四隅-4-(完)
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問題文
(ごにんめがきえたなんていうばかばなしにしんけんになったわけではない。)
5人目が消えたなんていうバカ話に真剣になったわけではない。
(ただししょうがなにかかくしているようなかおをしていたからだ。)
ただ師匠がなにか隠しているような顔をしていたからだ。
(「それさえ、じっさいはなかったことをごにんめしょうめつのつじつまあわせのために)
「それさえ、実際はなかったことを5人目消滅の辻褄あわせのために
(つくられたきおくだとしたら、すとーりーせいがありすぎてふしぜんなかんじがするし、)
作られた記憶だとしたら、ストーリー性がありすぎて不自然な感じがするし、
(なんでもありもそこまでいくとちょっとひきますよ」)
なんでもアリもそこまでいくとちょっと引きますよ」
(「ろーしゅたいんのかいろうをしってたのは、ついかるーるのいいだしっぺの)
「ローシュタインの回廊を知ってたのは、追加ルールの言いだしっぺの
(おとこおんなだったね。じゃあ、じっさいのついかるーるは)
オトコオンナだったね。じゃあ、実際の追加ルールは
(こうだったかもしれない「1.とちゅうでひとりぬけていい。2.だれもいないすみに)
こうだったかも知れない『1.途中で一人抜けていい。2.誰もいない隅に
(きたにんげんが、つぎのすたーとそうしゃとなり、ほうこうをえらべる」とかね」)
来た人間が、次のスタート走者となり、方向を選べる』とかね」
(なんだかややこしい。おれはふかくかんがえるのをやめて、ししょうをといただした。)
なんだかややこしい。俺は深く考えるのをやめて、師匠を問いただした。
(「で、なにがそんなにおもしろいんですか」「おもしろいっていうか、うーん。)
「で、なにがそんなに面白いんですか」「面白いっていうか、うーん。
(さいしょからいなかったことになるかみかくしってさ、かんぜんにかこが)
最初からいなかったことになる神隠しってさ、完全に過去が
(かいざんされるわけじゃないんだよね。たとえば、だれのかわからないくつが)
改竄されるわけじゃないんだよね。例えば、誰のかわからない靴が
(のこってるとか、しゅうごうしゃしんでひとりぶんのくうかんがふしぜんにあいてるとか。)
残ってるとか、集合写真で一人分の空間が不自然に空いてるとか。
(そういうなにかをにおわせるきずがかならずある。ぎゃくにいうとそのきずがないと)
そういうなにかを匂わせる傷が必ずある。逆に言うとその傷がないと
(だれもなにかおこってることにきづかないわけで、そもそもかみかくしっていう)
誰も何か起ってることに気づかない訳で、そもそも神隠しっていう
(かいだんがせいりつしない」なるほど、これはわかる。)
怪談が成立しない」なるほど、これはわかる。
(「ところでさっきのはなしで、いっかしょだけいわかんをかんじたぶぶんがある。)
「ところでさっきの話で、一箇所だけ違和感を感じた部分がある。
(きゃんぷじょうにはれんたかーでいったみたいだけど・・・・・・」)
キャンプ場にはレンタカーで行ったみたいだけど・・・・・・」
(よにんでいったなら、ふつうのくるまでよかったんじゃない?)
4人で行ったなら、普通の車でよかったんじゃない?
(ししょうはそういった。すくなくともきょうすけさんはよにんのりのくるまをもっている。)
師匠はそう言った。少なくとも京介さんは4人乗りの車を持っている。
(わざわざかりたのはししょうのすいそくのとおり、ろくにんのりのれんたかーだった。)
わざわざ借りたのは師匠の推測の通り、6人乗りのレンタカーだった。
(たしかにたかがいっぱくふつか。ろっじにとまったためけいたいてんとなど)
確かにたかが1泊2日。ロッジに泊まったため携帯テントなど
(きゃんぷようひんのにもつもほとんどない。どうしてろくにんのりがひつようだったのか。)
キャンプ用品の荷物もほとんどない。どうして6人乗りが必要だったのか。
(どこのふたつのせきがあいていたのかおもいだそうとするが、)
どこの二つの席が空いていたのか思い出そうとするが、
(あやふやすぎておもいだせない。どうしてろくにんのりでいったんだっけ・・・・・・)
あやふやすぎて思い出せない。どうして6人乗りで行ったんだっけ・・・・・・
(「これがきずですか」どうだかなぁ。ただあいつがいってたよ。)
「これが傷ですか」どうだかなぁ。ただアイツが言ってたよ。
(かくれんぼをしてたとき、しょうぶがついてないからねばってたって。)
かくれんぼをしてた時、勝負がついてないから粘ってたって。
(かくれんぼってじかんせいげんがあるならおにとかくれるがわのしょうぶで、)
かくれんぼって時間制限があるなら鬼と隠れる側の勝負で、
(じかんむせいげんならさいごのひとりになったにんげんのかちだよね。)
時間無制限なら最後の一人になった人間の勝ちだよね。
(どうしてかくれんぼがおわらなかったのか。あいつはだれとしょうぶしてたんだろう。)
どうしてかくれんぼが終わらなかったのか。あいつは誰と勝負してたんだろう。
(ししょうのそんなことばがあたまのなかをあやしくまわる。なんだかきぶんがわるくなって、)
師匠のそんな言葉が頭の中をあやしく回る。なんだか気分が悪くなって、
(にげかえるようにおれはししょうのいえをでた。)
逃げ帰るように俺は師匠の家を出た。
(かえりぎわ、おれのせなかに「まあそんなことあるわけないよ」とししょうがかるくいった。)
帰り際、俺の背中に「まあそんなことあるわけないよ」と師匠が軽く言った。
(じっさいそれはそうだろうとおもうし、いまでもあるわけがないとおもっている。)
実際それはそうだろうと思うし、今でもあるわけがないと思っている。
(ただそのよるだけは、いたのかもしれない、いなくなったのかもしれない、)
ただその夜だけは、いたのかも知れない、いなくなったのかも知れない、
(そしてともだちだったのかもしれないごにんめのために、いのった。)
そして友達だったのかも知れない5人目のために、祈った。