田舎 中編-5-

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師匠シリーズ
マイタイピングに師匠シリーズが沢山あったと思ったのですが、なくなってまっていたので、作成しました。

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問題文

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(「おらんかったかや」おじがくびをかしげているとおばが)

「おらんかったかや」伯父が首を傾げていると伯母が

(てくびからさきをきようにおりまげながらいう。)

手首から先を器用に折り曲げながら言う。

(「ほら、じっさんがすてたあとじゃき」)

「ほら、ジッサンが捨てたあとじゃき」

(おじはおお、とがてんしていきさつをはなしてくれた。)

伯父はオオ、と合点していきさつを話してくれた。

(どうやらりゅうはそぼのそうしきのにかげつほどまえに「しんだ」のだそうだ。)

どうやらリュウは祖母の葬式の2ヶ月ほど前に「死んだ」のだそうだ。

(めをとじてうごかないりゅうをみて、まだあしこしがしゃんとしていた)

目をとじて動かないリュウを見て、まだ足腰がしゃんとしていた

(じっさんがしんだしんだとおおさわぎし、うらやまのおおすぎのねもとにうめにいったのだが、)

ジッサンが死んだ死んだと大騒ぎし、裏山の大杉の根本に埋めに行ったのだが、

(なんとこれがはやがてん。じりきでつちからはいでてきたらしく、)

なんとこれが早合点。自力で土から這い出てきたらしく、

(はんとしくらいたってさんちゅうでのらいぬをやっていたところを)

半年くらいたって山中で野良犬をやっていたところを

(ちかくのしゅうらくのひとがみつけてつれてきてくれたのだそうだ。)

近くの集落の人が見つけて連れて来てくれたのだそうだ。

(このはなし、おれのつれにはおおいにうけた。)

この話、俺の連れには大いにウケた。

(が、おれは(なんだ、やっぱりべつのいぬなんじゃないか)とおもったが、)

が、俺は(なんだ、やっぱり別の犬なんじゃないか)と思ったが、

(ながねんくらしたかぞくがりゅうだというんだから、)

長年暮らした家族がリュウだというんだから、

(とかんがえるとなんだかあやふやになる。)

と考えるとなんだかあやふやになる。

(あとでもういちどじっくりかおをみてみようとこころにきめた。)

あとでもう一度じっくり顔を見てみようと心に決めた。

(それからめのまえのりょうりがへるのにはんぴれいしてしょくたくのかいわがふえていき、)

それから目の前の料理が減るのに反比例して食卓の会話が増えていき、

(おれはころあいをみはからって、くちをひらいた。)

俺は頃合を見計らって、口を開いた。

(「なんか、いざなぎりゅうのことをしりたがってるみたいなんだけど」)

「なんか、いざなぎ流のことを知りたがってるみたいなんだけど」

(めでししょうときょうすけさんをさす。するとすぐさまゆきおがみをのりだした。)

目で師匠と京介さんを指す。するとすぐさまユキオが身を乗り出した。

(「だったらおれおれ。おれいま、せんせいについてならいゆうがよ」)

「だったらオレオレ。オレ今、先生について習いゆうがよ」

など

(いがいにおもって、てきとうなこといってないかこいつ、とうたがった。)

意外に思って、適当なコト言ってないかコイツ、と疑った。

(するとおばが「あんたはかぐらばあじゃろがね」とわらう。)

すると伯母が「あんたは神楽ばあじゃろがね」と笑う。

(どうやらせんせいについているのはほんとうらしい。)

どうやら先生についているのは本当らしい。

(ただ、かぐらまいをならっているだけのようだ。)

ただ、神楽舞を習っているだけのようだ。

(いざなぎりゅうのしんおうはかぐらではなく、きとうじゅつにあるというのはおれでもわかる。)

いざなぎ流の深奥は神楽ではなく、祈祷術にあるというのは俺でもわかる。

(「まあでもいざなぎりゅうのことがしりたかったら、だれかにきかんとわからんき」)

「まあでもいざなぎ流のことが知りたかったら、誰かに聞かんとわからんき」

(ゆきおのせんせいにあわせてもらったらどうか、そういうのだ。)

ユキオの先生に会わせてもらったらどうか、そう言うのだ。

(おじのそのことばは、いざなぎりゅうのひとくせいをたんてきにあらわしている。)

伯父のその言葉は、いざなぎ流の秘匿性を端的に表している。

(そもそもおれのいなかにつたわるいざなぎりゅうとは、おんみょうどうやしゅげんどう、みっきょうやしんとうが)

そもそも俺の田舎に伝わるいざなぎ流とは、陰陽道や修験道、密教や神道が

(こんこうしたみんかんしんこうであり、それらがまじっているとはいえ、)

混淆した民間信仰であり、それらが混じっているとはいえ、

(ふるく、じゅんすいなかたちでのこっているぜんこくてきにみてもきちょうなでんしょうだそうだ。)

古く、純粋な形で残っている全国的に見ても貴重な伝承だそうだ。

(まつりやはらい、しずめなどをおこなうそのわざはしかし、ほとんどおおやけにはされない。)

祭りや祓い、鎮めなどを行うそのわざはしかし、ほとんど公にはされない。

(なぜならそれらは「たゆう」から「たゆう」へ、げんそくくでんによって)

なぜならそれらは「太夫」から「太夫」へ、原則口伝によって

(そうでんされていくからである。もちろん、そのぼうだいなきとうじゅつたいけいを)

相伝されていくからである。もちろん、その膨大な祈祷術体系を

(まるあんきはできない。しかしそのための「おぼえがき」はまた、)

丸暗記はできない。しかしそのための「覚え書」はまた、

(ししょうからでしへともんがいふしゅつの「さいぶん」としてつたえられるのみなのである。)

師匠から弟子へと門外不出の「祭文」として伝えられるのみなのである。

(なにかのおまつりにはかならずといっていいほどたゆうさんがからむが、)

なにかのお祭りには必ずと言っていいほど太夫さんが絡むが、

(おれのきおくのなかではそのきとうはただ「そういうもの」としてそこにあるだけで、)

俺の記憶の中ではその祈祷はただ「そういうもの」としてそこにあるだけで、

(「なぜ」にはこたえてくれない。)

「何故」には答えてくれない。

(「なにをするために、なぜそのきとうがえらばれるのか」)

「何をするために、何故その祈祷が選ばれるのか」

(なにをするためにというのはわかる。)

何をするためにというのは分かる。

(かわでおこなわれるならみずのかみさまをまつりしずめるためで、)

川で行われるなら水の神様を祭り鎮めるためで、

(いえでおこなわれるならいえのあんたいのためだ。だが「なぜ」そのきとうなのか、)

家で行われるなら家の安泰のためだ。だが「何故」その祈祷なのか、

(というぶぶんにはてんまくがかかったようにみえてこない。)

という部分には天幕がかかったように見えてこない。

(きとうはさまざまなけいとうにわかれ、つかうぬさだけですうひゃくしゅるいもあるのである。)

祈祷はさまざまな系統に分かれ、使う幣だけで数百種類もあるのである。

(「よっしゃ、あしたさっそくいこう」)

「よっしゃ、明日さっそく行こう」

(ゆきおははしをくるくるとまわしておれたちのかおをみる。)

ユキオは箸をくるくると回して俺たちの顔を見る。

(ししょうはねがってもない、とうなずいた。)

師匠は願ってもない、と頷いた。

(きょうすけさんは「たのみます」とかるくあたまをさげる。)

京介さんは「頼みます」と軽く頭を下げる。

(おれはあしたもへいじつだったことをおもいだし、ゆきおをつついたが)

俺は明日も平日だったことを思い出し、ユキオをつついたが

(「だいじょうぶ、だいじょうぶ」とうけあった。いろいろとだいじょうぶなしょくばらしい。)

「大丈夫、大丈夫」と請合った。いろいろと大丈夫な職場らしい。

(ゆきおとはつこさんたちがかえっていったあと、)

ユキオとハツコさんたちが帰っていったあと、

(おれたちはじゅんばんにふろにはいることにした。)

俺たちは順番に風呂に入ることにした。

(よるになってようやくすずしくなってきたが、あせをかさねたはだがきもちわるい。)

夜になってようやく涼しくなってきたが、汗を重ねた肌が気持ち悪い。

(じょせいじんはあとがいいというので、まずおれ、ついでししょうというじゅんばんで)

女性陣はあとがいいと言うので、まず俺、ついで師匠という順番で

(はいることにした。そうそうにおれがふろからあがり、)

入ることにした。早々に俺が風呂からあがり、

(さんにんでとらんぷをしているとtしゃつすがたであたまからゆげをのぼらせながら)

3人でトランプをしているとTシャツ姿で頭から湯気を昇らせながら

(ししょうがでてくる。)

師匠が出てくる。

(「あー、きもちよかったー。ふろにはいったのってはんとしぶりくらいだ」)

「あー、気持ちよかったー。風呂に入ったのって半年ぶりくらいだ」

(そのことばにじょせいふたりのめがつめたくなる。「ちょっと」「よらないでくださる」)

その言葉に女性二人の目が冷たくなる。「ちょっと」「寄らないでくださる」

(すてれおでいわれ、ししょうはふんがいする。)

ステレオで言われ、師匠は憤慨する。

(「って、おい。ぼくはしゃわーはなんだって」)

「って、おい。僕はシャワー派なんだって」

(べんかいするししょうにつめたいしせんをむけたままふたりはおんなべやにもどっていく。)

弁解する師匠に冷たい視線を向けたまま二人は女部屋に戻っていく。

(「しってるだろ!」)

「知ってるだろ!」

(わめくししょうに、ふりむいたきょうすけさんがいつもよりつよいちょうしで「しね」といった。)

わめく師匠に、振り向いた京介さんがいつもより強い調子で「死ね」と言った。

(おれはわらいをこらえるのにひっしだった。これだよ。)

俺は笑いをこらえるのに必死だった。これだよ。

(ふたりをむりやりせっとにしたかいがあったというものだ。)

二人を無理やりセットにした甲斐があったというものだ。

(それからつかれていたおれたちはそうそうにゆかについた。)

それから疲れていた俺たちは早々に床についた。

(わかもののいないこのいなかのいえはねつくのがはやく、あまりおそくまでおきて)

若者のいないこの田舎の家は寝付くのが早く、あまり遅くまで起きて

(さわがしくしてもわるいというおもいもある。)

騒がしくしても悪いという思いもある。

(ねるまえにりゅうのかおをおがもうとおもったが、いぬごやにひっこんでしまい)

寝る前にリュウの顔を拝もうと思ったが、犬小屋に引っ込んでしまい

(おしりしかみえなかった。へやのあかりをけし、せんぷうきにくびをふらせたまま)

お尻しか見えなかった。部屋の明かりを消し、扇風機に首を振らせたまま

(よこになるとあっというまにねむりにおちた。どのくらいたっただろうか。)

横になるとあっというまに眠りに落ちた。どのくらい経っただろうか。

(ばいくのおとをとおくできいたきがして、なぜかゆきおがまたきた、とおもった。)

バイクの音を遠くで聞いた気がして、なぜかユキオがまた来た、と思った。

(そんなはずはない、とおもいながらじょじょにあたまがかくせいし、むくりとおきる。)

そんなはずはない、と思いながら徐々に頭が覚醒し、むくりと起きる。

(うでどけいをみるとしんやにじすぎ。といれにいこうとおきあがると、)

腕時計を見ると深夜2時過ぎ。トイレに行こうと起き上がると、

(となりのふとんがからになっていることにきづく。)

隣の布団がカラになっていることに気づく。

(「ししょう」とこごえでよびかけるが、へやのどこにもいない。)

「師匠」と小声で呼びかけるが、部屋のどこにもいない。

(とりあえずといれでようをたしにいくと、へやにかえるときにえんがわに)

とりあえずトイレで用を足しに行くと、部屋に帰るときに縁側に

(だれかのかげがうつっている。そっとしょうじをあけると、きょうすけさんがえんがわに)

誰かの影が映っている。そっと障子を開けると、京介さんが縁側に

(こしかけてやいんにたたずんでいる。みぎてにはたばこ。)

腰掛けて夜陰に佇んでいる。右手には煙草。

(こちらにきづいてしせんをむけてくる。「ふかいもりだ」そうか。)

こちらに気づいて視線を向けてくる。「深い森だ」そうか。

(きょうすけさんはじぶんのへやでないとねむれないということをいまさらながらおもいだす。)

京介さんは自分の部屋でないと眠れないということを今更ながら思い出す。

(「きよめあらいということばがあるだろう。せいじょうなやみといういみだ」)

「浄暗という言葉があるだろう。清浄な闇という意味だ」

(ここはくうきがいい。そういってめのまえにひろがるきぎのくろいかげをながめている。)

ここは空気がいい。そう言って目の前に広がる木々の黒い陰を眺めている。

(とおくでわきみずのながれるおとがきこえる。「ししょうをみませんでしたか」)

遠くで湧き水の流れる音が聞こえる。「師匠を見ませんでしたか」

(そうとうと、けむりをはきながらこたえてくれた。「ばいくででていったな」)

そう問うと、煙を吐きながら答えてくれた。「バイクで出て行ったな」

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