怪人二十面相59 江戸川乱歩

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少年探偵団シリーズ1作目

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問題文

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(そしてすぐにいえをしらべてくれといって、あいつをじどうしゃにのせてつれだすんだ)

そしてすぐに家を調べてくれと言って、あいつを自動車に乗せて連れ出すんだ

(そのおんなといっしょにだよ。むろんじどうしゃのうんてんしゅもなかまのひとりなんだ。)

その女と一緒にだよ。無論自動車の運転手も仲間の一人なんだ。

(むずかしいじけんのだいすきなあいつのこった。それに、あいてがかよわいおんななんだから、)

難しい事件の大好きなあいつのこった。それに、相手がか弱い女なんだから、

(ゆだんをして、このけいかくには、ひっかかるにきまっているよ。 で、おれたちの)

油断をして、この計画には、引っ掛かるに決まっているよ。  で、俺達の

(しごとはというと、ついこのさきのあおやまぼちへさきまわりをして、あけちをのせたじどうしゃが)

仕事はというと、ついこの先の青山墓地へ先回りをして、明智を乗せた自動車が

(やってくるのをまっているんだよ。あすこをとおらなければならないような)

やって来るのを待っているんだよ。あすこを通らなければならないような

(みちじゅんにしてあるんだ。 おれたちのまっているまえへくると、じどうしゃがぴったりとまる)

道順にしてあるんだ。 俺達の待っている前へ来ると、自動車がピッタリ停まる

(するとおれときみとが、りょうがわからどあをあけて、くるまのなかへとびこみ、あけちのやつを)

すると俺と君とが、両側からドアを開けて、車の中へ飛び込み、明智の奴を

(みうごきのできないようにして、ますいざいをかがせるというだんどりなんだ。ますいざいも)

身動きの出来ないようにして、麻酔剤を嗅がせるという段取りなんだ。麻酔剤も

(ちゃんとここによういしている。 それから、ぴすとるが2ちょうあるんだ。)

ちゃんとここに用意している。  それから、ピストルが二丁あるんだ。

(もうひとりなかまがくることになっているもんだから。 しかし、かまやしないよ。)

もう一人仲間が来ることになっているもんだから。  しかし、構やしないよ。

(そいつはあけちにうらみがあるわけでもなんでもないんだから、きみにてがらをさせてやるよ)

そいつは明智に恨みがある訳でも何でもないんだから、君に手柄をさせてやるよ

(さあ、これがぴすとるだ」 こじきにばけたおとこは、そういって、)

さあ、これがピストルだ」  乞食に化けた男は、そう言って、

(やぶれたきもののふところから、1ちょうのぴすとるをとりだし、あかいにわたしました。)

破れた着物の懐から、一丁のピストルを取り出し、赤井に渡しました。

(「こんなもの、おらあうったことがねえよ。どうすりゃいいんだい」 「なあに、)

「こんな物、おらあ撃ったことがねえよ。どうすりゃいいんだい」 「なあに、

(だんがんははいってやしない。ひきがねにゆびをあててうつようなかっこうをすりゃいいんだ。)

弾丸は入ってやしない。引き金に指を当てて撃つような格好をすりゃいいんだ。

(にじゅうめんそうのおやぶんはね、ひとごろしがだいきらいなんだ。このぴすとるはただおどかしだよ」)

二十面相の親分はね、人殺しが大嫌いなんだ。このピストルはただ脅かしだよ」

(だんがんがはいっていないときいて、あかいはふまんらしいかおをしましたが、ともかくも)

弾丸が入っていないと聞いて、赤井は不満らしい顔をしましたが、ともかくも

(ぽけっとにおさめ、 「じゃ、すぐにあおやまぼちへでかけようじゃねえか」)

ポケットに収め、 「じゃ、すぐに青山墓地へ出掛けようじゃねえか」

(と、うながすのでした。 「いや、まだすこしはやすぎる。7じはんというやくそくだよ。)

と、促すのでした。 「いや、まだ少し早過ぎる。七時半という約束だよ。

など

(それよりすこしおくれるかもしれない。まだ2じかんもある。どっかでめしをくって、)

それより少し遅れるかも知れない。まだ二時間もある。どっかで飯を食って、

(ゆっくりでかけよう」 こじきはいいながら、こわきにかかえていた、きたならしい)

ゆっくり出掛けよう」  乞食は言いながら、小脇に抱えていた、汚らしい

(ふろしきづつみをほどくと、なかからいちまいのつりがねまんとをだして、それをやぶれた)

風呂敷包みを解くと、中から一枚の釣り鐘マントを出して、それを破れた

(きもののうえから、はおりました。 ふたりが、もよりのやすしょくどうでしょくじをすませ、)

着物の上から、羽織りました。  二人が、最寄の安食堂で食事を済ませ、

(あおやまぼちへたどりついたときにはとっぷりひがくれて、まばらながいとうのほかはしんのやみ、)

青山墓地へ辿り着いた時にはトップリ日が暮れて、疎らな街燈のほかは真の闇、

(おばけでもでそうなさびしさでした。 やくそくのばしょというのは、ぼちのなかでも)

お化けでも出そうな寂しさでした。  約束の場所と言うのは、墓地の中でも

(もっともさびしいわきみちで、よいのうちでもめったにじどうしゃのとおらぬ、やみのなかです。)

最も寂しい脇道で、宵の内でも滅多に自動車の通らぬ、闇の中です。

(ふたりはそのやみのどてにこしをおろして、じっとときのくるのをまっていました。)

二人はその闇の土手に腰を下ろして、じっと時の来るのを待っていました。

(「おそいね。だいいち、こうしているとさむくってたまらねえ」 「いや、もうじきだよ。)

「遅いね。第一、こうしていると寒くって堪らねえ」 「いや、もうじきだよ。

(さっきぼちのいりぐちのところのみせやのとけいをみたら7じ20ふんだった。あれから)

先刻墓地の入り口の所の店屋の時計を見たら七時二十分だった。あれから

(もう10ふんいじょう、たしかにたっているから、いまにやってくるぜ」)

もう十分以上、確かに立っているから、今にやって来るぜ」

(ときどきぽつりぽつりとはなしあいながら、また10ふんほどまつうちに、とうとう)

時々ポツリポツリと話し合いながら、また十分程待つ内に、とうとう

(むこうからじどうしゃのへっどらいとがみえはじめました。 「おい、きたよ。)

向こうから自動車のヘッド・ライトが見え始めました。 「おい、来たよ。

(きたよ、あれがそうにちがいない。しっかりやるんだぜ」 あんのじょう、そのくるまは)

来たよ、あれがそうに違いない。しっかりやるんだぜ」  案の定、その車は

(ふたりのまっているまえまでくると、ぎぎーとぶれーきのおとをたててとまったのです)

二人の待っている前まで来ると、ギギーとブレーキの音を立てて停まったのです

(「それっ」 というと、ふたりは、やにわにやみのなかからとびだしました。)

「ソレッ」 というと、二人は、矢庭に闇の中から飛び出しました。

(「きみは、あっちへまわれ」 「よしきた」)

「君は、あっちへ廻れ」 「よしきた」

(ふたつのくろいかげは、たちまちきゃくせきのりょうがわのどあへかけよりました。そして、)

二つの黒い影は、たちまち客席の両側のドアへ駆け寄りました。そして、

(いきなりがちゃんとどあをひらくときゃくせきのじんぶつへ、りょうほうからにゅーっと、)

いきなりガチャンとドアを開くと客席の人物へ、両方からニューッと、

(ぴすとるのつつぐちをつきつけました。 )

ピストルの筒口を突き付けました。

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