太宰治 みみずく通信2

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太宰治『みみずく通信』2
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 饅頭餅美 5188 B+ 5.5 94.5% 403.2 2221 129 32 2024/10/29
2 BE 4070 C 4.3 93.3% 507.8 2226 159 32 2024/10/16

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問題文

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(けさ、にいがたへついたのです。えきには、せいとがふたり、むかえにきていました。)

けさ、新潟へ着いたのです。駅には、生徒が二人、迎えに来ていました。

(がくげいぶのいいんなのかもしれません。わたしたちはえきからりょかんまであるきました。)

学芸部の委員なのかも知れません。私たちは駅から旅館まで歩きました。

(なんちょうくらいあったのでしょう。わたしは、ごぞんじのようにきょりのそくていがへたなので、)

何丁くらいあったのでしょう。私は、ご存じのように距離の測定が下手なので、

(なんちょうほどとももうしあげられませんが、なんでもにじゅっぷんちかくあるきました。)

何丁程とも申し上げられませんが、なんでも二十分ちかく歩きました。

(にいがたのまちは、へんにほこりっぽくかわいていました。すてられたしんぶんしが、)

新潟の街は、へんに埃っぽく乾いていました。捨てられた新聞紙が、

(かぜにふかれて、ひろいどうろのうえをもけいのぐんかんのように、すばやくちょろちょろ)

風に吹かれて、広い道路の上を模型の軍艦のように、素早くちょろちょろ

(はしっていました。どうろは、かわのようにひろいのです。でんしゃのれえるがないから、)

走っていました。道路は、川のように広いのです。電車のレエルが無いから、

(なおのこと、しろくだだっぴろくみえるのでしょう。ばんだいきょうもわたりました。)

なおの事、白くだだっ広く見えるのでしょう。万代橋も渡りました。

(しなのがわのかこうです。べつだん、かんがいもありませんでした。)

信濃川の河口です。別段、感慨もありませんでした。

(とうきょうよりは、すこしさむいかんじです。まんとをきてこないのを、ざんねんにおもいました。)

東京よりは、少し寒い感じです。マントを着て来ないのを、残念に思いました。

(わたしはくるめがすりにはかまをはいてきました。ぼうしは、かぶってきませんでした。)

私は久留米絣に袴をはいて来ました。帽子は、かぶってきませんでした。

(けいとのえりまきと、あついしゃついちまいは、かばんにいれてもってきました。)

毛糸の襟巻と、厚いシャツ一枚は、かばんに容れて持って来ました。

(りょかんへついて、わたしは、すぐにねてしまいました。けれども、すこしも)

旅館へ着いて、私は、すぐに寝てしまいました。けれども、少しも

(ねむれませんでした。ひるすこしまえにおきて、わたしは、ごはんをたべました。)

眠れませんでした。ひる少し前に起きて、私は、ごはんを食べました。

(なまざけを、おいしいとおもいました。しなのがわからとれるようです。みそしるのとうふが、)

生鮭を、おいしいと思いました。信濃川からとれるようです。味噌汁の豆腐が、

(ひどくやわらかでじょうとうだったので、にいがたのとうふはゆうめいなのですか、とじょちゅうさんに)

ひどく柔かで上等だったので、新潟の豆腐は有名なのですか、と女中さんに

(たずねたら、さあ、そんなはなしはきいておりません、はい、とこたえました。)

尋ねたら、さあ、そんな話は聞いて居りません、はい、と答えました。

(はい、といういいかたにとくちょうがあります。かたかなの、はいというかんじであります。)

はい、という言い方に特徴があります。片仮名の、ハイという感じであります。

(いちじちかく、せいとたちがじどうしゃでむかえにきました。がっこうは、かいがんのさきゅうのうえに)

一時ちかく、生徒たちが自動車で迎えに来ました。学校は、海岸の砂丘の上に

(たてられているのだそうです。じどうしゃのなかで、)

建てられているのだそうです。自動車の中で、

など

(「じゅぎょうちゅうにも、なみのおとがきこえるだろうね。」「そんなことは、ありません。」)

「授業中にも、浪の音が聞えるだろうね。」「そんな事は、ありません。」

(せいとたちはかおをみあわせて、しっしょうしました。わたしのおいたろまんちしずむが)

生徒たちは顔を見合わせて、失笑しました。私の老いたロマンチシズムが

(おかしかったのかもしれません。せいもんまえでじどうしゃからおりて、みると、がっこうは)

可笑しかったのかも知れません。正門前で自動車から降りて、見ると、学校は

(しぶがきいろのもくぞうけんちくで、ひくく、さきゅうのかげにひそんでいるへいしゃのようでありました。)

渋柿色の木造建築で、低く、砂丘の陰に潜んでいる兵舎のようでありました。

(げんかんそばのまどから、おんなのひとのえがおがみっつよっつ、こちらをのぞいているのに)

玄関傍の窓から、女の人の笑顔が三つ四つ、こちらを覗いているのに

(きがつきました。じむのひとたちなのでありましょう。わたしは、もっといいきものを)

気が附きました。事務の人たちなのでありましょう。私は、もっといい着物を

(きてくればよかったとおもいました。げんかんをあがるときにも、わたしのげたのわるいのに、)

着て来ればよかったと思いました。玄関を上がる時にも、私の下駄の悪いのに、

(すこしきがひけました。こうちょうしつにあんないされて、わたしは、ただ、)

少し気がひけました。校長室に案内されて、私は、ただ、

(きょろきょろしていました。あんないしてきたせいとたちは、むかしこのがっこうに)

きょろきょろしていました。案内して来た生徒たちは、むかし此の学校に

(あくたがわりゅうのすけもこうえんしにきて、そのとき、こうどうのちょうこくをほめていきました、とわたしに)

芥川龍之介も講演しに来て、その時、講堂の彫刻を褒めて行きました、と私に

(おしえました。わたしも、なにかほめなければいけないかとおもって、)

教えました。私も、何か褒めなければいけないかと思って、

(あたりをみまわしたのですが、ほめたいものもありませんでした。)

あたりを見廻したのですが、褒めたいものもありませんでした。

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