白痴 23

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問題文
(はくちのくもんは、こどもたちのおおきなめとはにてもにつかぬものであった。)
白痴の苦悶は、子供達の大きな目とは似ても似つかぬものであった。
(それはただほんのうてきなしへのきょうふとしへのくもんがあるだけで、)
それはただ本能的な死への恐怖と死への苦悶があるだけで、
(それはにんげんのものではなく、むしのものですらもなく、)
それは人間のものではなく、虫のものですらもなく、
(しゅうあくなひとつのうごきがあるのみだった。)
醜悪な一つの動きがあるのみだった。
(ややにたものがあるとすれば、いっすんごぶほどのいもむしが)
やや似たものがあるとすれば、一寸五分ほどの芋虫が
(ごしゃくのながさにふくれあがってもがいているうごきぐらいのものだろう。)
五尺の長さにふくれあがってもがいている動きぐらいのものだろう。
(そしてめにいってきのなみだをこぼしているのである。)
そして目に一滴の涙をこぼしているのである。
(ことばもさけびもうめきもなく、ひょうじょうもなかった。)
言葉も叫びも呻きもなく、表情もなかった。
(いざわのそんざいすらもいしきしてはいなかった。)
伊沢の存在すらも意識してはいなかった。
(にんげんならばかほどのこどくがありえるはずはない。)
人間ならばかほどの孤独が有り得る筈はない。
(おとことおんなとただふたりおしいれにいて、)
男と女とただ二人押入にいて、
(そのいっぽうのそんざいをわすれはてるということが、)
その一方の存在を忘れ果てるということが、
(ひとのばあいにありうべきはずはない。)
人の場合に有り得べき筈はない。
(ひとはぜったいのこどくというがほかのそんざいをじかくしてのみぜったいのこどくもありえるので、)
人は絶対の孤独というが他の存在を自覚してのみ絶対の孤独も有り得るので、
(かほどまでもうもくてきな、むじかくな、ぜったいのこどくがありえようか。)
かほどまで盲目的な、無自覚な、絶対の孤独が有り得ようか。
(それはいもむしのこどくであり、そのぜったいのこどくのそうのあさましさ。)
それは芋虫の孤独であり、その絶対の孤独の相のあさましさ。
(こころのかげのへんりんもないくもんのそうのみるにこたえぬしゅうあくさ。)
心の影の片鱗もない苦悶の相の見るに堪えぬ醜悪さ。
(ばくげきがおわった。)
爆撃が終った。
(いざわはおんなをだきおこしたが、)
伊沢は女を抱き起したが、
(いざわのゆびのいっぽんがむねにふれてもはんのうをおこすおんなが、そのにくよくすらうしなっていた。)
伊沢の指の一本が胸にふれても反応を起す女が、その肉慾すら失っていた。
(このむくろをいだいてむげんにらっかしつづけている、)
このむくろを抱いて無限に落下しつづけている、
(くらい、くらい、むげんのらっかがあるだけだった。)
暗い、暗い、無限の落下があるだけだった。
(かれはそのひばくげきちょくごにさんぽにでて、)
彼はその日爆撃直後に散歩にでて、
(なぎたおされたみんかのあいだでふきとばされたおんなのあしも、)
なぎ倒された民家の間で吹きとばされた女の脚も、
(ちょうのとびだしたおんなのはらも、ねじきれたおんなのくびもみたのであった。)
腸のとびだした女の腹も、ねじきれた女の首も見たのであった。