ビデオ 中編-4-

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師匠シリーズ
マイタイピングに師匠シリーズが沢山あったと思ったのですが、なくなってまっていたので、作成しました。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 berry 7030 7.2 97.5% 655.4 4729 121 80 2024/09/25
2 daifuku 3758 D++ 3.9 95.3% 1220.9 4824 235 80 2024/09/30
3 daifuku 3589 D+ 3.8 93.7% 1254.8 4827 323 80 2024/09/27

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問題文

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(そしてへいかんじかんぎりぎりになって、ようやくまえばらちょうのもじをはっけんした。)

そして閉館時間ギリギリになって、ようやく前原町の文字を発見した。

(「ほんせきじゅうしょしめいふしょう、ねんれい20さいから40さいのだんせい、)

『本籍・住所・氏名不詳、年齢20歳から40歳の男性、

(しんちょう160から170せんちくらい、ちゅうにく、とうはつさんせんちくらいのくろかみ、はいいろのこーと、)

身長160から170センチ位、中肉、頭髪3センチ位の黒髪、灰色のコート、

(こげちゃいろのそふとぼう、えいせいようますく、しろいろのてぶくろ、はいいろのすらっくす、)

焦茶色のソフト帽、衛生用マスク、白色の手袋、灰色のスラックス、

(しろいろえぶりーふ、しょじひんはかんいらいたーうでどけい「さとういちろう」と)

白色柄ブリーフ、所持品は簡易ライター・腕時計・「サトウイチロウ」と

(しろいんくでかかれたくろかわさいふ(げんきん450えん))

白インクで書かれた黒皮財布(現金450円)

(じょうきのものは、へいせいまるねんまるがつまるにちごごまるじまるふんごろ、まえばらえきこうないにおいて、)

上記の者は、平成○年○月○日午後○時○分ごろ、前原駅構内において、

(くだりとっきゅうでんしゃがつうかちゅうにほーむからとびおりはねられれきしする。)

下り特急電車が通過中にホームから飛び降りはねられ轢死する。

(いたいはみもとふめいのためかそうにふし、いこつはほかんしてあります。)

遺体は身元不明のため火葬に付し、遺骨は保管してあります。

(こころあたりのかたはとうちょうやくばふくしかまでもうしでてください。)

心当たりの方は当町役場福祉課まで申し出てください。

(へいせいまるねんまるがつまるにちまるまるけんまえばらちょうちょう」きた。さとういちろうだ。)

平成○年○月○日 ○○県 前原町長』来た。サトウイチロウだ。

(おれはこうふんして、ぶるぶるとふるえながらめもをとった。)

俺は興奮して、ブルブルと震えながらメモを取った。

(ほんとうにみつかるとはおもわなかった。)

本当に見つかるとは思わなかった。

(まえばらちょう。にちじはごねんまえだ。みもとふめい。ほーむからとびおり、れきし。)

前原町。日時は五年前だ。身元不明。ホームから飛び降り、轢死。

(びでおのなかにうつっているじけんだ。そして「さとういちろう」のもじが)

ビデオの中に映っている事件だ。そして「サトウイチロウ」の文字が

(かかれたさいふ。つながる。つながってしまう。)

書かれた財布。繋がる。繋がってしまう。

(おれはおもわずこしをひき、いすがゆかをするおとにどきっとする。)

俺は思わず腰を引き、椅子が床を擦る音にドキッとする。

(しゅういにはだれもいない。やけにしずかだ。)

周囲には誰もいない。やけに静かだ。

(へいかんじかんになったへいじつのとしょかん。くらいまどのそとには、)

閉館時間になった平日の図書館。暗い窓の外には、

(やせたきがうでのようにえだはをのばしている。)

痩せた木が腕のように枝葉を伸ばしている。

など

(おわれるようにみじたくをして、そとにでた。)

追われるように身支度をして、外に出た。

(なんだかあしもとがふわふわとしてげんじつかんがないようなよるだった。)

なんだか足元がふわふわとして現実感がないような夜だった。

(つぎのひはさいごのへいじつ、きんようびだったがおれはだいがくのこうぎをあさからさぼり、)

次の日は最後の平日、金曜日だったが俺は大学の講義を朝からサボり、

(としょかんへあしをむけた。)

図書館へ足を向けた。

(きのうのよるはししょうにでんわでさとういちろうのきじがあったことをつたえただけで、)

昨日の夜は師匠に電話でサトウイチロウの記事があったことを伝えただけで、

(いえにかえるとすぐにねてしまっていた。いっけんではだめだ。ぐうぜんのいきをでない。)

家に帰るとすぐに寝てしまっていた。一件ではだめだ。偶然の域を出ない。

(なんどもしぬからこそ、このよのものならざるかいげんしょうなのだ。)

何度も死ぬからこそ、この世のものならざる怪現象なのだ。

(さいふにさとういちろうのなまえがかいてあったというぶぶんが、よしださんのかいそうと)

財布にサトウイチロウの名前が書いてあったという部分が、吉田さんの回想と

(いっちするのはぎゃくにできすぎなきがしてひっかかりをおぼえもした。)

一致するのは逆に出来すぎな気がして引っ掛かりを覚えもした。

(なんどもしぬおとこといううわさがむかしからあったとしても、それがごねんまえのまえばらえきの)

何度も死ぬ男という噂が昔からあったとしても、それが五年前の前原駅の

(じけんのこゆうめいしとくっついただけなのかもしれない。にんげんのきおくはあいまいだ。)

事件の固有名詞とくっついただけなのかも知れない。人間の記憶は曖昧だ。

(そとはたいようがまぶしく、がいろじゅのしたをさっそうとじてんしゃでかけぬけると)

外は太陽が眩しく、街路樹の下を颯爽と自転車で駆け抜けると

(からだのなかからさわやかなきもちになってくる。)

身体の中から爽やかな気持ちになってくる。

(そういえばきのうのよるはへんなまぼろしをみなかったな。)

そういえば昨日の夜は変な幻を見なかったな。

(そんなことをおもいながら、あさのとしょかんのどあをくぐる。)

そんなことを思いながら、朝の図書館のドアをくぐる。

(きのうのししょがいたのであいさつをすると、「だいがくのれぽーと?」と)

昨日の司書がいたので挨拶をすると、「大学のレポート?」と

(はなしかけられた。「ええ、まあ」とてきとうにあいづちをうってえつらんしつにむかう。)

話しかけられた。「ええ、まあ」と適当に相槌を打って閲覧室に向かう。

(あさからとしょかんにつめようっていうんだから、)

朝から図書館に詰めようっていうんだから、

(まじめながくせいにみえたのかもしれない。いや、あるいみじゅうぶんにまじめなのだが。)

真面目な学生に見えたのかも知れない。いや、ある意味十分に真面目なのだが。

(かんぽうをつくえにたいりょうにつんでから、きのうのつづきからまくっていく。)

官報を机に大量に積んでから、昨日の続きから捲っていく。

(すみのえく。しずおかし。ふくおかしはかたく。せんだいしあおばく。かつしかく。こうとうく。)

住之江区。静岡市。福岡市博多区。仙台市青葉区。葛飾区。江東区。

(こうべしきたく・・・・・・あいかわらずとしぶがめだつ。あたりまえのことだが、)

神戸市北区……あいかわらず都市部が目立つ。あたりまえのことだが、

(じんこうがおおいとそれにひれいしてみもとふめいしたいもおおくなるのだろう。)

人口が多いとそれに比例して身元不明死体も多くなるのだろう。

(いや、ほーむれすのはっせいりつをかんがえるとたんなるじんこうひれいいじょうに)

いや、ホームレスの発生率を考えると単なる人口比例以上に

(おおくなるにちがいない。そのなかでとしぶからはなれているまえばらえきの)

多くなるに違いない。その中で都市部から離れている前原駅の

(えんせんのじちたいめいをみつけだすのはあんがいむずかしいさぎょうだ。)

沿線の自治体名を見つけ出すのは案外難しい作業だ。

(ねんのためにそのあたりのちずをよこにおいているが、)

念のためにそのあたりの地図を横に置いているが、

(それをたしかめるきかいすらなかなかめぐってこなかった。)

それを確かめる機会すらなかなか巡ってこなかった。

(さんじゅっぷんほどたってようやくたかとおまちのなまえをみつける。まえばらえきのにしどなり、)

三十分ほど経ってようやく高遠町の名前を見つける。前原駅の西隣、

(たかとおえきのあるまちだ。だがこうりょしぼうにんはじょせいで、しいんもいしだった。)

高遠駅のある町だ。だが行旅死亡人は女性で、死因も縊死だった。

(がっかりしてじゃっかんぺーじをまくるそくどもにぶった。)

がっかりして若干ページを捲る速度も鈍った。

(しかしよくもこれだけまいにちまいにち、みもとふめいのしたいがあがっているものだ。)

しかしよくもこれだけ毎日毎日、身元不明の死体が上がっているものだ。

(はっけんまでにじかんがたちほねになってしまっているようなものはしいんもふめいだが、)

発見までに時間が経ち骨になってしまっているようなものは死因も不明だが、

(しにたてのものはいし、つまりくびつりがおおい。)

死にたてのものは縊死、つまり首吊りが多い。

(あとはできし。かせんでうかんでいるものなどがそうだろう。)

あとは溺死。河川で浮かんでいるものなどがそうだろう。

(それからふゆにはとうしもめだつ。でんしゃによるれきしたい、それもほーむでとなると)

それから冬には凍死も目立つ。電車による轢死体、それもホームでとなると

(けーすとしてはすくない。たまにあってもぜんぜんはなれたばしょだったし、)

ケースとしては少ない。たまにあっても全然離れた場所だったし、

(ほとんどのばあいいりゅうひんがはっきりしているのでまったくのべっけんだと)

ほとんどの場合遺留品がはっきりしているので全くの別件だと

(すぐにわかってしまう。いらいらしながらもくもくとうすいかみをめくりつづける。)

すぐに分かってしまう。イライラしながら黙々と薄い紙を捲り続ける。

(それでもきょうはだっせんもしないし、みるべきかしょのこつを)

それでも今日は脱線もしないし、見るべき箇所のコツを

(つかみはじめるとおもったよりはやくしょうかできる。そしてついにそれをみつけた。)

掴み始めると思ったより早く消化出来る。そしてついにそれを見つけた。

(たかとおまちのものだ。「ほんせきじゅうしょしめいふしょうのだんせい、)

高遠町のものだ。『本籍・住所・氏名不詳の男性、

(ねんれい20~40さいくらい、しんちょう165~170cmくらい、)

年齢20~40歳位、身長165~170cm位、

(ちゅうにく、くろのたんぱつ、はいいろのこーと、なかおれぼう、しろますく、しろてぶくろ、)

中肉、黒の短髪、灰色のコート、中折れ帽、白マスク、白手袋、

(はいいろのずぼん、しろぶりーふ、しょじひんらいたーうでどけいくろかわさいふ)

灰色のズボン、白ブリーフ、所持品ライター・腕時計・黒皮財布

((げんきん450えん)きのものは、しょうわまるねんまるがつまるにちごごまるじまるふん、)

(現金450円)記の者は、昭和○年○月○日午後○時○分、

(たかとおえきこうないにおいて、とっきゅうでんしゃがつうかちゅうにほーむから)

高遠駅構内において、特急電車が通過中にホームから

(とびおりはねられてれきし。いたいはかそうにふし、いこつはほかんしてあります。)

飛び降りはねられて轢死。遺体は火葬に付し、遺骨は保管してあります。

(こころあたりのかたはとうちょうやくばふくしかまでもうしでてください。」)

心当たりの方は当町役場福祉課まで申し出てください。』

(・・・・・・どうなのか。かっこうはほぼおなじだ。こーとにぼうしにますくにてぶくろ。)

……どうなのか。格好はほぼ同じだ。コートに帽子にマスクに手袋。

(しかし、かんじんのさとういちろうのなまえがない。さいふの450えんといい、)

しかし、肝心のサトウイチロウの名前がない。財布の450円といい、

(まちがいないとおもうのだがすかっとしない。いらいらする。)

間違いないと思うのだがスカッとしない。イライラする。

(そんなこまかいすうじだすくらいならさとういちろうのなまえだせよ、とおもう。)

そんな細かい数字出すくらいならサトウイチロウの名前出せよ、と思う。

(それともさいふにそんなもじがかかれていなかったのだろうか。)

それとも財布にそんな文字が書かれていなかったのだろうか。

(もやもやしたきぶんのままそれをじさんしたのーとにうつしとり、)

もやもやした気分のままそれを持参したノートに写し取り、

(かんぽうまくりをぞっこうする。やがてこばらもすき、ちゅうしょくをとろうかとおもいはじめたころ、)

官報捲りを続行する。やがて小腹も空き、昼食を取ろうかと思い始めたころ、

(あるぺーじでてがとまった。「ほんせきじゅうしょしめいふしょう)

あるページで手が止まった。『本籍・住所・氏名不詳

((さいふにさとういちろうのなまえあり)ちゅうりゃくひがしたかおそんちょう」きた。)

(財布にサトウイチロウの名前あり) 中略  東高尾村長』来た。

(おなじだ。さとういちろう。またしんでる。じょうきょうもれきし。)

同じだ。サトウイチロウ。また死んでる。状況も轢死。

(ますくにぼうし、てぶくろ、こーと。おなじえんせん。まちがいない。)

マスクに帽子、手袋、コート。同じ沿線。間違いない。

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