バスカヴィル家の犬36

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シャーロックホームズシリーズ
アーサーコナンドイルの作品です。句読点以外の記号は省いています。

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問題文

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(10がつ17にち。いちにちじゅうどしゃぶりのあめがつたをうち、ひさしからしたたっている。わたしは)

10月17日。一日中土砂降りの雨がツタを打ち、庇から滴っている。私は

(きびしいさむさのなか、こうりょうとしたふきさらしのこうやにいるあのしゅうじんのことをかんがえた。)

厳しい寒さの中、荒涼とした吹きさらしの荒野にいるあの囚人の事を考えた。

(あわれなやつだ!かれがどんなつみをおかしたにせよ、いくぶんかは、それをつぐなうくるしみを)

哀れな奴だ!彼がどんな罪を犯したにせよ、幾分かは、それをつぐなう苦しみを

(おっている。それから、わたしはもうひとりのじんぶつのことをかんがえた、 つじばしゃのかお、)

負っている。それから、私はもう一人の人物のことを考えた、―辻馬車の顔、

(つきをせにしたひとかげだ。かれもまたこのおおあめのなか、こがいにいるのか、 このみえない)

月を背にした人影だ。彼もまたこの大雨の中、戸外にいるのか、―この見えない

(かんししゃ、くらやみのおとこは?ゆうがた、わたしはくらいそうぞうでいたたまれなくなり、あまぐをきて)

監視者、暗闇の男は?夕方、私は暗い想像でいたたまれなくなり、雨具を着て

(ぬれたこうやのおくにあるいていった。あめはかおにうちつけ、かぜはみみもとでおとをたてた。)

濡れた荒野の奥に歩いていった。雨は顔に打ち付け、風は耳元で音を立てた。

(かたいだいちでさえぬまのようになっているこんなとき、そこなしぬまにまよいこむにんげんにかみの)

堅い大地でさえ沼のようになっているこんな時、底無し沼に迷い込む人間に神の

(ごかごがあらんことを。わたしはこどくなかんさつしゃがたっていたくろいいわやまをみつけた。)

ご加護があらんことを。私は孤独な観察者が立っていた黒い岩山を見つけた。

(そしてそのごつごつしたさんちょうから、じぶんでゆううつなきゅうりょうちたいをみおろした。)

そしてそのゴツゴツした山頂から、自分で憂鬱な丘陵地帯を見下ろした。

(あめまじりのとっぷうがあずきいろのひょうめんにふきつけていた。そしてあついはいいろのくもが、)

雨交じりの突風が小豆色の表面に吹き付けていた。そして厚い灰色の雲が、

(けしきぜんたいにひくくたれこめ、はいいろのかんむりとなってたなびき、きかいなおかのしゃめんをくだって)

景色全体に低く垂れ込め、灰色の冠となってたなびき、奇怪な丘の斜面を下って

(いた。ひだりてのとおくはなれたくぼちのきぎのうえに、きりにはんぶんかくれたばすかヴぃるかんの)

いた。左手の遠く離れた窪地の木々の上に、霧に半分隠れたバスカヴィル館の

(ほそいにほんのとうがかおをだしていた。おかのしゃめんにみっしゅうしているせんしじだいのこやを)

細い二本の塔が顔を出していた。丘の斜面に密集している先史時代の小屋を

(のぞいては、このとういがいに、にんげんのせいかつをおもわせるものはみあたらなかった。)

除いては、この塔以外に、人間の生活を思わせるものは見当たらなかった。

(ふつかまえのよる、このばしょでわたしがみかけたあのこどくなおとこのこんせきはどこにもなかった。)

二日前の夜、この場所で私が見かけたあの孤独な男の痕跡はどこにもなかった。

(あるいてもどるとちゅう、ふぁうるまいあのへんきょうののうかにむかう、こうほうのなみうったあれちの)

歩いて戻る途中、ファウルマイアの辺境の農家に向かう、後方の波打った荒地の

(みちから、もーてぃまーはかせのばしゃがやってきた。かれはわたしたちにひじょうにきをつかって)

道から、モーティマー博士の馬車がやって来た。彼は私たちに非常に気を使って

(いて、ほとんどまいにちのように、ようすをみにやかたにきていた。かれはばしゃにあがって)

いて、ほとんど毎日のように、様子を見に館に来ていた。彼は馬車に上がって

(くるようにつよくすすめ、いえまでおくってくれることになった。かれはあいけんのすぱにえるが)

くるように強く勧め、家まで送ってくれる事になった。彼は愛犬のスパニエルが

など

(ゆくえふめいになって、ひじょうにしんぱいしていた。そのすぱにえるはこうやにまよいこんだ)

行方不明になって、非常に心配していた。そのスパニエルは荒野に迷い込んだ

(まま、もどってこなかった。わたしはできるかぎりのなぐさめをいったが、ぐりんぺんぬまの)

まま、戻って来なかった。私は出来る限りの慰めを言ったが、グリンペン沼の

(こうまのことをおもいだすといぬにさいかいできるとはとてもかんがえられなかった。)

子馬のことを思い出すと犬に再会できるとはとても考えられなかった。

(ところで、もーてぃまーさん わたしはでこぼこしたみちにゆられながらきいた。)

「ところで、モーティマーさん」私はでこぼこした道に揺られながら聞いた。

(このあたりのばしゃでいけるはんいには、あなたがごぞんじないじゅうにんはほとんど)

「このあたりの馬車で行ける範囲には、あなたがご存じない住人はほとんど

(いないでしょうね まずいないとおもいますよ では、いにしゃるが)

いないでしょうね」「まずいないと思いますよ」「では、イニシャルが

(l.l.のじょせいのなまえをごぞんじでしょうか?かれはちょっとかんがえた。)

L. L.の女性の名前をご存知でしょうか?」彼はちょっと考えた。

(いいえ かれはいった。わたしがしらないじぷしーやろうむしゃもすこしいますが、)

「いいえ」彼は言った。「私が知らないジプシーや労務者も少しいますが、

(のうふやしんしかいきゅうで、そのいにしゃるのひとはいません。いや、ちょっとまって)

農夫や紳士階級で、そのイニシャルの人はいません。いや、ちょっと待って

(ください かれはまをおいてつけくわえた。ろーららいおんずがいますね、)

ください」彼は間を置いて付け加えた。「ローラ・ライオンズがいますね、

(かのじょのいにしゃるはl.l.だ 、しかしかのじょはくーむとれーしーに)

彼女のイニシャルは L. L. だ―、しかし彼女はクーム・トレーシーに

(すんでいますが だれなんですか?わたしはたずねた。ふらんくらんどの)

住んでいますが」「誰なんですか?」私は尋ねた。「フランクランドの

(むすめです ええ?あのへんじんのふらんくらんどろうじんのことですか?)

娘です」「ええ?あの変人のフランクランド老人のことですか?」

(そのとおりです。かのじょはこうやにすけっちにきていたらいおんずというなまえの)

「その通りです。彼女は荒野にスケッチに来ていたライオンズという名前の

(げいじゅつかとけっこんしました、かれはげいじゅつかとはなばかりのごろつきで、かのじょを)

芸術家と結婚しました、彼は芸術家とは名ばかりのゴロツキで、彼女を

(すてました。わたしがきいたかぎりでは、どちらかいっぽうだけがわるいともいえない)

捨てました。私が聞いた限りでは、どちらか一方だけが悪いとも言えない

(ようですがね。ちちのきょかをえずにけっこんしたため、かのじょのちちはむすめをてだすけしません)

ようですがね。父の許可を得ずに結婚したため、彼女の父は娘を手助けしません

(でした。もしかするとそれいがいにもなにかりゆうがあるのかもしれません。こういう)

でした。もしかするとそれ以外にも何か理由があるのかもしれません。こういう

(じじょうで、あのじょせいはとしよりとわかいならずもののいたばさみになり、たいへんなくきょうに)

事情で、あの女性は年寄りと若いならず者の板ばさみになり、大変な苦境に

(たっています どうやってせいかつしているんですか?ふらんくらんどろうじんが)

立っています」「どうやって生活しているんですか?」「フランクランド老人が

(かのじょにかねをわたしていても、すずめのなみだほどだろうとおもいます。じぶんのじけんが)

彼女に金を渡していても、すずめの涙ほどだろうと思います。自分の事件が

(ひじょうにややこしいことになってきていますので、それいじょうはむりです。いかに)

非常にややこしい事になってきていますので、それ以上は無理です。いかに

(かのじょにせきにんがあるとしても、ぜつぼうてきなじょうきょうにおちいるのをみすみすみていることは)

彼女に責任があるとしても、絶望的な状況に陥るのをみすみす見ていることは

(できません。かのじょのはなしがうわさとなり、ここのひとがなんにんか、まともにはたらいて)

出来ません。彼女の話がうわさとなり、ここの人が何人か、まともに働いて

(せいかつできるようにてだすけしました。すていぷるとんもそのひとりですし、)

生活できるように手助けしました。ステイプルトンもその一人ですし、

(さーちゃーるずもそうです。わたしもわずかですがきふしました。かのじょがたいぷの)

サー・チャールズもそうです。私も僅かですが寄付しました。彼女がタイプの

(しごとでくらせるようにするためのしきんです かれはわたしがたずねたもくてきを)

仕事で暮らせるようにするための資金です」彼は私が尋ねた目的を

(しりたがったが、なんとかあまりくわしくはなさずになっとくさせることができた。たにんに)

知りたがったが、何とかあまり詳しく話さずに納得させる事が出来た。他人に

(ひみつをもらすかちはぜんぜんない。あしたのあさ、わたしはくーむとれーしーへいって)

秘密を漏らす価値は全然ない。明日の朝、私はクーム・トレーシーへ行って

(みよう。そしてかんばしくないひょうばんがあるろーららいおんずとあうことができれば、)

みよう。そして芳しくない評判があるローラ・ライオンズと会う事が出来れば、

(つぎつぎとおこったなぞのひとつをはっきりさせるために、おおきくこうけんすることができる)

次々と起こった謎の一つをはっきりさせるために、大きく貢献する事ができる

(だろう。わたしはたしかにわるがしこいちえをみにつけてきている。もーてぃまーがちょっと)

だろう。私は確かに悪賢い知恵を身につけてきている。モーティマーがちょっと

(こまるくらいしつこくしつもんしてきたとき、わたしはなにげないかんじでふらんくらんどの)

困るくらいしつこく質問してきた時、私は何気ない感じでフランクランドの

(ずがいこつがどのたいぷにぞくするかをたずねた。けっかてきにそれいこうのばしゃのなかでは、)

頭蓋骨がどのタイプに属するかを尋ねた。結果的にそれ以降の馬車の中では、

(とうこつがくいがいのわだいはでなかった。わたしはだてにしゃーろっくほーむずといっしょに)

頭骨学以外の話題は出なかった。私は伊達にシャーロックホームズと一緒に

(せいかつしてきたわけではない。このあらしのゆううつなひにきろくすべきじけんが、もうひとつ)

生活してきたわけではない。この嵐の憂鬱な日に記録すべき事件が、もう一つ

(ある。それはたったいまばりもあとはなしたことだ。これで、わたしはいつのひかしょうぶを)

ある。それはたった今バリモアと話したことだ。これで、私はいつの日か勝負を

(するさい、さらにきょうりょくなきりふだをにゅうしゅすることになった。もーてぃまーはゆうしょくを)

する際、さらに強力な切り札を入手することになった。モーティマーは夕食を

(ともにし、そのあとじゅんだんしゃくとえかるてをやった。ばりもあがとしょしつにいたわたしに)

共にし、その後準男爵とエカルテをやった。バリモアが図書室にいた私に

(こーひーをもってきてくれたので、かれにいくつかしつもんするきかいがうまれた。)

コーヒーを持ってきてくれたので、彼に幾つか質問する機会が生まれた。

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