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師匠シリーズ
マイタイピングに師匠シリーズが沢山あったと思ったのですが、なくなってまっていたので、作成しました。

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問題文

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(だいがくいっかいせいのなつ。)

大学1回生の夏。

(「よじげんざか」というじもとではわりとゆうめいなしんれいすぽっとにいどんだ。)

『四次元坂』という地元ではわりと有名な心霊スポットに挑んだ。

(いわく、よるにそのさかでぎあをにゅーとらるにいれるとくるまがさかみちを)

曰く、夜にその坂でギアをニュートラルに入れると車が坂道を

(のぼっていくというのだ。そのうわさをきいてぼくはがぜんこうふんした。)

登って行くというのだ。その噂を聞いて僕は俄然興奮した。

(いたのやら、いなかったのやらわからないようなおばけすぽっととはちがう。)

いたのやら、いなかったのやら分からないようなお化けスポットとは違う。

(くるまがうごくというのだから、なんだかすごいことのようなきがするのだ。)

車が動くというのだから、なんだか凄いことのような気がするのだ。

(とはいえひとりではこわいので、ふたりのせんぱいをさそった。よるのいちじ。)

とはいえ一人では怖いので、二人の先輩を誘った。夜の1時。

(ぼくはひとかげのないもよりのえきのまえでぼーっとたっていた。)

僕は人影のない最寄の駅の前でぼーっと立っていた。

(となりにはぼくがししょうとあおぐおかるとまにあのへんじん。やはりぼーっとたっている。)

隣には僕が師匠と仰ぐオカルトマニアの変人。やはりぼーっと立っている。

(いつもならぼくがそんなはなしをもっていくと、そくだんそっけつで「じゃあいこう」)

いつもなら僕がそんな話を持って行くと、即断即決で「じゃあ行こう」

(ということになるひとなのだが、そのときはかんじんのくるまがなかった。ししょうのあいしゃの)

ということになる人なのだが、その時は肝心の車がなかった。師匠の愛車の

(ぼろけいよんはげんいんふめいのけむりがでたとかで、しゅうりにだしていたのだった。)

ボロ軽四は原因不明の煙が出たとかで、修理に出していたのだった。

(ぼくはめんきょさえもっていない。そこでくるまをだせるひとをもうひとりさそったのだが、)

僕は免許さえ持っていない。そこで車を出せる人をもう一人誘ったのだが、

(あるいみでよじげんざかよりもたのしみなぶぶんがそこにあった。)

ある意味で四次元坂よりも楽しみな部分がそこにあった。

(やみをさいてぶるーのいんぷれっさがえきまえにとまる。)

闇を裂いてブルーのインプレッサが駅前に止まる。

(さっそうとおりてきたひとはこちらにてをふりかけて、すぐにおろした。)

颯爽と降りてきた人はこちらに手を振りかけて、すぐに降ろした。

(「なんでこいつがいるんだ」きょうすけさんという、ぼくのおかるとけいのねっとなかまだ。)

「なんでこいつがいるんだ」京介さんという、僕のオカルト系のネット仲間だ。

(「こっちのせりふだ」ししょうがやりかえして、すぐにけんあくなくうきにつつまれる。)

「こっちの台詞だ」師匠がやりかえして、すぐに険悪な空気に包まれる。

(まあまあ、ととりなすぼくにししょうが「どうしておまえはいつも、)

まあまあ、と取り成す僕に師匠が「どうしてお前はいつも、

(おれとこいつがいっしょになるようにしむけるんだ」というようなことをいった。)

俺とこいつが一緒になるように仕向けるんだ」というようなことを言った。

など

(おもしろいからですよ。とはなかなかいえないので、かわりに、)

面白いからですよ。とはなかなか言えないので、かわりに、

(まあまあ、といった。ししょうときょうすけさんはなかがわるい。きょうれつにわるい。)

まあまあ、と言った。師匠と京介さんは仲が悪い。強烈に悪い。

(それはしょたいめんのときに、きょうすけさんがししょうにむかって、)

それは初対面のときに、京介さんが師匠に向かって、

(「なんだこのいんちきやろうは」といったことにはしをはっする。)

「なんだこのインチキ野郎は」と言ったことに端を発する。

(おたがい、たしょうけいとうはちがえどおかるとふりーくとしてはじんごにおちない)

お互い、多少系統は違えどオカルトフリークとしては人後に落ちない

(じふがあるらしい。いわばじしゃくのえすきょくとえすきょくだ。)

自負があるらしい。いわば磁石のS極とS極だ。

(はんぱつするのはしかたのないことかもしれない。)

反発するのは仕方のないことかも知れない。

(「まあまあ、よじげんざかのとちゅうにはおなじくらいのげきやばすぽっとも)

「まあまあ、四次元坂の途中には同じくらいの激ヤバスポットも

(ありますし、とりあえずたのしんでいきましょう」)

ありますし、とりあえず楽しんで行きましょう」

(なんとかふたりをなだめすかしてくるまにおしこめる。)

なんとか二人をなだめすかして車に押し込める。

(とうぜんししょうはこうぶざせきで、ぼくはじょしゅせきだった。「せまい」)

当然師匠は後部座席で、僕は助手席だった。「狭い」

(ししょうのひとことにきょうすけさんが、だまれという。「くさい」)

師匠の一言に京介さんが、黙れと言う。「くさい」

(といったときは、くるまをとめてあわやらんとうというところまでいった。)

と言ったときは、車を停めてあわや乱闘というところまで行った。

(やっぱりせっとでよんでよかった。さいこうだ。このふたりは。)

やっぱりセットで呼んでよかった。最高だ。この二人は。

(そんなきぶんをぶっこわすようなものがいきなりしかいにはいってきた。)

そんな気分をぶっこわすようなものがいきなり視界に入ってきた。

(たいこうしゃもいないまよなかのさんちゅうで、かわぞいのどうろのはしにきょだいなじぞうが)

対向車もいない真夜中の山中で、川沿いの道路の端に巨大な地蔵が

(うかびあがったのだった。ひかくぶつのないよるのためか、いじょうにおおきくみえる。)

浮かび上がったのだった。比較物のない夜のためか、異常に大きく見える。

(たいかんでごめーとる。「あれがみかえりじぞうですよ」)

体感で5メートル。「あれが見返り地蔵ですよ」

(くるまでとおりすぎてからふりかえると、そくめんのはずのじぞうがこっちを)

車で通り過ぎてから振り返ると、側面のはずの地蔵がこっちを

(むいていて、それとめがあうとかならずじこにあうといういわくがある。)

向いていて、それと目が合うと必ず事故に遭うという曰くがある。

(ふたりがよろこびそうなはなしだ。よろこびそうなはなしなのに、ふたりともなにもいわず、)

二人が喜びそうな話だ。喜びそうな話なのに、二人とも何もいわず、

(ふりかえりもしなかった。ぞくぞくする。)

振り返りもしなかった。ゾクゾクする。

(こわさのような、うれしさのような、ふしぎなわらいがこみあげてきた。)

怖さのような、嬉しさのような、不思議な笑いがこみ上げてきた。

(ふりかえれないから、ぼくのいめーじのなかでだけみちばたのじぞうはとおざかり、)

振り返れないから、僕のイメージの中でだけ道端の地蔵は遠ざかり、

(まがりくねるやみのなかにきえていった。もちろんそのいめーじのなかでは、)

曲がりくねる闇の中に消えていった。もちろんそのイメージの中では、

(こちらをむいていた。むひょうじょうに。)

こちらを向いていた。無表情に。

(ししょうもきょうすけさんもおしだまったまま、くるまはよみちをすすんだ。)

師匠も京介さんも押し黙ったまま、車は夜道を進んだ。

(いらいらしたようにきょうすけさんははんどるをゆびでたたく。)

イライラしたように京介さんはハンドルを指で叩く。

(やがてみちがふたてにわかれるばしょにでた。「ひだりです」)

やがて道が二手に分かれる場所に出た。「左です」

(というぼくのこえに、ういんかーもださずにはんどるがきられる。)

という僕の声に、ウインカーも出さずにハンドルが切られる。

(ひだりにおれると、すぐにのぼりざかがはじまった。「どこ」)

左に折れると、すぐに上り坂が始まった。「どこ」

(「ええと、たしかもうこのあたりからそのはずですが」あくまでうわさでは。)

「ええと、たしかもうこの辺りからそのはずですが」あくまで噂では。

(きょうすけさんはくるまをていしさせると、ぎあをにゅーとらるにいれた。)

京介さんは車を停止させると、ギアをニュートラルに入れた。

(・・・どきどきするのもいっしゅん。)

・・・ドキドキするのも一瞬。

(じりじりとくるまはこうたいした。きょうすけさんはためいきをついてぶれーきをふんだ。)

じりじりと車は後退した。京介さんはため息をついてブレーキを踏んだ。

(「あー、ちょっとたのしみだったんだけどなぁ」ぼくもざんねんだ。)

「あー、ちょっと楽しみだったんだけどなぁ」僕も残念だ。

(たしかにほんきでそんなさかがあるなんてしんじていたかといわれれば、)

たしかに本気でそんな坂があるなんて信じていたかと言われれば、

(いなだが。するとししょうが「らいとけして」といいながら、くるまをおりた。)

否だが。すると師匠が「ライト消して」と言いながら、車を降りた。

(てにはかいちゅうでんとう。さんにんともくるまをおりると、しゅういになんのあかりもない)

手には懐中電灯。3人とも車を降りると、周囲になんの明かりもない

(やまみちにつったった。「まあたぶんこういうことだな」)

山道に突っ立った。「まあ多分こういうことだな」

(とししょうはぼそぼそとはなしはじめた。)

と師匠はぼそぼそと話しはじめた。

(このさんちゅうのさかみちはゆるやかなのぼりさかになっているわけだが、)

この山中の坂道はゆるやかな上り坂になっているわけだが、

(みちのさきをみるとろそくたいのはくせんがびみょうにまがり、おそらくはばがとちゅうから)

道の先を見ると路側帯の白線が微妙に曲がり、おそらく幅が途中から

(かわっているようだ。それがえんきんかんをくるわせてのぼりざかをくだりざかに)

変わっているようだ。それが遠近感を狂わせて上り坂を下り坂に

(さっかくさせるのではないか。しゅういにけいしゃをしめすようなひかくぶつがすくない)

錯覚させるのではないか。周囲に傾斜を示すような比較物が少ない

(あんやに、かすかなあかりにてらされてうかびあがったはくせんだけを)

闇夜に、かすかな明かりに照らされて浮かび上がった白線だけを

(みていると、そんなかんかくにおちいるのだろう。ししょうのことばをきくと、)

見ていると、そんな感覚に陥るのだろう。師匠の言葉を聞くと、

(ふしぎなことにさっきまでのぼりざかだったみちがしたむきのけいしゃへと)

不思議なことにさっきまで上り坂だった道が下向きの傾斜へと

(へんかしていくようなきがするのだった。)

変化していくような気がするのだった。

(「つまり、はいびーむでここをのぼろうとするぶすいなことをしなければ、)

「つまり、ハイビームでここを登ろうとする無粋なことをしなければ、

(もうすこしたのしめたんじゃない?」ししょうのちょうはつに、きょうすけさんがはなでわらう。)

もう少し楽しめたんじゃない?」師匠の挑発に、京介さんが鼻で笑う。

(「あっそ。じゃあここでおいていくから、ぞんぶんにさっかくをたのしんだら」)

「あっそ。じゃあここで置いていくから、存分に錯覚を楽しんだら」

(「いうねえ。よじげんざかなんてしんじちゃうかわいいおとなが」)

「言うねえ。四次元坂なんて信じちゃうかわいいオトナが」

(むしのこえがとおくからきこえるだけのしずかなみちに、ふたりのののしりあうこえだけがひびく。)

虫の声が遠くから聞こえるだけの静かな道に、二人の罵りあう声だけが響く。

(しかし、きょうすけさんのつぎのことばでそのじょうけいがいっぺんした。)

しかし、京介さんの次の言葉でその情景が一変した。

(「どうでもいいけど、おまえ、うしろふりむかないほうがいいよ。)

「どうでもいいけど、おまえ、後ろ振り向かないほうがいいよ。

(じぞうがきてるから」れいかひゃくどのみずをいきなり)

地蔵が来てるから」零下100度の水をいきなり

(しんぞうにあびせられたようなしょっくにおそわれた。)

心臓に浴びせられたようなショックに襲われた。

(きょうすけさんのこどもじみたおどかしにではない。そのおどしをきいたしゅんかんに、)

京介さんの子供じみた脅かしにではない。その脅しを聞いた瞬間に、

(ししょうがすさまじいぎょうそうでじぶんのはいごをふりかえったからだ。)

師匠が凄まじい形相で自分の背後を振り返ったからだ。

(きょうがくでも、きょうふでもない、なにかひどくおんどのひくいかんじょうがはりついたような)

驚愕でも、恐怖でもない、なにかひどく温度の低い感情が張り付いたような

(ひょうじょうで。しかしもちろん、そこにはやみがひろがっているだけだった。)

表情で。しかしもちろん、そこには闇が広がっているだけだった。

(そのようすをみたきょうすけさんもいきをのんで、よういしていたちょうしょうもかたまった。)

その様子を見た京介さんも息をのんで、用意していた嘲笑も固まった。

(おいおい。わらうところだろ。だまされたひとをわらうところだろ。)

おいおい。笑うところだろ。騙された人を笑うところだろ。

(そうおもいながらも、やきがはりのようにいたい。「すまん」)

そう思いながらも、夜気が針のように痛い。「すまん」

(ときょうすけさんがあやまり、なんともあとあじわるくさんにんはくるまにもどった。)

と京介さんが謝り、なんとも後味悪く3人は車に戻った。

(ししょうはこうぶざせきにしずみこみ、ひとこともくちをきかなかった。)

師匠は後部座席に沈み込み、一言も口を利かなかった。

(そしてぼくらはくだんのじぞうのまえをとおることもなく、けんどうをおおまわりして)

そして僕らはくだんの地蔵の前を通ることもなく、県道を大回りして

(きとについたのだった。ししょうをえきまえでおろして、ぼくをおくりとどけるときに)

帰途に着いたのだった。師匠を駅前で降ろして、僕を送り届ける時に

(きょうすけさんはあたまをかきながら、「どうしてあやまっちまったんだ」と)

京介さんは頭を掻きながら、「どうして謝っちまったんだ」と

(はきすてて、とんでもないすぴーどでいんぷれっさをふっとばし、)

吐き捨てて、とんでもないスピードでインプレッサを吹っ飛ばし、

(ぼくはそのひいちばんのきょうふをあじわったのだった。)

僕はその日一番の恐怖を味わったのだった。

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