バスカヴィル家の犬52

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シャーロックホームズシリーズ
アーサーコナンドイルの作品です。句読点以外の記号は省いています。

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問題文

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(さーへんりーはたおれたところでいしきをうしなってよこたわっていた。われわれはからーを)

サー・ヘンリーは倒れたところで意識を失って横たわっていた。我々はカラーを

(ひきちぎった。そこにけがのあとがなく、きゅうじょがまにあったとわかったとき、)

引きちぎった。そこに怪我の跡がなく、救助が間に合ったと分かった時、

(ほーむずはちいさくかんしゃのいのりをささげた。すでにさーへんりーのまぶたはふるえ、)

ホームズは小さく感謝の祈りを捧げた。すでにサー・ヘンリーのまぶたは震え、

(かれはかすかにうごこうとしていた。れすとれーどがぶらんでーのびんをじゅんだんしゃくの)

彼はかすかに動こうとしていた。レストレードがブランデーの瓶を準男爵の

(くちにつっこみ、ふたつのおびえためがわれわれをみあげた。なんと!かれはさけんだ。)

口に突っ込み、二つの怯えた目が我々を見上げた。「なんと!」彼は叫んだ。

(あれはなんです?いったいあれはなんだったんですか?なんであってもあれは)

「あれは何です?いったいあれは何だったんですか?」「何であってもあれは

(しにました ほーむずはいった。われわれはかけいのゆうれいをきれいさっぱり)

死にました」ホームズは言った。「我々は家系の幽霊をきれいさっぱり

(かたづけました われわれのまえにてあしをのばしてよこたわっていたのは、)

片付けました」我々の前に手足を伸ばして横たわっていたのは、

(じゅんけつのぶらっどはうんどでもますてぃふでもなく、どうやらふたつのくみあわせの)

純血のブラッドハウンドでもマスティフでもなく、どうやら二つの組み合わせの

(ようだった。ぶきみで、どうもうで、ちいさなめすらいおんほどもある。)

ようだった。不気味で、獰猛で、小さな雌ライオンほどもある。

(しんでじっとしているこのじょうたいのときでさえも、おおきなあごはあおいほのおを)

死んでじっとしているこの状態の時でさえも、大きなあごは青い炎を

(したたらせているようにみえ、ちいさなおちこんだざんぎゃくなめはほのおでふちどられていた。)

滴らせているように見え、小さな落ち込んだ残虐な目は炎で縁取られていた。

(わたしはもえたっているはなすじにてをおいた。そしてわたしがてをあげると、じぶんのゆびが)

私は燃え立っている鼻筋に手を置いた。そして私が手を上げると、自分の指が

(くすぶりくらやみでかがやいた。りんだ わたしはいった。こうみょうにちょうごうしたな)

くすぶり暗闇で輝いた。「リンだ」私は言った。「巧妙に調合したな」

(しんだどうぶつをかいで、ほーむずはいった。かれがにおいをかぐのうりょくを)

死んだ動物を嗅いで、ホームズは言った。「彼が臭いをかぐ能力を

(じゃましないようににおいはしない。さーへんりー、あなたをこんなにおそろしい)

邪魔しないように臭いはしない。サー・ヘンリー、あなたをこんなに恐ろしい

(めにあわせて、ほんとうにもうしわけないことをしました。わたしはいぬにたいしてじゅんびを)

目に合わせて、本当に申し訳ないことをしました。私は犬に対して準備を

(していました。しかしこんなものがでてくるとは。そしてあのきりでわれわれが)

していました。しかしこんなモノが出てくるとは。そしてあの霧で我々が

(むかえうつじかんがほとんどありませんでした あなたはいのちのおんじんです さいしょに)

迎え撃つ時間がほとんどありませんでした」「あなたは命の恩人です」「最初に

(あなたをきけんにさらしてしまいました。たちあがるちからがありますか?)

あなたを危険にさらしてしまいました。立ち上がる力がありますか?」

など

(そのぶらんでーをもうひとくちいただければ、なんでもできるようになるでしょう。)

「そのブランデーをもう一口いただければ、何でも出来るようになるでしょう。

(さあ、では、おきあがるのにてをかしてください。あなたがたはどうするつもり)

さあ、では、起き上がるのに手を貸してください。あなた方はどうするつもり

(ですか?あなたとここでわかれます。あなたはこんやはこれいじょうぼうけんをする)

ですか?」「あなたとここで別れます。あなたは今夜はこれ以上冒険をする

(じゅんびはできていません。おまちいただければ、わたしたちのひとりかふたりかがやかたにつれて)

準備はできていません。お待ちいただければ、私達の一人か二人かが館に連れて

(かえります かれはよろよろとたちあがろうとした。しかしかれはまだゆうれいのように)

帰ります」彼はよろよろと立ち上がろうとした。しかし彼はまだ幽霊のように

(あおざめぶるぶるとふるえていた。われわれはかれをいわにつれていき、そこでかれは)

青ざめぶるぶると震えていた。我々は彼を岩に連れて行き、そこで彼は

(ふるえながらすわりかおをてにうずめた。いま、あなたをおいていかなければ)

震えながら座り顔を手にうずめた。「今、あなたを置いていかなければ

(なりません ほーむずはいった。わたしたちののこりのしごとをしなければ)

なりません」ホームズは言った。「私たちの残りの仕事をしなければ

(なりません。そしていっしゅんいっしゅんがだいじなのです。われわれはしんじつをつかみました。そして)

なりません。そして一瞬一瞬が大事なのです。我々は真実を掴みました。そして

(いまわれわれははんにんをつかまえるだけです かれがいえにいるのはせんたいいちのかくりつだ)

今我々は犯人を捕まえるだけです」「彼が家にいるのは千対一の確率だ」

(かれはわれわれがすぐにみちをひきかえすときにつづけた。このじゅうげきはかれにすべてが)

彼は我々がすぐに道を引き返すときに続けた。「この銃撃は彼に全てが

(おわったことをつげた われわれはちょっとはなれたところにいた。それにこのきりがおとを)

終わった事を告げた」「我々はちょっと離れた所にいた。それにこの霧が音を

(よわめたかもしれない かれはよびもどすためにいぬをつけていた、これは)

弱めたかもしれない」「彼は呼び戻すために犬をつけていた、これは

(まちがいないだろう。いや、いや、いままでにかれはにげているだろう。しかし、いえを)

間違いないだろう。いや、いや、今までに彼は逃げているだろう。しかし、家を

(そうさくしてはっきりさせよう げんかんのとびらがあいていたので、われわれはとびこんで)

捜索してはっきりさせよう」玄関の扉が開いていたので、我々は飛び込んで

(へやからへやへといそいだ。ろうかであしもとのおぼつかないとしとったおとこのしようにんと)

部屋から部屋へと急いだ。廊下で足元のおぼつかない年とった男の使用人と

(でくわした。しようにんはおどろいていた。しょくどういがいにあかりはなかった。しかし)

出くわした。使用人は驚いていた。食堂以外に灯りはなかった。しかし

(ほーむずはらんぷをとりあげすみからすみまでそうさくした。われわれがおっているおとこの)

ホームズはランプを取り上げ隅から隅まで捜索した。我々が追っている男の

(こんせきはまったくみつからなかった。しかしじょうかいの、ひとつのしんしつのとびらにかぎが)

痕跡は全く見つからなかった。しかし上階の、一つの寝室の扉に鍵が

(かかっていた。なかにだれかいるぞ れすとれーどがさけんだ。うごくおとが)

かかっていた。「中に誰かいるぞ」レストレードが叫んだ。「動く音が

(きこえる。このとびらをあけろ!よわよわしいうめきとかさかさというおとがなかから)

聞こえる。この扉を開けろ!」弱々しいうめきとカサカサという音が中から

(きこえてきた。ほーむずがとびらのじょうのところをあしのうらでけると、さっとひらいた。)

聞こえてきた。ホームズが扉の錠のところを足の裏で蹴ると、さっと開いた。

(けんじゅうをてに、われわれさんにんはへやのなかにとびこんだ。しかしわれわれがめにするとおもった)

拳銃を手に、我々三人は部屋の中に飛び込んだ。しかし我々が目にすると思った

(じぼうじきのだいたんなあくとうのこんせきは、なかにはなかった。そのかわりに、ひじょうにきみょうで)

自暴自棄の大胆な悪党の痕跡は、中にはなかった。その代わりに、非常に奇妙で

(よきしないぶったいがあらわれたので、われわれはいっしゅんたちどまっておどろいてみつめた。)

予期しない物体が現れたので、我々は一瞬立ち止まって驚いて見つめた。

(そのへやはちいさなはくぶつかんになっていた。そしてかべのじょうぶにはがらすをはめた)

その部屋は小さな博物館になっていた。そして壁の上部にはガラスをはめた

(ちょうやがのしゅうしゅうぶつがいっぱいはいった、むすうのけーすがならべられていた。ふくざつで)

蝶や蛾の収集物がいっぱい入った、無数のケースが並べられていた。複雑で

(きけんなおとこのきばらしをこうせいしていた。このへやのまんなかに、やねをよこぎるふるいむしに)

危険な男の気晴らしを構成していた。この部屋の真中に、屋根を横切る古い虫に

(くわれたしできのはしらがいっぽんあった。このはしらにひとがくくりつけられていた。それを)

食われた垂木の柱が一本あった。この柱に人が括りつけられていた。それを

(しばるためにしーつがまきつけられこえがでないようにされていたので、いっしゅんそれが)

縛るためにシーツが巻きつけられ声が出ないようにされていたので、一瞬それが

(おとこかおんなかわからなかった。たおるがくびもとにまきつけられ、はしらのうしろでくくられて)

男か女か分からなかった。タオルが首元に巻きつけられ、柱の後ろで括られて

(いた。もういっぽんはかおのしたをおおっていた。そのうえから、くろいふたつのめが、)

いた。もう一本は顔の下を覆っていた。その上から、黒い二つの目が、

(あふれんばかりのくのうとはずかしさと、おそろしくさぐるように、われわれを)

溢れんばかりの苦悩と恥ずかしさと、恐ろしくさぐるように、我々を

(みかえしていた。われわれはさるぐつわをいそいではずして、しばったぬのをといた。)

見返していた。我々はさるぐつわを急いで外して、縛った布を解いた。

(するとみせすすていぷるとんがわれわれのめのまえのゆかにくずれおちた。うつくしいかおが)

するとミセス・ステイプルトンが我々の目の前の床に崩れ落ちた。美しい顔が

(うなだれたとき、わたしはくびにはっきりとしたあかいむちのあとをみた。けだものめ!)

うなだれたとき、私は首にはっきりとした赤い鞭の跡を見た。「けだものめ!」

(ほーむずはさけんだ。さあ、れすとれーど、ぶらんでーのびんを!このいすに)

ホームズは叫んだ。「さあ、レストレード、ブランデーの瓶を!この椅子に

(すわらせよう!かのじょはぎゃくたいときょくどのひろうできをうしなっている かのじょはふたたびめを)

座らせよう!彼女は虐待と極度の疲労で気を失っている」彼女は再び目を

(あけた。かれはだいじょうぶですか?かのじょはたずねた。かれはにげましたか?)

開けた。「彼は大丈夫ですか?」彼女は尋ねた。「彼は逃げましたか?」

(われわれからはにげられませんよ いえ、いえ、おっとのことではありません。)

「我々からは逃げられませんよ」「いえ、いえ、夫のことではありません。

(さーへんりーは?かれはぶじですか?ええ ではいぬは?)

「サー・ヘンリーは?彼は無事ですか?」「ええ」「では犬は?」

(しにました かのじょはあんしんしてながいためいきをついた。よかった!よかった!)

「死にました」彼女は安心して長い溜息をついた。「よかった!よかった!

(ああ、あのあくとう!かれがわたしをどうしていたかみてください!かのじょはそでを)

ああ、あの悪党!彼が私をどうしていたか見てください!」彼女は袖を

(まくりあげた。そしてわれわれはいちめんあざだらけなのをみてぞっとした。しかし)

捲り上げた。そして我々は一面アザだらけなのを見てぞっとした。「しかし

(これはなんでもありません、 なんでも。せめられたのはわたしのこころとたましいです。)

これはなんでもありません、―なんでも。責められたのは私の心と魂です。

(わたしはなんでもたえられました。ぎゃくたい、こどく、なまえをいつわったせいかつ、すべて、かれのあいが)

私は何でも耐えられました。虐待、孤独、名前を偽った生活、すべて、彼の愛が

(あるというのぞみにしがみついていられるあいだは。しかしいま、わたしはじぶんがだまされ)

あるという望みにしがみついていられる間は。しかし今、私は自分が騙され

(どうぐとなっていたとしっています かのじょははなしながらはげしいかんじょうにどっと)

道具となっていたと知っています」彼女は話しながら激しい感情にどっと

(なきだした。あなたはもうかれにちゅうせいをつくしたりはしないでしょう)

泣き出した。「あなたはもう彼に忠誠を尽くしたりはしないでしょう」

(ほーむずはいった。ではどこでかれをみつけられるかおしえてください。もし)

ホームズは言った。「ではどこで彼を見つけられるか教えてください。もし

(あなたがかれのあくじをてだすけしたのなら、そのつぐないにわれわれをてだすけしてください)

あなたが彼の悪事を手助けしたのなら、その償いに我々を手助けしてください」

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