怪人二十面相61 江戸川乱歩

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少年探偵団シリーズ1作目

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問題文

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(こじきとあかいとらぞうとが、ぐったりとなったあけちたんていのからだをかかえ、うつくしいふじんが)

乞食と赤井寅三とが、グッタリとなった明智探偵の身体を抱え、美しい婦人が

(それをたすけるようにして、もんないにきえると、とびらはまたもとのようにぴったりと)

それを助けるようにして、門内に消えると、扉はまた元のようにピッタリと

(しめられました。 ひとりのこったうんてんしゅは、からになったじどうしゃにとびのりました)

閉められました。  一人残った運転手は、空になった自動車に飛び乗りました

(そして、くるまは、やのようにはしりだし、たちまちみえなくなってしまいました。)

そして、車は、矢のように走り出し、たちまち見えなくなってしまいました。

(どこかべつのところにぞくのしゃこがあるのでしょう。 もんないでは、あけちをかかえた)

どこか別の所に賊の車庫があるのでしょう。  門内では、明智を抱えた

(3にんのぶかがげんかんのこうしどのまえにたちますと、いきなりのきのでんとうが、)

三人の部下が玄関の格子戸の前に立ちますと、いきなり軒の電燈が、

(ぱっとてんかされました。めもくらむようなあかるいでんとうです。 このいえへはじめての)

パッと点火されました。目も眩むような明るい電燈です。  この家へ初めての

(あかいとらぞうは、あまりのあかるさにぎょっとしましたが、かれをびっくりさせたのは、)

赤井寅三は、あまりの明るさにギョッとしましたが、彼を吃驚させたのは、

(そればかりではありませんでした。 でんとうがついたかとおもうと、こんどは、)

そればかりではありませんでした。  電燈が点いたかと思うと、今度は、

(どこからともなく、おおきなひとのこえがきこえてきました。だれもいないのに、)

何処からともなく、大きな人の声が聞こえてきました。誰もいないのに、

(こえだけがおばけみたいに、くうちゅうからひびいてきたのです。 「ひとりにんずうが)

声だけがお化けみたいに、空中から響いてきたのです。 「一人人数が

(ふえたようだな。そいつはいったい、だれだ」 どうもにんげんのこえとはおもわれないような)

増えたようだな。そいつは一体、誰だ」 どうも人間の声とは思われないような

(へんてこなひびきです。 しんまいのあかいはうすきみわるそうに、きょろきょろあたりを)

へんてこな響きです。  新米の赤井は薄気味悪そうに、キョロキョロ辺りを

(みまわしています。 すると、こじきにばけたぶかが、つかつかとげんかんのはしらのそばへ)

見回しています。  すると、乞食に化けた部下が、ツカツカと玄関の柱の傍へ

(ちかづいて、そのはしらのあるぶぶんにくちをつけるようにして、 「あたらしいみかたです。)

近付いて、その柱のある部分に口を付けるようにして、 「新しい味方です。

(あけちにふかいうらみをもっているおとこです。じゅうぶんしんようしていいのです」 )

明智に深い恨みを持っている男です。十分信用していいのです」

(と、ひとりごとをしゃべりました。まるででんわでもかけているようです。 「そうか、)

と、独り言を喋りました。まるで電話でも掛けているようです。 「そうか、

(それなら、はいってもよろしい」 またへんなこえがひびくと、まるでじどうそうちのように)

それなら、入ってもよろしい」 また変な声が響くと、まるで自動装置のように

(こうしどがおともなくひらきました。 「ははは・・・・・・、おどろいたかい。いまのはおくにいる)

格子戸が音もなく開きました。 「ハハハ……、驚いたかい。今のは奥にいる

(しゅりょうとはなしをしたんだよ。ひとめにつかないように、このはしらのかげにかくせいきと)

首領と話をしたんだよ。人目に付かないように、この柱の影に拡声器と

など

(まいくろほんがとりつけてあるんだ。しゅりょうはようじんぶかいひとだからね」)

マイクロホンが取付けてあるんだ。首領は用心深い人だからね」

(こじきにばけたぶかがおしえてくれました。 「だけど、おれがここにいるってことが)

乞食に化けた部下が教えてくれました。 「だけど、俺がここにいるって事が

(どうしてしれたんだろう」 あかいは、まだふしんがはれません。)

どうして知れたんだろう」  赤井は、まだ不審が晴れません。

(「うん、それもいまにわかるよ」 あいてはとりあわないで、あけちをかかえて、)

「ウン、それも今に分かるよ」  相手は取り合わないで、明智を抱えて、

(ぐんぐんいえのなかへはいっていきます。しぜんあかいもあとにしたがわぬわけにはいきません。)

グングン家の中へ入って行きます。自然赤井も後に従わぬ訳にはいきません。

(げんかんのあいだには、またひとりのくっきょうなおとこがかたをいからしてたちはだかっていましたが)

玄関の間には、また一人の屈強な男が肩を怒らして立ちはだかっていましたが

(いちどうをみると、にこにこしてうなずいてみせました。 ふすまをひらいて、ろうかへでて、)

一同を見ると、にこにこして頷いて見せました。  襖を開いて、廊下へ出て、

(いちばんおくまったへやへたどりつきましたが、みょうなことに、そこはがらんとした10じょうの)

一番奥まった部屋へ辿り着きましたが、妙な事に、そこはガランとした十畳の

(からべやで、しゅりょうのすがたはどこにもみえません。こじきがなにか、あごをしゃくって)

空部屋で、首領の姿は何処にも見えません。  乞食が何か、顎をしゃくって

(さしずをしますと、うつくしいおんなのぶかが、つかつかととこのまにちかより、とこばしらのうらに)

指図をしますと、美しい女の部下が、ツカツカと床の間に近寄り、床柱の裏に

(てをかけて、なにかしました。 すると、どうでしょう。がたんとおもおもしいおとが)

手を掛けて、何かしました。  すると、どうでしょう。ガタンと重々しい音が

(したかとおもうと、ざしきのまんなかのたたみがいちまい、すーっとしたへおちていって、)

したかと思うと、座敷の真中の畳が一枚、スーッと下へ落ちていって、

(あとにちょうほうけいのまっくらなあながあいたではありませんか。 「さあ、ここの)

後に長方形の真暗な穴があいたではありませんか。 「さあ、ここの

(はしごだんをおりるんだ」 いわれてあなのなかをのぞきますと、いかにもりっぱな)

梯子段を下りるんだ」  言われて穴の中を覗きますと、いかにも立派な

(きのかいだんがついています。 ああ、なんというようじんぶかさでしょう。おもてもんのせきしょ、)

木の階段がついています。  ああ、何という用心深さでしょう。表門の関所、

(げんかんのせきしょ、そのふたつをとおりこしても、このたたみのがんどうがえしをしらぬものには、)

玄関の関所、その二つを通り越しても、この畳の強盗返しを知らぬ者には、

(しゅりょうがどこにいるのやら、まったくけんとうもつかないわけです。 「なにをぼんやり)

首領が何処にいるのやら、全く見当も付かない訳です。 「何をぼんやり

(しているんだ。はやくおりるんだよ」 あけちのからだを3にんがかりでかかえながら、)

しているんだ。早く下りるんだよ」  明智の身体を三人掛かりで抱えながら、

(いちどうがかいだんをおりきると、あたまのうえで、ぎーっとおとがしてたたみのあなはもとのとおり)

一同が階段を下りきると、頭の上で、ギーッと音がして畳の穴は元の通り

(ふたをされてしまいました。じつにいきとどいたきかいじかけではありませんか。)

蓋をされてしまいました。実に行き届いた機械仕掛けではありませんか。

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