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師匠シリーズ
マイタイピングに師匠シリーズが沢山あったと思ったのですが、なくなってまっていたので、作成しました。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 zero 6282 S 6.5 96.4% 588.5 3839 142 69 2024/10/11

関連タイピング

問題文

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(だいがくにかいせいのしょかだった。)

大学二回生の初夏だった。

(おれはおかるとどうのししょうにつれられて、やまにむかっていた。)

俺はオカルト道の師匠につれられて、山に向かっていた。

(「おもしろそうなものがてにはいりそうだ」といわれて)

「面白そうなものが手に入りそうだ」と言われて

(のこのこついていったのであるが、かれの「おもしろい」はふつうのひととは)

ノコノコついて行ったのであるが、彼の「面白い」は普通の人とは

(つかいかたがちがうのでおれははじめからみがまえていたが、)

使い方が違うので俺は初めから身構えていたが、

(いきさきがおてらだとしってますますきんちょうしてきた。)

行き先がお寺だと知ってますます緊張してきた。

(なんでも、しりあいのてらなのだとか。そちらかられんらくがはいったらしい。)

なんでも、知り合いの寺なのだとか。そちらから連絡が入ったらしい。

(しないからいちじかんいじょうはしっただろうか。ししょうは「ここだ」といいながら、)

市内から一時間以上走っただろうか。師匠は「ここだ」と言いながら、

(みちばたにけいよんをとめた。しゅういははたけにかこまれていて、さんかんにごごのさわやかな)

道端に軽四を止めた。周囲は畑に囲まれていて、山間に午後の爽やかな

(かぜがふいている。ふるぼけたもんをくぐり、じしょにはいると)

風が吹いている。古ぼけた門をくぐり、地所に入ると

(ささやかなすぎこだちのむこうにほんどうがあり、わきにもうけられたていえんには)

ささやかな杉木立の向こうに本堂があり、脇に設けられた庭園には

(よどんだようないけがおともなくふうもんをたたせていた。)

澱んだような池が音もなく風紋を立たせていた。

(「しんしゅうのてらだよ」とししょうはいった。)

「真宗の寺だよ」と師匠は言った。

(やまばとがないて、みどりのふかいもりにかすかなはばたきがきえていく。)

山鳩が鳴いて、緑の深い森に微かな羽ばたきが消えていく。

(みぎてにしょうろうどうがみえたが、やねがかたむき、かんじんのかねがみあたらない。)

右手に鐘楼堂が見えたが、屋根が傾き、肝心の鐘が見当たらない。

(うちすてられているようだ。)

打ち捨てられているようだ。

(「あれはかねがせんじちゅうにきょうしゅつされてからそのままらしい」)

「あれは鐘が戦時中に供出されてからそのままらしい」

(ししょうのせつめいにかおをもういちどそちらにむけたしゅんかん、)

師匠の説明に顔をもう一度そちらに向けた瞬間、

(めのはしになにかしろいものがうつったきがして、さきへすすむししょうをおいかけながら)

目の端になにか白いものが映った気がして、先へ進む師匠を追いかけながら

(くびをひねってあたりをみまわしたがなにもみあたらなかった。)

首を捻ってあたりを見回したが何も見当たらなかった。

など

(そのしろいものがふくだったようなきがして、すこしきみわるくなった。)

その白いものが服だったような気がして、少し気味悪くなった。

(けいだいにはだれもいないとおもっていたから。)

境内には誰もいないと思っていたから。

(ししょうはずんずんとほんどうからそれてひらやのたてもののほうへむかっていった。)

師匠はズンズンと本堂から反れて平屋の建物の方へ向かっていった。

(じゅうしょくのすむいえらしい。くり(くり)というのだったか。)

住職の住む家らしい。庫裏(くり)というのだったか。

(げんかんのほうへまわろうとすると「こっちこっち」というこえがして)

玄関の方へ回ろうとすると「こっちこっち」という声がして

(うらてのほうからてまねきをしているひとがいる。)

裏手の方から手招きをしている人がいる。

(ずいぶんせのたかいだんせいだ。おれとししょうはうらぐちからまねきいれられ、)

随分背の高い男性だ。俺と師匠は裏口から招き入れられ、

(いまらしきたたみばりのへやにとおされた。)

居間らしき畳張りの部屋に通された。

(「おやじさんは?」ししょうのといに「でてる。ぱちんこじゃねえか」)

「親父さんは?」師匠の問いに「出てる。パチンコじゃねえか」

(とだんせいはこたえて、「じゃあ、れいの、もってくる」とへやをでていった。)

と男性は答えて、「じゃあ、例の、持ってくる」と部屋を出て行った。

(ふたりとりのこされてから、おれはししょうをつついた。)

二人取り残されてから、俺は師匠をつついた。

(「あのひとはくろたにさんっていう、わるいひと。おやじってのがこのてらのじゅうしょく。)

「あの人は黒谷さんっていう、悪い人。親父ってのがこの寺の住職。

(やっぱりわるい」)

やっぱり悪い」

(なにせこのぼくに、くようをたのまれたぶっぴんをうりつけようってんだから。)

なにせこの僕に、供養を頼まれた物品を売りつけようってんだから。

(にやにやとわらう。おれはせんじつみせてもらったしんれいしゃしんのたばをおもいだした。)

ニヤニヤと笑う。俺は先日見せてもらった心霊写真の束を思い出した。

(あれもたしかぎょうしゃからかったよこながしひんだといっていたはずだ。)

あれも確か業者から買った横流し品だと言っていたはずだ。

(「ああ、ここからちょくでかったのもあるよ。まあ、いちおうここは)

「ああ、ここから直で買ったのもあるよ。まあ、一応ここは

(おたきあげくようのかくれためいてらってことになってるから、)

御焚き上げ供養の隠れた名寺ってことになってるから、

(そこそこかずがあつまってくる」でもまあ、ほんものはいちわりいかだね。)

そこそこ数が集まってくる」でもまあ、本物は一割以下だね。

(ししょうはそういいながら、へやのなかにむぞうさにかざられた)

師匠はそう言いながら、部屋の中に無造作に飾られた

(いちまつにんぎょうやかけじくなどをかってにいじりまわっている。)

市松人形や掛け軸などを勝手に弄りまわっている。

(やがてくろたにとよばれただんせいがもどってきて、かみぶくろをししょうのまえにおいた。)

やがて黒谷と呼ばれた男性が戻ってきて、紙袋を師匠の前に置いた。

(ししょうがてをのばそうとすると、くろたにさんはすっとかみぶくろをひきさげて)

師匠が手を伸ばそうとすると、黒谷さんはスッと紙袋を引き下げて

(てのひらをひろげた。ごほんのゆびをきょうちょうするようにうねうねとうごかしている。)

手の平を広げた。五本の指を強調するようにウネウネと動かしている。

(「ごほんはたかい」ししょうがくちをとがらせると、くろたにはぼさぼさのあたまをかきながら)

「五本は高い」師匠が口を尖らせると、黒谷はボサボサの頭を掻きながら

(「あ、そ」といってかみぶくろをもってたちあがろうとする。)

「あ、そ」と言って紙袋を持って立ち上がろうとする。

(「もってきたのはどんなひとですか」)

「持って来たのはどんな人ですか」

(かんぱついれずにししょうがとうと、ちゅうごしのまま「ちゅうねんのごふじん。)

間髪いれずに師匠が問うと、中腰のまま「中年のご婦人。

(ふかいぼうしにさんぐらす。じゅうしょふめい。せいめいふめい。ぶつのけいいもふめい。)

深い帽子にサングラス。住所不明。姓名不明。ブツの経緯も不明。

(でもくようりょうにあしのゆびまでぜんぶおいてった」とこたえる。)

でも供養料に足の指まで全部置いてった」と答える。

(「にじゅっぽんも?」ししょうがけわしいかおをした。)

「二十本も?」師匠が険しい顔をした。

(そして「わかりました」といってじーんずのぽけっとからだした)

そして「わかりました」と言ってジーンズのポケットから出した

(さいふをほうりなげる。くろたにはさいふをきゃっちして、かみぶくろをこちらによこした。)

財布を放り投げる。黒谷は財布をキャッチして、紙袋をこちらによこした。

(ししょうはかみぶくろをのぞきこみ、ちいさくうなずく。おれもおもわずよこからわりこむようにのぞいた。)

師匠は紙袋を覗き込み、小さく頷く。俺も思わず横から割り込むように覗いた。

(ふくろのなかに、いっぽんのくろいびでおてーぷがみえた。「たりねえ」)

袋の中に、一本の黒いビデオテープが見えた。「足りねえ」

(くろたにのこえに、ししょうがばつのわるそうなかおをして)

黒谷の声に、師匠がばつの悪そうな顔をして

(「こんどもってきます」という。「こんどっていつだ」)

「今度持って来ます」と言う。「今度っていつだ」

(きまずいふんいきがへやにながれる。そのふんいきにたえきれず、)

気まずい雰囲気が部屋に流れる。その雰囲気に耐え切れず、

(おもわず「いくらたりないんですか」といってしまった。)

思わず「いくら足りないんですか」と言ってしまった。

(つくづく、ししょうのおもわくどおりのこうどうをとってしまっているとわれながらおもう。)

つくづく、師匠の思惑通りの行動をとってしまっていると我ながら思う。

(けっきょくおれはなけなしのななせんえんをさいふからだして、くろたににてわたした。)

結局俺はなけなしの七千円を財布から出して、黒谷に手渡した。

(おれだってみたいのだ。ここまできてがまんできるわけがない。)

俺だって見たいのだ。ここまできて我慢できるわけがない。

(「またなにかはいったら、れんらくする」くろたにはそういってたちあがった。)

「また何か入ったら、連絡する」黒谷はそう言って立ち上がった。

(かえるとき、おれとししょうはまたうらぐちにまわらされた。くつがそこにあるからとはいえ、)

帰る時、俺と師匠はまた裏口に回らされた。靴がそこにあるからとはいえ、

(なんだかわるいことをしているというきになってくる。)

なんだか悪いことをしているという気になってくる。

(いや、たしかにわるいことなのだろう。くようしてほしいともちこまれたものを、)

いや、確かに悪いことなのだろう。供養して欲しいと持ち込まれたものを、

(こうしてかねでかってこうきしんをみたそうというのだから。)

こうして金で買って好奇心を満たそうというのだから。

(これをもってきたというじょせいは、いったいどんなきもちで)

これを持ってきたという女性は、いったいどんな気持ちで

(てらのもんをくぐったのか。いきなり、うでをつかまれた。どきっとする。)

寺の門をくぐったのか。いきなり、腕を掴まれた。ドキッとする。

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