吸血鬼24
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | kuma | 5099 | B+ | 5.5 | 92.8% | 938.3 | 5184 | 399 | 70 | 2024/11/15 |
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問題文
(あけちとみたには、すでにみるだけのものはみてしまったので、さいしょにやってきた)
明智と三谷は、すでに見るだけのものは見てしまったので、最初にやって来た
(けいさつのひとびとに、ことのてんまつをかたり、じゅうしょせいめいをつげておいて、ただちに、きがかりな)
警察の人々に、事の顛末を語り、住所姓名を告げて置いて、直に、気がかりな
(はたやなぎていへと、じどうしゃをとばした。ぼくはこのよが、なんだか、いままでとはまるで)
畑柳邸へと、自動車を飛ばした。「僕はこの世が、何だか、今までとはまるで
(ちがった、おそろしいものにみえてきました。このすうじつらいのできごとは、みんな、)
違った、恐ろしいものに見えて来ました。この数日来の出来事は、みんな、
(ながいあくむとしかおもえないのです みたにせいねんは、はしるじどうしゃのなかで、おそれとおどろきに)
長い悪夢としか思えないのです」三谷青年は、走る自動車の中で、恐れと驚きに
(ゆがんだひょうじょうをかくそうともせず、あけちのすくいをもとめるようにいうのであった。)
歪んだ表情を隠そうともせず、明智の救いを求めるようにいうのであった。
(にんげんせかいのあんこくめんには、うそのようなあくぎょうがひそんでいるのです、どんなあくましじんの)
「人間世界の暗黒面には、嘘の様な悪業が潜んでいるのです、どんな悪魔詩人の
(くうそうだって、げんじつかいのきょうふには、およびもつかぬのです。ぼくはこれまで、たびたび)
空想だって、現実界の恐怖には、及びもつかぬのです。僕はこれまで、度々
(そういうものをみてきました。ちょうど、かいぼうがくしゃが、しろうとのみしらぬにんげんのたいないを)
そういうものを見て来ました。丁度、解剖学者が、素人の見知らぬ人間の体内を
(たえずみせつけられているように、ぼくはこのせかいのはらわたの、きたなさ、ぶきみさを)
絶えず見せつけられている様に、僕はこの世界のはらわたの、汚さ、不気味さを
(ぞんぶんみせつけられてきました。しかしそのぼくでも、きょうのような、おそろしいけいけんは)
存分見せつけられて来ました。しかしその僕でも、今日の様な、恐ろしい経験は
(はじめてです。あなたがあくむのようにおもわれるのは、むりもありませんよ あけちが)
始めてです。あなたが悪夢の様に思われるのは、無理もありませんよ」明智が
(しずんだちょうしでいった。おかだというおとこは、どういうかんがえで、あんなにたくさんのおんなを)
沈んだ調子でいった。「岡田という男は、どういう考えで、あんなに沢山の女を
(ころして、せっこうぞうにかくしておいたのでしょう。そうぞうもできないこころもちです。)
殺して、石膏像に隠して置いたのでしょう。想像も出来ない心持です。
(きちがいでしょうか。それとも、はなしにきくさつじんいんらくしゃというやつでしょうか)
気違いでしょうか。それとも、話に聞く殺人イン楽者という奴でしょうか」
(おそらく、そうでしょう。しかし、ぼくがこのじけんをおそろしくおもうのはもっとべつの)
「恐らく、そうでしょう。しかし、僕がこの事件を恐ろしく思うのはもっと別の
(いみもあるのです。あらわれたじけんのうらに、なんだかえたいのしれぬ、かげのようなものが)
意味もあるのです。現れた事件の裏に、何だかえたいの知れぬ、影の様なものが
(ちらちらみえるようなきがします。ぼくはそれがつかめないのです。くちびるのないおとこや、)
チラチラ見える様な気がします。僕はそれが掴めないのです。唇のない男や、
(しがいのせっこうぞうなんかよりも、ぼくは、そのめにみえぬへんてこなものが、)
死骸の石膏像なんかよりも、僕は、その目に見えぬ変てこなものが、
(しょうじきにいうと、こわくてしかたがないのです そうしてふたりはだまりこんでしまった。)
正直にいうと、怖くて仕方がないのです」そうして二人は黙り込んでしまった。
(おおくをかたるには、あまりにじけんのいんしょうがなまなましかったのだ。まもなくくるまは)
多くを語るには、あまりに事件の印象が生々しかったのだ。間もなく車は
(はたやなぎていのもんぜんについた。しずこは、しげるしょうねんをみぢかにひきよせ、くっきょうのしょせいたちに)
畑柳邸の門前に着いた。倭文子は、茂少年を身近に引寄せ、屈強の書生達に
(まもられて、おくまったひとまに、はんびょうにんのていで、ひきこもっていたが、ちからにおもう)
守られて、奥まった一間に、半病人の体で、引籠っていたが、力に思う
(みたにせいねんが、ゆうめいなあけちこごろうとどうどうしたときくと、すこしげんきづいて、かれらに)
三谷青年が、有名な明智小五郎と同道したと聞くと、少し元気づいて、彼等に
(あうために、きゃくまへでてきた。さいとうろうじんもはじめ、めしつかいたちも、みたにのひきあわせで、)
会う為に、客間へ出て来た。斎藤老人も初め、召使達も、三谷の引合わせで、
(たんていのまえにでてあいさつした。ちょうどじかんだったので、ばんさんがよういされた。あけちは、)
探偵の前に出て挨拶した。丁度時間だったので、晩餐が用意された。明智は、
(ていないをしらべるために、そうとうのじかんがいるとおもったので、えんりょなくごちそうに)
邸内を調べる為に、相当の時間が要ると思ったので、遠慮なく御馳走に
(なることにして、かいかあぱーとのるすたくへ、そのむねでんわをかけた。でんわぐちへは)
なることにして、開花アパートの留守宅へ、その旨電話をかけた。電話口へは
(ふみよさんがでたが、そのときは、るすたくに、まだなんのいじょうもおこって)
文代さんが出たが、その時は、留守宅に、まだ何の異状も起って
(いなかったのだ。それから、ばんさんのせきにつくまえに、いちどれいのにかいのしょさいを)
いなかったのだ。それから、晩餐の席につく前に、一度例の二階の書斎を
(みておくことにして、みたにとさいとうろうじんのあんないで、そこへあがっていった。)
見て置くことにして、三谷と斎藤老人の案内で、そこへ上がって行った。
(しつないのようすは、せんじつおがわとなのるじんぶつがころされ、そのしたいがふんしつしたとうじつと、)
室内の様子は、先日小川と名乗る人物が殺され、その死体が紛失した当日と、
(すこしもかわったところはなかった。ひとめみて、ふつうのしょさいとちがっているてんは、いっぽうの)
少しも変った所はなかった。一目見て、普通の書斎と違っている点は、一方の
(かべぎわに、すうたいのふるめかしいぶつぞうがならんでいることだ。てんじょうのたかいりっぱなようしつ、)
壁際に、数体の古めかしい仏像が並んでいることだ。天井の高い立派な洋室、
(ちょうこくのあるだいつくえ、かべにかけならべた、よしありげないんきなあぶらえ、ぜんたいのかんじが、)
彫刻のある大机、壁に掛け並べた、由ありげな陰気な油絵、全体の感じが、
(なんとなくこふうでしんぴてきだ。あけちはさいとうろうじんにおしえられて、おがわがたおれていた)
何となく古風で神秘的だ。明智は斎藤老人に教えられて、小川が倒れていた
(かしょにちかづき、じゅうたんのちのあとをしらべたが、ふとかおをあげて、すぐめのまえの、)
箇所に近づき、絨氈の血のあとを検べたが、ふと顔を上げて、すぐ目の前の、
(いようなぶつぞうをながめると、おやっというようすで、ながいあいだそれをみつめていた。)
異様な仏像を眺めると、オヤッという様子で、長い間それを見つめていた。
(あしをひろげ、てをふりあげて、たちはだかっている、こどもほどもおおきさのある、)
足を拡げ、手をふり上げて、立ちはだかっている、子供程も大きさのある、
(きみょうなぶつぞう、そのとなりにならぶ、くろずんだきんぞくせいの、だいぶつをちいさくしたような、)
奇妙な仏像、その隣りに並ぶ、黒ずんだ金属製の、大仏を小さくしたような、
(さんしゃくほどのざぞう。あけちがみつめていたのは、そのざぞうのほうの、いようにむひょうじょうな、)
三尺程の座像。明智が見つめていたのは、その座像の方の、異様に無表情な、
(つるつるとしたかおであった。あなたがた、きづきませんでしたか やっとして、)
ツルツルとした顔であった。「あなた方、気づきませんでしたか」やっとして、
(あけちは、みたにせいねんと、さいとうろうじんをふりかえっていった。そのくちょうには、なぜか、)
明智は、三谷青年と、斎藤老人を振反って云った。その口調には、なぜか、
(きくものを、ぎょっとさせるような、きづかいめいたかんじがあった。もしや、)
聞く者を、ギョッとさせる様な、気遣いめいた感じがあった。「若しや、
(そのぶつぞうのめがどうかしたのではございませんか さいとうしは、みょうなかおをして)
その仏像の目がどうかしたのではございませんか」斎藤氏は、妙な顔をして
(たずねた。そうです。ぼくには、このかなぶつのめがまばたくようにみえたのですが。)
尋ねた。「そうです。僕には、この金仏の目が瞬く様にみえたのですが。
(あなたがたもみましたか いいえ・・・・・・ですが、そのほとけさまは、)
あなた方も見ましたか」「イイエ・・・・・・ですが、その仏様は、
(ひょっとしたら、まばたきをするかもしれませんので さいとうしはきまじめなようすで、)
ひょっとしたら、瞬きをするかも知れませんので」斎藤氏は生真面目な様子で、
(じょうだんみたいなことをいいだした。どうしてですか。ほんとうに、そんな)
冗談みたいなことをいい出した。「どうしてですか。本当に、そんな
(ばかばかしいことがあるのですか みたにが、おどろいてくちをはさんだ。いぜんから、)
馬鹿馬鹿しいことがあるのですか」三谷が、驚いて口をはさんだ。「以前から、
(そんないいつたえみたいな、めいしんみたいなものがあるのです。なくなったしゅじんは、)
そんないい伝えみたいな、迷信みたいなものがあるのです。なくなった主人は、
(よるおそくこのへやにいると、よく、まばたきなさるのをみることがあるともうして)
夜おそくこの部屋にいると、よく、瞬きなさるのを見ることがあると申して
(おりました。わたくしなどはとしよりのくせに、どうもそんなめいしんじみたことは)
居りました。私などは年寄りの癖に、どうもそんな迷信じみたことは
(しんじられんのですが、しゅじんはひじょうなしんようかでして、あらたかなほとけさまだと、)
信じられんのですが、主人は非常な信用家でして、あらたかな仏様だと、
(ありがたがっておりました みょうなこともあるものですね。で、それをごしゅじんのほかに)
有難がって居りました」「妙なこともあるものですね。で、それをご主人の外に
(みたものはなかったのですか あけちがたずねる。めしつかいのものなども、たまさか、)
見たものはなかったのですか」明智が尋ねる。「召使の者なども、たまさか、
(そんなことをうったえましたが、つまらぬことをいいふらしてはならぬとくちどめを)
そんなことを訴えましたが、つまらぬことをいいふらしてはならぬと口止めを
(しております。ばけものやしきのようなうわさがたつのはこのましくはありませんからね)
して居ります。化物屋敷の様な噂が立つのは好ましくはありませんからね」
(すると、ぼくのきのせいでもなかったのですね あけちは、このいようなめいしんに、)
「すると、僕の気のせいでもなかったのですね」明智は、この異様な迷信に、
(ひどくきょうみをひかれたらしく、ちかぢかぶつぞうのそばによって、ねっしんにそのめをしらべて)
ひどく興味をひかれたらしく、近々仏像の側によって、熱心にその目を検べて
(みたが、べつにはっけんするところもなかった。どうかんがえても、いもののぶつぞうがまばたきをする)
見たが、別に発見する所もなかった。どう考えても、鋳物の仏像が瞬きをする
(りくつはないのだ。ところが、あけちがそうしてぶつぞうのそばにみをかがめていたとき、)
理屈はないのだ。ところが、明智がそうして仏像の側に身をかがめていた時、
(とつぜんへやがまっくらになった。でんとうがきえたのだ。とどうじに、あっ という)
突然部屋が真暗になった。電燈が消えたのだ。と同時に、「アッ」という
(おそろしいさけびごえ。ひとのたおれるものおと。あけちさん、どうかなすったのですか)
恐ろしい叫声。人の倒れる物音。「明智さん、どうかなすったのですか」
(みたにのこえが、やみのなかでかんだかくひびく。はやくあかりを。だれかまっちをもって)
三谷の声が、暗の中で甲高く響く。「早くあかりを。誰かマッチを持って
(いませんか だが、まっちのひつようはなかった。ちょうどそのとき、おばけみたいな)
いませんか」だが、マッチの必要はなかった。丁度その時、お化けみたいな
(でんとうが、ぱっとへやをあかるくした。みると、ぶつぞうのまえに、あけちがたおれている。)
電燈が、パッと部屋を明るくした。見ると、仏像の前に、明智が倒れている。
(ちょうど、せんやおがわがころされていたばしょだ。さいとうろうじんは、そのれんそうから、もしや)
丁度、先夜小川が殺されていた場所だ。斎藤老人は、その連想から、若しや
(あけちもおなじめにあったのではないかと、ぎょっとした。みたにがかけよって、)
明智も同じ目に会ったのではないかと、ギョッとした。三谷が駈寄って、
(しろうとたんていをだきおこした。)
素人探偵を抱き起した。