人造人間事件5 海野十三

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人造人間事件/海野十三 著
青空文庫より引用

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問題文

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(「ーーこっちがぞうふくきで、こっちがけいでんきですよ」とまづめはどらいばーのさきで)

「ーーこっちが増幅器で、こっちが継電器ですよ」と馬詰はドライバーの先で

(きかいをゆびさした。「これがからだをちょくりつさせるじゃいろです。こっちがうでをうごかす)

機械を指した。「これが身体を直立させるジャイロです。こっちが腕を動かす

(でんじせきそうち。こっちのがあしのほうです。さゆうふたつにわかれていますでしょう。)

電磁石装置。こっちのが脚の方です。左右二つに分れていますでしょう。

(くびのほうもついでにかいぼうしてみましょう」まづめはいがくしゃのようにいともむぞうさに、)

首の方もついでに解剖してみましょう」馬詰は医学者のようにいとも無造作に、

(じんぞうにんげんのてっかめんをはぎとった。「ほら、これがくちのかわりになるこうせいきです。)

人造人間の鉄仮面を剥ぎとった。「ほら、これが口の代りになる高声器です。

(ほほう、このじんぞうにんげんはめがみえませんよ。こうでんかんがついていますけれど、)

ほほう、この人造人間は目が見えませんよ。光電管がついていますけれど、

(でんせんがはずれています。これがみみのはたらきをするまいくろふぉん」「ちょっと)

電線が外れています。これが耳の働きをするマイクロフォン」「ちょっと

(まってくれたまえ」とほむらがてをあげた。「するとこのじんぞうにんげんはどうすれば)

待ってくれたまえ」と帆村が手をあげた。「するとこの人造人間はどうすれば

(うごくかといえば、けっきょくこのまいくになにかしんごうおんをおくってやればいいのだね」)

動くかといえば、結局このマイクに何か信号音を送ってやればいいのだネ」

(「まあいまのところ、きかいのせつぞくはそうなっていますね」「ははあーーすると、)

「まあ今のところ、機械の接続はそうなっていますね」「ハハアーーすると、

(どんなしんごうおんをおくってやれば、どんなふうにうごくかというじんぞうにんげんそうじゅうしんごうぼと)

どんな信号音を送ってやれば、どんな風に動くかという人造人間操縦信号簿と

(いったようなものがなければならぬ。さあみなさん。そのへんをさがしてみてください」)

いったようなものがなければならぬ。さあ皆さん。その辺を探してみて下さい」

(「よおし、じんぞうにんげんそうじゅうしんごうぼか。ーー」そこでかかりかんのしきで、けいじたちは)

「よオし、人造人間操縦信号簿か。ーー」そこで係官の指揮で、刑事たちは

(いっせいにへやのなかをたからさがしのようにはいまわった。「あっ、これじゃないかなあ」)

一勢に部屋の中を宝捜しのように匍いまわった。「あッ、これじゃないかなア」

(ひとりのけいじが、きかいとだなとうしろのかべとのあいだにおちこんでいるいっさつのうすいちょうめんを)

一人の刑事が、機械戸棚と後の壁との間に落ちこんでいる一冊の薄い帳面を

(みつけてつまみだした。そのちょうめんのひょうしには「ろぼっとqがた8ごうのあんごうひょう」と)

みつけて摘みだした。その帳面の表紙には「ロボットQ型8号の暗号表」と

(したためてあった。「うむ、qがた8ごうとは、このじんぞうにんげんですよ。ほら、)

認めてあった。「うむ、Q型8号とは、この人造人間ですよ。ホラ、

(そのてつわくのうえにぺんきでかいてある」かかりかんは、そのあんごうひょうをひっぱりあいながら)

その鉄枠の上にペンキで書いてある」係官は、その暗号表を引張りあいながら

(のぞきこんだ。「ほうほう、こうてんーーくびをひだりにまげる。ぎょらいーーくびをぜんごにふる。)

覗きこんだ。「ほうほう、荒天ーー首ヲ左ニ曲ゲル。魚雷ーー首ヲ前後ニ振ル。

(なるほど、いろんなあんごうがかいてあるぞ。ていさつーー「じかんがきた」とはつげんする。)

なるほど、いろんな暗号が書いてあるぞ。偵察ーー『時間ガ来タ』ト発言スル。

など

(かっそうーーひざをおる。・・・・・・これでみると、じんぞうにんげんをうごかすごうれいは、)

滑走ーー膝ヲ折ル。……これでみると、人造人間を動かす号令は、

(みじかいたんごばかりだ」「これをみると、ごうれいたんごはし、ごじゅうもありますね」)

短かい単語ばかりだ」「これを見ると、号令単語は四、五十もありますね」

(「おや、これはおかしい。どうもへんだとおもったら、あんごうひょうがいちまい、)

「オヤ、これはおかしい。どうも変だと思ったら、暗号表が一枚、

(ひきやぶられているよ。うむ、これはじゅうだいなはっけんだ。おいみんな、やぶれたあんごうひょうの)

ひき破られているよ。うむ、これは重大な発見だ。おい皆、破れた暗号表の

(いちまいをさがしてみろ」けいじたちはかちょうのめいれいで、ふたたびそのへんをたんねんにさがしてみた。)

一枚を探してみろ」刑事たちは課長の命令で、再びその辺を丹念に捜してみた。

(しかしかれらはついにそれをさがしあてることができなかった。)

しかし彼等はついにそれを捜しあてることができなかった。

(「どうも、ないようですよ」「そうか。うむ、よしよし。それでわかったぞ。)

「どうも、ないようですよ」「そうか。ウム、よしよし。それで分ったぞ。

(やっぱりこれはじんぞうにんげんにれいこんがあったわけでなく、やっぱり)

やっぱりこれは人造人間に霊魂があったわけでなく、やっぱり

(いきているにんげんが、このじんぞうにんげんをしさしたのだ。はんにんはそのあんごうひょうを)

生きている人間が、この人造人間を示唆したのだ。犯人はその暗号表を

(もっているのにそういない」おおえやまかちょうは、けつぜんといいきった。とにかくはかせの)

持っているのに相違ない」大江山課長は、決然と云い切った。とにかく博士の

(いるこのへやで、だれかがじんぞうにんげんにごうれいをかけたのにそういない。それがだれだか)

居るこの部屋で、誰かが人造人間に号令をかけたのに相違ない。それが誰だか

(わかれば、このじけんはかいけつするのであった。さあ、だれがこのへやにはいって、)

分れば、この事件は解決するのであった。さあ、誰がこの部屋に入って、

(ごうれいすることができるか。うららふじんであろうか。まづめじょうたろうだろうか。)

号令することが出来るか。ウララ夫人であろうか。馬詰丈太郎だろうか。

(またはかいがいじんじょんまくれおいしであろうか。それともほかのじんぶつだろうか。)

または怪外人ジョン・マクレオ医師であろうか。それとも外の人物だろうか。

(ばあやにつきしらべてみると、はかせはいつもしちじからしちじはんまでをゆうしょくのじかんに)

ばあやにつき調べてみると、博士はいつも七時から七時半までを夕食の時間に

(あて、それがすむといっぷくのすいみんざいをのみ、いまはかせのしたいがよこたわっている)

あて、それが済むと一服の睡眠剤をのみ、今博士の死体が横たわっている

(べっどにもぐりこんでくじはんまでちょうどにじかんというものをじゅくすいして、)

ベッドにもぐりこんで九時半まで丁度二時間というものを熟睡して、

(そのごしんやにつづくけんきゅうのせいりょくをたくわえるのがしゅうかんになっているそうである。)

その後深夜に続く研究の精力を貯えるのが習慣になっているそうである。

(するとこんやもはかせのゆうしょくごのすいみんちゅうに、なにものかがこのへやにしのびよって、)

すると今夜も博士の夕食後の睡眠中に、何者かがこの部屋に忍びよって、

(じんぞうにんげんのまえにしのじゅもんをとなえたにちがいない。はかせさつがいのしゅだんは、ようやく)

人造人間の前に死の呪文を唱えたに違いない。博士殺害の手段は、ようやく

(おぼろげながらもけんとうがついてきた。「さあ、だれがごうれいしたのだろう」かかりかんは)

朧気ながらも見当がついて来た。「さあ、誰が号令したのだろう」係官は

(きゅうしゅきょうぎした。「このうえは、かんけいしゃをぜんぶけんきょして、そのありばいを)

鳩首協議した。「この上は、関係者を全部検挙して、そのアリバイを

(たしかめるよりほかありませんよ」とおおえやまはいった。そのときほむらたんていは、)

確かめるより外ありませんよ」と大江山は云った。そのとき帆村探偵は、

(へやのかたすみにこしをおろして、れいのあんごうひょうをいくどもねっしんによみかえしていた。)

部屋の片隅に腰を下して、例の暗号表を幾度も熱心に読みかえしていた。

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