『川へおちた玉ねぎさん』村上籌子1【完】

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なぜ、洋食にはジャガイモと玉ねぎが一緒にあるのかというと…
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

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問題文

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(あるまちに、「じゃがいもほてる」というやどやがありました。)

ある町に、「ジャガイモホテル」という宿屋がありました。

(しゅじんというのが、じゃがいもだったからです。)

主人というのが、ジャガイモだったからです。

(しゅじんのじゃがいもさんはとてもしんせつなひとだったので、)

主人のジャガイモさんはとても親切な人だったので、

(このほてるにはおきゃくさまがいつもおおすぎて、)

このホテルにはお客様がいつも多すぎて、

(ひとばんにふたりやさんにんのおきゃくさまをことわらなければならないこともありました。)

一晩に二人や三人のお客様を断らなければならないこともありました。

(あるゆうがた、もうこれいじょうのおきゃくさまをとめることができないほど、)

ある夕方、もうこれ以上のお客様を泊めることが出来ない程、

(まんいんになりましたので、「まんいんになりましたから、おきのどくですが、)

満員になりましたので、「満員になりましたから、お気の毒ですが、

(こんばんはどなたもおとめできません」というおおきなまんいんふだを)

今晩はどなたもお泊め出来ません」という大きな満員札を

(じゃがいもさんは、ほてるのいりぐちにかけようとしました。)

ジャガイモさんは、ホテルの入口にかけようとしました。

(するとそこへ、りっぱなたまねぎのしんしがやってきて、)

するとそこへ、立派な玉ねぎの紳士がやって来て、

(じゃがいもさんにいいました。)

ジャガイモさんに言いました。

(「どうかじゃがいもさん、わたしをとめてください。とてもつかれているのです」)

「どうかジャガイモさん、私を泊めて下さい。とても疲れているのです」

(じゃがいもさんはきのどくにおもいましたが、あいているへやがないので、)

ジャガイモさんは気の毒に思いましたが、あいている部屋がないので、

(「おきのどくですが、なにぶんもうまんいんになってしまいましたから」と)

「お気の毒ですが、なにぶんもう満員になってしまいましたから」と

(ことわりました。けれどもたまねぎさんは、あさからとおいみちをあるきつづけて、)

断りました。けれども玉ねぎさんは、朝から遠い道を歩き続けて、

(くたくたにつかれているので、これいじょうあるくことができません。)

くたくたに疲れているので、これ以上歩くことが出来ません。

(「うまごやでもやねうらでも、どこでもいいから、どうぞとめてください」と)

「馬小屋でも屋根裏でも、どこでもいいから、どうぞ泊めて下さい」と

(たのみました。そこで、じゃがいもさんはかんがえました。)

頼みました。そこで、ジャガイモさんは考えました。

(いぬやねこさんならしんぱいいりませんが、たまねぎさんをうまごやになんぞとめたら、)

犬や猫さんなら心配いりませんが、玉ねぎさんを馬小屋になんぞ泊めたら、

(くいしんぼうのうまがたまねぎさんをたべてしまうだろう。)

食いしん坊の馬が玉ねぎさんを食べてしまうだろう。

など

(やねうらにとめたら、えんりょなしのくもがすをかけるだろう。)

屋根裏に泊めたら、遠慮なしのクモが巣をかけるだろう。

(じゃがいもさんはたいへんこまりましたが、ちかしつのことをおもいだして、)

ジャガイモさんは大変困りましたが、地下室のことを思い出して、

(「では、ちかしつでもよろしければ、おとめします」ともうしました。)

「では、地下室でもよろしければ、お泊めします」と申しました。

(たまねぎさんはたいそうよろこんで、とめてもらうことにしました。)

玉ねぎさんは大層喜んで、泊めてもらうことにしました。

(そしてじゃがいもさんにあんないしてもらって、ちかしつにいきました。)

そしてジャガイモさんに案内してもらって、地下室に行きました。

(そこはまっくらで、なんにもみることができませんでしたので、)

そこは真っ暗で、なんにも見ることが出来ませんでしたので、

(たまねぎさんはてさぐりでちいさいべっどをみつけて、)

玉ねぎさんは手探りで小さいベッドを見付けて、

(そこへよこになるなり、ぐっすりねこんでしまいました。)

そこへ横になるなり、ぐっすり寝込んでしまいました。

(するとふしぎなことに、そのべっどがすこしずつ、)

すると不思議なことに、そのベッドが少しずつ、

(こっとんこっとんとまどのほうへうごきはじめました。)

コットンコットンと窓のほうへ動き始めました。

(そしてまどぎわのところまでくると、べっどはきゅうにぱんとひっくりかえって、)

そして窓際の所まで来ると、ベッドは急にパンとひっくり返って、

(そのはずみにたまねぎさんは、まどのそとへなげだされてしまいました。)

そのはずみに玉ねぎさんは、窓の外へ投げ出されてしまいました。

(ああ、みなさん、まどのそとには、なにがあったかごぞんじですか。)

ああ、皆さん、窓の外には、なにがあったかご存知ですか。

(まどのそとには、おおきなかわがながれていたのです。)

窓の外には、大きな川が流れていたのです。

(たまねぎさんは、あっというまもなく、かわのなかへざぶんとおっこちて、)

玉ねぎさんは、あっと言うまもなく、川の中へザブンと落っこちて、

(みるみるうちに、みずのなかへしずんでみえなくなってしまいました。)

みるみるうちに、水の中へ沈んで見えなくなってしまいました。

(かわいそうに、たまねぎさんはやさいのかわをそとにすてるためにせっちされていた、)

可哀想に、玉ねぎさんは野菜の皮を外に捨てるために設置されていた、

(でんどうのごみばこをべっどとまちがえて、そのなかにはいってねていたのです。)

電動のゴミ箱をベッドと間違えて、その中に入って寝ていたのです。

(しかし、そのうちよるがあけました。)

しかし、そのうち夜が明けました。

(あさになったので、じゃがいもほてるのしゅじんであるじゃがいもさんは、)

朝になったので、ジャガイモホテルの主人であるジャガイモさんは、

(ちかしつへ、ぱんとこうちゃをぎんのおぼんにのっけてきてみますと、)

地下室へ、パンと紅茶を銀のお盆にのっけて来てみますと、

(きのうのばんにとまったはずのたまねぎさんのすがたが、かげもかたちもありませんでした。)

きのうの晩に泊まったはずの玉ねぎさんの姿が、影も形もありませんでした。

(たまねぎさんのもってきた、とらんくがのこっているだけでした。)

玉ねぎさんの持って来た、トランクが残っているだけでした。

(じゃがいもさんはとてもしんぱいして、さっそくしんぶんしゃへいって、)

ジャガイモさんはとても心配して、早速新聞社へ行って、

(つぎのようなこうこくをだしてもらいました。)

次のような広告を出してもらいました。

(「きのうのばん、わたしのうちのちかしつにとまったたまねぎさんが、)

「きのうの晩、私のうちの地下室に泊まった玉ねぎさんが、

(ゆくえふめいになりました。おこころあたりのあるかたは、)

行方不明になりました。お心当たりのあるかたは、

(わたしのところまでおしらせください。しらせてくださったかたには、)

私の所までお知らせ下さい。知らせてくださったかたには、

(おれいにいちえんをさしあげます。じゃがいもほてるより」)

お礼に一円を差し上げます。ジャガイモホテルより」

(するとそのひのゆうがた、ひょっこりきのういなくなった、)

するとその日の夕方、ヒョッコリきのういなくなった、

(たまねぎさんがかえってきました。)

玉ねぎさんが帰ってきました。

(じゃがいもさんは、「まあ、よくかえってくださいました。)

ジャガイモさんは、「まあ、よく帰って下さいました。

(どんなにしんぱいしたかしれません」といいましたので、)

どんなに心配したか知れません」と言いましたので、

(たまねぎさんは、どんなふうにべっどからかわのなかへおちたか、)

玉ねぎさんは、どんな風にベッドから川の中へ落ちたか、

(そして、どんなにあわてておよいできしにはいあがったか、)

そして、どんなに慌てて泳いで岸に這い上ったか、

(そしてきしのうえで、しんぶんのこうこくをよんだかについてはなしました。)

そして岸の上で、新聞の広告を読んだかについて話しました。

(するとじゃがいもさんは、あたまをかいてもうしました。)

するとジャガイモさんは、頭をかいて申しました。

(「それは、まことにおきのどくなことをいたしました。)

「それは、まことにお気の毒なことを致しました。

(そのかわりこんばんは、とてもすばらしいおへやがあいておりますので、)

そのかわり今晩は、とても素晴らしいお部屋があいておりますので、

(ぜひとまってください」ともうしました。)

ぜひ泊って下さい」と申しました。

(たまねぎさんはわらいながらいいました。)

玉ねぎさんは笑いながら言いました。

(「ああ、ぼくがもういちにちおそくここへきたら、きのうのような、)

「ああ、僕がもう一日遅くここへ来たら、きのうのような、

(ひどいめにはあわなかったよ」ともうしました。)

ひどい目にはあわなかったよ」と申しました。

(けれどふしぎなことに、たまねぎさんはたいそうこのじゃがいもほてるが)

けれど不思議なことに、玉ねぎさんは大層このジャガイモホテルが

(きにいってしまって、うまれてからしぬまで、)

気に入ってしまって、生まれてから死ぬまで、

(このじゃがいもほてるのじゅうぎょういんとなって、)

このジャガイモホテルの従業員となって、

(じゃがいもさんといっしょにすむことになりました。)

ジャガイモさんと一緒に住むことになりました。

(それですからみなさん、あなたがたがめしあがるようしょくで、)

それですから皆さん、あなたがたが召し上がる洋食で、

(じゃがいものつくおさらには、きっとたまねぎがついているでしょう。)

ジャガイモのつくお皿には、きっと玉ねぎがついているでしょう。

(それは、こんなわけなのです。)

それは、こんなわけなのです。

(そのよくじつからかんばんが、「じゃがいもたまねぎほてる」へかきかえられました。)

その翌日から看板が、「ジャガイモ玉ネギホテル」へ書き換えられました。

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