怪物 「承」-3-

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師匠シリーズ
マイタイピングに師匠シリーズが沢山あったと思ったのですが、なくなってまっていたので、作成しました。

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問題文

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(そしてどあにむかうためきびすをかえそうとしたわたしのかおのちかくで、)

そしてドアに向かうため踵を返そうとした私の顔の近くで、

(「やっとでーとにさそってくれたわね」という。やっぱりでた。)

「やっとデートに誘ってくれたわね」と言う。やっぱり出た。

(むかっとしながら、それをむししてさっさときょうしつからでる。)

ムカッとしながら、それを無視してさっさと教室から出る。

(わたしたちはひじょうぐちのそとのかいだんまであるいた。)

私たちは非常口の外の階段まで歩いた。

(かぜがくびすじをふきぬけ、そらからなつのひさしがふりそそいでくる。)

風が首筋を吹き抜け、空から夏の陽射しが降り注いでくる。

(ほかにひとはいない。「で」まさききょうこはてすりにみをよせて)

他に人はいない。「で」間崎京子は手すりに身を寄せて

(じめんをみおろしたあと、かおをこちらにむける。「しっていることをぜんぶはなせ」)

地面を見下ろした後、顔をこちらに向ける。「知っていることを全部話せ」

(「・・・・・・とうとつね」さしておどろいたようすもなくきょうこはにこりとわらう。)

「……唐突ね」さして驚いた様子もなく京子はニコリと笑う。

(わたしはこのおんなとはらのさぐりあいをすることのめんどうさをこうりょして、)

私はこの女と腹の探り合いをすることの面倒さを考慮して、

(こちらがしっていることをすべてならべたてた。)

こちらが知っていることをすべて並べ立てた。

(ほんをかってしらべた「ふぁふろつきーず」のことまで。)

本を買って調べた『ファフロツキーズ』のことまで。

(かのじょはそれをおもしろそうにききながら、わざとらしいうごきで)

彼女はそれを面白そうに聞きながら、ワザとらしい動きで

(あごをみぎてのおやゆびとひとさしゆびではさむしぐさをする。)

顎を右手の親指と人差し指で挟む仕草をする。

(「ふしぎね」「それだけか」このなにもかもみとおしているようなおんなが、)

「不思議ね」「それだけか」この何もかも見通しているような女が、

(まちにおこりつつあるいへんをさっちしていないはずはない。)

街に起こりつつある異変を察知していないはずはない。

(「ふしぎね、というだけでまんぞくするひとたちのようにはなれないのね。あなたは」)

「不思議ね、と言うだけで満足する人たちのようにはなれないのね。あなたは」

(まるで100てんをとったこどもをほめるようなくちょうだった。)

まるで100点を取った子どもを褒めるような口調だった。

(そうしてきょうこはしせんをそらし、とおくのまちなみにめをむける。)

そうして京子は視線を逸らし、遠くの街並みに目を向ける。

(つられてわたしもしょかのひざしをてりかえしてうかびあがる)

つられて私も初夏の陽射しを照り返して浮かび上がる

(たてもののやねやねにめをほそめる。)

建物の屋根やねに目を細める。

など

(「たいしたことじゃないけど、「ふぁふろつきーず」って)

「たいしたことじゃないけど、『ファフロツキーズ』って

(ちゃーるずふぉーとのいいだしたことばじゃないわ。)

チャールズ・フォートの言い出した言葉じゃないわ。

(あいばんtさんだーそんのめいめいよ」)

アイバン・T・サンダーソンの命名よ」

(きょうこはまちをみおろしたままたんたんといった。)

京子は街を見下ろしたまま淡々と言った。

(「ちゃーるずふぉーとこそ、「ふぁふろつきーず」ということばに)

「チャールズ・フォートこそ、『ファフロツキーズ』という言葉に

(ふりまわされたにんげんだったのかもしれない。そらからおちてきたものを、)

振り回された人間だったのかも知れない。空から落ちてきた物を、

(すべてひとつのがいねんにまとめようというのがどれだけむぼうなことだったか、)

すべて一つの概念にまとめようというのがどれだけ無謀なことだったか、

(なんとなくわかるでしょう?」まえからおもっていたが、こいつはなんで)

なんとなく分かるでしょう?」前から思っていたが、こいつはなんで

(こんなにえらそうなものいいをするのだろう。)

こんなに偉そうな物言いをするのだろう。

(「あなたもいちどその「ふぁふろつきーず」ということばを)

「あなたも一度その『ファフロツキーズ』という言葉を

(すててかんがえてみたらどうかしら」そのといかけはたんじゅんなちゅうこくなのか、)

捨てて考えてみたらどうかしら」その問いかけは単純な忠告なのか、

(それともこのいへんのしょうたいをしったうえでわたしにあたえているひんとなのか。)

それともこの異変の正体を知った上で私に与えているヒントなのか。

(わたしはきょうこのよこがおをにらみつける。「もうすぐちゃいむがなるね」)

私は京子の横顔を睨みつける。「もうすぐチャイムが鳴るね」

(きょうこはてすりからてをはなし、わたしにむきあった。)

京子は手すりから手を離し、私に向き合った。

(「くいず」「は?」「くいずをだすからよくきいてね」)

「クイズ」「は?」「クイズを出すからよく聞いてね」

(あいかわらずとうとつだ。しこうをよめない。)

相変わらず唐突だ。思考を読めない。

(「あさはよんほんあし、ひるはにほんあし、よるはさんぼんあし。これはなに?」「・・・・・・にんげん」)

「朝は4本足、昼は2本足、夜は3本足。これは何?」「……人間」

(「じゃあ、みちいくひとにそのなぞをだしてこたえられなかったひとを)

「じゃあ、道行く人にその謎を出して答えられなかった人を

(たべちゃうかいぶつは?」「すふぃんくす」)

食べちゃう怪物は?」「スフィンクス」

(「さすがね。では、そのすふぃんくすときまいらとのきょうつうてんは?」)

「さすがね。では、そのスフィンクスとキマイラとの共通点は?」

(きまいらというのはあれか。らいおんのあたまとやぎのからだをもつ)

キマイラというのはあれか。ライオンの頭と山羊の身体を持つ

(かいぶつのはずだ。かたやらいおんのどうたい、かたやらいおんのとうぶをもっている。)

怪物のはずだ。片やライオンの胴体、片やライオンの頭部を持っている。

(それがきょうつうてんだろうか。)

それが共通点だろうか。

(「じゃあ、それらとすきゅらのきょうつうてんは?」)

「じゃあ、それらとスキュラの共通点は?」

(すきゅら?とっさにすがたがうかばなかったが、)

スキュラ? とっさに姿が浮かばなかったが、

(なんとかきおくをほりかえすとどうやらじょうはんしんがおんなで)

なんとか記憶を掘り返すとどうやら上半身が女で

(かはんしんがいぬというかいぶつだったようなきがする。)

下半身が犬という怪物だったような気がする。

(すふぃんくす、きまいら、すきゅらのきょうつうてん。なんだろう。すこしかんがえる。)

スフィンクス、キマイラ、スキュラの共通点。なんだろう。少し考える。

(「・・・・・・からだがにしゅるいいじょうのせいぶつでこうせいされたばけもの」)

「……身体が2種類以上の生物で構成された化け物」

(「なるほど。じゃあそこにけるべろすをくわえると?」)

「なるほど。じゃあそこにケルベロスを加えると?」

(けるべろすはくびがみっつあるじごくのもんばんだ。)

ケルベロスは首が3つある地獄の門番だ。

(にしゅるいいじょうのせいぶつがくっついてはいなかったきがする。)

2種類以上の生物がくっついてはいなかった気がする。

(「わからない?じゃあひゅどらもくわえてみて」)

「分からない? じゃあヒュドラも加えてみて」

(ひゅどらはやまたのおろちみたいなやつだったはずだ。)

ヒュドラはヤマタノオロチみたいなやつだったはずだ。

(けるべろすのようにくびがふくすうある。)

ケルベロスのように首が複数ある。

(でもすふぃんくすやきまいらはくびがふくすうではない。)

でもスフィンクスやキマイラは首が複数ではない。

(すきゅらはかはんしんのいぬがなんびきかにわかれていたようだが。)

スキュラは下半身の犬が何匹かに分かれていたようだが。

(「わからないのね。じゃあこれがさいご。おるとろすもくわえて、)

「分からないのね。じゃあこれが最後。オルトロスも加えて、

(すべてのきょうつうてんをさがしてみてね」ちゃいむがなった。)

すべての共通点を探してみてね」チャイムが鳴った。

(そのおととどうじにきょうこはすかーとをひるがえし、てのひらをふりながらたちさろうとした。)

その音と同時に京子はスカートを翻し、手の平を振りながら立ち去ろうとした。

(「まて。なにをしっている?」つかもうとしたてを、きょうこはさけなかった。)

「待て。なにを知っている?」掴もうとした手を、京子は避けなかった。

(けれどそのてはくうをきる。まただ。)

けれどその手は空を切る。まただ。

(なぜだかわからないが、このおんなにはぼうりょくてきなちからがつうじない。わたしのいしきかに、)

何故だか分からないが、この女には暴力的な力が通じない。私の意識下に、

(「それをしてはまけだ」というきょうはくかんねんがはたらいているのだろうか。)

『それをしては負けだ』という強迫観念が働いているのだろうか。

(「くそっ」いらだつわたしをひややかなめでみつめ、)

「クソッ」苛立つ私を冷ややかな目で見つめ、

(きょうこはかるくえしゃくをしてからひじょうぐちをでていった。かいぶつたちのきょうつうてんだと?)

京子は軽く会釈をしてから非常口を出て行った。怪物たちの共通点だと?

(つぎからつぎにしゅくだいがふえていく。がんっどあをけるおとがおもったよりおおきくひびいた。)

次から次に宿題が増えていく。がんっドアを蹴る音が思ったより大きく響いた。

(そのひのほうかご。)

その日の放課後。

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