雷鳴

(かたちもないしんきろうが)

形も無い蜃気楼が

(ねっしょのまにさして)

熱暑の間に差して

(あのときああしてたらってあざわらった)

あの時ああしてたらって 嘲笑った

(くりかえしてわかってんだろ)

繰り返して分かってんだろ

(きせきなんてない)

奇跡なんてない

(さめきったげんそうなんかはのみほして)

冷めきった幻想なんかは 飲み干して

(のぞんだとおりかんぜんむけつな)

望んだ通り 完全無欠な

(きょうなどはないが)

今日などは無いが

(そのてがえらびとったきょうだ)

その手が選び取った今日だ

(すこしはあいして)

少しは愛して

(とおくさいれんがなったかえろうってさ)

遠くサイレンが鳴った 帰ろうってさ

(あとごふんだけ)

あと五分だけ

(かこにかわるまえにちゃんといわなくちゃ)

過去に変わる前に ちゃんと言わなくちゃ

(いきをとめて)

息を止めて

(おんそくとこうそくのさをかぞえた)

音速と光速の差を数えた

(またちかくなってうなった)

また近くなって唸った

(いっさいのかんしょうもなく)

一切の感傷も無く

(ようしゃないぼりゅーむで)

容赦無いボリュームで

(めをさませとさけぶ)

目を醒ませと叫ぶ

(らいめいがさいたつよくさいた)

雷鳴が裂いた 強く裂いた

(きみのせいじゃくをぜんぶうばいさるように)

君の静寂を全部奪い去るように

(せきをきってあふれだしそうな)

堰を切って 溢れ出しそうな

(とおりあめにすがってないてしまえよ)

通り雨に縋って泣いてしまえよ

(まだきこえるしょうねんのざんきょう)

まだ聞こえる 少年の残響

(「もういいかい」ってどんてんにいまもひそんで)

「もういいかい」って 曇天に今も潜んで

(わすれないでいまがすべてだ)

忘れないで 今が全てだ

(はれまをつかもうとかざしてみたって)

晴れ間を掴もうとかざしてみたって

(ぼくらのせかいはちじょうだ)

僕等の世界は地上だ

(そこつきたごいをもって)

底尽きた語彙を以て

(めかしこんでみたって)

粧し込んでみたって

(つかいふるしたじょうとうくはがらんどうだ)

使い古した常套句は 伽藍堂だ

(こうえんであそぶおさないこは)

公園で遊ぶ幼い子は

(ゆめをほこっていた)

夢を誇っていた

(そのことばはしんじつでみちていた)

その言葉は真実で満ちていた

(はくちゅうのぐらうんどに)

白昼のグラウンドに

(「よーい、どん」ってくうほうがひびいた)

「よーい、どん」って空砲が響いた

(いつしかみなはぐれてしまった)

いつしか皆はぐれてしまった

(ておくれなんておもうなよ)

手遅れなんて思うなよ

(さいしゅっそうのあいずが)

再出走の合図が

(いちにつけとひかる)

位置に付けと光る

(らいめいがさいたつよくさいた)

雷鳴が裂いた 強く裂いた

(まだいけるはずだっていわんばかりに)

まだ行ける筈だって 言わんばかりに

(わすれないでいまがすべてだ)

忘れないで 今が全てだ

(はれまをつかもうとかざしてみたって)

晴れ間を掴もうとかざしてみたって

(ぼくらのせかいはちじょうだ)

僕等の世界は地上だ

(（らいめいがさいた）（つよくさいた）)

(雷鳴が裂いた)　(強く裂いた)

(（えいえんをさいた）)

(永遠を裂いた)

(おわりないものになんてあすはこないと)

終わりないものになんて 明日は来ないと

(（らいめいがさいた）わすれないで)

(雷鳴が裂いた) 忘れないで

(（つよくさいた）わすれないで)

(強く裂いた) 忘れないで

(（えいえんをさいた）いまがすべてなんだって)

(永遠を裂いた) 今が全てなんだって

(きえゆくざんこうがいう)

消えゆく残光が云う

(のざらしのきみをうたって)

野晒しの君を謳って

(のざらしのきみをうたって)

野晒しの君を謳って