Q これが幽霊にみえますか -5-

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投稿者投稿者紅はるかいいね0お気に入り登録
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カンテサンス
カンテサンス文章1

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問題文

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(もちろんばしょによってはてんしゅやまどぐちのきょかがひつようなけいじばんもあったはずで、)

もちろん場所によっては店主や窓口の許可が必要な掲示板もあったはずで、

(ただこうとうでのきょかせいなどきせいがあいまいなところもおおかったためか、)

ただ口頭での許可制など規制が曖昧なところも多かったためか、

(それがながくけいじされつづけるところもいっていすうあったようです。)

それが長く掲示され続けるところも一定数あったようです。

(もっとも、きみがわるいとすぐにはがされるのがほとんどだったのですが。)

尤も、気味が悪いとすぐに剥がされるのが殆どだったのですが。

(この「これがゆうれいにみえますか」というぶんめんは、)

この「Q これが幽霊に見えますか」という文面は、

(とうぜんながらとうじそれをみたひとびとのなかでとくにつよいいんしょうをもたれていたようで、)

当然ながら当時それを見た人々の中で特に強い印象を持たれていたようで、

(かんてさんすというさーくるめいがうわさにでるとまっさきにこのできごとをはなすひとが)

カンテサンスというサークル名が噂に出ると真っ先にこの出来事を話す人が

(それなりにいたようでした。)

それなりに居たようでした。

(また、ひとびとからさらにきみわるくうけとめられたのは、それがけいじされつづけた)

また、人々から更に気味悪く受け止められたのは、それが掲示され続けた

(かずすくないばしょでたびたびおこる、はりがみのないようのへんかでした。)

数少ない場所で度々起こる、貼り紙の内容の変化でした。

(ぐたいてきには、はりがみははんつきにいちどくらいのすぱんでていきてきにはりかえられ、)

具体的には、貼り紙は半月に一度くらいのスパンで定期的に張り替えられ、

(そしてこうかんのたびにないようがびみょうにへんかしていたと。)

そして交換の度に内容が微妙に変化していたと。

(しかもそれは、ぶんめんのへんかではありませんでした。)

しかもそれは、文面の変化ではありませんでした。

(「これがゆうれいにみえますか」、「みえるかたはこちらまで」、)

「これが幽霊に見えますか」、「見える方はこちらまで」、

(そしてさーくるめいとでんわばんごう。)

そしてサークル名と電話番号。

(それはいつのはりがみでもかわっていなかったようなのですが。)

それはいつの貼り紙でも変わっていなかったようなのですが。

(さいしょにかかれている「q」というもじがすこしずつ、しかしあきらかに、)

最初に書かれている「Q」という文字が少しずつ、しかし明らかに、

(ちがうなにかにおきかえられていったのです。)

違う何かに置き換えられていったのです。

(さいしょはたしかにあるふぁべっとのqだったはずで、つまりはたてにながいだえんのかぶに)

最初は確かにアルファベットのQだったはずで、つまりは縦に長い楕円の下部に

(みぎむきのきょくせんがある、あのかたちがきさいされていたのだといいます。)

右向きの曲線がある、あの形が記載されていたのだといいます。

など

(というよりも「みえますか」というぎもんぶんのすぐよこにそんなずけいがあれば、)

というよりも「見えますか」という疑問文のすぐ横にそんな図形があれば、

(それはquestionのりゃくごとしてのqであるとだれしもがにんしきするでしょう。)

それはQuestionの略語としてのQであると誰しもが認識するでしょう。

(まず、qのだえんがすこしだけふとくなりました。)

まず、Qの楕円が少しだけ太くなりました。

(じゃっかんふといせんでかかれただえんと、そのしたにのびるややほそいきょくせん。)

若干太い線で書かれた楕円と、その下に伸びるやや細い曲線。

(せんのはばがひとしくふとくなったというよりは、たとえばそれをいんさつしているいんくが)

線の幅が等しく太くなったというよりは、例えばそれを印刷しているインクが

(そこだけにじんでいるようなふきそくなせんはばになっており、)

そこだけ滲んでいるような不規則な線幅になっており、

(そのためさいしょはけいねんれっかによるものとおもわれていたようです。)

そのため最初は経年劣化によるものと思われていたようです。

(つぎに、qというもじをこうせいするすべてのせんが、いびつにふくれたものになりました。)

次に、Qという文字を構成する全ての線が、歪に膨れたものになりました。

(たとえばぼたぼたとたれるほどにぼくじゅうをふくんだふででぶんじをかくように、)

例えばぼたぼたと垂れるほどに墨汁を含んだ筆で文字を書くように、

(さいずのちいさいせんがをむりやりにかくだいこぴーするように、)

サイズの小さい線画を無理矢理に拡大コピーするように、

(そのもじはぼこぼことつぶだったりんかくのめだつものとなりました。)

その文字はぼこぼこと粒立った輪郭の目立つものとなりました。

(つぎに、まだだえんやきょくせんをたもっていたりんかくがよりふくざつなかたちをとりはじめました。)

次に、まだ楕円や曲線を保っていた輪郭がより複雑な形を取り始めました。

(だえんのじょうぶはかみのけのようにぼわぼわとひきのばされ、)

楕円の上部は髪の毛のようにぼわぼわと引き伸ばされ、

(えんのしたはんぶんはほおからあごにかけてのりんかくせんのようにややさきぼそっていくかたちをとり、)

円の下半分は頬から顎にかけての輪郭線のようにやや先細っていく形を取り、

(それはあきらかにひとのかおのりんかくであるかのようなへんかをみせていきました。)

それは明らかに人の顔の輪郭であるかのような変化を見せていきました。

(もとのずが「q」というもじだった(であろう)ことはかろうじて)

元の図が「Q」という文字だった(であろう)ことは辛うじて

(はんべつできるかどうか、というじょうたいだったらしく、)

判別できるかどうか、という状態だったらしく、

(このじてんでかみのかってなはりかえをきんずるむねのしじをだした)

この時点で紙の勝手な貼り換えを禁ずる旨の指示を出した

(けいじばんもあったそうですが、)

掲示板もあったそうですが、

(それはけっきょくのところさいごまでおこなわれたようでした。)

それは結局のところ最後まで行われたようでした。

(それがさいごどのようなかたちにへんかしたのかは、)

それが最後どのような形に変化したのかは、

(しょうじきなところかいだんばなしてきなおひれがついているぶぶんもおおきいため、)

正直なところ怪談話的な尾鰭が付いている部分も大きいため、

(かくげんはできないのですが。)

確言はできないのですが。

(それはさいしゅうてきに、なにかのかおじゃしんになっていたようです。)

それは最終的に、何かの顔写真になっていたようです。

(しろくろいんさつにおいて、はいいろによるかいちょうてきなしきさいをつけることなく)

白黒印刷において、灰色による階調的な色彩を付けることなく

(かんぜんにくろとしろのどちらかにわける、いわゆるにちかのしょりがおこなわれていたため、)

完全に黒と白のどちらかに分ける、いわゆる二値化の処理が行われていたため、

(しゃしんのしょうさいなところまではんべつすることはむずかしかったようですが。)

写真の詳細なところまで判別することは難しかったようですが。

(そのことによるいんさつのしつのわるさをさしひいても)

そのことによる印刷の質の悪さを差し引いても

(「まったくいみのわからないしゃしん」だったそうです。)

「全く意味の分からない写真」だったそうです。

(まず、それにかおのぱーつとよべるものはありませんでした。)

まず、それに顔のパーツと呼べるものはありませんでした。

(もちろんいろののうたんをすべてしろくろのにしょくにへんかんするにちかかこうのせいしつじょう、)

もちろん色の濃淡を全て白黒の二色に変換する二値化加工の性質上、

(たとえばそらをうつしたしゃしんがいちめんまっしろのよくわからないなにかになるように、)

例えば空を映した写真が一面真っ白のよく分からない何かになるように、

(ぱーつがしょうりゃくされたかのうせいもあるでしょう。)

パーツが省略された可能性もあるでしょう。

(ふくわらいをするまえのかおのだいしみたいに、)

福笑いをする前の顔の台紙みたいに、

(りんかくのなかがかんぜんなくうどうになっているじょうたいであれば、)

輪郭の中が完全な空洞になっている状態であれば、

(あのはりがみもそういうものとはんだんされたとおもいます。)

あの貼り紙もそういうものと判断されたと思います。

(しかし、そのかおのなかには、およそひとではありえないいちに、)

しかし、その顔の中には、およそ人ではあり得ない位置に、

(めやくちだったであろうなにかがぶつぶつとにじんでいたのだといいます。)

目や口だったであろう何かがぶつぶつと滲んでいたのだといいます。

(まえがみのすぐしたで、りんかくのほじょせんのようにひきのばされため。)

前髪のすぐ下で、輪郭の補助線のように引き伸ばされた目。

(あごのあたりにとかしこまれたくちびる。)

顎のあたりに溶かし込まれた唇。

(どこにあるのかすらわからなくなったはな。)

どこにあるのかすらわからなくなった鼻。

(でたらめにつくったふくわらいやねんどざいくのように、)

でたらめに作った福笑いや粘土細工のように、

(いびつにつぶれたかおがそこにあって、そしてかおがそこにあったならば、)

いびつに潰れた顔がそこにあって、そして顔がそこにあったならば、

(qのだえんをかたちづくっていたものがひとのかおだったとするならば、)

Qの楕円を形作っていたものが人の顔だったとするならば、

(そのしたにあったきょくせんは、そのかおとどうたいをつなぐくびかなにかだということに)

その下にあった曲線は、その顔と胴体を繋ぐ首か何かだということに

(なるのですが、しかしそれはそれでおかしいでしょう。)

なるのですが、しかしそれはそれでおかしいでしょう。

(くびがあれほどながくのびて、ぐにゅりとまがるなんてことはおこりえません。)

首があれほど長く伸びて、ぐにゅりと曲がるなんてことは起こりえません。

(しかしあのしゃしんをほんとうの、にんげんのものだとするならばそうなってしまいます。)

しかしあの写真を本当の、人間のものだとするならばそうなってしまいます。

(くびからうえがいちぶうつっている、いわばかおのみきれたじょうたいだったためどうたいや)

首から上が一部写っている、いわば顔の見切れた状態だったため胴体や

(くびのりんかくせんがはっきりとみえていたわけではないのですが、)

首の輪郭線がはっきりと見えていたわけではないのですが、

(すくなくともそのしゃしんにうつっているくびは、しゃしんのむかって)

少なくともその写真に写っている首は、写真の向かって

(みぎがわにわんきょくしていました。)

右側に湾曲していました。

(たとえば、たっているひとのぜんしんがうつったしゃしんがあったとして、)

例えば、立っている人の全身が映った写真があったとして、

(そのひとのくびからうえだけはかんぜんにこていし、そのじょうたいでくびからしたをぜんぶみぎに)

その人の首から上だけは完全に固定し、その状態で首から下を全部右に

(きゅうじゅうどまげていびつなlじがたをつくったとします。そのじょうたいでかおにだけずーむすれば、)

九十度曲げて歪なL字型を作ったとします。その状態で顔にだけズームすれば、

(もしかしたらそういったくびのまがりかたがかのうになるかもしれません。)

もしかしたらそういった首の曲がり方が可能になるかもしれません。

(もちろん、そんなじょうたいのにんげんがこのよにいるはずもありません。)

勿論、そんな状態の人間がこの世にいるはずもありません。

(かりにがぞうをかこうしてつくったとして、そんなかこうをほどこしてぽすたーにして)

仮に画像を加工して作ったとして、そんな加工を施してポスターにして

(けいじするいみもわかりません。)

掲示する意味も分かりません。

(だからこそけいじばんをみたかれらも、それを「まったくいみのわからないしゃしん」)

だからこそ掲示板を見た彼らも、それを「全く意味の分からない写真」

(としかけいようできなかったのでしょう。)

としか形容できなかったのでしょう。

(それはしかたのないことだろうとおもいます。)

それは仕方のないことだろうと思います。

(これまでのできごとをどんなにことばをつくしてせつめいしようとしても、)

これまでの出来事をどんなに言葉を尽くして説明しようとしても、

(けっきょくはふかかいでぎみのわるいじょうほうにしかちゃくちしないのです。)

結局は不可解で気味の悪い情報にしか着地しないのです。

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