【タイピング文庫】新渡戸稲造「武士道の山」

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その著書で武士道の精神を世界に広めた新渡戸稲造の随想録。
武士道を山に例え、5つの層に分類している。麓の層は体力だけの粗野な兵隊。2番目は人の上に立ちたがる下士官クラス。3番目は上級者に媚びて下級者に威張る将校クラス。4番目は人望と威厳と紳士的態度をもった将軍クラス。頂の層は意外にも軍人的でなくむしろ女性的で近寄りやすく、愛にあふれたタイプである。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 4243 C 4.3 96.5% 851.8 3747 132 51 2021/01/14
2 くりクマさん【Y 1960 F 2.1 90.4% 1674.2 3670 387 51 2020/12/15

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問題文

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(ぶしどうはしゃめんゆるやかなるやまなり。されど、ここかしこに)

武士道は斜面緩かなる山なり。されど、此処彼処に

(おうおうきゅうしゅんなるちげき、またはしゅんぱんなきにしもあらず。このやまは、)

往々急峻なる地隙、または峻坂なきにしも非らず。この山は、

(これにすむひとのしゅるいにしたがって、ほぼごたいにくぶんするをうべし。)

これに住む人の種類に従って、ほぼ五帯に区分するを得べし。

(そのふもとにいぞくするやからは、ひょうかんなるせいしんと、ふきりつなるたいりょくとをゆうして、)

その麓に蝟族する輩は、慄悍なる精神と、不紀律なる体力とを有して、

(じゅうりょくにほこり、けいびなるふんぬにもこれをこころみんとほっするそやかん、)

獣力に誇り、軽微なる憤怒にもこれを試みんと欲する粗野漢、

(ひっぷのとなり。かれらはいわゆるやちょむしゃにして、)

匹夫の徒なり。彼らはいわゆる「野猪武者」にして、

(せんじにはぐんたいのそつごをなし、へいじにはしゃかいのらんしたり。)

戦時には軍隊の卒伍を成し、平時には社会の乱子たり。

(さらにほをてんずれば、ここにたしゅのひとのじゅうするをみる。さんろくそうりんのじゅうみんよりも)

更に歩を転ずれば、ここに他種の人の住するを見る。山麓叢林の住民よりも

(しんぽしたるいっかいきゅうのたみなり。かれらはじゅうりょくにすさまず。やちょのぞくとことなりて、)

進歩したる一階級の民なり。彼らは獣力に荒まず。野猪の族と異りて、

(ほうしなるざんぎゃくまたあくぎをたのしみとせずといえども、なおそのかぎられたるせいりょくを)

放肆なる残虐また悪戯を楽しみとせずといえども、なおその限られたる勢力を

(おこなわんことをよろこびとなし、ごうがんそんだいにして、こぶんにたいしてのおやぶんたるをこのむ。)

行わんことを喜びとなし、傲岸尊大にして、子分に対しての親分たるを好む。

(そのもっともかいとするところは、じこのいしんあるをかんずること、)

その最も快とするところは、自己の威信あるを感ずること、

(すなわちひとよりふくじゅうせらるることなり。もっともあれをふんまんせしむるものは、)

即ち人より服従せらるる事なり。最も彼れを憤懣せしむるものは、

(そのけんりょくのしんがいせらるること、すなわちよくあつをこうむることなり。かれらは)

その権力の侵害せらるること、即ち抑圧を蒙ることなり。彼らは

(せんじょうにありてはゆうかんなるかしとなり、へいじにはもっともいとうべきぞくりとなる。)

戦場に在りては勇敢なる下士となり、平時には最も厭うべき俗吏となる。

(このるいのじゅうちよりもたかくしてさらにいったいあり。そのじゅうみんは、)

この類の住地よりも高くして更に一帯あり。その住民は、

(やじゅうてきにもあらず、またごうまんにもあらず。たしょうのがくじゅつをあいし、)

野獣的にもあらず、また傲慢にもあらず。多少の学術を愛し、

(しょをよみおおくはけいざいほうりつのしょほをまなびて、しかしてちょうちょうだいもんだいをろんず。)

書を読み――多くは経済法律の初歩を学びて、しかして喋々大問題を論ず。

(そのがんかいはほうりつせいじのそとにいでず。そのぶんがくはしょうせつとさんもんしいかとにかぎられ、)

その眼界は法律政治の外に出でず。その文学は小説と三文詩歌とに限られ、

(かがくはしんぶんしじょうにてよむもののいがいにすこしもりゅういせず。かれらのたいどは、)

科学は新聞紙上にて読むものの以外に少しも留意せず。彼らの態度は、

など

(やちょのそやと、かれらのちょっかにあるもののけんしゅんとをだっして、)

「野猪」の粗野と、彼らの直下にある者の厳峻とを脱して、

(そのなかまのものにはべんあんに、じょうきゅうしゃにたいしてはきゅうくつに、かきゅうしゃにたいしてはいばる。)

その仲間の者には便安に、上級者に対しては窮屈に、下級者に対しては威張る。

(かれらはしんずいぶしどうのしんざんものとしょうすべく、そのかずやただいなり。)

彼らは真髄武士道の新参者と称すべく、その数や多大なり。

(かれらのなかよりしてぐんたいのしょうこうをだし、またせいふのじむをつかさどるのこうりをだす。)

彼らの中よりして軍隊の将校を出し、また政府の事務を掌るの公吏を出す。

(さらにたかきところにいちちくあり、ここにはぶしちゅうこうとうなるかいきゅうのものはんえいし、)

更に高き処に一地区あり、ここには武士中高等なる階級の者繁栄し、

(ぐんたいのしょうぐんと、にちじょうせいかつにおけるしそうこういのしどうしゃとをゆうす。)

軍隊の将軍と、日常生活に於ける思想行為の指導者とを有す。

(したにあるものにはあいせられて、つねにいげんをたもち、うえにあるものにはていちょうにして、)

下に在る者には愛せられて、常に威厳を保ち、上に在る者には丁重にして、

(けっしてじしんをうしなわず。されどかれらのしんしてきたいどのひかには、)

決して自信を失わず。されど彼らの紳士的態度の皮下には、

(にゅうわなるよりもむしろおおくのげんかくなるものをゆうし、かれらのしんせつには、)

柔和なるよりも寧ろ多くの厳格なるものを有し、彼らの親切には、

(どうじょうよりもむしろおおくのじかくてきけんじょうあり。かれらのしこうなるせいしんてきたいどは、)

同情よりも寧ろ多くの自覚的謙譲あり。彼らの至高なる精神的態度は、

(あいじょうよりもむしろおおくのれんびんをしめす。かれらはなんじにかたるにしんせつそうめいなる)

愛情よりも寧ろ多くの憐愍を示す。彼らは汝に語るに親切聡明なる

(じぶつをもってし、なんじはそのいをかいし、そのごをきおくす。されどかれらのこえは)

事物を以てし、汝はその意を解し、その語を記憶す。されど彼らの声は

(なんじらのうらにいきてそんりゅうせず。かれらのなんじをみるや、なんじはそのがんこうの)

汝らの裏に生きて存留せず。彼らの汝を見るや、汝はその眼光の

(とうてつなるにおどろく。されどかれらのめのせんこうは、かれらのなんじをさるとともにきえゆ。)

透徹なるに驚く。されど彼らの眼の鮮光は、彼らの汝を去ると共に消ゆ。

(なんじはしゅんけんきくたるさんけいをよじ、しこうのちたいにのぼりて、ぶしのさいこうなるものを)

汝は峻険崎嶇たる山径を攀じ、至高の地帯に登りて、武士の最高なる者を

(みんとするお。ここにありては、なんじをむかうるに、すこぶるにゅうわなるみんぞくのごうも)

見んとする乎。此処に在りては、汝を迎うるに、頗る柔和なる民族の毫も

(ぐんじんてきならず、そのようぼうたいどほとんどふじんにるいするものあり。なんじはかれらをみて)

軍人的ならず、その容貌態度殆ど婦人に類するものあり。汝は彼らを見て

(ぶふなるやいなやをうたがわんとす。なんじはいっけんもってかれらをぼんじんしすることもあらん。)

武夫なるや否やを疑わんとす。汝は一見以て彼らを凡人視することもあらん。

(かれらはそんだいならず。なんじはよういにかれらにちかづくをうべく、かれらのしたしみやすきがゆえに、)

彼らは尊大ならず。汝は容易に彼らに近づくを得べく、彼らの親み易きが故に、

(なれやすしとなさん。されどなんじはちかづかざらんとするもあたわざるがゆえに、)

狎れ易しとなさん。されど汝は近づかざらんとするも能わざるが故に、

(かれらにせっしくることなるをしらん。かれらはきせん、だいしょう、ろうよう、けんぐと)

彼らに接し来ることなるを知らん。彼らは貴賤、大小、老幼、賢愚と

(ひとしくまじわり、そのたいどはかんがゆうびなりというもおろか、あいじょうは)

等しく交わり、その態度は嫺雅優美なりというもおろか、愛情は

(そのめよりかがやき、そのくちびるにふるう。かれらのくるや、そうぜんたるくんぷうふきわたり、)

その目より輝き、その唇に震う。彼らの来るや、爽然たる薫風吹き渡り、

(かれらのさるや、ごじんがしんりのだんきなおそんす。がくをてらわずしておしえ、)

彼らの去るや、吾人が心裡の暖気なお存す。学を衒わずして教え、

(おんをくわえずしてほごし、とかずしてかし、たすけずしておぎない、ほどこさずしてすくい、)

恩を加えずして保護し、説かずして化し、助けずして補い、施さずして救い、

(やくじをあたえずしていやし、ろんぱせずしてしんぷくせしむ。かれらはしょうにのごとくたわむれ)

薬餌を与えずして癒し、論破せずして信服せしむ。彼らは小児の如く戯れ

(かつわらう。かれらのおどけはむじゃきというもなかなかに、つみをはづかしむるものなり。)

かつ笑う。彼らの戯は無邪気というも中々に、罪を辱かしむるものなり。

(かれらのわらいはかすかなりといえども、なえたるれいこんをそせいせしむ。)

彼らの笑は微かなりといえども、萎えたる霊魂を蘇生せしむ。

(かれらのしょうにらしきは、つみあるりょうしんをして、じゅんけつをせんぼうせしむ。)

彼らの小児らしきは、罪ある良心をして、純潔を羨望せしむ。

(かれらなかば、そのなみだはひとのおもにをあらいさる。)

彼ら泣かば、その涙は人の重荷を洗い去る。

(そもそもこれらのぶふのじゅうするちたいはすなわちきりすとのととともなり。)

そもそもこれらの武夫の住する地帯は即ち基督の徒と共なり。

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