白痴 3

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坂口安吾の小説。

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問題文

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(いざわはだいがくをそつぎょうするとしんぶんきしゃになり、)

伊沢は大学を卒業すると新聞記者になり、

(つづいてぶんかえいがのえんしゅつか)

つづいて文化映画の演出家

((まだみならいでたんどくえんしゅつしたことはない)になったおとこで、)

(まだ見習いで単独演出したことはない)になった男で、

(27のねんれいにくらべれば)

二十七の年齢にくらべれば

(うらがわのじんせいにいくらかちしきはあるはずで、)

裏側の人生にいくらか知識はある筈で、

(せいじか、ぐんじん、じつぎょうか、)

政治家、軍人、実業家、

(げいにんなどのうちまくに)

芸人などの内幕に

(たしょうのしょうそくはこころえていたが、)

多少の消息は心得ていたが、

(ばすえのしょうこうじょうとあぱーとにとりかこまれた)

場末の小工場とアパートにとりかこまれた

(しょうてんがいのせいたいがこんなものだとはそうぞうもしていなかった。)

商店街の生態がこんなものだとは想像もしていなかった。

(せんそういらいじんしんがすさんだせいだろうときいてみると、)

戦争以来人心が荒んだせいだろうと訊いてみると、

(いえ、なんですよ、このへんじゃ、)

いえ、なんですよ、このへんじゃ、

(さきからこんなものでしたねえ、としたてやは)

先からこんなものでしたねえ、と仕立屋は

(てつがくしゃのようなおももちでしずかにこたえるのであった。)

哲学者のような面持で静かに答えるのであった。

(けれどもさいだいのじんぶつはいざわのりんじんであった。)

けれども最大の人物は伊沢の隣人であった。

(このりんじんはきちがいだった。)

この隣人は気違いだった。

(そうとうのしさんがあり、)

相当の資産があり、

(わざわざろじのどんぞこをえらんでいえをたてたのも)

わざわざ路地のどん底を選んで家を建てたのも

(きちがいのこころづかいで、)

気違いの心づかいで、

(どろぼうないしむようのもののしんにゅうを)

泥棒乃至無用の者の侵入を

など

(きょくどにきらったけっかだろうとおもわれる。)

極度に嫌った結果だろうと思われる。

(なぜなら、ろじのどんぞこにたどりつき)

なぜなら、路地のどん底に辿りつき

(このいえのもんをくぐってみまわすけれども)

この家の門をくぐって見廻すけれども

(とぐちというものがないからで、)

戸口というものがないからで、

(みわたすかぎりこうしのはまったまどばかり、)

見渡す限り格子のはまった窓ばかり、

(このいえのげんかんはもんとせいはんたいのうらがわにあって、)

この家の玄関は門と正反対の裏側にあって、

(ようするにいっぺんぐるりとたてものをまわったうえでないと)

要するにいっぺんグルリと建物を廻った上でないと

(たどりつくことができない。)

辿りつくことができない。

(むようのしんにゅうしゃはさじをなげてひきさがるしくみであり、)

無用の侵入者は匙を投げて引下る仕組であり、

(ないしはげんかんをさがしてうろつくうちに)

乃至は玄関を探してうろつくうちに

(なにものかのしんにゅうをみやぶってけいかいかんせいにはいる)

何者かの侵入を見破って警戒管制に入る

(というしくみでもあって、)

という仕組でもあって、

(りんじんはうきよのぞくぶつどもをこのんでいないのだ。)

隣人は浮世の俗物どもを好んでいないのだ。

(このいえはそうとうけんすうのあるにかいだてであったが、)

この家は相当間数のある二階建であったが、

(ないぶのしかけについてはものしりのしたてやもおおくしらなかった。)

内部の仕掛に就いては物知りの仕立屋も多く知らなかった。

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