「こころ」1-49 夏目漱石

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(上)先生と私
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5 5154 B+ 5.2 98.1% 358.3 1882 35 32 2024/04/04

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問題文

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(せんせいのことばはもとよりもなおこうふんしていた。)

先生の言葉は元よりもなお昂奮していた。

(しかしわたくしのおどろいたのは、けっしてそのちょうしではなかった。)

しかし私の驚いたのは、決してその調子ではなかった。

(むしろせんせいのことばがわたくしのみみにうったえるいみそのものであった。)

むしろ先生の言葉が私の耳に訴える意味そのものであった。

(せんせいのくちからこんなじはくをきくのは、いかなわたくしにもまったくのいがいにそういなかった。)

先生の口からこんな自白を聞くのは、いかな私にも全くの意外に相違なかった。

(わたくしはせんせいのせいしつのとくしょくとして、こんなしゅうじゃくりょくをいまだかつてそうぞうしたことさえ)

私は先生の性質の特色として、こんな執着力をいまだかつて想像した事さえ

(なかった。)

なかった。

(わたくしはせんせいをもっとよわいひととしんじていた。)

私は先生をもっと弱い人と信じていた。

(そうしてそのよわくてたかいところに、わたくしのなつかしみのねをおいていた。)

そうしてその弱くて高い処に、私の懐かしみの根を置いていた。

(いちじのきぶんでせんせいにちょっとたてをついてみようとしたわたくしは、)

一時の気分で先生にちょっと盾を突いてみようとした私は、

(このことばのまえにちいさくなった。せんせいはこういった。)

この言葉の前に小さくなった。先生はこういった。

(「わたくしはひとにあざむかれたのです。しかもちのつづいたしんせきのものから)

「私は他に欺かれたのです。しかも血のつづいた親戚のものから

(あざむかれたのです。わたしはけっしてそれをわすれないのです。わたしのちちのまえには)

欺かれたのです。私は決してそれを忘れないのです。私の父の前には

(ぜんにんであったらしいかれらは、ちちのしぬやいなやゆるしがたいふとくぎかんに)

善人であったらしい彼らは、父の死ぬや否や許しがたい不徳義漢に

(かわったのです。わたしはかれらからうけたくつじょくとそんがいをこどものときからきょうまで)

変ったのです。私は彼らから受けた屈辱と損害を子供の時から今日まで

(しょわされている。おそらくしぬまでしょわされどおしでしょう。)

背負わされている。恐らく死ぬまで背負わされ通しでしょう。

(わたしはしぬまでそれをわすれることができないんだから。しかしわたしはまだ)

私は死ぬまでそれを忘れる事ができないんだから。しかし私はまだ

(ふくしゅうをしずにいる。かんがえるとわたしはこじんにたいするふくしゅういじょうのことを)

復讐をしずにいる。考えると私は個人に対する復讐以上の事を

(げんにやっているんだ。わたしはかれらをにくむばかりじゃない、かれらがだいひょうしている)

現にやっているんだ。私は彼らを憎むばかりじゃない、彼らが代表している

(にんげんというものを、いっぱんににくむことをおぼえたのだ。わたしはそれでたくさんだとおもう」)

人間というものを、一般に憎む事を覚えたのだ。私はそれで沢山だと思う」

(わたしはいしゃのことばさえくちへだせなかった。)

私は慰藉の言葉さえ口へ出せなかった。

など

(そのひのだんわもついにこれぎりではってんせずにしまった。)

その日の談話もついにこれぎりで発展せずにしまった。

(わたくしはむしろせんせいのたいどにいしゅくして、さきへすすむきがおこらなかったのである。)

私はむしろ先生の態度に畏縮して、先へ進む気が起らなかったのである。

(ふたりはしのはずれからでんしゃにのったが、しゃないではほとんどくちをきかなかった。)

二人は市の外れから電車に乗ったが、車内ではほとんど口を聞かなかった。

(でんしゃをおりるとまもなくわかれなければならなかった。)

電車を降りると間もなく別れなければならなかった。

(わかれるときのせんせいは、またかわっていた。)

別れる時の先生は、また変っていた。

(つねよりははれやかなちょうしで、)

常よりは晴やかな調子で、

(「これからろくがつまではいちばんきらくなときですね。ことによるとしょうがいでいちばん)

「これから六月までは一番気楽な時ですね。ことによると生涯で一番

(きらくかもしれない。せいだしてあそびたまえ」といった。)

気楽かも知れない。精出して遊びたまえ」といった。

(わたくしはわらってぼうしをとった。)

私は笑って帽子を脱った。

(そのときわたくしはせんせいのかおをみて、せんせいははたしてこころのどこで、)

その時私は先生の顔を見て、先生ははたして心のどこで、

(いっぱんのにんげんをにくんでいるのだろうかとうたぐった。)

一般の人間を憎んでいるのだろうかと疑った。

(そのめ、そのくち、どこにもえんせいてきのかげはさしていなかった。)

その眼、その口、どこにも厭世的の影は射していなかった。

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