黒蜥蜴32
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | ひま | 5319 | B++ | 5.6 | 94.9% | 663.0 | 3726 | 199 | 54 | 2024/10/15 |
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問題文
(さなえさんにたずねてみたんだろうね ええ、さるぐつわをとってやって、)
「早苗さんに尋ねてみたんだろうね」「ええ、猿ぐつわを取ってやって、
(たずねてみると、かえってせんぽうがびっくりして、すこしもしらないとこたえた)
尋ねてみると、かえって先方がびっくりして、少しも知らないと答えた
(そうです へんなはなしね。ほんとうかしら ぼくもそうおもった。きたむらのみみが)
そうです」「へんな話ね。ほんとうかしら」「僕もそう思った。北村の耳が
(どうかしていたのだと、かるくかんがえて、そのままにしておいたのです。ところが、)
どうかしていたのだと、軽く考えて、そのままにしておいたのです。ところが、
(ついいちじかんほどまえ、みょうなことに、こんども、みんながしょくどうにいたあいだの)
つい一時間ほどまえ、妙なことに、今度も、みんなが食堂にいたあいだの
(できごとですが、あいだがまた、そのこえをきいちゃったんです。あいだもかぎをとって)
出来事ですが、合田がまた、その声を聞いちゃったんです。合田も鍵を取って
(きて、どあをあけてみたといいます。すると、きたむらのばあいとまったくおなじで、)
きて、ドアをあけて見たといいます。すると、北村の場合と全く同じで、
(さなえさんのほかにはひとのかげもなく、さるぐつわにもべつじょうはなかったそうです。)
早苗さんのほかには人の影もなく、猿ぐつわにも別状はなかったそうです。
(このにどのきみょうなできごとが、いつとなくせんいんにしれわたって、せんせいたちおとくいの)
この二度の奇妙な出来事が、いつとなく船員に知れ渡って、先生たちお得意の
(かいだんばなしができあがっちまったというわけですよ どんなことをいって)
怪談ばなしができあがっちまったというわけですよ」「どんなことをいって
(いるの?みんなうしろぐらいつみをせおっているれんちゅうですからね。ひとごろしの)
いるの?」「みんなうしろ暗い罪を背負っている連中ですからね。人殺しの
(ぜんかものだってふたりやさんにんじゃありませんからね。おんりょうというようなものを)
前科者だって二人や三人じゃありませんからね。怨霊というようなものを
(かんじるのですよ。このふねにはしりょうがたたっているんだなんていわれると、)
感じるのですよ。この船には死霊がたたっているんだなんていわれると、
(ぼくにしたってなんだかいやあなきもちになりますぜ またひとつ、おおきなうねりが)
僕にしたってなんだかいやあな気持になりますぜ」また一つ、大きなうねりが
(おしよせて、ごーっといういようなおとをたてながら、せんたいをたかくたかく)
押し寄せて、ゴーッという異様な音を立てながら、船体を高く高く
(うきあがらせたかとおもうと、やがて、はてしれぬならくへとしずめていく。)
浮き上がらせたかと思うと、やがて、果て知れぬ奈落へと沈めて行く。
(ちょうどそのとき、はつでんきにこしょうでもあったのか、しゃんでりやのひかりが、すーっと)
ちょうどその時、発電機に故障でもあったのか、シャンデリヤの光が、スーッと
(あかちゃけていって、なにかのあいずででもあるかのように、うすきみのわるいめいめつを)
赤茶けていって、何かの合図ででもあるかのように、薄気味のわるい明滅を
(はじめた。いやなばんですね じゅんいちせいねんは、おびえためでいきつくでんとうを)
はじめた。「いやな晩ですね」潤一青年は、おびえた眼で息つく電燈を
(みつめながら、さもぶきみらしくつぶやいた。おおきなおとこのくせして、)
見つめながら、さも無気味らしくつぶやいた。「大きな男のくせして、
(よわむしねえ。ほほほほほ くろこふじんのわらいごえが、かべのてっぱんにこだまして、いように)
弱虫ねえ。ホホホホホ」黒衣婦人の笑い声が、壁の鉄板にこだまして、異様に
(ひびきわたった。すると、そのとき、まるでかのじょのわらいごえのよいんででもあるように、)
響き渡った。すると、その時、まるで彼女の笑い声の余韻ででもあるように、
(そーっとどあをあけてはいってきたしろいものがあった。しろのだいこくずきん、しろの)
ソーッとドアをあけてはいってきた白いものがあった。白の大黒頭巾、白の
(つめえりふく、しろのえぷろん、だいこくさまのようにふとったかおが、いようにきんちょうしている。)
詰襟服、白のエプロン、大黒さまのように肥った顔が、異様に緊張している。
(このふねのこっくである。ああ、きみか。どうしたんだ。びっくりさせるじゃ)
この船のコックである。「ああ、君か。どうしたんだ。びっくりさせるじゃ
(ないか じゅんいちせいねんがしかると、こっくはひくいこえで、さもいちだいじのようにほうこくした。)
ないか」潤一青年が叱ると、コックは低い声で、さも一大事のように報告した。
(またへんなことがおっぱじまりそうですぜ。ばけもののやつすいじしつにまで)
「またへんなことがおっぱじまりそうですぜ。化物のやつ炊事室にまで
(しのびこんできやあがる。にわとりがまるのままいちわみえなくなっちまったんです)
忍びこんできやあがる。鶏が丸のまま一羽見えなくなっちまったんです」
(にわとりって?くろこふじんがふしんそうにたずねる。なあに、いきちゃ)
「鶏って?」黒衣婦人が不審そうにたずねる。「なあに、生きちゃ
(いねえんです。けをむしって、まるゆでにしたやつが、ななわばかりとだなのなかに)
いねえんです。毛をむしって、丸ゆでにしたやつが、七羽ばかり戸棚の中に
(ぶらさげてあったのですが、ちゅうしょくのりょうりをするときには、たしかにななつあった)
ぶら下げてあったのですが、昼食の料理をする時には、たしかに七つあった
(やつが、いまみると、いちわたりなくなっているんです。ろくわしきゃねえんです)
やつが、今見ると、一羽足りなくなっているんです。六羽しきゃねえんです」
(ゆうしょくにはにわとりはでなかったわね ええ、だからおかしいんです。このふねには、)
「夕食には鶏は出なかったわね」「ええ、だからおかしいんです。この船には、
(ひとりだってくいものにがつがつしているものはいねえんですからね。おばけでも)
一人だって食いものにガツガツしている者はいねえんですからね。お化けでも
(なけりゃあんなものをぬすむやつはありゃしません おもいちがいじゃないの)
なけりゃあんなものを盗むやつはありゃしません」「思い違いじゃないの」
(そんなこたあありません。あっしはこれでごくものおぼえがいいほうですからね)
「そんなこたアありません。あっしはこれでごく物覚えがいい方ですからね」
(へんだわねえ、じゅんちゃん、みんなでてわけしてふねのなかをしらべてみてはどう?)
「へんだわねえ、潤ちゃん、みんなで手分けして船の中をしらべて見てはどう?
(ひょっとしたらなにかいるのかもしれない にょぞくとても、かさなるかいじにみょうな)
ひょっとしたら何かいるのかもしれない」女賊とても、かさなる怪事に妙な
(ふあんをかんじないではいられなかった。ええ、ぼくもそうしてみようとおもって)
不安を感じないではいられなかった。「ええ、僕もそうしてみようと思って
(いるのです。しりょうにもせよ、いきりょうにもせよ、ものをいったり、くいものをぬすんだり)
いるのです。死霊にもせよ、生霊にもせよ、物をいったり、食いものを盗んだり
(するところをみると、なにかかたちのあるやつにちがいないですからね。げんじゅうに)
するところを見ると、何か形のあるやつにちがいないですからね。厳重に
(しらべたら、ばけもののしょうたいをみとどけることができるかもしれません そこで、)
しらべたら、化物の正体を見届けることができるかもしれません」そこで、
(じゅんいちじむちょうは、せんないのそうさくをめいずるために、そそくさとへやをでていった。)
潤一事務長は、船内の捜索を命ずるために、そそくさと部屋を出て行った。
(ああ、それから、うつくしいおきゃくさんのことづけがあったんですがね こっくが)
「ああ、それから、美しいお客さんのことづけがあったんですがね」コックが
(おもいだして、おんなしゅりょうにほうこくした。え、さなえさんがかい そうですよ。)
思い出して、女首領に報告した。「え、早苗さんがかい」「そうですよ。
(ついいましがた、しょくじをもっていったんですがね。なわをといてさるぐつわをはずして)
つい今しがた、食事を持って行ったんですがね。縄を解いて猿ぐつわをはずして
(やると、あのむすめさんきょうはどうしたことか、さもおいしそうに、すっかり)
やると、あの娘さんきょうはどうしたことか、さもおいしそうに、すっかり
(ごちそうをたいらげちゃいましたよ。そして、もうあばれたり、さけんだりしないから)
御馳走を平らげちゃいましたよ。そして、もうあばれたり、叫んだりしないから
(しばらないでくれっていうんです すなおにするっていうの?くろこふじんは)
縛らないでくれっていうんです」「素直にするっていうの?」黒衣婦人は
(いがいらしくききかえす。ええ、そういうんです。すっかりかんがえなおしたからって)
意外らしく聞き返す。「ええ、そういうんです。すっかり考えなおしたからって
(とてもほがらかなんです。きのうまでのあのむすめさんとはおもえないほどの)
とてもほがらかなんです。きのうまでのあの娘さんとは思えないほどの
(かわりかたですぜ おかしいわね。じゃ、あのひとをいちどここへつれてくるように、)
変り方ですぜ」「おかしいわね。じゃ、あの人を一度ここへ連れてくるように、
(きたむらにいってくれない こっくがむねをりょうしてたいしゅつすると、まもなく、いましめを)
北村にいってくれない」コックが旨を領して退出すると、間もなく、縛めを
(とかれたさなえさんが、きたむらというせんいんにてをとられてはいってきた。)
解かれた早苗さんが、北村という船員に手をとられてはいってきた。