怪物 「転」-4-

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師匠シリーズ
マイタイピングに師匠シリーズが沢山あったと思ったのですが、なくなってまっていたので、作成しました。

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問題文

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(わたしはあけがたのゆめのなかで、ははおやをころした。きのうのゆめとおなじだ。)

私は明け方の夢の中で、母親を殺した。昨日の夢と同じだ。

(ゆめのなかでわたしはあしおとをきく。そしてげんかんにむかい、せのびをして)

夢の中で私は足音を聞く。そして玄関に向かい、背伸びをして

(どあのちぇーんをはずす。かおをだしたははおやのくびすじにはものをはしらせる。)

ドアのチェーンを外す。顔を出した母親の首筋に刃物を走らせる。

(むねにはにくしみとかなしみににたかんじょうがまざりあってうずまいている。)

胸には憎しみと悲しみに似た感情が混ざりあって渦巻いている。

(ちをかんけつせんのようにふきだしてくずれおちるははおやをみながら、)

血を間欠泉のように噴き出して崩れ落ちる母親を見ながら、

(わたしはじぶんじしんのはくいきをどこかとおくからふくすきまかぜのように)

私は自分自身の吐く息をどこか遠くから吹く隙間風のように

(むかんしんにきいている・・・・・・「しまった」べっどのうえで、しぼりだすようにいった。)

無関心に聞いている……「しまった」ベッドの上で、搾り出すように言った。

(ただのゆめではないのはあきらかだ。まったくおなじゆめ。)

ただの夢ではないのは明らかだ。まったく同じ夢。

(これじたいが、かいげんしょうのいちぶなのだ。あるいはそのほんたいにちかいなにか。)

これ自体が、怪現象の一部なのだ。あるいはその本体に近いなにか。

(そもそもわたしがこのまちにおこりつつあるいへんにはっきりきづいたのが)

そもそも私がこの街に起こりつつある異変にはっきり気づいたのが

(このゆめからだった。こわいゆめをみたというきおくだけあるのに、)

この夢からだった。怖い夢を見たという記憶だけあるのに、

(そのなかみをおもいだせない。そんなにんげんがおそらくこのまちのいたるところにいたはずだ。)

その中身を思い出せない。そんな人間が恐らくこの街のいたる所にいたはずだ。

(わたしもそのひとりだった。そのゆめがあさのひかりのなかにのこるようになった。)

私もその一人だった。その夢が朝の光の中に残るようになった。

(そのいみをもっとしんけんにかんがえるべきだった。くらすじゅうでささやかれる)

その意味をもっと真剣に考えるべきだった。クラス中で囁かれる

(きみょうなうわさばなしにきをそらされて、だれにもゆめのはなしをきいていない。)

奇妙な噂話に気を逸らされて、誰にも夢の話を聞いていない。

(まさにそのゆめをわすれなかったあさから、まるでてのひらをかえしたように)

まさにその夢を忘れなかった朝から、まるで手のひらを返したように

(かいいがまちにふきだしはじめたというのに。)

怪異が街に噴き出し始めたというのに。

(さいたんでこのかいげんしょうのしょうたいにせまるほうほうをわたしはみすごしてしまっていた。)

最短でこの怪現象の正体に迫る方法を私は見過ごしてしまっていた。

(このろすがちめいてきなものにならないことをいのるしかない。)

このロスが致命的なものにならないことを祈るしかない。

(「くそっ」きのうからかぞえてなんどめかのあくたいをまくらにぶつける。)

「クソッ」昨日から数えて何度目かの悪態を枕にぶつける。

など

(ちめいてき?そのむいしきにうかんだことばにわたしはおもわずぞくりとする。ちょっかんが、)

致命的?その無意識に浮かんだ言葉に私は思わずゾクリとする。直感が、

(このまちになにかおそろしいことがおころうとしていることをつげているのか。)

この街になにか恐ろしいことが起ころうとしていることを告げているのか。

(ばしん、とりょうてでほおをはる。ぱじゃまをぬぎ、いそいでふくをきる。するすると)

バシン、と両手で頬を張る。パジャマを脱ぎ、急いで服を着る。するすると

(ひふのうえをはしるぬののかんしょく。あたまはきょうするべきことをれいせいにかんがえている。)

皮膚の上を走る布の感触。頭は今日するべきことを冷静に考えている。

(せいふくにきがえおえるとどあをでて、まずいもうとのへやにむかった。)

制服に着替え終えるとドアを出て、まず妹の部屋に向かった。

(「はいるぞ」いもうとはべっどにこしかけたままで、)

「入るぞ」妹はベッドに腰掛けたままで、

(もぞもぞとぱじゃまをぬごうとしているさいちゅうだった。)

もぞもぞとパジャマを脱ごうとしている最中だった。

(「な、なに」けいかいするようすにもかまわず、まえにたってみおろす。)

「な、なに」警戒する様子にも構わず、前に立って見下ろす。

(「ゆめをみたか」「はあ?ゆめ?みてない」)

「夢を見たか」「はあ? 夢? 見てない」

(たぶん。とつけくわえたいもうとはいぶかしげにわたしのめをみる。)

たぶん。と付け加えた妹は訝しげに私の目を見る。

(さいきんははおやがやたらむかつかないか、ときいてみたが「べつに」とのこたえ。)

最近母親がやたらムカつかないか、と聞いてみたが「別に」との答え。

(ok。うそをついているようすはない。さっさとへやをでる。)

OK。嘘をついている様子はない。さっさと部屋を出る。

(つまりうけとるがわにもきょうじゃくがあるのだ。じゅしんあんてなのせいのうとでもいうのか。)

つまり受け取る側にも強弱があるのだ。受信アンテナの性能とでもいうのか。

(はちょうがあってしまったにんげんだけが、きょうせいてきにあるかんじょうをうえつけられている。)

波長が合ってしまった人間だけが、強制的にある感情を植えつけられている。

(かいだんをおり、りびんぐにむかう。)

階段を降り、リビングに向かう。

(だいどころではははおやがれいぞうこからぎゅうにゅうをとりだしている。)

台所では母親が冷蔵庫から牛乳を取り出している。

(「おはよう」「おはよう」しぜんなあいさつがかわされる。)

「おはよう」「おはよう」自然な挨拶が交わされる。

(だいじょうぶだ。ははおやをにくむきもちはおさまっている。)

大丈夫だ。母親を憎む気持ちは収まっている。

(すくなくともころしてしまうようなかくどにめーたーはない。)

少なくとも殺してしまうような角度にメーターはない。

(ぶじにぱんとぎゅうにゅうのちょうしょくをおえ、いそいでいえをでる。)

無事にパンと牛乳の朝食を終え、急いで家を出る。

(きのうのこうじのおとは、けさはきこえない。きょうもあつくなりそうなひざしのつよさだ。)

昨日の工事の音は、今朝は聞こえない。今日も暑くなりそうな陽射しの強さだ。

(あるきながらちょうかんのきじのことをかんがえる。(ufoか?しないでもくげきあいつぐ))

歩きながら朝刊の記事のことを考える。(UFOか? 市内で目撃相次ぐ)

(そんなみだしに、つぶれたようなうつりのわるいしゃしんがそえられていた。)

そんな見出しに、潰れたような写りの悪い写真が添えられていた。

(きのうのごごろくじすぎ、きたのそらになぞのはっこうげんしょうがおこるのを)

昨日の午後6時過ぎ、北の空に謎の発光現象が起こるのを

(おおくのひとがかんそくしたというないようだった。わたしがとしょかんにいたじかんたいか。)

多くの人が観測したという内容だった。私が図書館にいた時間帯か。

(みたかったな。けれどこんなじけんにはもうあまりかちはない。)

見たかったな。けれどこんな事件にはもうあまり価値はない。

(ばらまかれるぴーすにかおをよせてのぞきこんでもなにもみえてこない。)

ばら撒かれるピースに顔を寄せて覗き込んでもなにも見えてこない。

(わたしはきのうえたごういんなかせつにもとづいて、このかいげんしょうのぜんたいぞうを)

私は昨日得た強引な仮説に基づいて、この怪現象の全体像を

(とらえようとしているのだから。)

捉えようとしているのだから。

(がっこうについた。こうもんのうちがわでひとだかりができている。)

学校に着いた。校門の内側で人だかりが出来ている。

(ちかよるとこうないのじめんに20せんちほどのふかさのくぼんだあとがあった。)

近寄ると校内の地面に20センチほどの深さの凹んだ跡があった。

(そのしゅういいちめーとるしほうにまるできょだいなはんまーで)

その周囲1メートル四方にまるで巨大なハンマーで

(ちからまかせにたたいたようなひびがはいっている。)

力任せに叩いたようなヒビが入っている。

(きのうまではなかった。よるのあいだにこうなっていたらしい。)

昨日まではなかった。夜の間にこうなっていたらしい。

(きょうしたちにおいはらわれ、みんなひそひそとくちをよせながら)

教師たちに追い払われ、みんなヒソヒソと口を寄せながら

(しょうこうぐちにすいこまれていく。ふしぎだがこれもただののいずのようなものだ。)

昇降口に吸い込まれていく。不思議だがこれもただのノイズのようなものだ。

(じったいではない。つかまわれてはいけない。)

実体ではない。捉われてはいけない。

(きょうしつにはいると、いつにもましてみょうにざわついたふんいきがあたりをおおっている。)

教室に入ると、いつにも増して妙にざわついた雰囲気が辺りを覆っている。

(ちょうれいでたんにんのきょうしがせいとにむかって「うわついているようだから、)

朝礼で担任の教師が生徒に向かって「浮わついているようだから、

(きをひきしめるように」という、まったくぐたいせいのないせっきょうを)

気を引き締めるように」という、まったく具体性のない説教を

(じしんなさげにくちにした。)

自信なさげに口にした。

(せんせいじしんなにをどうちゅういすればいいのかわからないのだろう。)

先生自身なにをどう注意すればいいのか分からないのだろう。

(いちじかんめのじゅぎょうはせいぶつだった。ないようにぜんぜんしゅうちゅうできない。)

1時間目の授業は生物だった。内容に全然集中できない。

((きょうはきんようびか)きゅうじつよりもへいじつのほうがじょうほうしゅうしゅうにはむいている。)

(今日は金曜日か)休日よりも平日の方が情報収集には向いている。

(きょういちにちでどれだけじょうほうをあつめられるかがしょうぶだ。)

今日一日でどれだけ情報を集められるかが勝負だ。

(いちじかんめがおわり、やすみじかんにはいる。)

1時間目が終わり、休み時間に入る。

(さっそくけさのこうもんのそばのくぼんだじめんについてのうわさばなしがはじまるなかをごういんに)

さっそく今朝の校門のそばの凹んだ地面についての噂話が始まる中を強引に

(わりこむようにしてわたしはつぎつぎとしつもんをしていった。)

割り込むようにして私は次々と質問をしていった。

(「こわいゆめをみなかったか」と。だれもとまどいながらかおをこわばらせてこたえる。)

「怖い夢を見なかったか」と。誰も戸惑いながら顔を強張らせて答える。

(おおくは「みてない」というこたえだったが、ぽつりぽつりと「みた」という)

多くは「見てない」という答えだったが、ぽつりぽつりと「見た」という

(へんじもまざっていた。)

返事も混ざっていた。

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