葬祭-3-(完)
師匠シリーズ
マイタイピングに師匠シリーズが沢山あったと思ったのですが、なくなってまっていたので、作成しました。
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問題文
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(ああ、あれね。あっさりししょうはいった。)
ああ、あれね。あっさり師匠はいった。
(「きばこでうめられてたはずだからまずないだろう、)
「木箱で埋められてたはずだからまずないだろう、
(とおもってたものがでてきたのには、さすがにきたよ」)
と思ってたものが出てきたのには、さすがにキタよ」
(あぐらをかいてみけんにしわをよせている。)
胡坐をかいて眉間に皺をよせている。
(おれはこころのじゅんびができてなかったが、かまわずししょうはつづけた。)
俺は心の準備が出来てなかったが、かまわず師匠は続けた。
(「しろうかしたえいじがくずれかけたもの、それがなかみ。)
「屍蝋化した嬰児がくずれかけたもの、それが中身。
(かつてうめられていたところをみたけど、どろちでもないしさらに)
かつて埋められていたところを見たけど、泥地でもないしさらに
(きばこにはいっていたものがしろうかしてるとはおもわなかった。)
木箱に入っていたものが屍蝋化してるとは思わなかった。
(もっともしろうかしていたのはにじゅうろくたいのうちさんたいだったけど」)
もっとも屍蝋化していたのは26体のうち3体だったけど」
(えいじ?おれはこんらんした。ぐろてすくなこたえだった。そのものではなく、)
嬰児?俺は混乱した。グロテスクな答えだった。そのものではなく、
(はなしのすじがだ。しにんのからだからぬきだしたもののはずだったから。)
話の筋がだ。死人の体から抜き出したもののはずだったから。
(「もちろんさんししたにんぷげんていのそうさいじゃない。あのとちのそうぎのすべてが)
「もちろん産死した妊婦限定の葬祭じゃない。あの土地の葬儀のすべてが
(そうなっていたはずなんだ。これについてはぼくもはっきりしたこたえが)
そうなっていたはずなんだ。これについては僕もはっきりした答えが
(だせない。ただまびきとうばすてがどうじにおこなわれていたのではないか、)
出せない。ただ間引きと姥捨てが同時に行われていたのではないか、
(というすいそくはできる」まびきもうばすてもいまのにほんにはない。)
という推測は出来る」間引きも姥捨ても今の日本にはない。
(そうぞうもつかないほどまずしいじだいのいぶつだ。)
想像もつかないほど貧しい時代の遺物だ。
(「したいからぬきだした、というのはうそでこっそりまびきたいあかんぼうを)
「死体から抜き出した、というのはウソでこっそり間引きたい赤ん坊を
(かぞくがさしだしていたと・・・?」じゃあやはり、とうじのとちのしょみんも)
家族が差し出していたと・・・?」じゃあやはり、当時の土地の庶民も
(しっていたはずだ。しかしいえないだろう。)
知っていたはずだ。しかし言えないだろう。
(きばこのなかみをしらない、というけいしきをとることじたいがこのそうさいをおこなう)
木箱の中身を知らない、という形式をとること自体がこの葬祭を行う
など
(いみそのものだからだ。ところが、ちがうちがうとばかりにししょうはくびをふった。)
意味そのものだからだ。ところが、違う違うとばかりに師匠は首を振った。
(「じゅんじょがちがう。あのはこのなかにはすべてうまれたばかりのあかんぼうが)
「順序が違う。あの箱の中にはすべて生まれたばかりの赤ん坊が
(はいっていた。としよりがしんだときに、つごうよくのぞまれないあかごが)
入っていた。年寄りが死んだときに、都合よく望まれない赤子が
(うまれてくるってのはへんだとおもわないか。ぎゃくなんだよ。のぞまれないあかごが)
生まれて来るってのは変だと思わないか。逆なんだよ。望まれない赤子が
(うまれてきたからとしよりがしんだんだよ」)
生まれて来たから年寄りが死んだんだよ」
(えんきょくなひょうげんをしていたが、ようするにせっきょくてきなうばすてなのだった。)
婉曲な表現をしていたが、ようするに積極的な姥捨てなのだった。
(いやなかんじだ。やはりぐろてすくだった。)
嫌な感じだ。やはりグロテスクだった。
(「このふたつのそうぎをどうじにおこなわなければならないりゆうは)
「この二つの葬儀を同時に行なわなければならない理由は
(よくわからない。ただきしかたのくちをへらすからにはゆくすえのくちも)
よくわからない。ただ来し方の口を減らすからには行く末の口も
(へらさなくてはならない、そんなどうりがあそこにはあったようなきがする」)
減らさなくてはならない、そんな道理があそこにはあったような気がする」
(どうしてしたいとなったとしよりのからだから、それがでてきたようなかたちをとるのか、)
どうして死体となった年寄りの体から、それが出てきたような形をとるのか、
(それはわからない。ただただふかいどちゃくのしゅうぞくのやみをのぞいているきがした。)
それはわからない。ただただ深い土着の習俗の闇を覗いている気がした。
(「そうそう、そのそうさいをつかさどっていたきのいちぞくだけどね、)
「そうそう、その葬祭をつかさどっていたキの一族だけどね、
(まるでかんぜんにちすじがたえてしまったようないいかたをしちゃったけど、)
まるで完全に血筋が絶えてしまったような言い方をしちゃったけど、
(そうじゃないんだ。さいごのとうしゅがしんだあと、そのむすめのひとりが)
そうじゃないんだ。最後の当主が死んだあと、その娘の一人が
(しゅうらくのいっこにとついでいる」そういうししょうは、いままでになんどもみせた、)
集落の一戸に嫁いでいる」そういう師匠は、今までに何度もみせた、
(「にんげんのやみ」にふれたときのようなえたいのしれないよろこびをかおにうかべた。)
『人間の闇』に触れた時のような得体の知れない喜びを顔に浮かべた。
(「それがあのぼくらがとうりゅうしたあのいえだよ。つまり・・・」)
「それがあの僕らが逗留したあの家だよ。つまり・・・」
(ぼくのなかにもそういうようにししょうはじぶんのむねをゆびさした。)
ぼくのなかにもそう言うように師匠は自分の胸を指差した。