいぬいたことでしょう。いくたびじどうしゃに)

飛んで行きます。  幾台の自動車を追い抜いた事でしょう。幾度自動車に

(ぶつかりそうになって、あやうくよけたことでしょう。 ほそいみちではすぴーどが)

ぶつかりそうになって、危うく避けた事でしょう。  細い道ではスピードが

(だせないものですから、ぞくのくるまはだいかんじょうせんにでて、おうじのほうがくにむかって)

出せないものですから、賊の車は大環状線に出て、王子の方角に向かって

(しっそうしはじめました。ぞくはむろんついせきをきづいてます。)

疾走し始めました。賊は無論追跡を気付いてます。

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