天使-3-

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師匠シリーズ
マイタイピングに師匠シリーズが沢山あったと思ったのですが、なくなってしまっていたので、作成しました。

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問題文

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(「またからおけいく?おごっちゃうよ。げーせんは?)

「またカラオケ行く? 奢っちゃうよ。ゲーセンは?

(あ、きになってるきっさてんあるんだけど、いかない?」)

あ、気になってる喫茶店あるんだけど、行かない?」

(しゅういにもきこえるこえだった。)

周囲にも聞こえる声だった。

(ひょっとするとよーこなりにわたしをくらすになじませようと)

ひょっとするとヨーコなりに私をクラスに馴染ませようと

(してくれていたのかもしれない。けれどほかからのさんかきぼうのこえは)

してくれていたのかも知れない。けれど他からの参加希望の声は

(あがらなかった。わたしはくすっとわらって、「わかったわかった。いこう」)

あがらなかった。私はクスッと笑って、「わかったわかった。行こう」

(といった。「やった。でーとだ」そんなことをいっておどけるよーこに、)

と言った。「やった。デートだ」そんなことを言っておどけるヨーコに、

(わたしはたしなめるようにといかける。)

私はたしなめるように問いかける。

(「それにしてもよくそんなにしょっちゅうあそびにいけるな。)

「それにしてもよくそんなにしょっちゅう遊びに行けるな。

(こづかいたりなくなってもかさないぞ?」)

小遣い足りなくなっても貸さないぞ?」

(いーじゃない。おかねはわかいうちにあるだけつかわないと。)

いーじゃない。お金は若いうちにあるだけ使わないと。

(よーこはからかうようにいいかえす。よくみるとかのじょはうでどけいやくつに)

ヨーコはからかうように言い返す。よく見ると彼女は腕時計や靴に

(さりげなくおかねをかけている。きゅうじつにしふくであうと、)

さりげなくお金をかけている。休日に私服で会うと、

(なんだかじぶんのふくそうがみすぼらしくかんじてきはずかしくなる。)

なんだか自分の服装がみすぼらしく感じて気恥ずかしくなる。

(ねほりはほりときいたことはないけれど、きっとおやがかねもちなのだろう。)

根掘り葉掘りと聞いたことはないけれど、きっと親が金持ちなのだろう。

(わたしのようなしょみんとはすこしかんかくがずれているのかもしれない。)

私のような庶民とは少し感覚がズレているのかも知れない。

(つれだってきょうしつをでようとしたとき、せすじにからみつくようなしせんをかんじた。)

連れ立って教室を出ようとしたとき、背筋に絡みつくような視線を感じた。

(はんしゃてきにふりむくとふたりのじょしがびくりとかたをふるわせながらこちらをみている。)

反射的に振り向くと二人の女子がビクリと肩を震わせながらこちらを見ている。

(また、あのふたりだった。しまざきいずみにたかのしほ。)

また、あの二人だった。島崎いずみに高野志穂。

(こわばったひょうじょうをうかべたかとおもうと、ふたりしてくるりとふりかえり、)

強張った表情を浮かべたかと思うと、二人してくるりと振り返り、

など

(きょうしつのうしろのどあからにげるようにでていった。「なにあれ、かんじわるい」)

教室の後ろのドアから逃げるように出て行った。「なにあれ、感じ悪い」

(よーこがまゆをよせていいはなつ。たしかにかんじがわるい。)

ヨーコが眉を寄せて言い放つ。確かに感じが悪い。

(まるでほんとうにわたしをこわがっているようではないか。)

まるで本当に私を怖がっているようではないか。

(さっききいたばかりのわたしにかんするうわさをおもいだして、きぶんがわるくなった。)

さっき聞いたばかりの私に関する噂を思い出して、気分が悪くなった。

(しまざきいずみがじさつみすいをしたというにゅーすをきいたのは)

島崎いずみが自殺未遂をしたというニュースを聞いたのは

(それからいっしゅうかんごだった。)

それから1週間後だった。

(あのときおびえたようなめでわたしをみていたふたりのじょしのなまえを)

あの時怯えたような目で私を見ていた二人の女子の名前を

(りょうほうともすっかりわすれてしまっていたので、「そんなこいたっけ?」)

両方ともすっかり忘れてしまっていたので、「そんなコいたっけ?」

(というのがだいいちのかんそうだった。)

というのが第一の感想だった。

(そういわれてみるとめがねのこはここに,さんにちがっこうにきていなかったようだ。)

そう言われてみると眼鏡の子はここ2,3日学校に来ていなかったようだ。

(なんでもいえがきんじょだというおなじくらすのじょしが、)

なんでも家が近所だという同じクラスの女子が、

(きのうたまたまとおりがかったときにかのじょのいえのまえにとまっているきゅうきゅうしゃに)

昨日たまたま通りがかった時に彼女の家の前に止まっている救急車に

(きがついたのだという。すでにすうにんあつまっていたちかくのしゅふたちから)

気がついたのだという。すでに数人集まっていた近くの主婦たちから

(きくところによると、がっこうをやすんでひとりでいえにいたしまざきいずみが)

聞くところによると、学校を休んで一人で家にいた島崎いずみが

(ふろばでてくびをきったのだとか。ながれでるちにこわくなって)

風呂場で手首を切ったのだとか。流れ出る血に怖くなって

(じぶんできゅうきゅうしゃをよんだらしく、けいしょうといえそうだが)

自分で救急車を呼んだらしく、軽症と言えそうだが

(そのあととりあえずにゅういんすることになったらしい。)

その後とりあえず入院することになったらしい。

(そんなはなしがしぎょうまえにすでにくらすじゅうにひろまっていた。)

そんな話が始業前にすでにクラス中に広まっていた。

(みんなみぢかでおこったじけんに、ふきんしんなきょうみとそれからわずかな)

みんな身近で起こった事件に、不謹慎な興味とそれからわずかな

(ざいあくかんをもってうわさをしあった。「どうして」というぶぶんには、)

罪悪感を持って噂をしあった。「どうして」という部分には、

(だいなりしょうなりじぶんたちもかかわっているというじかくがあったにちがいない。)

大なり小なり自分たちも関わっているという自覚があったに違いない。

(おもてだっていじめられているというわけでもなかったが、じみなやつ、)

表立って苛められているというわけでもなかったが、地味なやつ、

(つまらないやつ、というれってるをはられたこがくらすで)

つまらないやつ、というレッテルを貼られた子がクラスで

(どういういちにいたかだれだってしっているのだから。)

どういう位置にいたか誰だって知っているのだから。

(かばいあうようにいつもいっしょにいたたかのしほは、)

かばい合うようにいつも一緒にいた高野志穂は、

(こうきのめでみられることにたえらなくなったのか、)

好奇の目で見られることに耐えらなくなったのか、

(それともともだちのじさつみすいというせんたくにしょっくをうけたのか、)

それとも友だちの自殺未遂という選択にショックを受けたのか、

(いちじかんめにあおいかおをしてそうたいをもうしでて、ゆるされた。)

1時間目に青い顔をして早退を申し出て、許された。

(おもそうなかばんをもってきょうしつをでるかのじょのよこがおをみていたわたしは、)

重そうな鞄を持って教室を出る彼女の横顔を見ていた私は、

(そのほおのばんそうこうがいっしゅうかんまえからふえていることにきづいた。)

その頬の絆創膏が1週間前から増えていることに気づいた。

(こんなふゆかいなうわさばなしにのっかるのはじぶんでもいやだったが、)

こんな不愉快な噂話に乗っかるのは自分でも嫌だったが、

(どうしてもきになってよーこにきいてみた。)

どうしても気になってヨーコに聞いてみた。

(「ああ、たかのさんのばんそうこう?かのじょたしかばれーぶにはいってるから・・・・・・」)

「ああ、高野さんの絆創膏? 彼女たしかバレー部に入ってるから……」

(そうとうしごかれてる、っていうかいびられてるらしいよ。)

相当しごかれてる、っていうかいびられてるらしいよ。

(そういうよーこもにゅーすがしょっくだったのか、)

そう言うヨーコもニュースがショックだったのか、

(いつものはきはきしたちょうしがない。)

いつものハキハキした調子がない。

(わたしにしても、まったくみにおぼえのないざいあくかんがひっそりと)

私にしても、まったく身に覚えのない罪悪感がひっそりと

(かたにのっているのをかんじていた。)

肩に乗っているのを感じていた。

(どうしてかのじょたちはわたしをそんなにこわがったのだろう。)

どうして彼女たちは私をそんなに怖がったのだろう。

(あたまのなかにまっくろいくもがかかったようできもちがわるかった。)

頭の中に真っ黒い雲がかかったようで気持ちが悪かった。

(だからだろうか、さんじかんめのやすみじかんにくらすじゅうでひそひそと)

だからだろうか、3時間目の休み時間にクラス中でひそひそと

(かわされるうわさばなしにそれとなくみみをかたむけていたわたしは、)

交わされる噂話にそれとなく耳を傾けていた私は、

(あるたんごにつよいかんしんをひかれた。「まさききょうこ」)

ある単語に強い関心を惹かれた。「間崎京子」

(そんななまえが、とびかうむすうのことばのなかであきらかないしつさをもって)

そんな名前が、飛び交う無数の言葉の中であきらかな異質さを持って

(とびこんできたのだ。おもわずそのはなしをしていたぐるーぷのところへいって)

飛び込んで来たのだ。思わずその話をしていたグループの所へ行って

(くわしいはなしをきく。「え?だから、そのまさきさんのとこにしまざきさんが)

詳しい話を聞く。「え? だから、その間崎さんのトコに島崎さんが

(でいりしてたってはなし。なんでって、よくしらないけど。あのひと、)

出入りしてたって話。なんでって、よく知らないけど。あの人、

(なんかうらないとかするらしいから、なやみそうだんでもしてたんじゃないかな」)

なんか占いとかするらしいから、悩み相談でもしてたんじゃないかな」

(れいをいって、じぶんのせきにもどる。)

礼を言って、自分の席に戻る。

(まさききょうこ。いっしゅうかんまえ、しょうこうぐちでわたしにはなしかけてきたじょし。)

間崎京子。1週間前、昇降口で私に話しかけてきた女子。

(あのときのかのじょのことばがあたまのなかでぐるぐるとまわる。)

あの時の彼女の言葉が頭の中でグルグルと回る。

(「うらみはなるべくかわないほうがいい」)

「恨みはなるべく買わない方がいい」

(ひょっとするとあれは、めのまえでかおもしらないだれかのらぶれたーを)

ひょっとするとあれは、目の前で顔も知らない誰かのラブレターを

(らんぼうにあつかったわたしにたいするけいこくではなかったのかもしれない。)

乱暴に扱った私に対する警告ではなかったのかも知れない。

(かのじょはべつのなにかをしっていてそういったのではないだろうか。)

彼女は別のなにかを知っていてそう言ったのではないだろうか。

(たまらなくなってせきをたち、きょうしつをでる。)

たまらなくなって席を立ち、教室を出る。

(あちらこちらでせーらーふくのかたまりができているざわつくろうかをぬけ、)

あちらこちらでセーラー服のかたまりが出来ているざわつく廊下を抜け、

(まさききょうこがいるはずのきょうしつをめざした。)

間崎京子がいるはずの教室を目指した。

(きょうしつのまえにたどりつくとどあはあけはなたれていたので、そっとなかをのぞく。)

教室の前にたどり着くとドアは開け放たれていたので、そっと中を覗く。

(なんにんかのじょしがわたしにきづいてぶえんりょなしせんをむけてくる。)

何人かの女子が私に気づいて無遠慮な視線を向けてくる。

(このくらすのことはまったくしらないので、まさききょうこが)

このクラスのことは全く知らないので、間崎京子が

(ふだんどのあたりにすわっているのかけんとうもつかない。)

普段どのあたりに座っているのか見当もつかない。

(しかしみわたしたかぎりはどこにもいないようだった。)

しかし見渡した限りはどこにもいないようだった。

(かるいしつぼうをおぼえたとき、みしったかおにでくわした。)

軽い失望を覚えた時、見知った顔に出くわした。

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