バスカヴィル家の犬51

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シャーロックホームズシリーズ
アーサーコナンドイルの作品です。句読点以外の記号は省いています。

関連タイピング

問題文

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(わたしがかれらをみていると、さーへんりーがこっぷにもういっぱいそそいでいすに)

私が彼らを見ていると、サー・ヘンリーがコップにもう一杯注いで椅子に

(もたれかかって、はまきをすっているあいだに、すていぷるとんがたちあがってへやを)

もたれかかって、葉巻を吸っている間に、ステイプルトンが立ち上がって部屋を

(あとにした。わたしはとびらのきしみとじゃりみちをあるくくつのかわいたおとをきいた。あしおとはわたしが)

後にした。私は扉の軋みと砂利道を歩く靴の乾いた音を聞いた。足音は私が

(しゃがんでいるのとはんたいがわのかべにあるみちになりにすすんだ。のぞきこんでみると、)

しゃがんでいるのと反対側の壁にある道になりに進んだ。覗き込んでみると、

(わたしははくぶつがくしゃが、かじゅえんのいっかくにあるひとつのなやのとびらのまえでたちどまるのを)

私は博物学者が、果樹園の一角にある一つの納屋の扉の前で立ち止まるのを

(みた。かぎがじょうのなかでまわり、そしてかれはなかにすべりこんだ。きみょうなけぜわしいおとが)

見た。鍵が錠の中で回り、そして彼は中に滑り込んだ。奇妙な気ぜわしい音が

(なかからきこえてきた。かれがなかにいたのはいっぷんかそこらだった。そのあともういちど)

中から聞こえてきた。彼が中に居たのは一分かそこらだった。その後もう一度

(かぎをまわすおとがきこえ、かれはわたしのまえをよこぎってもういちどいえにはいった。わたしはかれが)

鍵を回す音が聞こえ、彼は私の前を横切ってもう一度家に入った。私は彼が

(きゃくとふたたびあうところをみて、しずかになかまがまっているところまでもどり、みたことを)

客と再び会うところを見て、静かに仲間が待っている所まで戻り、見たことを

(ほうこくした。わとそん、きみはじょせいがいなかったというのか?ほーむずはわたしが)

報告した。「ワトソン、君は女性が居なかったというのか?」ホームズは私が

(ほうこくをおえるといった。いない じゃあ、どこにいるんだろう?だいどころいがいの)

報告を終えると言った。「いない」「じゃあ、どこにいるんだろう?台所以外の

(へやにはあかりがない どこにいるかわからんな わたしはぐりんぺんぬまのうえに)

部屋には明かりがない」「どこにいるか分からんな」私はグリンペン沼の上に

(しろいこいきりがでているといった。それがゆっくりとわれわれのほうにながれてきて、)

白い濃い霧が出ていると言った。それがゆっくりと我々の方に流れてきて、

(われわれのよこにかべのようにつみあがってきた。ひくく、しかしあつくしっかりとしたかたちで)

我々の横に壁のように積み上がってきた。低く、しかし厚くしっかりとした形で

(つきがそれにてっていた。それはきょだいなひょうげんのようにかがやいてみえた。とおくはなれた)

月がそれに照っていた。それは巨大な氷原のように輝いて見えた。遠く離れた

(いわやまのちょうじょうはそのうえにのったいしのようだった。ほーむずはかおをきりのほうにむけた。)

岩山の頂上はその上に乗った石のようだった。ホームズは顔を霧の方に向けた。

(そしてゆっくりながれてくるきりをみてかれはいらいらしてつぶやいた。あれは)

そしてゆっくり流れてくる霧を見て彼はイライラしてつぶやいた。「あれは

(こちらにうごいているぞ、わとそん しんこくなもんだいなのか?ひじょうにしんこくだ。)

こちらに動いているぞ、ワトソン」「深刻な問題なのか?」「非常に深刻だ。

(じっさい、ぼくのけいかくをかきみだしうるただひとつのことだ。もう、そんなにじかんが)

実際、僕の計画をかき乱し得るただ一つのことだ。もう、そんなに時間が

(ないぞ。すでに10じだ。あのきりがみちのうえにくるまえに、かれがでてくることに、われわれの)

ないぞ。既に10時だ。あの霧が道の上に来る前に、彼が出てくる事に、我々の

など

(せいこうもかれのいのちさえかかっている そのよる、わたしたちのずじょうにはほしがつめたくあかるく)

成功も彼の命さえかかっている」その夜、私たちの頭上には星が冷たく明るく

(かがやき、くっきりとはれわたっていた。はんげつがけしきぜんたいにやわらかくふめいりょうなひかりを)

輝き、くっきりと晴れ渡っていた。半月が景色全体に柔らかく不明瞭な光を

(なげかけていた。われわれのまえにはいえがくらくおおきなかたまりとなってよこたわり、)

投げかけていた。我々の前には家が暗く大きな塊となって横たわり、

(のこぎりじょうのやねとさかだったえんとつが、ぎんいろにひかるそらにかたいりんかくをみせていた。)

ノコギリ状の屋根と逆立った煙突が、銀色に光る空に堅い輪郭を見せていた。

(したのかいのまどからきんいろのひろいひかりのおびが、かじゅえんとこうやをよこぎってのびていた。)

下の階の窓から金色の広い光の帯が、果樹園と荒野を横切って伸びていた。

(そのひとつがとつぜんきえた。しようにんがだいどころをあとにしていた。ただひとつしょくどうの)

その一つが突然消えた。使用人が台所を後にしていた。ただ一つ食堂の

(らんぷだけがのこり、さついあるしゅじんとなにもきづかないきゃくじんであるふたりのおとこが)

ランプだけが残り、殺意ある主人と何も気づかない客人である二人の男が

(そこでまだはまきをすいながらはなしていた。いっぷんごとにこうやのはんぶんをおおう)

そこでまだ葉巻を吸いながら話していた。一分ごとに荒野の半分を覆う

(うーるのようなへいげんが、どんどんといえのちかくにながれてきた。すでにさいしょの)

ウールのような平原が、どんどんと家の近くに流れてきた。すでに最初の

(うすいきりのいっぺんが、あかりがついたまどのきんいろのしかくをよこぎってうずまいていた。)

薄い霧の一片が、明かりがついた窓の金色の四角を横切って渦巻いていた。

(かじゅえんのむこうのかべはすでにみえなくなり、きぎはしろいじょうきのうずから)

果樹園の向こうの壁は既に見えなくなり、木々は白い蒸気の渦から

(つきだしていた。われわれがみていると、きりのうずがいえのりょうがわからはうように)

突き出していた。我々が見ていると、霧の渦が家の両側から這うように

(まわりこんできて、そしてゆっくりとひとつのこいかたまりになった。くらいうみにうかぶ)

回り込んできて、そしてゆっくりと一つの濃い塊になった。暗い海に浮かぶ

(きみょうなふねのように、にかいとやねのうえをただよっていた。ほーむずはわれわれのまえのいわを)

奇妙な船のように、二階と屋根の上を漂っていた。ホームズは我々の前の岩を

(はげしくてでうって、いらいらしてあしぶみをした。もしかれがあと15ふんで)

激しく手で打って、イライラして足踏みをした。「もし彼があと15分で

(でてこなかったら、みちがおおわれてしまうだろう。30ぷんもすれば、めのまえのても)

出てこなかったら、道が覆われてしまうだろう。30分もすれば、目の前の手も

(みえなくなる もうすこしたかいところまでもっとひきさがるか?そうだな。)

見えなくなる」「もう少し高いところまでもっと引き下がるか?」「そうだな。

(そのほうがよさそうだ きりのかたまりがぜんしんしてきたので、わたしたちはそれをまえに)

その方が良さそうだ」霧の塊が前進してきたので、私たちはそれを前に

(あとずさりした。そのしろいこいうみは、うわがわをつきがぎんいろにてらしていた。われわれが)

後ずさりした。その白い濃い海は、上側を月が銀色に照らしていた。我々が

(いえからはんまいるはなれるまで、ゆっくりとようしゃなくやってきた。これいじょうは)

家から半マイル離れるまで、ゆっくりと容赦なくやってきた。「これ以上は

(だめだ ほーむずはいった。かれがわれわれのところにくるまえにおいつかれる)

だめだ」ホームズは言った。「彼が我々のところに来る前に追い付かれる

(というきけんをあえておかすべきではない。なんとしても、いまいるところから)

という危険をあえて冒すべきではない。なんとしても、今いる所から

(うごくべきではない かれはひざまずいてじめんにみみをつけた。ありがたい、かれが)

動くべきではない」彼はひざまずいて地面に耳をつけた。「ありがたい、彼が

(くるのがきこえるぞ いそいだあしおとがこうやのしずけさをやぶった。いわのあいだに)

来るのが聞こえるぞ」急いだ足音が荒野の静けさを破った。岩の間に

(うずくまって、われわれはいっしょうけんめいにめのまえのぎんいろにおおわれたきりをみつめた。)

うずくまって、我々は一生懸命に目の前の銀色に覆われた霧を見つめた。

(あしおとがどんどんとおおきくなり、そしてかーてんのようなきりのむこうに、われわれが)

足音がどんどんと大きくなり、そしてカーテンのような霧の向こうに、我々が

(まちかまえていたおとこがあるいてきた。かれははっきりほしのでたよぞらにでたとき、おどろいて)

待ち構えていた男が歩いてきた。彼ははっきり星の出た夜空に出た時、驚いて

(まわりをみまわした。それからかれはいそぎあしでみちをすすみ、われわれがひそんでいるそばを)

回りを見回した。それから彼は急ぎ足で道を進み、我々が潜んでいる側を

(とおりすぎ、われわれのうしろのしゃめんをのぼっていった。かれはおちつきのないおとこのように、)

通り過ぎ、我々の後ろの斜面を登っていった。彼は落ち着きのない男のように、

(あるきながらしょっちゅうりょうかたごしにめをやった。しっ!ほーむずがさけんだ。)

歩きながらしょっちゅう両肩越しに目をやった。「シッ!」ホームズが叫んだ。

(そしてけんじゅうのげきてつをおこすするどいおとがきこえた。きをつけろ!くるぞ!)

そして拳銃の撃鉄を起こす鋭い音が聞こえた。「気をつけろ!来るぞ!」

(かすかな、かわいた、れんぞくてきなぱたぱたというおとが、はいよってくるきりのなかの)

かすかな、乾いた、連続的なパタパタという音が、這い寄って来る霧の中の

(どこかからきこえた。くもはわたしたちがかくれているところから50やーどいないにまで)

どこかから聞こえた。雲は私たちが隠れているところから50ヤード以内にまで

(きていた。そしてわれわれはそこをにらんでいた。さんにんとも、そのちゅうしんからどんな)

来ていた。そして我々はそこを睨んでいた。三人とも、その中心からどんな

(きょうふがとびだしてくるかもわからずに。わたしはほーむずのすぐよこにいた。そして)

恐怖が飛び出して来るかも分からずに。私はホームズのすぐ横にいた。そして

(わたしはいっしゅんかれのかおにめをやった。あおざめ、よろこびがみなぎったかれのめは、げっこうに)

私は一瞬彼の顔に目をやった。青ざめ、喜びがみなぎった彼の目は、月光に

(かがやいていた。しかしとつぜん、かれのめはぎょうししてかたくうごかなくなり、)

輝いていた。しかし突然、彼の目は凝視して堅く動かなくなり、

(とびださんばかりとなり、どうじがくちもとがおどろきにひらいた。れすとれーどがきょうふの)

飛び出さんばかりとなり、同時が口元が驚きに開いた。レストレードが恐怖の

(さけびごえをあげ、ぱっとじめんにはいつくばった。わたしははじかれたように)

叫び声を上げ、ぱっと地面に這いつくばった。私ははじかれたように

(たちあがった。きりのかげのなかからわれわれのほうにとびだしてきたおそろしいかげに、けんじゅうを)

立ち上がった。霧の影の中から我々の方に飛び出してきた恐ろしい影に、拳銃を

(もつてにかんかくがなくなり、わたしのこころはすくみあがった。それはいぬだった。しかし)

持つ手に感覚がなくなり、私の心はすくみあがった。それは犬だった。しかし

(これまでだれもみたこともないような、きょだいなまっくろいいぬで、ひらいたくちからは)

これまで誰も見たこともないような、巨大な真っ黒い犬で、開いた口からは

(ほのおがふきだし、めはくすぶったかがやきをはなち、はなさきとくびまわりのけとのどぶくろは)

炎が噴き出し、目はくすぶった輝きを放ち、鼻先と首回りの毛と喉袋は

(ちらちらとゆれるほのおにふちどられていた。くるったあたまのさくらんしたゆめのなかでさえ、)

ちらちらと揺れる炎に縁取られていた。狂った頭の錯乱した夢の中でさえ、

(これよりもどうもうで、ぞっとするじごくのようなものはうかばないだろう。)

これよりも獰猛で、ぞっとする地獄のようなものは浮かばないだろう。

(くろいからだとどうもうなかおが、きりのかべのなかからわたしたちのほうにとびでてきた。)

黒い体と獰猛な顔が、霧の壁の中から私たちの方に飛び出てきた。

(ながいちょうやくで、きょだいなくろいいきものはみちのうえにおりたった。そしてわれわれのゆうじんの)

長い跳躍で、巨大な黒い生き物は道の上に降り立った。そして我々の友人の

(あしあとをひっしでおった。このしゅつげんにぼうぜんとし、われわれはじぶんをとりもどすまえに)

足跡を必死で追った。この出現に呆然とし、我々は自分を取り戻す前に

(いぬをとおしてしまった。ほーむずとわたしはどうじにはっぽうした。そしてそのいきものは)

犬を通してしまった。ホームズと私は同時に発砲した。そしてその生き物は

(おそろしいなきごえをあげた。すくなくともそのいっぱつがあたったことをしめした。しかし)

恐ろしい鳴き声を上げた。少なくともその一発が当たった事を示した。しかし

(いぬはとまらず、はずむようにすすんでいった。みちのはるかかなたでさーへんりーが)

犬は止まらず、弾むように進んでいった。道のはるか彼方でサー・ヘンリーが

(ふりかえるのがみえた。かれのかおはげっこうのしたでしろく、かれのてはきょうふに)

振り返るのが見えた。彼の顔は月光の下で白く、彼の手は恐怖に

(あげられていた。かれにむかってくるおそろしいぶったいをどうすることもできず)

上げられていた。彼に向かってくる恐ろしい物体をどうする事も出来ず

(みつめていた。しかしいぬがあげたいたみのさけびが、われわれのおそれをふきとばした。)

見つめていた。しかし犬が上げた痛みの叫びが、我々の恐れを吹き飛ばした。

(もしかれがきずをうけるのなら、かれはげんせのいきものだ。もしわれわれがかれを)

もし彼が傷を受けるのなら、彼は現世の生き物だ。もし我々が彼を

(きずつけられるならころすことができる。このよるのほーむずほどはやくはしるにんげんを)

傷つけられるなら殺す事が出来る。この夜のホームズほど速く走る人間を

(わたしはみたことがなかった。わたしはあしがはやいとおもっているが、かれはわたしがちいさなけいぶを)

私は見たことがなかった。私は足が早いと思っているが、彼は私が小さな警部を

(ひきはなしたとおなじくらいわたしをひきはなしていた。われわれがみちをはしっているとき、)

引き離したと同じくらい私を引き離していた。我々が道を走っているとき、

(さーへんりーがなんどもひめいをあげいぬがひくくうなるのを、われわれはめのまえで)

サー・ヘンリーが何度も悲鳴を上げ犬が低くうなるのを、我々は目の前で

(なんどもきいた。わたしがみているまえで、けものはえものにとびつき、じめんにひきたおし、)

何度も聞いた。私が見ている前で、獣は獲物に飛びつき、地面に引き倒し、

(のどもとにかみついた。しかしつぎのしゅんかん、ほーむずがごはつのじゅうだんすべてをいぬのはらに)

喉元に噛み付いた。しかし次の瞬間、ホームズが五発の銃弾すべてを犬の腹に

(うちこんだ。くつうにだんまつまのさけびをあげ、きょうぼうないぬはくうちゅうにはねあがり、)

撃ち込んだ。苦痛に断末魔の叫びを上げ、狂暴な犬は空中に跳ね上がり、

(せなかをしたにころがった。よんほんのあしははげしくちゅうをかいた。そしてよこにぐったりと)

背中を下に転がった。四本の足は激しく宙を掻いた。そして横にぐったりと

(たおれた。わたしはいきをきらしてかがみこんだ。そしてけんじゅうをおそろしいかがやくあたまに)

倒れた。私は息を切らしてかがみ込んだ。そして拳銃を恐ろしい輝く頭に

(おしつけた。しかしひきがねをひくひつようはなかった。きょだいないぬはしんでいた。)

押し付けた。しかし引き金を引く必要はなかった。巨大な犬は死んでいた。

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