人造人間事件3 海野十三

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人造人間事件/海野十三 著
青空文庫より引用

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問題文

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(3)

3

(ほむらのおどろきのこえに、かかりかんのいっこうは、はこにはいったじんぞうにんげんのまえに)

帆村の愕きの声に、係官の一行は、函に入った人造人間の前に

(どやどやとつどってきた。「なにちがついているって。おおこれはひどい」)

ドヤドヤと集ってきた。「ナニ血がついているって。おおこれはひどい」

(「やあ、はこのそこにも、けっこんがたれている。おう、ちょっとはこのまえをみな、)

「やあ、函の底にも、血痕が垂れている。おう、ちょっと函の前を皆、

(どいたどいた」けっこんときいて、いちどう、つまさきだってさゆうにさっとわかれた。)

どいたどいた」血痕と聞いて、一同、爪先だって左右にサッと分れた。

(「ほらほら。ここにもある、うむ、そこにもある。けっこんがずーっと)

「ホラホラ。ここにもある、ウム、そこにもある。血痕がズーッと

(つづいているぞ」「なあんだ、しんだいのところまで、けっこんがつながって)

続いているぞ」「なアんだ、寝台のところまで、血痕がつながって

(いるじゃないか。すると、ーー」「すると、このじんぞうにんげんめが、はかせをやった)

いるじゃないか。すると、ーー」「すると、この人造人間めが、博士を殺った

(ことになる・・・・・・のかなあ」「えっ、このじんぞうにんげんがさつがいはんにんとは・・・・・・」)

ことになる……のかなア」「えッ、この人造人間が殺害犯人とは……」

(いちどうはりつぜんとしてそのばにたちすくみ、このぶきみなこうてつのかいぶつを)

一同は慄然としてその場に立ち竦み、この不気味な鋼鉄の怪物を

(こわごわみやった。じんぞうにんげんは、ぴくりともうごかなかった。しかしまた、)

こわごわ見やった。人造人間は、ピクリとも動かなかった。しかしまた、

(いまにもひとこえうおーっとどごうして、はこのなかからおどりだしそうなけはいにもみえた。)

今にも一声ウオーッと怒号して、函の中から躍り出しそうな気配にも見えた。

(「みなさんはまさか、こんなこうてつきかいがいちにんまえのれいこんをもっていると)

「皆さんはまさか、こんな鋼鉄機械が一人前の霊魂を持っていると

(けつぎなさるわけじゃありますまいね」と、ほむらがよこあいからくちをだした。)

決議なさるわけじゃありますまいネ」と、帆村が横合から口を出した。

(「さあ、そこまでかんがえているわけじゃないが、とにかくこのじんぞうにんげんの)

「さあ、そこまで考えているわけじゃないが、とにかくこの人造人間の

(みぎのこぶしにははかせのかおをふんさいしたかもしれないしょうせきがれきぜんとのこっている」)

右の拳には博士の顔を粉砕したかもしれない証跡が歴然と残っている」

(とけんじはいった。「こいつがいきているにんげんだったら」とおおえやまかちょうは)

と検事は云った。「こいつが生きている人間だったら」と大江山課長は

(じんぞうにんげんをゆびさしていった。「わたしはちゅうちょなく、こいつをたいほしますがね。)

人造人間を指していった。「私は躊躇なく、こいつを逮捕しますがね。

(しかしまさか・・・・・・」「そうだ。だからわれわれは、このじんぞうにんげんがはかせをさつがいして)

しかし真逆……」「そうだ。だからわれわれは、この人造人間が博士を殺害して

(このはこのなかにはいったまでのうんどうをなしとげたことをしょうめいできればよいのだ。)

この函の中に入ったまでの運動をなしとげたことを証明できればよいのだ。

など

(だがこのじんぞうにんげんがはたしてうごくものやらうごかないものやらわれわれにはいっこう)

だがこの人造人間が果して動くものやら動かないものやらわれわれには一向

(わかっていない」「なあにかりがねさん。こいつがうごくことだけはたしかですよ。)

分っていない」「なアに雁金さん。こいつが動くことだけは確かですよ。

(いまこいつのはらのなかでは、きかいがしきりにごとごとまわっているのですよ。)

今こいつの腹の中では、機械がしきりにゴトゴト廻っているのですよ。

(だれかこのじんぞうにんげんにめいれいすることができればいいのです。みわたしたところ)

誰かこの人造人間に命令することができればいいのです。見わたしたところ

(きかんなどもっともてきにんのようにこころえますが、ひとついさましいごうれいをかけてみられては)

貴官など最も適任のように心得ますが、一つ勇しい号令をかけてみられては

(いかがですか」とほむらはてをまえにのばした。かりがねけんじは、すぐかおのまえで)

如何ですか」と帆村は手を前にのばした。雁金検事は、すぐ顔の前で

(てをふった。そのときおおえやまかちょうがすすみでて、「こういつまでも、わけの)

手をふった。そのとき大江山課長が進みでて、「こういつまでも、訳の

(わからないきかいをあいてにしていたのでははじまりませんから、いつものてぐちの)

わからない機械を相手にしていたのでは始まりませんから、いつもの手口の

(ほうからしらべてゆきたいとおもいますが、いかがでしょう」「それもいいですね」)

方から調べてゆきたいと思いますが、いかがでしょう」「それもいいですね」

(とけんじがどういした。「そうなると、まずこのいえのかぞくなんですが、ふじんの)

と検事が同意した。「そうなると、まずこの家の家族なんですが、夫人の

(うららこがみえません。ばあやのおみねというのは、このじけんを)

ウララ子が見えません。ばあやのお峰というのは、この事件を

(しらせてきたので、いまけいさつにほごしてあります。ばあやはみみが)

知らせて来たので、いま警察に保護してあります。ばあやは耳が

(きこえないのですが、ふじんががいしゅつさきからかえってきたので、おちゃをもって)

きこえないのですが、夫人が外出先から帰ってきたので、お茶を持って

(あがってきたときに、ふじんがはいっていたこのへやのなかでさんげきをちらりと)

上ってきたときに、夫人が入っていたこの部屋の中で惨劇をチラリと

(みたのだそうです」「うららふじんは、いつきたくしたんですか」)

見たのだそうです」「ウララ夫人は、いつ帰宅したんですか」

(「ばあやのはなしによると、こんやはちじをすこしまわったときだったといいます」)

「ばあやの話によると、今夜八時をすこし廻ったときだったといいます」

(「するとはかせがしたいとなったかんしきじこくとあまりちがわないね。そのふじんが、)

「すると博士が死体となった鑑識時刻とあまり違わないネ。その夫人が、

(いまいえにいないし、けいさつへとどけでもしないというのはどうもおかしい」)

今家に居ないし、警察へ届出もしないというのはどうもおかしい」

(とけんじはくびをかしげた。ほむらはそれをきいていて、なるほどさっきのあれが)

と検事は首を傾げた。帆村はそれを聞いていて、なるほどさっきのあれが

(そうだなとうなずいた。「もうひとり、このいえによくでいりしているじんぶつが)

そうだなと肯いた。「もう一人、この家によく出入りしている人物が

(いるのです。それはここうちょうさでわかっているのですが、まづめじょうたろうといって、)

居るのです。それは戸口調査で分っているのですが、馬詰丈太郎といって、

(はかせのおいにあたるおとこです。かれはいっかげつまえまではこのいえのなかにどうきょしていたんだが、)

博士の甥に当る男です。彼は一ヶ月前まではこの家の中に同居していたんだが、

(いまはでてごたんだふきんのあぱーとにすんでいます」「そのおいのまづめというのにも)

今は出て五反田附近のアパートに住んでいます」「その甥の馬詰というのにも

(なにかけんぎをかけることがあるのかね」とけんじはたずねた。)

なにか嫌疑を懸けることがあるのかネ」と検事はたずねた。

(「かれはなくなったはかせのじょしゅをして、ながくこのへやにはたらいていたのです。しかし)

「彼は亡った博士の助手をして、永くこの部屋に働いていたのです。しかし

(どっちかというと、かれはなまけもので、いつもはかせからこっぴどくしかられていた)

どっちかというと、彼は怠け者で、いつも博士からこっぴどく叱られていた

(ということです。これもばあやのおみねのはなしなんですがね。そしてかれが)

ということです。これもばあやのお峰の話なんですがネ。そして彼が

(はかせのいえをでるようになったわけは、どうもうららふじんによこしまなれんぼを)

博士の家を出るようになった訳は、どうもウララ夫人によこしまな恋慕を

(したためだというはなしです」「なるほど、そいつはようぎしゃのうちに)

したためだという話です」「なるほど、そいつは容疑者のうちに

(くわえておいていいね」そういっているところへ、かいかからいちめいのけいかんが)

加えておいていいネ」そういっているところへ、階下から一名の警官が

(あたふたとあがってきた。そしていちどうのまえにきちんとしせいをただしてひろうした。)

アタフタと上ってきた。そして一同の前にキチンと姿勢を正して披露した。

(「ただいま、まづめじょうたろうがもんぜんをはいかいしておりましたので、ひっとらえてございます」)

「只今、馬詰丈太郎が門前を徘徊して居りましたので、引捕えてございます」

(「おおそれはちょうどいい。さっそくそのなんぱのおいをしらべてみようとおもいますが、)

「おおそれは丁度いい。早速その軟派の甥を調べてみようと思いますが、

(いかがで・・・・・・」そういうおおえやまのことばを、かりがねけんじはすぐにどういした。)

如何で……」そういう大江山の言葉を、雁金検事はすぐに同意した。

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