孫氏兵法書 - 軍争編 ②
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問題文
(ゆえにへいはさをもってたち、りをもってうごき、ぶんごうをもってへんをなすものなり。)
故に兵は詐を以って立ち、利を以って動き、分合を以って変を爲者也。
(ゆえにそのはやきことかぜのごとく、そのしずかなることはやしのごとく、)
故に其の疾きこと風の如く、其の徐かなること林の如く、
(しんりゃくすることひのごとく、うごかざることやまのごとく、)
侵掠すること火の如く、動かざること山の如く、
(しりかたきこといんのごとく、うごくことらいしんのごとし。)
知り難きこと陰の如く、動くこと雷震の如し。
(きょうをかすむるにはしゅうをわかち、ちをひろむるにはりをわかち、けんをかけてうごく。)
郷を掠むるには衆を分かち、地を廓むるには利を分かち、権を懸けて動く。
(うちょくのけいをせんちするものはかつ。これぐんそうのほうなり。)
迂直の計を先知する者は勝つ。此れ軍争之法也。
(ぐんせいにいわく、)
軍政に曰く、
(いうともあいきこえず、ゆえにきんこをつくる。しめすともあいみえず、ゆえにせいきをつくる。)
言うとも相聞えず、故に金鼓を為る。視すとも相見えず、故に旌旗を為る。
(それきんこ・せいきはひとのじもくをひとつにするゆえんなり。)
それ金鼓・旌旗は人の耳目を一にする所以也。
(ひとすでにせんいつなれば、すなわちゆうじゃもひとりすすむをえず、きょうじゃもひとりしりぞくをえず。)
人既に専一なれば、則ち勇者も一人進むを得ず、怯者も一人退くを得ず。
(これしゅうをもちうるのほうなり。)
此れ衆を用うる之法也。
(ゆえにやせんにかこおおく、ちゅうせんにせいきおおきは、ひとのじもくをかうるゆえんなり。)
故に夜戦に火鼓多く、昼戦ちに旌旗多きは、人之耳目を変うる所以也。
(ゆえにさんぐんにはきをうばうべく、しょうぐんにはこころをうばうべし。)
故に三軍には気を奪うべく、将軍には心を奪うべし。
(これゆえにあさのきはえい、ひるのきはだ、くれのきはき。)
是故に朝の気は鋭、昼の気は惰、暮の気は帰。
(ゆえによくへいをもちうるものは、そのえいきをさけてそのだきをうつ。)
故に善く兵を用うる者は、其の鋭気を避けて其の惰帰を撃つ。
(これきをおさむるものなり。)
此れ気を治むる者也。
(ちをもってらんをまち、せいをもってかをまつ。これこころをおさむるものなり。)
治を以って乱を待ち、静を以って譁を待つ。此れ心を治むる者也。
(ちかきをもってとおきをまち、いつをもってろうをまち、ほうをもってきをまつ。)
近きを以って遠きを待ち、佚を以って労を待ち、飽を以って饑を待つ。
(これちからをおさむるものなり。)
此れ力を治むる者也。
(せいせいのはたをむかうることなく、どうどうのじんをうつことなし。これへんをおさむるものなり。)
正々の旗を邀うること無く、堂々の陳を撃つこと無し。此れ変を治むる者也。
(ゆえにへいをもちうるのほうは、こうりょうにはむかうことなかれ、)
故に兵を用うるの法は、高陵には向かうこと勿れ、
(おかをせにするにはむかうことなかれ、いつわりにぐるにはしたがうことなかれ、)
丘を背にするには逆うこと勿れ、佯り北ぐるには従うこと勿れ、
(えいそつにはせむることなかれ、じへいにはくらうことなかれ、きしにはとどむることなかれ、)
鋭卒には攻むること勿れ、餌兵には食らうこと勿れ、帰師には遏むること勿れ、
(いしにかならずかき、きゅうこうにはせまることなかれ。これへいをもちうるのほうなり。)
囲師には必ず闕き、窮寇には追ること勿れ。此れ兵を用うるの法也。