山本周五郎 赤ひげ診療譚 三度目の正直 3
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | BE | 4293 | C+ | 4.6 | 92.7% | 433.9 | 2022 | 159 | 40 | 2024/11/11 |
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問題文
(よくじつ、のぼるはまだくらいうちにようじょうしょをでた。)
翌日、登はまだ暗いうちに養生所を出た。
(きょじょうのともをしているあいだに、あしのほうもかなりたっしゃになり、)
去定の供をしているあいだに、足のほうもかなり達者になり、
(さくまちょうへついたときには、とうきちはまだいえでめしをたべていた。)
佐久間町へ着いたときには、藤吉はまだ家で飯を喰べていた。
(のぼるはおちよにとうきちをとぐちまでよんでもらい、きょじょうからめいぜられたことをつげた。)
登はおちよに藤吉を戸口まで呼んでもらい、去定から命ぜられたことを告げた。
(「いのはまだねていますが」といって、とうきちはあたまをかいた、)
「猪之はまだ寝ていますが」と云って、藤吉は頭を掻いた、
(くわしいはなしをするには、うちではちょっとまずいんですがね」)
詳しい話をするには、うちではちょっとまずいんですがね」
(「しごとばへいってもいいよ」)
「仕事場へいってもいいよ」
(「しごとはかわってもらえるんですが」とうきちはきのどくそうにいった、)
「仕事は代ってもらえるんですが」藤吉は気の毒そうに云った、
(「とうりょうにことわればかわってもらえるんですが、ほりえまでいってくださいますか」)
「頭梁に断われば代ってもらえるんですが、堀江までいって下さいますか」
(「しごとをやすむことはないだろう」)
「仕事を休むことはないだろう」
(「はなすならゆっくりはなしたいし、)
「話すならゆっくり話したいし、
(なに、いまのちょうばはあっしでなくってもまにあうんです、)
なに、いまの帳場はあっしでなくってもまにあうんです、
(じゃあちょっとめしをかたづけちまいますから」)
じゃあちょっと飯を片づけちまいますから」
(のぼるはそとへでた。)
登は外へ出た。
(そこはさくまちょうよんちょうめで、うしろがかんだがわになっている。)
そこは佐久間町四丁目で、うしろが神田川になっている。
(いえはにこだてだが、こうしどのあるこぢんまりしたつくりだし、)
家は二戸建てだが、格子戸のある小ぢんまりした造りだし、
(となりきんじょもにたようなしもたやがおおく、したまちにしてはかんせいないっかくをなしていた。)
隣り近所も似たようなしもたやが多く、下町にしては閑静な一画をなしていた。
(ーーでてきたとうきちは、きながしにひらぐけをしめあさうらをはいていた。)
ーー出て来た藤吉は、着流しにひらぐけをしめ麻裏をはいていた。
(しごとはやすむつもりらしい、またせてすみません、といってあるきだしたが、)
仕事は休むつもりらしい、待たせて済みません、と云って歩きだしたが、
(ふとおもいついたようにたちどまり、ちょっとみておいてもらいたいものがあると、)
ふと思いついたように立停り、ちょっと見ておいてもらいたいものがあると、
(いえのわきをうらへまわっていった。)
家の脇を裏へまわっていった。
(うらにはもうひとかわ、かんだがわにめんしたいえがならんでおり、)
裏にはもうひとかわ、神田川に面した家が並んでおり、
(こっちのいえとのあいだに、はばきゅうしゃくあまりのあきちがあった。)
こっちの家とのあいだに、幅九尺あまりの空地があった。
(そこはりょうほうのいえのかってぐちがむきあっていて、いどもあるし、)
そこは両方の家の勝手口が向き合っていて、井戸もあるし、
(てづくりのたなにぼんさいをかざったり、たけがきをまわして、うえきやはなをそだてていたりした。)
手作りの棚に盆栽を飾ったり、竹垣をまわして、植木や花を育てていたりした。
(「これをみてください」)
「これを見て下さい」
(とうきちはじぶんのいえのかってぐちのところで、そういいながら、)
藤吉は自分の家の勝手口のところで、そう云いながら、
(そこにならんでいるうえきばちをゆびさした。)
そこに並んでいる植木鉢を指さした。
(やすもののすやきのはちがななつあり、それぞれなにかちいさななえぎがうわっているが、)
安物の素焼きの鉢が七つあり、それぞれなにか小さな苗木が植わっているが、
(のぼるにはそれがなにをうえてあるのか、まったくみわけがつかなかった。)
登にはそれがなにを植えてあるのか、まったく見分けがつかなかった。
(「いのがうえたんですよ」ととうきちはかってぐちのほうをきにしながらいった、)
「猪之が植えたんですよ」と藤吉は勝手口のほうを気にしながら云った、
(「よくみてください、みんなさかさまです」)
「よく見て下さい、みんな逆さまです」
(「さかさまとは」)
「逆さまとは」
(「えだのほうをうめて、ねをうえへだしてあるんです」)
「枝のほうを埋めて、根を上へ出してあるんです」
(のぼるはほうといった。なるほど、よくみるとはちのつちからでているのはねである。)
登はほうといった。なるほど、よく見ると鉢の土から出ているのは根である。
(もっともみなねをうえにしてうえてあり、)
もっともみな根を上にして植えてあり、
(それでなんのきかわからなかったのであった。)
それでなんの木かわからなかったのであった。
(「どうしてこんなうえかたをしたんだ」)
「どうしてこんな植えかたをしたんだ」
(「それはあとではなします」といってとうきちはあるきだした、「いきましょうか」)
「それはあとで話します」と云って藤吉は歩きだした、「いきましょうか」
(あたらしばしをわたって、にほんばしのほうへむかいながら、とうきちははなしはじめた。)
あたらし橋を渡って、日本橋のほうへ向かいながら、藤吉は話し始めた。