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プレイ回数573難易度(5.0) 5154打 長文 長文モード推奨
師匠シリーズ
マイタイピングに師匠シリーズが沢山あったと思ったのですが、なくなってしまっていたので、作成しました。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 daifuku 3596 D+ 3.8 93.7% 1340.0 5161 342 85 2024/10/29

関連タイピング

問題文

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(べつのせかいへのどあをもっているひとは、たしかにいるとおもう。)

別の世界へのドアを持っている人は、確かにいると思う。

(にちじょうのとなりで、そういうひとがいきづいているのをぼくらはたいていしらずにいきているし、)

日常の隣で、そういう人が息づいているのを僕らは大抵知らずに生きているし、

(いきていける。しかしふとしたことで、そんなひとにふれたときに、)

生きていける。しかしふとしたことで、そんな人に触れたときに、

(いつものにちじょうはあっけなくへんようしていく。ぼくにとって、そのにちじょうのとなりの)

いつもの日常はあっけなく変容していく。僕にとって、その日常の隣の

(どあをあけてくれるひとはふたりいた。それだけのことだったのだろう。)

ドアを開けてくれる人は二人いた。それだけのことだったのだろう。

(だいがくいっかいせいころ、じもとけいのねっとけいじばんのおかるとふぉーらむに)

大学1回生ころ、地元系のネット掲示板のオカルトフォーラムに

(でいりしていた。そこでしりあったひとびとは、いわば、)

出入りしていた。そこで知り合った人々は、いわば、

(なんちゃっておかるとまにあであり、)

なんちゃってオカルトマニアであり、

(こうこうまでのぼくならばすなおにかんしんしていただろうけれど、だいがくにはいってそうそうに、)

高校までの僕ならば素直に関心していただろうけれど、大学に入って早々に、

(ししょうとあおぐべききょうれつなじんぶつにあってしまっていたので、)

師匠と仰ぐべき強烈な人物に会ってしまっていたので、

(ものたりないぶぶんがあった。しかし、こうれいじっけんなどをこのんでやっている)

物足りない部分があった。しかし、降霊実験などを好んでやっている

(くろまじゅつけいのふりーくたちにまじってあそんでいると、ひとりきょうみぶかいじんぶつにであった。)

黒魔術系のフリークたちに混じって遊んでいると、1人興味深い人物に出会った

(「きょうすけ」というはんどるねーむのじょせいで、)

「京介」というハンドルネームの女性で、

(ねんれいはぼくより2,3さいうえだったとおもう。じめじめしたいんしょうのあるくろまじゅつけいの)

年歳は僕より2,3歳上だったと思う。じめじめした印象のある黒魔術系の

(ぐるーぷにいるわりにはからっとしたひとで、せがたかくやたらおとこまえだった。)

グループにいるわりにはカラっとした人で、背が高くやたら男前だった。

(そのせいかおふであってもきょーすけ、きょーすけとよばれていて、)

そのせいかオフで会ってもキョースケ、キョースケと呼ばれていて、

(ほんにんもそれがきにいっているようだった。あるおふのせきで「ゆめ」のはなしになった。)

本人もそれが気にいっているようだった。あるオフの席で「夢」の話になった。

(よちむだとか、そういうはなしがみんなすきなので、もりあがっていたが)

予知夢だとか、そういう話がみんな好きなので、盛り上がっていたが

(きょうすけさんだけだまってびーるをのんでいる。)

京介さんだけ黙ってビールを飲んでいる。

(ぼくが、どうしたんですか、ときくとひとこと「わたしはゆめをみない」きげんをそこねそうな)

僕が、どうしたんですか、と聞くと一言「私は夢をみない」機嫌を損ねそうな

など

(きがしてそれいじょうつっこまなかったが、そのひとことがずっときになっていた。)

気がしてそれ以上突っ込まなかったが、その一言がずっと気になっていた。

(だいがくせいになってはじめてのなつやすみにはいり、ぼくはみずをえたさかなのように)

大学生になってはじめての夏休みに入り、僕は水を得た魚のように

(しんれいすぽっとめぐりなど、おかるとざんまいのせいかつをおくっていた。)

心霊スポットめぐりなど、オカルト三昧の生活を送っていた。

(そんなあるひ、めをさますとみしらぬへやにいたのだった。)

そんなある日、目を覚ますと見知らぬ部屋にいたのだった。

(くらやみのなかで、ねていたそふぁーからからだをおこす。ふくがあるこーるくさい。)

暗闇の中で、寝ていたソファーから身体を起こす。服がアルコール臭い。

(よいつぶれてねてしまったらしい。かいてんのおそいあたまできのうのことをおもいだそうと、)

酔いつぶれて寝てしまったらしい。回転の遅い頭で昨日のことを思い出そうと、

(あたりをみまわす。あつでのかーてんからかすかなつきのひかりがさし、そのなかでいっしゅん、)

あたりを見回す。厚手のカーテンから幽かな月の光が射し、その中で一瞬、

(やみにきらめくものがあった。すいそうとおぼしきりんかくのなかに、にびいろのうろこがひらめいて、)

闇に煌くものがあった。水槽と思しき輪郭のなかに、にび色の鱗が閃いて、

(そしてやみのおくへときえていった。)

そして闇の奥へと消えていった。

(なんだかえろてぃっくにかんじてみょうなこうふんをおぼえたが、すぐにすいまが)

なんだかエロティックに感じて妙な興奮を覚えたが、すぐに睡魔が

(おそってきてそのままたおれてねてしまった。)

襲ってきてそのまま倒れて寝てしまった。

(つぎにめをさましたときは、かーてんからあさのひかりがさしこんでいた。)

次に目を覚ましたときは、カーテンから朝の光が射しこんでいた。

(「おきろ」めのまえにきょうすけさんのかおがあって、おもわず「ええ!?」と)

「起きろ」目の前に京介さんの顔があって、思わず「ええ!?」と

(まぬけなこえをあげてしまった。「そんなにふまんか」きょうすけさんはじょうきょうを)

間抜けな声をあげてしまった。「そんなに不満か」京介さんは状況を

(はあくしているようで、おしえてくれた。どうやら、さくやのおふでのえんかいのあと、)

把握しているようで、教えてくれた。どうやら、昨夜のオフでの宴会のあと、

(かんぜんによいつぶれたおれをどうするか、のこされたじょせいじんたちできょうぎしたけっか、)

完全に酔いつぶれた俺をどうするか、残された女性陣たちで協議した結果、

(ちかくにすんでいたきょうすけさんがじぶんのまんしょんまでひきずってきたらしい。)

近くに住んでいた京介さんが自分のマンションまで引きずって来たらしい。

(もうしわけなくて、とちゅうからせいざをしてきいた。まあきにするなといって、)

申し訳なくて、途中から正座をして聞いた。まあ気にするなと言って、

(きょうすけさんはこーひーをいれてくれた。そのとき、へやのすみにきのうのよるに)

京介さんはコーヒーを淹れてくれた。その時、部屋の隅に昨日の夜に

(みたすいそうがあるのにきがついたが、ふしぎなことになかはみずしかはいっていない。)

見た水槽があるのに気がついたが、不思議なことに中は水しか入っていない。

(「よるはさかながいたようにおもったんですが」それをきいたとき、)

「夜は魚がいたように思ったんですが」それを聞いたとき、

(きょうすけさんはめをみひらいた。「みえたのか」と、みをのりだす。)

京介さんは目を見開いた。「見えたのか」と、身を乗り出す。

(うなずくと、「そうか」といってきょうすけさんはきみょうなはなしをはじめたのだった。きょうすけさんが)

頷くと、「そうか」と言って京介さんは奇妙な話を始めたのだった。京介さんが

(じょしこうにかよっていたころ、がっこうでくろまじゅつまがいのげーむが)

女子高に通っていたころ、学校で黒魔術まがいのゲームが

(はやったという。うらないがおもだったが、いちぶのぐるーぷがそれをえすかれーとさせ)

流行ったという。占いが主だったが、一部のグループがそれをエスカレートさせ

(けがにんがでるようなことまでしていたらしい。きょうすけさんはそのぐるーぷの)

怪我人が出るようなことまでしていたらしい。京介さんはそのグループの

(りーだーとしたしく、なんどかひみつのかいごうにさんかしていた。)

リーダーと親しく、何度か秘密の会合に参加していた。

(あるとき、そのりーだーがまがおで「あくまをよぼうとおもうのよ」といったという。)

ある時、そのリーダーが真顔で「悪魔を呼ぼうと思うのよ」と言ったという。

(そのなまえのないあくまは、よびだしたにんげんの「あるもの」をたべるかわりに、)

その名前のない悪魔は、呼び出した人間の「あるもの」を食べるかわりに、

(さいやくをまねくのだという。「ねがいをかなえてくれるんじゃないんですか?」)

災厄を招くのだという。「願いを叶えてくれるんじゃないんですか?」

(おもわずくちをはさんだ。ふつうはそうだろう。)

思わず口をはさんだ。普通はそうだろう。

(しかし、「だからこそやってみたかった」ときょうすけさんはいう。)

しかし、「だからこそやってみたかった」と京介さんは言う。

(きょうすけさんをしょうかんしゃとして、そのぎしきがおこなわれた。)

京介さんを召喚者として、その儀式が行われた。

(そのさいちゅうにきょうすけさんとりーだーをのぞいて、ぜんいんがてんかんしょうじょうをおこし、)

その最中に京介さんとリーダーを除いて、全員が癲癇症状を起こし、

(そのくろまじゅつさーくるはいごかつどうしなくなったそうだ。「でたんですか。あくまは」)

その黒魔術サークルは以後活動しなくなったそうだ。「出たんですか。悪魔は」

(きょうすけさんはいっしゅんめをさまよわせて、「あれは、なんなんだろうな」といって、)

京介さんは一瞬目を彷徨わせて、「あれは、なんなんだろうな」と言って、

(それきりだまった。おかるとずきのぼくでも、あくまなんてもちだされると)

それきり黙った。オカルト好きの僕でも、悪魔なんて持ち出されると

(ちょっとひくぶぶんもあったが、ようは「それをなんとよぶか」なのだ)

ちょっと引く部分もあったが、ようは「それをなんと呼ぶか」なのだ

(ということをおかるとざんまいのせいかつのなかにまなんでいたので、)

ということをオカルト三昧の生活の中に学んでいたので、

(わらいとばすことはなかった。「ゆめをたべるんですね、そいつは」)

笑い飛ばすことはなかった。「夢を食べるんですね、そいつは」

(あのきになっていたひとことの、いみとつながった。)

あの気になっていた一言の、意味とつながった。

(しかしきょうすけさんはくびをふった。「あくむをたべるんだ」)

しかし京介さんは首を振った。「悪夢を食べるんだ」

(そのことばをきいて、せすじにむしがはうようなきもちわるさにおそわれる。)

その言葉を聞いて、背筋に虫が這うような気持ち悪さに襲われる。

(きょうすけさんはたしかに「わたしはゆめをみない」といった。)

京介さんはたしかに「私は夢をみない」と言った。

(なのにそのあくまは、あくむしかたべない・・・そのいみをかんがえて、ぞっとする。)

なのにその悪魔は、悪夢しか食べない・・・その意味を考えて、ぞっとする。

(きょうすけさんは、ねむるとかんぜんにいしきがだんぜつしたままつぎのあさをむかえるのだという。)

京介さんは、眠ると完全に意識が断絶したまま次の朝を迎えるのだという。

(いつもめがさめると、どこかからだのいちぶがうしなわれたようなきぶんになる・・・)

いつも目が覚めると、どこか身体の一部が失われたような気分になる・・・

(「そのすいそうにいたさかなはなんですか」)

「その水槽にいた魚はなんですか」

(「わからない。わたしはみたことはないから。たぶん、わたしのあくむを)

「わからない。私は見たことはないから。たぶん、私の悪夢を

(たべているものか、それとも・・・」わたしのあくむそのものなのだろう。)

食べているモノか、それとも・・・」私の悪夢そのものなのだろう。

(そういってわらうのだった。きょうすけさんがねむっているあいだにしかあらわれず、)

そう言って笑うのだった。京介さんが眠っている間にしか現れず、

(しかもそれがみえたにんげんはいままでふたりしかいなかったそうだ。)

しかもそれが見えた人間は今まで二人しかいなかったそうだ。

(「そのすいそうのあるこのへやでしか、わたしはねむれない」)

「その水槽のあるこの部屋でしか、私は眠れない」

(どんなときでもへやにかえってねるという。)

どんな時でも部屋に帰って寝るという。

(りょこうとか、どうしてもとまらないといけないときもあるでしょう?)

旅行とか、どうしても泊まらないといけない時もあるでしょう?

(ととうと「そんなときはねない」とあっさりこたえた。)

と問うと「そんな時は寝ない」とあっさり答えた。

(たしかに、のみかいのせきでもつぶれたところをみたことがない。)

たしかに、飲み会の席でもつぶれたところをみたことがない。

(そんなにあくむをみるのがこわいんですか、ときこうとしたが、とめた。)

そんなに悪夢をみるのが怖いんですか、と聞こうとしたが、止めた。

(たぶん、あくむをたべるというあくまがまねいたさいやくこそ、そのあくむなのだろうから。)

たぶん、悪夢を食べるという悪魔が招いた災厄こそ、その悪夢なのだろうから。

(ぼくはこのはなしをまるまるしんじたわけではない。)

僕はこの話を丸々信じたわけではない。

(きょうすけさんのただのおもいこみだとわらうじぶんもいる。)

京介さんのただの思い込みだと笑う自分もいる。

(ただきのうのよるの、くらやみのなかでひらめいたうろこと、なにごともないようにぼくのめのまえで)

ただ昨日の夜の、暗闇の中で閃いた鱗と、何事もないように僕の目の前で

(こーひーをのむひとの、つよいめのひかりが、ぼくのにちじょうのそのとなりへとつうじるどあを、)

コーヒーを飲む人の、強い目の光が、僕の日常のその隣へと通じるドアを、

(あけてしまうきがするのだった。「さかなもゆめをみるだろうか」)

開けてしまう気がするのだった。「魚も夢をみるだろうか」

(ふいにきょうすけさんはつぶやいたけれど、ぼくはなにもいわなかった。)

ふいに京介さんはつぶやいたけれど、僕はなにも言わなかった。

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