卒業23

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問題文

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(わたしはくりすますぷれぜんとにぼうしをあんであげようとけいとをかった)

私はクリスマスプレゼントに帽子を編んであげようと毛糸を買った

(こうかんにっきにはとしひこくんのほんしんがかいてあった。)

交換日記には俊彦君の本心が書いてあった。

(めぐみ、おれはっけつびょうだろ?みんながかくしてくれていることわかってた。)

―恵、俺白血病だろ?みんなが隠してくれている事わかってた。

(おさむせんぱいもおまえも、おふくろもおれのまえではあかるく)

修先輩もお前も、お袋も俺の前では明るく

(いつもとかわらないようにせっしてくれる。)

いつもと変わらないように接してくれる。

(せんせいにたのみこんでこくちしてもらったんだ。)

先生に頼み込んで告知してもらったんだ。

(しんこうがはやくていまのいがくではむずかしいじょうきょうだと、)

進行が早くて今の医学では難しい状況だと、

(めぐみ、おれはおまえになんにもしてやれてないよな、おれはおまえからいろんなものもらっ)

恵、俺はお前に何にもしてやれてないよな、俺はお前からいろんなものもらっ

(くりすますにはべんきょうがたいへんなのにおれのためにまふらーやせーたーをあんでくれた)

クリスマスには勉強が大変なのに俺のためにマフラーやセーターを編んでくれた

(なのにおれはこんなびょうきになっちまった。)

なのに俺はこんな病気になっちまった。

(おれ・・しぬのかな・・・。)

俺・・死ぬのかな・・・。

(でも、あきらめたくないんだ。このままじゃおわれないだろ?)

でも、諦めたくないんだ。このままじゃ終われないだろ?

(まだまだやりたいこともがたくさんあるんだ。)

まだまだやりたいこともがたくさんあるんだ。

(しんでたまるか!!!いきてやる!!!)

死んでたまるか!!!  生きてやる!!!

(しにたくなんかない!!!めぐみとはなれるのはいやだ!!!)

死にたくなんかない!!! 恵と離れるのは嫌だ!!!

(すいぞくかんもいってない、ふたりでりょこうにもいきたい)

水族館も行ってない、二人で旅行にも行きたい

(このままふたりでずっとずっといっしょにいたいんだ!!!)

このまま二人でずっとずっと一緒に居たいんだ!!!ー

(にっきのもじがふるえていた。)

日記の文字が震えていた。

(きっとくやしくてくやしくてしかたないんだろう)

きっと悔しくて悔しくて仕方ないんだろう

(わたしはなみだがとまらなくてしかたなかった。)

私は涙が止まらなくて仕方なかった。

など

(よくじつ。がっこうをわたしはずるやすみをしてしまった。)

翌日。学校を私はずる休みをしてしまった。

(ひとりでまちをぶらぶらあるいていた。)

一人で待ちをブラブラ歩いていた。

(としひこくん、びょうきをきいたとき、どんなおもいだったんだろう。)

俊彦君、病気を聞いた時、どんな思いだったんだろう。

(ほんにんじゃないわたしがこんなにしょっくをうけているのに、)

本人じゃない私がこんなにショックを受けているのに、

(「めぐみちゃん?」)

「恵ちゃん?」

(おさむさんのみせのあかねさんがわたしをよびとめた。)

修さんの店の茜さんが私を呼び止めた。

(「こんなじかんにどうしたの?」)

「こんな時間にどうしたの?」

(「あかねさん・・・。」)

「茜さん・・・。」

(わたしはなきだしてしまった。)

私は泣き出してしまった。

(あかねさんはわたしをつれて、ちかくのきっさてんにはいった。)

茜さんは私を連れて、近くの喫茶店に入った。

(「これのんでおちついて。」)

「これ飲んで落ち着いて。」

(すこしあまめのほっとみるくをたのんでくれた。)

少し甘めのホットミルクを頼んでくれた。

(なみだがおさまるとわたしはほっとみるくをひとくちのんだ。)

涙が収まると私はホットミルクを一口飲んだ。

(ほんのりあまくてあたたかいみるくがからだをあたためてくれる。)

ほんのり甘くて温かいミルクが体をあたためてくれる。

(「がっこうは?」)

「学校は?」

(「やすみました。」)

「休みました。」

(「いきたくないひもあるよね、わたしなんかしょっちゅうだった。」)

「行きたくない日もあるよね、私なんかしょっちゅうだった。」

(「あかねさん、としひこくんのこときいてますか?」)

「茜さん、俊彦君の事聞いてますか?」

(「てんちょうからあらかたはきいてる。」)

「店長からあらかたは聞いてる。」

(わたしはとしひこくんのにっきをあかねさんにみせた。)

私は俊彦君の日記を茜さんに見せた。

(「わたしがみてもいいの?」)

「私が見てもいいの?」

(「はい、わたしひとりではかかえきれなくて・・・。」)

「はい、私一人では抱えきれなくて・・・。」

(「めぐみちゃんのはれためをみればわかるわよ。」)

「恵ちゃんの腫れた目を見ればわかるわよ。」

(あかねさんはにっきをよみはじめた。)

茜さんは日記を読み始めた。

(「としひこはしってたんだね、びょうきのこと・・・。」)

「俊彦は知ってたんだね、病気の事・・・。」

(「どんなにしょっくでからかったかとおもうと・・・。」)

「どんなにショックで辛かったかと思うと・・・・。」

(またなみだがあふれてきた。)

また涙が溢れてきた。

(「いまはおもいきりなきなさい、ないてないてなきやんだら)

「今は思い切り泣きなさい、泣いて泣いて泣き止んだら

(もうなかないってじぶんにいいきかせるの、)

もう泣かないって自分に言い聞かせるの、

(おんなはつよくならないといけないのよ、)

女は強くならないといけないのよ、

(ただそういうおもいをするのはもっとおとなになってからなんだけど、)

ただそういう思いをするのはもっと大人になってからなんだけど、

(めぐみちゃんはいまそのときなのね、)

恵ちゃんは今その時なのね、

(かみさまはそのひとがのりこえられるしれんしかあたえない、)

神様はその人が乗り越えられる試練しか与えない、

(いまだけはなきなさい。」)

今だけは泣きなさい。」

(そういってわたしのせなかをさすってくれた。)

そう言って私の背中をさすってくれた。

(あかねさんのことばがむねにすーっとはいってきた。)

茜さんの言葉が胸にスーッと入ってきた。

(そうだよね、)

そうだよね、

(わたしがこのさきもないていたら、としひこくんがあんしんして)

私がこの先も泣いていたら、俊彦君が安心して

(ちりょうにせんねんできない。)

治療に専念できない。

(つよくならなきゃ!!!)

強くならなきゃ!!!

(わたしはそうちかった。)

私はそう誓った。

(そのひのよる、おさむさんがうちにこた。)

その日の夜、修さんが家に来た。

(あかねさんからはなしをきいてようすをみにきてくれた。)

茜さんから話を聞いて様子を見に来てくれた。

(わたしは、としひこくんにあみあげたぼうしをわたしたいとおねがいした。)

私は、俊彦君に編み上げた帽子を渡したいとお願いした。

(おさむさんがとしひこくんのおかあさんにきいてくれるといった。)

修さんが俊彦君のお母さんに聞いてくれると言った。

(くりすますの3にちまえ、びょういんへいくことができた。)

クリスマスの3日前、病院へ行くことが出来た。

(むきんしつなのでめんかいのじかんはほんとうにみじかい、)

無菌室なので面会の時間は本当に短い、

(でもかおをみて、ぼうしをわたすだけでいい。)

でも顔を見て、帽子を渡すだけでいい。

(むきんしつのへやのなかにはいれない、)

無菌室の部屋の中には入れない、

(さいきんをいれるわけにはいかないのだ、)

細菌を入れるわけにはいかないのだ、

(かんごしさんにぼうしのはいったふくろをわたして、としひこくんにわたしてもらった。)

看護師さんに帽子の入った袋を渡して、俊彦君に渡してもらった。

(としひこくんはぼうしをかぶって、わらってくれた。)

俊彦君は帽子をかぶって、笑ってくれた。

(わたしもえがおでとしひこくんをみた。)

私も笑顔で俊彦君を見た。

(としひこくんのくちがありがとうってうごくのがわかった、)

俊彦君の口がありがとうって動くのがわかった、

(わたしもがんばってげんきになってとくちをうごかした。)

私もがんばってげんきになってと口を動かした。

(くりすますのひ、)

クリスマスの日、

(ぶかつのていきえんそうかいがかいさいされた。)

部活の定期演奏会が開催された。

(わたしはとしひこくんのぶんまでがんばろうときめた。)

私は俊彦君の分まで頑張ろうと決めた。

(えんそうかいしまえ、)

演奏開始前、

(ごらいじょうのみなさま、これよりひがしこうとうがっこうすいそうがくぶによります)

―ご来場の皆様、これより東高等学校吹奏楽部によります

(ていきえんそうかいがかいさいされます。)

定期演奏会が開催されます。

(かいさいにあたりまして、ぶいんのみなさまへおてがみがとどいておりますので)

開催に当たりまして、部員の皆様へお手紙が届いておりますので

(だいどくいたします。)

代読いたします。―

(いっしゅんぶたいじょうのわたしたちはざわついた。)

一瞬舞台上の私たちはざわついた。

(ぶちょうをはじめぶいんのみんなえんそうかいにさんかできなくてごめん。)

―部長をはじめ部員のみんな演奏会に参加できなくてごめん。

(おれのびょうきはきゅうせいはっけつびょうです。)

俺の病気は急性白血病です。

(しんこうがはやくてむずかしいじょうきょうです。)

進行が早くて難しい状況です。

(だけど、まだまだやりたいことがたくさんある。)

だけど、まだまだやりたいことがたくさんある。

(ちりょうにせんねんしてかならずらいねんはいっしょにえんそうしよう。)

治療に専念して必ず来年は一緒に演奏しよう。

(きょうのえんそうのせいこうをいのってます。やましたとしひこ)

今日の演奏の成功を祈ってます。山下俊彦―

(としひこくんからのてがみだった。)

俊彦君からの手紙だった。

(わたしはなみだがあふれるのをひっしでこたえた、)

私は涙があふれるのを必死で堪えた、

(いまないたらえんそうにならない。)

今泣いたら演奏にならない。

(えんそうかいがおわるまではないたらだめと)

演奏会が終わるまでは泣いたら駄目と

(じぶんにいいきかせた。)

自分に言い聞かせた。

(ぶちょうが)

部長が

(「みんな、やましたのぶんまできもちこめてえんそうするぞ。」)

「みんな、山下の分まで気持ちこめて演奏するぞ。」

(みんなはうなずいてえんそうがはじまった。)

みんなは頷いて演奏が始まった。

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