黒蜥蜴24

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プレイ回数1438難易度(4.5) 4757打 長文 長文モード可
明智小五郎シリーズ
江戸川乱歩の作品です。句読点以外の記号は省いています。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 デコポン 6891 S++ 7.0 97.4% 666.9 4717 121 72 2024/04/08
2 ROBIN 2102 F+ 2.1 97.3% 2176.5 4704 128 72 2024/04/01

関連タイピング

問題文

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(あけちはきちがいめいたことをぶつぶつつぶやいていたかとおもうと、いきなりそこの)

明智は気違いめいたことをブツブツつぶやいていたかと思うと、いきなりそこの

(たくじょうでんわにしがみついて、じゅわきをとった。きみ、そのかぐやのでんわばんごうを)

卓上電話にしがみついて、受話器を取った。「君、その家具屋の電話番号を

(おしえてくれたまえ しょせいがそれにこたえるのを、くちうつしに、あけちはこうかんしゅへと)

教えてくれたまえ」書生がそれに答えるのを、口写しに、明智は交換手へと

(どなった。ああ、nかぐてんですか。こちらはいわせのやしきです。さいぜん)

どなった。「ああ、N家具店ですか。こちらは岩瀬の屋敷です。さいぜん

(ながいすをとりによこしたくれたのだが、あれはもうきみのほうへつきましたか)

長椅子を取りによこしたくれたのだが、あれはもう君の方へ着きましたか」

(へえ、へえ、ながいすを、かしこまりました。どうもおそくなってすみません。)

「へえ、へえ、長椅子を、かしこまりました。どうもおそくなってすみません。

(じつはいまみせのものをうかがわせようとおもっておりましたところでございます)

実はいま店のものを伺わせようと思っておりましたところでございます」

(じゅわきのむこうからとんきょうなへんじがきこえてきた。えっ、なんだって?これから)

受話器の向こうから頓狂な返事が聞こえてきた。「えっ、なんだって?これから

(とりにくるんだって?きみ、それはほんとうかい。こちらではもうさっきわたして)

取りにくるんだって?君、それはほんとうかい。こちらではもうさっき渡して

(しまったのだが あけちがもどかしそうにどなりかえす。へええ、そんなはずは)

しまったのだが」明智がもどかしそうにどなり返す。「へええ、そんなはずは

(ございませんがな。てまえどもではだれもまだおやしきへうかがっておりません)

ございませんがな。手前どもではだれもまだお屋敷へ伺っておりません

(のですが きみはごしゅじんかね。しっかりしらべてくれたまえ。もしやきみの)

のですが」「君は御主人かね。しっかり調べてくれたまえ。もしや君の

(しらぬまに、だれかこちらへきたんじゃありませんか いいえ、そんなことは)

知らぬ間に、だれかこちらへきたんじゃありませんか」「いいえ、そんなことは

(ございません。まだわたくしは、おやしきへうかがうことを、みせのものにつたえて)

ございません。まだわたくしは、お屋敷へ伺うことを、店の者に伝えて

(おりませんので、うかがうどうりがありません そこまできくと、あけちはがちゃんと)

おりませんので、伺う道理がありません」そこまで聞くと、明智はガチャンと

(じゅわきをかけて、またたちあがって、どこかへかけだしそうにしたが、)

受話器をかけて、また立ちあがって、どこかへ駈け出しそうにしたが、

(おもいなおして、こんどはとちのけいさつしょへでんわをかけ、そうさしゅにんをよびだした。)

思いなおして、今度は土地の警察署へ電話をかけ、捜査主任を呼び出した。

(あけちは、いわせけのきゃくとなったさいしょのひ、まずこのそうさしゅにんとこんいをむすんで)

明智は、岩瀬家の客となった最初の日、先ずこの捜査主任と懇意を結んで

(おいたので、このばあいそれがじゅうぶんやくだった。ぼくはいわせけのあけちですが、)

おいたので、この場合それが充分役立った。「僕は岩瀬家の明智ですが、

(れいのよっぱらいがよごしたながいすですね、あれを、かぐやのなをかたって)

例の酔っぱらいがよごした長椅子ですね、あれを、家具屋の名をかたって

など

(やしきからもちだし、とらっくにつんでにげだしたやつがあるのです。どちらへ)

屋敷から持ち出し、トラックに積んで逃げ出したやつがあるのです。どちらへ

(はしったかはわかりませんが、しきゅうてはいをして、そいつをとらえてください)

走ったかはわかりませんが、至急手配をして、そいつを捉えてください

(ませんか......そうです、そうです。あのながいすです......)

ませんか......そうです、そうです。あの長椅子です......

(にんげんいす、ええ、にんげんいす。いや、じょうだんなもんですか......ええ、)

人間椅子、ええ、人間椅子。いや、じょうだんなもんですか......ええ、

(そうでしょう。ほかにかんがえかたがないじゃありませんか。ではおねがいします。)

そうでしょう。ほかに考え方がないじゃありませんか。ではお願いします。

(ぼくのみこみは、けっしてまちがっていないとおもいます。いずれあとからくわしく)

僕の見こみは、決して間違っていないと思います。いずれあとからくわしく

(おはなししますけれど そうしてでんわをきろうとすると、こんどはせんぽうから、)

お話ししますけれど」そうして電話を切ろうとすると、今度は先方から、

(いがいなほうこくがもたらされた。えっ、とうぼうした。そいつはひじょうに)

意外な報告がもたらされた。「えっ、逃亡した。そいつは非常に

(てぬかりですね......よっぱらいとおもってゆだんしていた?うん、それは)

手抜かりですね......酔っぱらいと思って油断していた?ウン、それは

(むりもないけれど、あいつとんだくわせものですぜ。くろとかげ のてしたに)

無理もないけれど、あいつ飛んだ喰わせものですぜ。『黒トカゲ』の手下に

(きまっている。おしいことをしましたね。まだつかまりませんか。なにぶんよろしく)

きまっている。惜しいことをしましたね。まだつかまりませんか。何分よろしく

(ぜんりょくをつくしてください。ひとのいのちにかかわることだ......ふたつともね。)

全力をつくしてください。人の命にかかわることだ......二つともね。

(ながいすのほうも、すいかんのほうも......ではまたのちほど がちゃりと)

長椅子の方も、酔漢の方も......ではまた後ほど」ガチャリと

(じゅわきのおと。あけちはがっかりしたように、そこにうずくまってしまった。)

受話器の音。明智はガッカリしたように、そこにうずくまってしまった。

(いちざのひとびとはいじょうなきんちょうででんわのこえにききいっていた。そして、いっくごとに、)

一座の人々は異常な緊張で電話の声に聞き入っていた。そして、一句ごとに、

(このめいたんていのとっぴなこうどうのりゆうがわかっていくようにおもわれた。あけちさん、)

この名探偵の突飛な行動の理由がわかって行くように思われた。「明智さん、

(おはなしのようすで、だいたいわしにもことのしだいがわかりました。わしはあんたの)

お話しの様子で、大体わしにも事の次第がわかりました。わしはあんたの

(ごめいさつにおどろきいりました。いや、それにもまして、ぞくのこのおもいきった、)

御明察に驚き入りました。いや、それにもまして、賊のこの思いきった、

(ずばぬけたてじなには、あいたくちがふさがりませんよ。つまり、あのよっぱらいを)

ズバぬけた手品には、あいた口がふさがりませんよ。つまり、あの酔っぱらいを

(よそおったおとこが、しかけをしたながいすのないぶにかくれて、どっかでかぐやの)

よそおった男が、仕かけをした長椅子の内部にかくれて、どっかで家具屋の

(つくったほんものとすりかえたのですね。そして、おうせつまには、にんげんのはいった)

作った本物とすりかえたのですね。そして、応接間には、人間のはいった

(ながいすがすえてあったというわけですね。そこへさなえがはいって)

長椅子がすえてあったというわけですね。そこへ早苗がはいって

(いく......おとこがいすのなかからそっとぬけだしてむすめを......)

行く......男が椅子の中からソッと抜け出して娘を......

(あけちさん、あいつはまさかむすめをころしたのでは......いわせしは、)

明智さん、あいつはまさか娘を殺したのでは......」岩瀬氏は、

(ぎょっとしてことばをきった。いや、けっしてころすようなことはありません。)

ギョッとして言葉を切った。「いや、決して殺すようなことはありません。

(kほてるのばあいでもわかっているとおり、あいつはいきたおじょうさんをほしがって)

Kホテルの場合でもわかっている通り、あいつは生きたお嬢さんをほしがって

(いるのです あけちがあんしんさせるようにこたえる。うん、わしもそうとは)

いるのです」明智が安心させるように答える。「ウン、わしもそうとは

(おもいますがね......それから、しょうきをうしなったむすめを、いままでじぶんの)

思いますがね......それから、正気を失った娘を、今まで自分の

(ひそんでいたながいすのうちがわのうつろのなかへいれて、ふたをしめる。そして、)

ひそんでいた長椅子の内側のうつろの中へ入れて、蓋をしめる。そして、

(あいつめながいすのうえへねそべってよっぱらいのまねをはじめたのですね。)

あいつめ長椅子の上へ寝そべって酔っぱらいのまねをはじめたのですね。

(しかし、あのよごれもの ああ、おみごとです。ごしゅじんも くろとかげ に)

しかし、あのよごれもの」「ああ、お見事です。御主人も『黒トカゲ』に

(まけないくうそうかですね。ぼくのかんがえもそのとおりなのです......あいつの)

まけない空想家ですね。僕の考えもその通りなのです......あいつの

(おそろしさは、こういうずばぬけたかんがえかたによって、ばかばかしいとりっくを、)

恐ろしさは、こういうズバぬけた考え方によって、ばかばかしいトリックを、

(へいぜんとじっこうするきもったまにあるのです。こんどのちゃくそうなどはまったくおとぎばなしですよ。)

平然と実行する肝っ玉にあるのです。今度の着想などは全くおとぎ話ですよ。

(あるしょうせつかのさくひんに にんげんいす というのがあります。やっぱりあくにんがいすの)

或る小説家の作品に『人間椅子』というのがあります。やっぱり悪人が椅子の

(なかへかくれて、いたずらをするはなしですが、そのしょうせつかのこうとうむけいを、)

中へかくれて、いたずらをする話ですが、その小説家の荒唐無稽を、

(くろとかげ はまんまとじっこうしてみせました。いまおはなしのよごれものにしても)

『黒トカゲ』はまんまと実行して見せました。今お話しのよごれものにしても

(そうですよ。あらかじめそういうえきたいをよういしておいて、くちからでたのではなく)

そうですよ。あらかじめそういう液体を用意しておいて、口から出たのではなく

(びんからながいすのうえにぶちまけたのです。ええ、びんですよ。ほら、)

瓶から長椅子の上にぶちまけたのです。ええ、瓶ですよ。ほら、

(あのういすきーのおおびん、あのなかにのこっているえきたいをしらべたら、きっと)

あのウイスキーの大瓶、あの中に残っている液体を調べたら、きっと

(へどのにおいがすることでしょう。それとても、じつはむかしむかしのせいようのおとぎばなしに)

ヘドの匂いがすることでしょう。それとても、実は昔々の西洋のおとぎ話に

(あるてなのです。もっときたないものでしたがね で、あのよっぱらいは、)

ある手なのです。もっときたないものでしたがね」「で、あの酔っぱらいは、

(りゅうちじょうからにげだしてしまったとか......ええ、にげだした)

留置場から逃げ出してしまったとか......」「ええ、逃げ出した

(そうです。よっぱらいもながいすも、おとぎばなしのように、どっかへきえうせて)

そうです。酔っぱらいも長椅子も、おとぎ話のように、どっかへ消え失せて

(しまいました あけちはおもわずくしょうしたが、またきっとなってつけくわえた。)

しまいました」明智は思わず苦笑したが、またキッとなって付け加えた。

(しかし、ごしゅじん、ぼくはいつかkほてるでおやくそくしたことをわすれはしません。)

「しかし、御主人、僕はいつかKホテルでお約束したことを忘れはしません。

(ごあんしんください。いのちにかけても、おじょうさんをまもります。けっしてとりかえしの)

御安心ください。命にかけても、お嬢さんを守ります。決して取り返しの

(つかぬようなことはしないつもりです。どうかぼくをしんじてください......)

つかぬようなことはしないつもりです。どうか僕を信じてください......

(ぼくのかおいろをみてください。あおざめてますか。しんぱいらしいかげもでもみえますか。)

僕の顔色を見てください。青ざめてますか。心配らしい影もでも見えますか。

(そうではないでしょう。ぼくはへいきなのです。このとおりへいきなのです あけちは)

そうではないでしょう。僕は平気なのです。この通り平気なのです」明智は

(そういって、にこやかにわらってみせた。きょせいとはおもえない。かれはしんからびしょうして)

そういって、にこやかに笑って見せた。虚勢とは思えない。彼は真から微笑して

(いるのだ。ひとびとは、たのもしげに、あかるいめいたんていのかおをみあげた。)

いるのだ。人々は、頼もしげに、明るい名探偵の顔を見上げた。

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