ビデオ 後編-3-

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師匠シリーズ
マイタイピングに師匠シリーズが沢山あったと思ったのですが、なくなってまっていたので、作成しました。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 berry 7243 7.4 97.2% 556.1 4146 118 74 2024/09/26

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問題文

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(でじゃヴなのだろうか。ちがう。きたむらさんとはなしたひ、ばいとがあったから)

デジャヴなのだろうか。違う。北村さんと話した日、バイトがあったから

(あれはすいようび。そのとき、やけいをみたのはたしかだ。きおくのこんだくではない。)

あれは水曜日。その時、夜景を見たのは確かだ。記憶の混濁ではない。

(なんなんだ。おれはこんらんしていた。すいようびということは、いっさくじつだ。)

なんなんだ。俺は混乱していた。水曜日ということは、一昨日だ。

(いまみているこうけいを、ふつかまえにまるでよちしたかのようにみていたというのか。)

今見ている光景を、二日前にまるで予知したかのように見ていたというのか。

(あのよる、おれのまぶたのうらには、まるでこんせんしたように)

あの夜、俺の瞼の裏には、まるで混線したように

(ふつかごのおれのしかいがうつしだされていた?)

二日後の俺の視界が映し出されていた?

(こんらんするあたまをかかえたままでんしゃはすすむ。やがてやけいもみえなくなった。)

混乱する頭を抱えたまま電車は進む。やがて夜景も見えなくなった。

(なまえもしらないまちのひかりが。)

名前も知らない街の光が。

(ばくぜんとしたふあんをかかえたまま、ほーむたうんのえきについたときには)

漠然とした不安を抱えたまま、ホームタウンの駅に着いた時には

(じゅうじちかくになっていた。)

十時近くになっていた。

(えきびるからでると、ちゅうりんじょうからじてんしゃをだしてきて、のろのろとまたがる。)

駅ビルから出ると、駐輪場から自転車を出して来て、のろのろとまたがる。

(あしにちからをいれるとよるのまちのけしきがゆっくりとながれていく。)

足に力を入れると夜の街の景色がゆっくりと流れていく。

(まだでんしゃにゆられているような、ふわふわしたかんじ。)

まだ電車に揺られているような、ふわふわした感じ。

(じてんしゃにのったままはんぶんゆめうつつだったきぶんがふきとんだのは、)

自転車に乗ったまま半分夢うつつだった気分が吹き飛んだのは、

(しんやまでえいぎょうしているすーぱーのまえをとおりすぎてしばらくしてからだ。)

深夜まで営業しているスーパーの前を通り過ぎてしばらくしてからだ。

(まばたきにあわせるように、めのまえにひかりのきせきがあらわれた。)

まばたきに合わせるように、目の前に光の軌跡が現れた。

(くらいほどうをじてんしゃですすんでいるときだ。)

暗い歩道を自転車で進んでいる時だ。

(なにもないはずのめのまえのくうかんに、さっきとおったばかりのすーぱーの)

なにもないはずの目の前の空間に、さっき通ったばかりのスーパーの

(けばけばしいあかりが、そのひかりのあとがうかんでいるのだ。)

ケバケバしい明かりが、その光の跡が浮かんでいるのだ。

(まただ。まぶたのうらにうかぶひかりのまぼろし。こんどはたったすうふんまえにとおったすーぱーが。)

まただ。瞼の裏に浮かぶ光の幻。今度はたった数分前に通ったスーパーが。

など

(なんだこれは。そんなにつかれているのか。)

なんだこれは。そんなに疲れているのか。

(こんわくしながらじてんしゃをこいでいると、またべつのひかりがみえた。)

困惑しながら自転車をこいでいると、また別の光が見えた。

(やみのなかにぼんやりとうかぶしかくいひかり。)

闇の中にぼんやりと浮かぶ四角い光。

(やっきょくだ。すーぱーからすこしさきにいったところにあるやっきょくのかんばん。)

薬局だ。スーパーから少し先に行った所にある薬局の看板。

(もちろん、とっくにとおりすぎている。あたまがくらくらする。)

もちろん、とっくに通り過ぎている。頭がくらくらする。

(なんだこれは。つぎからつぎへ。まるでおいかけられているような)

なんだこれは。次から次へ。まるで追いかけられているような

(きもちなってくる。おいかけられて?)

気持ちなってくる。追いかけられて?

(そのことばがざくりとからだのどこかにささった。だれから?)

その言葉がザクリと身体のどこかに刺さった。誰から?

(おれを、おいかけるりゆうのあるものから。)

俺を、追いかける理由のあるものから。

(のうみそが、かってにそのすがたをそうぞうしようとしている。はいいろのこーと。ぼうし。)

脳みそが、勝手にその姿を想像しようとしている。灰色のコート。帽子。

(ますく。てぶくろ。おれはさっきでんしゃのなかでやけいをみたとき、)

マスク。手袋。俺はさっき電車の中で夜景を見た時、

(「こんせん」ということばをおもいうかべた。げんざいのしかいが、かこのしかいと)

「混線」という言葉を思い浮かべた。現在の視界が、過去の視界と

(こんせんしたのだと。だが、その「こんせん」は、かこのじぶんのものとは)

混線したのだと。だが、その「混線」は、過去の自分のものとは

(かぎらないのではないか。いつかきいたししょうのことばがのうりをよぎる。)

限らないのではないか。いつか聞いた師匠の言葉が脳裏をよぎる。

((やみをのぞくものは、ひとしくやみにのぞかれることをおそれなくてはならない))

(闇を覗く者は、等しく闇に覗かれることを畏れなくてはならない)

(しょうわきからくりかえされる、いくどもよみがえるれきししゃのつぶれたがんきゅうが、)

昭和期から繰り返される、幾度も蘇る轢死者の潰れた眼球が、

(うつろなやみのなかからこちらをみているいめーじ。)

虚ろな闇の中からこちらを見ているイメージ。

(さいしょはよるのびるだった。びでおをみたつぎのひ、あれはかようびのはず。)

最初は夜のビルだった。ビデオを見た次の日、あれは火曜日のはず。

(そのびるにみおぼえはない。つぎにみたのはすいようびのよる、やけいだ。)

そのビルに見覚えは無い。次に見たのは水曜日の夜、夜景だ。

(それは、まえばらえきからこちらへむかうとちゅうにそんざいしていた。)

それは、前原駅からこちらへ向かう途中に存在していた。

(そのつぎはもくようびのひるまみたけいよんじどうしゃ。じどうしゃがはしるのはどうろだ。)

その次は木曜日の昼間見た軽四自動車。自動車が走るのは道路だ。

(てつどうではない。いどうしている。)

鉄道ではない。移動している。

(もしあのげんしが、べつのだれかのしかいとのこんせんだとするなら、)

もしあの幻視が、別の誰かの視界との混線だとするなら、

(そのだれかはあきらかにいどうしている。すいようび、でんしゃにのってやけいをみながら)

その誰かは明らかに移動している。水曜日、電車に乗って夜景を見ながら

(いどうしていたそれは、どこででんしゃをおりた?そしてどこのまちをさまよっている?)

移動していたそれは、どこで電車を降りた?そしてどこの街を彷徨っている?

(どきどきとしんぞうがなる。からだにわるそうなおとだ。)

ドキドキと心臓が鳴る。身体に悪そうな音だ。

(おもわずじてんしゃにのったままふりかえる。おいかけてくるもののかげは)

思わず自転車に乗ったまま振り返る。追いかけて来るものの影は

(なにもみえない。しぜんとぺだるをこぐあしにちからがはいる。)

なにも見えない。自然とペダルをこぐ足に力が入る。

(はっはっ、とじぶんのいきづかいがたにんのもののようにきこえる。)

ハッハッ、と自分の息遣いが他人のもののように聞こえる。

(もくようのよるはなにもみなかった。きんよう、つまりきょうのひるまも。)

木曜の夜はなにも見なかった。金曜、つまり今日の昼間も。

(けれど、ついさっきおれはみてしまった。じぶんがとおりすぎたばかりの)

けれど、ついさっき俺は見てしまった。自分が通りすぎたばかりの

(すーぱーのひかりを。やっきょくのかんばんを。それが、だれかのしかいだとするならば・・・・・・)

スーパーの光を。薬局の看板を。それが、誰かの視界だとするならば……

((ついてきている)そうかんがえてしまったおれは、さけびそうになりながら)

(ついて来ている)そう考えてしまった俺は、叫びそうになりながら

(ぜんりょくしっそうした。こんなわけのわからないことがおこりはじめたのは、)

全力疾走した。こんな訳の分からないことが起こり始めたのは、

(あきらかにあのびでおをみてからだ。みてはいけないものが)

明らかにあのビデオを見てからだ。見てはいけないものが

(うつってしまったあのびでおを。あぱーとがみえてきてもすぴーどをゆるめない。)

映ってしまったあのビデオを。アパートが見えてきてもスピードを緩めない。

(がしゃーん、とちゅうりんじょうにじてんしゃをつっこんで、かいだんをかけあがる。)

ガシャーン、と駐輪場に自転車を突っ込んで、階段を駆け上がる。

(じぶんのへやのまえにたち、ぽけっとのかぎをもどかしくとりだすと)

自分の部屋の前に立ち、ポケットの鍵をもどかしく取り出すと

(すぐになかへとびこんだ。)

すぐに中へ飛び込んだ。

(うちがわからどあにかぎをかけ、ずるずるとそのばにすわりこむ。)

内側からドアに鍵を掛け、ずるずるとその場に座り込む。

(まばたきをするのがこわい。なにか、そこにあるはずのないものを、)

まばたきをするのが怖い。なにか、そこにあるはずのないものを、

(そのひかりのあとをみてしまうのが、どうしようもなくこわい。)

その光の跡を見てしまうのが、どうしようもなく怖い。

(しんこきゅうをなんどかくりかえす。きょうまでにあったことがふらっしゅばっくする。)

深呼吸を何度か繰り返す。今日までにあったことがフラッシュバックする。

(しんこきゅうする。もたもたとはうようにながしにむかい、じゃぐちからながれるみずに)

深呼吸する。もたもたと這うように流しに向かい、蛇口から流れる水に

(くちをつけてのむ。はらのなかからつかれがおしよせてくるかんじ。)

口をつけて飲む。腹の中から疲れが押し寄せてくる感じ。

(へやのなかにはいり、あかりをつける。なにもかわったことはない。)

部屋の中に入り、明かりをつける。何も変わったことはない。

(ちらかったしつない。よみかけのまんがと、しょうせつのたば。げーむき。)

散らかった室内。読みかけの漫画と、小説の束。ゲーム機。

(ぬぎちらかしたくつした。たべたままのかっぷめん。てーぶるにかさねられた)

脱ぎ散らかした靴下。食べたままのカップ麺。テーブルに重ねられた

(れんたるびでお。かすかにふくらんだ、れんたるびでおてんのびにーるせいのふくろ。)

レンタルビデオ。微かに膨らんだ、レンタルビデオ店のビニール製の袋。

(めがとまった。てーぶるのうえにのせられた、れんたるびでおてんの)

目が留まった。テーブルの上に乗せられた、レンタルビデオ店の

(なまえがいんじされているそのあおいふくろ。そのふくらみから、びでおてーぷが)

名前が印字されているその青い袋。その膨らみから、ビデオテープが

(いっぽんだけはいっているのがわかる。おかしい。かようびににほんみた。)

一本だけ入っているのが分かる。おかしい。火曜日に二本みた。

(くだらないsfとくだらないほらー。そしてすいようびにはさんぼんみた。)

くだらないSFとくだらないホラー。そして水曜日には三本みた。

(あくしょんものばかり。)

アクションものばかり。

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