聖母マリアの子供1

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投稿者投稿者なぱみいいね0お気に入り登録
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(おおきなもりのすぐちかくにきこりのふうふがすんでいました。)

大きな森のすぐ近くに木こりの夫婦が住んでいました。

(こどもはひとりだけで、3さいのおんなのこでした。)

子供は1人だけで、3歳の女の子でした。

(しかし、ふうふはとてもまずしかったのでもうまいにちたべるぱんがなくなり)

しかし、夫婦はとても貧しかったのでもう毎日食べるパンがなくなり

(どうしたらこどもにたべものをてにいれられるかわかりませんでした。)

どうしたら子供に食べ物を手に入れられるかわかりませんでした。

(あるあさ、きこりはかなしみにくれながらもりのしごとにでかけました。)

ある朝、木こりは悲しみに暮れながら森の仕事に出かけました。

(そしてきをきっていると、とつぜん、あたまにかがやくほしのかんむりをつけているせのたかい)

そして木を切っていると、突然、頭に輝く星の冠をつけている背の高い

(うつくしいおんなのひとがまえにたち、いいました。)

美しい女の人が前に立ち、言いました。

(「わたしはせいぼまりあ、いえすきりすとのははです。おまえはまずしくこまっていますね。)

「私は聖母マリア、イエス・キリストの母です。お前は貧しく困っていますね。

(こどもをわたしのところにつかわしなさい。そのこをつれていき、ははとなり)

子供を私のところにつかわしなさい。その子を連れて行き、母となり

(せわをします。」きこりはそのことばにしたがい、こどもをつれていき、)

世話をします。」木こりはその言葉に従い、子供を連れて行き、

(せいぼまりあにわたしました。そしてせいぼはこどもをてんごくへとつれていきました。)

聖母マリアに渡しました。そして聖母は子供を天国へと連れて行きました。

(てんごくでこどもはじゅんちょうにせいかつし、さとうかしをたべ、あまいみるくをのみました。)

天国で子供は順調に生活し、砂糖菓子を食べ、甘いミルクを飲みました。

(またふくはきんでできており、てんしたちとあそびました。)

また服は金でできており、天使たちと遊びました。

(むすめが14さいになったあるひ、せいぼまりあはよんでいいました。)

娘が14歳になったある日、聖母マリアは呼んで言いました。

(「こどもよ、わたしはながいたびにでかけます。だからおまえがてんごくの13のとびらのかぎを)

「子供よ、私は長い旅に出かけます。だからお前が天国の13の扉の鍵を

(かんりするのです。このうちの12のとびらはあけてなかにあるえいこうをみてもよいです。)

管理するのです。このうちの12の扉は開けて中にある栄光を見ても良いです。

(しかし13ばんめは、このちいさなかぎはそのとびらのものですがあけるのをきんじます。)

しかし13番目は、この小さな鍵はその扉のものですが開けるのを禁じます。

(あけないようにちゅういしなさい。さもないとおまえにふこうがふりかかります。」)

開けないように注意しなさい。さもないとお前に不幸が降りかかります。」

(むすめはしたがうとやくそくしました。)

娘は従うと約束しました。

(そしてせいぼまりあがでかけていなくなると、むすめはてんごくのへやをしらべはじめました。)

そして聖母マリアが出かけていなくなると、娘は天国の部屋を調べ始めました。

など

(まいにちひとへやずつあけていき、とうとう12へやをひとまわりしました。)

毎日一部屋ずつ開けていき、とうとう12部屋をひと回りしました。

(それぞれのへやにはおおきなひかりのまんなかにしとのひとりがすわっていました。)

それぞれの部屋には大きな光の真ん中に使徒の1人が座っていました。

(そしてむすめはそのそうごんさとごうかさによろこび、いつもついてきているてんしたちも)

そして娘はその荘厳さと豪華さに喜び、いつも着いてきている天使たちも

(いっしょによろこびました。それできんじられたとびらだけがのこりました。)

一緒に喜びました。それで禁じられた扉だけが残りました。

(むすめはそのとびらのうしろになにがかくされているのかしりたくてたまりませんでした。)

娘はその扉の後ろに何が隠されているのか知りたくてたまりませんでした。

(それでてんしたちに、「ちゃんとあけるのではないし、なかにもはいらなくて)

それで天使たちに、「ちゃんと開けるのではないし、中にも入らなくて

(ただかぎをあけてあいたところからちょっとなかをのぞくだけよ。」といいました。)

ただ鍵を開けて空いたところからちょっと中を覗くだけよ。」と言いました。

(「ああ、だめよ。それはつみになるわ。まりあさまはきんじているのよ。)

「ああ、だめよ。それは罪になるわ。マリア様は禁じているのよ。

(そんなことをしたらあなたはつみをおかすことになるわ。」)

そんなことをしたらあなたは罪を犯すことになるわ。」

(とてんしたちはいいました。)

と天使たちは言いました。

(するとむすめはだまりましたが、みたいというきもちはしずまることなく)

すると娘は黙りましたが、見たいという気持ちはしずまることなく

(いつまでもこころにのこり、むすめをくるしめきがやすまることがありませんでした。)

いつまでも心に残り、娘を苦しめ気が休まることがありませんでした。

(そしててんしたちがでかけてしまったあるとき「いまはわたしひとりだわ。)

そして天使たちが出かけてしまったあるとき「今は私1人だわ。

(なかをのぞけるのよ。そうしたってだれもしりっこないもの。」とおもいました。)

中を覗けるのよ。そうしたって誰も知りっこないもの。」と思いました。

(かぎをさがしだしてにもったら、つぎはじょうにさしこみ、さしこんだらかぎをまわしました。)

鍵を探し出し手に持ったら、次は錠に差し込み、差し込んだら鍵を回しました。

(するととびらはぱっとあき、ほのおとごうかさのなかにさんみいったいがすわっているのが)

すると扉はぱっと開き、炎と豪華さの中に三位一体が座っているのが

(みえました。むすめはそこにしばらくとどまって、ぼうぜんとして)

見えました。娘はそこにしばらくとどまって、ぼうぜんとして

(あらゆるものをながめていました。それからゆびですこしひかりにふれてみると)

あらゆるものを眺めていました。それから指で少し光に触れてみると

(ゆびはまったくきんになりました。)

指は全く金になりました。

(とっさにおおきなきょうふにとらわれ、むすめはあらあらしくとびらをしめにげました。)

咄嗟に大きな恐怖に囚われ、娘は荒々しく扉を閉め逃げました。

(どうしてもきょうふはさらず、しんぞうはどきどきしっぱなしでしずまりませんでした。)

どうしても恐怖は去らず、心臓はどきどきしっぱなしでしずまりませんでした。

(またきんもどんなにすってもあらってもゆびからとれませんでした。)

また金もどんなに擦っても洗っても指から取れませんでした。

(まもなくせいぼまりあがたびからかえってきてむすめをまえによび、)

間も無く聖母マリアが旅から帰ってきて娘を前に呼び、

(てんごくのかぎをかえしてくれるようにたのみました。むすめがかぎたばをわたすとせいぼまりあは)

天国の鍵を返してくれるように頼みました。娘が鍵束を渡すと聖母マリアは

(めをのぞきこみ「13ばんめのとびらもあけませんでしたか?」といいました。)

眼を覗き込み「13番目の扉も開けませんでしたか?」といいました。

(「いいえ。」とむすめはこたえました。せいぼまりあはてでむすめのこころにふれ、)

「いいえ。」と娘は答えました。聖母マリアは手で娘の心に触れ、

(どきどきしているのをかんじたので、むすめがめいれいにそむきとびらをあけたことを)

どきどきしているのを感じたので、娘が命令に背き扉を開けたことを

(みぬきました。それでもういちど「たしかにそうしなかったのですか?」)

見抜きました。それでもう一度「確かにそうしなかったのですか?」

(とたずねました。「はい。」とむすめは2かいめもこたえました。)

と尋ねました。「はい。」と娘は2回目も答えました。

(そのときせいぼまりあはてんのほのおにふれたことからきんになったゆびにきづき、)

そのとき聖母マリアは天の炎に触れたことから金になった指に気づき、

(こどもがつみをおかしたことをみぬき、3かいめに「やりませんでしたか。」)

子供が罪を犯したことを見抜き、3回目に「やりませんでしたか。」

(といいました。「はい。」とむすめは3かいめもこたえました。)

と言いました。「はい。」と娘は3回目も答えました。

(するとせいぼまりあは「おまえはめいれいにそむいたばかりかうそもついたね。)

すると聖母マリアは「お前は命令に背いたばかりか嘘もついたね。

(おまえはもうてんごくにいるしかくはない。」といいました。)

お前はもう天国にいる資格はない。」と言いました。

(それからむすめはふかいねむりにおち、めをさましたときにはげかいのこうやのまんなかに)

それから娘は深い眠りに落ち、目を覚ました時には下界の荒野の真ん中に

(よこたわっていました。むすめはさけびたかったのですがこえがでませんでした。)

横たわっていました。娘は叫びたかったのですが声が出ませんでした。

(むすめはぱっととびおきてにげだしたいとおもいました。しかしどこへむかおうと)

娘はぱっと飛び起きて逃げ出したいと思いました。しかしどこへ向かおうと

(ぬけだせないいばらのあついかきにいつもさえぎられてしまうのでした。)

抜け出せないいばらの熱い垣にいつもさえぎられてしまうのでした。

(むすめがとじこめられていたさばくにふるいくぼみのあるきがたっていました。)

娘が閉じ込められていた砂漠に古いくぼみのある木が立っていました。

(そしてそれをむすめのすまいにしなければなりませんでした。)

そしてそれを娘の住まいにしなければなりませんでした。

(よるがくるとそのなかにいりこみそこでねむりました。)

夜が来るとその中に入り込みそこで眠りました。

(ここではまたあらしやあめをしのげましたが、みじめなせいかつでした。むすめはてんごくで)

ここではまた嵐や雨をしのげましたが、惨めな生活でした。娘は天国で

(どれだけしあわせだったか、てんしたちがどれだけじぶんといっしょにあそんだかをおもいだして)

どれだけ幸せだったか、天使たちがどれだけ自分と一緒に遊んだかを思い出して

(はげしくなきました。きのねややせいのいちごだけがむすめのたべものでした。)

激しく泣きました。木の根や野生のイチゴだけが娘の食べ物でした。

(これらをもとめてむすめはいけるだけさがしました。)

これらを求めて娘はいけるだけ探しました。

(あきにはおちたきのみやはをひろい、あなのなかへはこびました。)

秋には落ちた木の実や葉を拾い、穴の中へ運びました。

(きのみはふゆのあいだのしょくりょうでゆきとこおりになったときにこおらないようにかわいそうなちいさな)

木の実は冬の間の食糧で雪と氷になった時に凍らないように可哀そうな小さな

(どうぶつのようにはっぱのなかにいれました。)

動物のように葉っぱの中に入れました。

(まもなくむすめのふくはぼろぼろになり、いちまいいちまいつぎつぎとからだからおちてしまいました。)

間も無く娘の服はボロボロになり、一枚一枚次々と体から落ちてしまいました。

(しかし、たいようがふたたびあたたかくてってくると、すぐむすめはそとにでて)

しかし、太陽が再び温かく照ってくると、すぐ娘は外に出て

(きのまえにすわりました。むすめのながいかみはまんとのようにむすめのまわりをかぶっていました。)

木の前に座りました。娘の長い髪はマントのように娘の周りを被っていました。

(こうしてむすめはまいとしまいとしすわって、せいかつのくるしみとみじめさをかんじていました。)

こうして娘は毎年毎年座って、生活の苦しみと惨めさを感じていました。

(あるひ、きぎがふたたびみずみずしいみどりにおおわれたころ、そのくにのおうさまがもりで)

ある日、木々が再びみずみずしい緑に覆われた頃、その国の王様が森で

(かりをしていました。のろじかをおいかけて、そのしかがこのもりをかこっているやぶに)

狩をしていました。ノロジカを追いかけて、その鹿がこの森を囲っているやぶに

(にげたので、おうさまはうまをふりやぶをかきわけ、かたなでみちをつけました。)

逃げたので、王様は馬を降りやぶをかきわけ、刀で道をつけました。

(とうとうむりやりみちをとおっていったとき、きのしたにすばらしくうつくしいおとめが)

とうとう無理やり道を通って行った時、木下にすばらしく美しい乙女が

(すわっているのがみえました。むすめはそこにすわり、あしもとまできんぱつでおおわれてました、)

座っているのが見えました。娘はそこに座り、足元まで金髪で覆われてました、

(おうさまはじっとたちつくし、おどろきにみたされながらむすめをみつめました。)

王様はじっと立ち尽くし、驚きに満たされながら娘を見つめました。

(それからむすめにはないしかけていいました。)

それから娘に話しかけて言いました。

(「きみはだれ?どうしてここのこうやにすわっているの?」)

「君は誰?どうしてここの荒野に座っているの?」

(しかしむすめはなにもこたえませんでした。というのはむすめはくちをひらけなかったからです。)

しかし娘は何も答えませんでした。というのは娘は口を開けなかったからです。

(おうさまはつづけていいました。「わたしといっしょにおしろにきませんか?」)

王様は続けて言いました。「私と一緒にお城に来ませんか?」

(そのときむすめはすこしうなづきました。おうさまはむすめをりょううでにかかえてうまのところまではこび)

その時娘は少しうなづきました。王様は娘を両腕に抱えて馬のところまで運び

(いっしょにうまにのってかえりました。おしろにつくとおうさまはむすめにうつくしいころもふくをきさせ)

一緒に馬に乗って帰りました。お城に着くと王様は娘に美しい衣服を着させ

(あらゆるものをたくさんあたえました。むすめはくちがいえなかったけれど、それでも)

あらゆるものをたくさん与えました。娘は口が言えなかったけれど、それでも

(とてもうつくしくみりょくてきだったのでおうさまはこころからむすめをあいするようになり)

とても美しく魅力的だったので王様は心から娘を愛するようになり

(まもなくむすめとけっこんしました。)

間も無く娘と結婚しました。

(ほぼ1ねんがすぎて、おきさきさまはおとこのこをうみました。そのあとすぐべっどでひとり)

ほぼ1年が過ぎて、お妃様は男の子を産みました。その後すぐベッドで1人

(ねていたよる、せいぼまりあがおきさきさまのところにあらわれていいました。)

寝ていた夜、聖母マリアがお妃様のところに現れて言いました。

(「もしおまえがしんじつをいい、きんじられたとびらをあけたとこくはくするなら、)

「もしお前が真実を言い、禁じられた扉を開けたと告白するなら、

(おまえのくちをあきことばをはなせるようにしてあげよう。しかし、もしおまえがつみを)

お前の口を開き言葉を話せるようにしてあげよう。しかし、もしお前が罪を

(とどめあくまでもひていするなら、おまえのうまれたばかりのこどもを)

とどめあくまでも否定するなら、お前の生まれたばかりの子供を

(つれていきますよ。」それからおきさきさまはこたえることがゆるされましたが)

連れて行きますよ。」それからお妃様は答えることが許されましたが

(がんこに「いいえ、わたしはきんじられたとびらをあけませんでした。」といいました。)

頑固に「いいえ、私は禁じられた扉を開けませんでした。」と言いました。

(それでせいぼまりあはおきさきさまのりょううでからあかんぼうをとりあげ、そのこといっしょに)

それで聖母マリアはお妃様の両腕から赤ん坊を取り上げ、その子と一緒に

(きえてしまいました。つぎのあさ、こどもがみつからなかったとき)

消えてしまいました。次の朝、子供が見つからなかった時

(おきさきさまはひとくいだ、じぶんのこどもをころしてしまったとひとびとのあいだでささやかれました。)

お妃様は人喰いだ、自分の子供を殺してしまったと人々の間で囁かれました。

(おきさきさまにはこれがみんなきこえていても、それはちがうということを)

お妃様にはこれがみんな聞こえていても、それは違うということを

(なにもいえませんでした。しかし、おうさまはそのうわさをしんじようとはしませんでした。)

何も言えませんでした。しかし、王様はその噂を信じようとはしませんでした。

(というのはおきさきをとてもあいしていたからです。)

というのはお妃をとても愛していたからです。

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