『妖怪博士』江戸川乱歩55【完】
○少年探偵団シリーズ第3作品『妖怪博士』
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順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | ヌオー | 6139 | A++ | 6.6 | 92.6% | 694.8 | 4636 | 370 | 99 | 2024/12/17 |
2 | baru | 4457 | C+ | 4.8 | 91.8% | 970.1 | 4744 | 420 | 99 | 2024/12/04 |
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問題文
(「ぼくはかえだまのおとこのまんとをもって、こっそり)
「ぼくは替え玉の男のマントを持って、コッソリ
(あなのそとへにげだす。あとにのこったそのおとこは、おちた)
穴の外へ逃げ出す。あとに残ったその男は、落ちた
(かいちゅうでんとうをひろいあげ、ぼくのこえをまねて「だいじょうぶ」)
懐中電灯を拾い上げ、ぼくの声を真似て「大丈夫」
(とかなんとかいったのさ。ははは、わかったかね。)
とか何とか言ったのさ。 ハハハ、分かったかね。
(たねあかしをしてしまえばなんでもないことだが、)
タネ明かしをしてしまえば何でもないことだが、
(にじゅうめんそうともあろうものが、こんなてじなにまんまと)
二十面相ともあろう者が、こんな手品にまんまと
(いっぱいかかったんだからね。そして、そのかえだまを)
一杯かかったんだからね。そして、その替え玉を
(ぼくとしんじきってどうくつのおくへとじこめ、とくいになって)
ぼくと信じきって洞窟の奥へ閉じこめ、得意になって
(でてきたときに、ほんもののぼくがこうしてあらわれたという)
出て来た時に、本物のぼくがこうして現れたという
(わけさ」めのまえのあけちたんていが、ゆうれいでもまほうつかいでも)
訳さ」 目の前の明智探偵が、幽霊でも魔法使いでも
(なく、ただこどもだましのてじなをつかっただけだという)
なく、ただ子どもだましの手品を使っただけだという
(ことがわかるとにじゅうめんそうは、にわかにげんきをとりもどし)
ことが分かると二十面相は、にわかに元気を取り戻し
(ました。もう、こわいこともおそろしいことも)
ました。もう、怖いことも恐ろしいことも
(ありません。あいては、じぶんとおなじにんげんなのです。)
ありません。相手は、自分と同じ人間なのです。
(しかも、ひとりとひとりのあらそいです。「ふふん、あけちせんせい)
しかも、一人と一人の争いです。「フフン、明智先生
(にしては、かんしんなてをもちいたね。おれは、まんまと)
にしては、感心な手を用いたね。おれは、まんまと
(いっぱいひっかかるところだったぜ。しかし、)
一杯引っかかるところだったぜ。しかし、
(たねあかしをきいてしまえば、もうこっちのものだ。)
タネ明かしを聞いてしまえば、もうこっちのものだ。
(うふふ、やいあけち、てをあげろ。それとも、このなまりの)
ウフフ、やい明智、手を上げろ。それとも、この鉛の
(だんがんをくらいたいか」にわかにつよくなった)
弾丸を食らいたいか」 にわかに強くなった
(にじゅうめんそうは、おそろしいけんまくで、どなりながら)
二十面相は、恐ろしい剣幕で、どなりながら
(ぴすとるをかまえました。あけちたんていは、ぴすとるを)
ピストルを構えました。明智探偵は、ピストルを
(とりだすでもなく、まだうでぐみをしたままです。)
取り出すでもなく、まだ腕組みをしたままです。
(ああ、またしてもぞくにせんてをうたれたのではない)
ああ、またしても賊に先手を打たれたのではない
(でしょうか。しかしほんもののあけちたんていは、かえだまの)
でしょうか。しかし本物の明智探偵は、替え玉の
(ようにうろたえませんでした。にじゅうめんそうの)
ようにうろたえませんでした。二十面相の
(おどかしをききながして、いつものとおりにこにこ)
おどかしを聞き流して、いつもの通りニコニコ
(わらっています。「やい、このぴすとるがみえない)
笑っています。「やい、このピストルが見えない
(のか。てをあげろ、てを」にじゅうめんそうがくりかえして)
のか。手を上げろ、手を」二十面相が繰り返して
(どなりつけると、あけちはやっとしずかなこえでこたえ)
どなりつけると、明智はやっと静かな声で答え
(ました。「てをあげるのは、きみのほうだよ。)
ました。「手を上げるのは、きみのほうだよ。
(ちょっとうしろをみてごらん」そのこえがあまりにもおだやか)
ちょっと後ろを見てごらん」 その声が余りにも穏やか
(だったものですから、かえってにじゅうめんそうはぎょっと)
だったものですから、かえって二十面相はギョッと
(して、おもわずうしろをふりむくと、おお、いつのまに)
して、思わず後ろを振り向くと、おお、いつの間に
(こんなよういができていたのでしょう。そこには、)
こんな用意が出来ていたのでしょう。そこには、
(さんにんのせいふくけいかんがせまいつうろいっぱいになって、ぜんいんが)
三人の制服警官が狭い通路一杯になって、全員が
(ぴすとるをかまえているではありませんか。さすがの)
ピストルを構えているではありませんか。 さすがの
(にじゅうめんそうも、このふいうちにはあっとぎょうてんして、)
二十面相も、この不意打ちにはアッと仰天して、
(すぐさまあけちをつきのけて、でぐちのほうへかけだそう)
すぐさま明智を突きのけて、出口のほうへ駆け出そう
(とすると、そのでぐちのほうからもすうめいのけいかんがおなじ)
とすると、その出口のほうからも数名の警官が同じ
(ようにぴすとるをもって、ひしひしとつめかけてくる)
ようにピストルを持って、ヒシヒシと詰めかけて来る
(のです。にじゅうめんそうは、いまやぜったいぜつめいでした。でも、)
のです。二十面相は、今や絶体絶命でした。でも、
(さすがにきたいのかいとうです。そのまま、なんのていこうもせず)
さすがに希代の怪盗です。そのまま、何の抵抗もせず
(つかまるようなことはありませんでした。かれはどこを)
捕まるようなことはありませんでした。彼はどこを
(どうにげたのか、やみにまぎれてすがたをかくし、すばやくきょだい)
どう逃げたのか、闇に紛れて姿を隠し、素早く巨大
(こうもりのかいじゅうにへんそうして、けいかんたちをおびやかし)
コウモリの怪獣に変装して、警官たちをおびやかし
(ながら、くらやみのめいろのなかをみぎにひだりにかけまわりました。)
ながら、暗闇の迷路の中を右に左に駆け回りました。
(けいかんたいはじゅうごにん、そのうちのごにんがどうくつのいりぐちに)
警官隊は十五人、そのうちの五人が洞窟の入り口に
(みはりばんをつとめているのですから、いかなるにじゅうめんそう)
見張り番を務めているのですから、いかなる二十面相
(でも、それをつきやぶってそとへにげだすことは)
でも、それを突き破って外へ逃げだすことは
(できません。それからいちじかんあまりのあいだ、あんこくの)
出来ません。それから一時間余りの間、暗黒の
(どうくつないに、どんなおそろしいあらそいがえんじられたか。)
洞窟内に、どんな恐ろしい争いが演じられたか。
(それは、どくしゃしょくんのゆたかなそうぞうりょくにおまかせ)
それは、読者諸君の豊かな想像力にお任せ
(しましょう。しょくんは、これまでごらんになったえいが)
しましょう。諸君は、これまでご覧になった映画
(などの、もっともおそろしいらんとうのばめんをあたまに)
などの、もっとも恐ろしい乱闘の場面を頭に
(えがいてくださればいいのです。しかも、それが)
えがいてくださればいいのです。しかも、それが
(あんこくのどうくつのなかでおこなわれた、ろっぴきのきょだいこうもりと)
暗黒の洞窟の中で行われた、六匹の巨大コウモリと
(じゅうにんのけいかんたい、あけちたんていとじゅういちにんのしょうねんたちも)
十人の警官隊、明智探偵と十一人の少年たちも
(くわわっただいとうそうなのです。さて、そのけっかがどちらの)
加わった大闘争なのです。 さて、その結果がどちらの
(しょうりになったかは、どくしゃしょくんもじゅうぶんおさっしのことと)
勝利になったかは、読者諸君も充分お察しのことと
(おもいます。あけちたんていのみかたはそうぜいにじゅうさんにん、てきは)
思います。明智探偵の味方は総勢二十三人、敵は
(わずかにろくにんです。みかたはどうくつないのまどりをしらない)
わずかに六人です。味方は洞窟内の間取りを知らない
(という、ふりなてんがありましたが、こちらにはひとを)
という、不利な点がありましたが、こちらには人を
(つかまえるのにじゅくれんした、おまわりさんたちがいる)
捕まえるのに熟練した、お巡りさんたちが居る
(のです。いかにぞくがつよいといっても、わずか)
のです。いかに賊が強いといっても、わずか
(ろくにんの、いやろっぴきのきょだいこうもりをとりにがすはずは)
六人の、いや六匹の巨大コウモリを取りにがすはずは
(ありません。やがて、あんなにはげしかったたたかいも)
ありません。やがて、あんなに激しかった戦いも
(おわりをつげました。とうきょうぜんとを、いやにほんぜんこくを)
終わりを告げました。東京全都を、いや日本全国を
(あれほどさわがしたきょうぞくにじゅうめんそうも、ついにあくうんの)
あれほど騒がした凶賊二十面相も、ついに悪運の
(つきるときがきたのです。いつのよにも、じゃあくはせいぎの)
尽きる時が来たのです。いつの世にも、邪悪は正義の
(てきではありません。わるいやつは、かならずほろびるときがくる)
敵ではありません。悪い奴は、必ず滅びる時が来る
(のです。にじゅうめんそうのきょだいこうもりのまわりには、)
のです。 二十面相の巨大コウモリの周りには、
(けいかんたいとしょうねんたんていだんいんがわをつくって、かいちゅうでんとうの)
警官隊と少年探偵団員が輪を作って、懐中電灯の
(ひかりを、そのみにくいすがたのうえにてらしていました。じゅうだいな)
光を、その醜い姿の上に照らしていました。重大な
(にんむをはたしたあけちたんていはいま、にじゅうめんそうのくびから)
任務を果たした明智探偵は今、二十面相の首から
(ぬがしたばかりのおおきなこうもりのとうぶをてに)
脱がしたばかりの大きなコウモリの頭部を手に
(もって、むきだしになったぞくのかおをのぞきこんで)
持って、むきだしになった賊の顔をのぞきこんで
(います。それは、じつにいようなこうけいでした。ぐるぐる)
います。それは、実に異様な光景でした。グルグル
(まきにしばられたきょだいこうもりのどうたいから、あの)
巻きにしばられた巨大コウモリの胴体から、あの
(おいたりょうしにへんそうしたままのにじゅうめんそうのくびがはえて)
老いた猟師に変装したままの二十面相の首が生えて
(いるのです。「あけちくん、やっぱりきみのほうが)
いるのです。「明智君、やっぱりきみのほうが
(えらかったね。おれはまけた。きょうこそほんとうにおれは、)
偉かったね。おれは負けた。今日こそ本当におれは、
(きみのまえにあたまをさげるよ」つかれはてて、あおざめた)
きみの前に頭を下げるよ」 疲れ果てて、青ざめた
(にじゅうめんそうのかおがくるしげにゆがんで、ほそくかなしい)
二十面相の顔が苦しげにゆがんで、細く悲しい
(しわがれごえで、そんなことをつぶやきながら、じっと)
しわがれ声で、そんなことをつぶやきながら、ジッと
(あけちたんていのかおをみあげました。「せんせい、せんせいは、)
明智探偵の顔を見上げました。「先生、先生は、
(このあいだいけじりのようかんで、ぼくたちにやくそくなさい)
このあいだ池尻の洋館で、ぼくたちに約束なさい
(ましたよね。いっかげついないに、きっとにじゅうめんそうを)
ましたよね。一ヵ月以内に、きっと二十面相を
(つかまえてみせるって。あのやくそくが、こんなにはやく)
捕まえてみせるって。あの約束が、こんなに早く
(じつげんされるなんて、おもいもよりませんでした」)
実現されるなんて、思いもよりませんでした」
(こいずみのぶおくんが、しょうねんたちのうしろから、めいたんていを)
小泉信雄君が、少年たちの後ろから、名探偵を
(たたえるように、ほがらかなちょうしでいいました。)
たたえるように、朗らかな調子で言いました。
(「そうだ。せんせいはやくそくをまもったのだ。しょくん、)
「そうだ。先生は約束を守ったのだ。諸君、
(ばんざいをとなえようじゃないか」それは、かいかつな)
バンザイを唱えようじゃないか」それは、快活な
(かつらしょういちくんのこえでした。「あけちせんせい、ばんざあーい」)
桂正一君の声でした。「明智先生、バンザアーイ」
(「こばやしだんちょう、ばんざあーい」どうくつがやぶれんばかりの)
「小林団長、バンザアーイ」 洞窟が破れんばかりの
(ばんざいのこえはしほうのいわにこだまして、どこからとも)
バンザイの声は四方の岩に木霊して、どこからとも
(なく「ばんざあーい、ばんざあーい」とくりかえし、)
なく「バンザアーイ、バンザアーイ」と繰り返し、
(いちどうのみみにひびいてくるのでした。)
一同の耳に響いてくるのでした。