吸血鬼25
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | kuma | 5464 | B++ | 5.9 | 92.9% | 958.9 | 5670 | 430 | 80 | 2024/11/15 |
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問題文
(おけがはありませんか いや、だいじょうぶです あけちはみたにのてを)
「お怪我はありませんか」「イヤ、大丈夫です」明智は三谷の手を
(はらいのけるようにして、げんきにたちあがったが、かおいろはまっさおだ。)
払いのける様にして、元気に立上がったが、顔色は真青だ。
(どうなすったのです。なにごとがおこったのです さいとうろうじんが、おどおどして)
「どうなすったのです。何事が起ったのです」斎藤老人が、オドオドして
(たずねる。いや、なんでもありません。ごしんぱいなさることはありません。さあ、)
尋ねる。「イヤ、何でもありません。御心配なさることはありません。サア、
(あちらへいきましょう あけちは、なんのせつめいもせず、さきにたってへやをでた。)
あちらへ行きましょう」明智は、何の説明もせず、先に立って部屋を出た。
(ほかのふたりも、こんなぶきみなばしょにいのこるきはなかったので、あけちのあとに)
ほかの二人も、こんな不気味な場所に居残る気はなかったので、明智のあとに
(したがった。さいとうさん、どあにかぎをかけておいてください ろうかにでると、あけちが)
従った。「斎藤さん、ドアに鍵をかけて置いて下さい」廊下に出ると、明智が
(こえをひくくしていった。さいとうろうじんは、あけちのいうがままに、しょさいのどあに、そとから)
声を低くしていった。斎藤老人は、明智のいうがままに、書斎のドアに、外から
(かぎをかけた。つまり、そのへやのなかへ、めにみえぬなにものかを、しめこんだ)
鍵をかけた。つまり、その部屋の中へ、目に見えぬ何物かを、閉め込んだ
(かたちである。そのかぎをしばらくぼくにかしておいてくださいませんか あけちがいうので、)
形である。「その鍵を暫く僕に貸て置いて下さいませんか」明智がいうので、
(ろうじんはかぎをわたしながら、けげんらしくたずねた。いったい、どうなすったのですか。)
老人は鍵を渡しながら、けげんらしく尋ねた。「一体、どうなすったのですか。
(わたくしどもには、ちっともわけがわかりませんが みたにさん、あなたも、なにもみなかった)
私共には、ちっとも訳が分りませんが」「三谷さん、あなたも、何も見なかった
(ですか あけちはろうじんにはこたえず、みたににたずねた。でんとうがきえたのですから、)
ですか」明智は老人には答えず、三谷に尋ねた。「電燈が消えたのですから、
(みえるはずがありません。なにごとがおこったのです みたにもふしんがおだ。ぼくは、こんどの)
見える筈がありません。何事が起ったのです」三谷も不審顔だ。「僕は、今度の
(じけんのなぞをとくかぎが、このへやのなかにあるようにおもうのです あけちはいみありげな)
事件の謎を解く鍵が、この部屋の中にある様に思うのです」明智は意味ありげな
(ことばをもらしたのみで、おおくをかたらなかった。やがて、さんにんは、かいかに)
言葉を漏らしたのみで、多くを語らなかった。やがて、三人は、階下に
(よういされたしょくたくについた。しゅじんやくはしずこだ。しげるしょうねんもかのじょのそばにこしかけた。)
用意された食卓についた。主人役は倭文子だ。茂少年も彼女のそばに腰かけた。
(しょくじちゅうべつだんおはなしもない。だれも、いやなはんざいじけんについてかたることを、)
食事中別段お話もない。誰も、いやな犯罪事件について語ることを、
(さけるようにしていたからだ。ただひとつ、かきもらしてならぬのは、あけちが)
避けるようにしていたからだ。ただ一つ、書き漏らしてならぬのは、明智が
(さっきていでんがあったか とたずねたのにたいして、しずこもめしつかいたちも、いちども)
「先刻停電があったか」とたずねたのに対して、倭文子も召使達も、「一度も
(でんとうはきえなかった とこたえたことだ。すなわち、さっきにかいのしょさいが)
電燈は消えなかった」と答えたことだ。即ち、さっき二階の書斎が
(くらくなったのは、ていでんではなくて、なにものかがあのへやのすいっちを)
暗くなったのは、停電ではなくて、何者かがあの部屋のスイッチを
(ひねったものにそういない。しょくじがおわると、いちどうきゃくまにかえって、それぞれいごこちの)
ひねったものに相違ない。食事が終ると、一同客間に帰って、夫々居心地の
(よさそうないすに、みをやすめて、ぽつりぽつり、ひきたたぬかいわをとりかわして)
よさそうな椅子に、身を休めて、ポツリポツリ、引立たぬ会話を取交わして
(いたが、そこへしょせいがはいってきて、あけちさんにでんわだとつげた。みると、)
いたが、そこへ書生が入って来て、明智さんに電話だと告げた。見ると、
(いつのまにでていったのか、いちざからあけちのすがたがきえていた。せんめんじょへでも)
いつの間に出て行ったのか、一座から明智の姿が消えていた。洗面所へでも
(いったのかと、ややしばらくまってみたが、いっこうかえってくるようすがない。)
行ったのかと、ややしばらく待って見たが、一向帰って来る様子がない。
(あのかたは、にかいのしょさいのかぎをもっておいでだから、ひょっとしたら、ひとりで)
「あの方は、二階の書斎の鍵を持ってお出でだから、ひょっとしたら、一人で
(あすこへあがっていかれたのではありますまいか さいとうろうじんがきづいていった。)
あすこへ上って行かれたのではありますまいか」斎藤老人が気づいていった。
(そこでさっそく、しょせいをみにやったが、あけちはそこにもいないことがわかった。)
そこで早速、書生を見にやったが、明智はそこにもいないことが分った。
(へんだね。ともかく、そのでんわをここへつないでみたまえ みたにのさしずで、きゃくまの)
「変だね。兎も角、その電話をここへつないで見給え」三谷の指図で、客間の
(たくじょうでんわがせつぞくされた。もしもし、あけちさんは、いまちょっと、どっかへ)
卓上電話が接続された。「モシモシ、明智さんは、今ちょっと、どっかへ
(いかれたのですが、なにかきゅうなごようですか みたにがよびかけるとこどもこどもした)
行かれたのですが、何か急なご用ですか」三谷が呼びかけると子供子供した
(かんだかいこえが、それにこたえた。ぼく、あけちのじむしょのものですが、はやくせんせいを)
甲高い声が、それに答えた。「僕、明智の事務所のものですが、早く先生を
(よんでください。たいへんなことがおこったのです ああ、きみはあのこどもさんですか)
呼んで下さい。大変なことが起ったのです」「アア、君はあの子供さんですか」
(みたにはひるま、かいかあぱーとでみた、あけちのかわいらしいしょうねんじょしゅをおもいだした。)
三谷は昼間、開花アパートで見た、明智の可愛らしい少年助手を思い出した。
(ええ、ぼく、こばやしです。あなたは、みたにさんですか しょうねんはみたにのなを、)
「エエ、僕、小林です。あなたは、三谷さんですか」少年は三谷の名を、
(よくおぼえていた。そうです。あけちせんせいはね、どこへいかれたのか、さがしてみても)
よく覚ていた。「そうです。明智先生はね、どこへ行かれたのか、探して見ても
(すがたがみえぬのです。だが、たいへんって、なにごとがおこったの?ぼく、いまじどうでんわから)
姿が見えぬのです。だが、大変って、何事が起ったの?」「僕、今自働電話から
(かけているんです。ふみよさんがだれかにゆうかいされたんです。きっとひるまきょうはくじょうを)
かけているんです。文代さんが誰かに誘拐されたんです。きっと昼間脅迫状を
(よこしたやつだとおもうんです え、ふみよさんていうと?あなたもおあいに)
よこした奴だと思うんです」「エ、文代さんていうと?」「あなたも御逢いに
(なった、せんせいのじょしゅのかたです ああ、ぞくはとんでもないほうがくから、ぎゃくしゅうして)
なった、先生の助手の方です」アア、賊は飛んでもない方角から、逆襲して
(きた。ひれつにもこいびとをうばって、たんていをくるしめ、しぜん、このじけんからてを)
来た。卑劣にも恋人を奪って、探偵を苦しめ、自然、この事件から手を
(ひかせようというけいかくなのだ。で、きみはいま、どこにいるんです。ふみよさんは)
引かせようという計画なのだ。「で、君は今、どこにいるんです。文代さんは
(どんなふうにしてゆうかいされたのです みたには、いきをはずませて、でんわぐちに)
どんな風にして誘拐されたのです」三谷は、息をはずませて、電話口に
(よびかけた。ぼくはそちらへうかがいます。でんわではくわしいおはなしもできませんし、)
呼びかけた。「僕はそちらへ伺います。電話ではくわしいお話も出来ませんし、
(それにせんせいのすがたがみえないというのも、しんぱいですから こばやししょうねんたんていは、)
それに先生の姿が見えないというのも、心配ですから」小林少年探偵は、
(そういって、でんわをきってしまった。みたにはしずこや、さいとうろうじんにことのしさいを)
そういって、電話を切ってしまった。三谷は倭文子や、斎藤老人に事の仔細を
(つげ、ともかく、あけちをさがしてみることにした。めしつかいたちが、てわけをして、)
告げ、兎も角、明智を探して見ることにした。召使達が、手分けをして、
(おくないはもうすにおよばず、にわまでもしらべたけれど、ふしぎなことに、あけちのすがたは)
屋内は申すに及ばず、庭までも検べたけれど、不思議なことに、明智の姿は
(どこにもみえぬ。まさかだまってかえってしまうはずはない。またしても、)
どこにも見えぬ。まさか黙って帰ってしまう筈はない。またしても、
(にんげんしょうしつじけんだ。せんじつのおがわというおとこのしがいといい、いままたたんていさえも、)
人間消失事件だ。先日の小川という男の死骸といい、今また探偵さえも、
(このていないできえうせてしまった。はたやなぎていは、だんだんぶきみなばけものやしきにかわって)
この邸内で消え失せてしまった。畑柳邸は、段々不気味な化物屋敷に変って
(いくようなきがするのだ。さいとうろうじんは、ふと、にかいのしょさいのかぎをあけちに)
行く様な気がするのだ。斎藤老人は、ふと、二階の書斎の鍵を明智に
(わたしたことをおもいだした。さっきしょせいはだれもいないといったけれど、あけちは)
渡したことを思い出した。さっき書生は誰もいないといったけれど、明智は
(ひょっとしたら、どあにかぎをかけて、へやのなかをしらべているのかもしれない。)
ひょっとしたら、ドアに鍵をかけて、部屋の中を調べているのかも知れない。
(ろうじんはそれをたしかめてみるためにひとりでうすぐらいにかいへあがり、もんだいのへやへと)
老人はそれを確めて見る為に一人で薄暗い二階へ上り、問題の部屋へと
(ちかづいていった。みるとしょさいのどあがなかばひらいてなかのあかりがもれている。)
近づいて行った。見ると書斎のドアが半開いて中の明りが漏れている。
(おや、へんだぞ。このどあのかぎはたしかにあけちさんにわたした。ほかにあいかぎはないはずだ。)
「オヤ、変だぞ。このドアの鍵は確に明智さんに渡した。外に合鍵はない筈だ。
(してみると、あけちさんはやっぱり、このへやにいるかもしれぬぞ そうおもって、)
して見ると、明智さんはやっぱり、この部屋にいるかも知れぬぞ」そう思って、
(へやへはいってみたが、なかはやっぱりからっぽだ。がらんとしたおどうみたいな)
部屋へ入って見たが、中はやっぱり空っぽだ。ガランとしたお堂みたいな
(へやのなかには、だまりこくったぶつぞうどもが、ぶきみにならんでいるばかりである。)
部屋の中には、黙りこくった仏像共が、不気味に並んでいるばかりである。
(あけちは、こんどのはんざいのすべてのなぞが、このへやにひめられているようなことを)
明智は、今度の犯罪の凡ての謎が、この部屋に秘められている様なことを
(いった。しかも、どあがひらいていたのをみれば、かれはすくなくともいちどは、)
いった。しかも、ドアが開いていたのを見れば、彼は少くとも一度は、
(このへやにはいったものにそういない。で、それからどうしたのか。かれもまた、)
この部屋に入ったものに相違ない。で、それからどうしたのか。彼もまた、
(おがわのしがいとおなじけいろをたどって、どこかへきえてしまったのではあるまいか。)
小川の死骸と同じ経路をたどって、どこかへ消えてしまったのではあるまいか。
(ろうじんはたんねんに、すみずみをさがしまわったうえ、どこにもあけちはもちろん、そのしがいさえも)
老人は丹念に、隅々を探し廻った上、どこにも明智は勿論、その死骸さえも
(かくされていないことをたしかめると、こくびをかしげながら、へやをでるために)
隠されていないことを確めると、小首をかしげながら、部屋を出る為に
(どあのところまであるいていった。すると、ちょうどそのとき、またしても、ぱっとでんとうが)
ドアの所まで歩いて行った。すると、丁度その時、またしても、パッと電燈が
(きえた。ろうかからあわいひかりがわずかにどあのかたわらをてらしているばかり、)
消えた。廊下から淡い光りが僅にドアの傍らを照らしているばかり、
(ろうじんのはいごは、おそいかかるようなくらやみである。でんとうのすいっちは、どあの)
老人の背後は、襲いかかる様な暗闇である。電燈のスイッチは、ドアの
(すぐよこて、ろうじんのしやのなかにあったのだから、だれもそれにてを)
すぐ横手、老人の視野の中にあったのだから、誰もそれに手を
(ふれなかったことは、たしかだ。つまりでんとうは、おばけのように、ひとりでに)
触れなかったことは、確だ。つまり電燈は、お化けの様に、ひとりでに
(きえたのだ。さいとうしは、おもわずふりかえって、くらやみのなかの、みえぬてきにたいして、)
消えたのだ。斎藤氏は、思わず振反って、暗闇の中の、見えぬ敵に対して、
(みがまえをした。だれだ、そこにいるのは、だれだ だれもいるはずはなかったけれど、)
身構えをした。「誰だ、そこにいるのは、誰だ」誰も居る筈はなかったけれど、
(うすきみわるさに、ろうじんはどなってみないではいられなかった。)
薄気味悪さに、老人は呶鳴って見ないではいられなかった。
(ところが、そのこえにおうじて、まるでろうじんがあくまをよびだしでもしたように、)
ところが、その声に応じて、まるで老人が悪魔を呼び出しでもした様に、
(ひろいくらやみのなかに、ひとのきはいがした。すかしてみると、むこうのまどのまえを、)
広い暗闇の中に、人の気配がした。すかして見ると、向うの窓の前を、
(けむりみたいなひとかげが、すーっとよこぎったようにかんじられた。だれだ、だれだ ろうじんは)
煙みたいな人影が、スーッと横切った様に感じられた。「誰だ、誰だ」老人は
(つづけざまに、ひめいににたさけびごえをたてた。)
続けざまに、悲鳴に似た叫び声を立てた。