太宰治 みみずく通信4
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 饅頭餅美 | 4542 | C++ | 4.8 | 94.0% | 443.8 | 2152 | 136 | 31 | 2024/10/29 |
2 | BE | 3818 | D++ | 4.0 | 93.7% | 526.6 | 2155 | 144 | 31 | 2024/10/28 |
関連タイピング
-
プレイ回数9.8万歌詞200打
-
プレイ回数125万歌詞かな1119打
-
プレイ回数73万長文300秒
-
プレイ回数2.4万歌詞1030打
-
プレイ回数4046歌詞かな60秒
-
プレイ回数213歌詞1213打
-
プレイ回数586歌詞1260打
-
プレイ回数271歌詞60秒
問題文
(しつもんは、あまりありませんでした。しかたがないから、わたしはどくはくのちょうしで)
質問は、あまりありませんでした。仕方が無いから、私は独白の調子で
(いろいろいいました。ありがとう、すみません、などのあいさつのことばを、)
いろいろ言いました。ありがとう、すみません、等の挨拶の言葉を、
(なぜひとはいわなければならないか。それをかんじたとき、ひとは、かならずそれを)
なぜ人は言わなければならないか。それを感じた時、人は、必ずそれを
(いうべきである。いわなければわからぬというきょうざめのじじつ。)
言うべきである。言わなければわからぬという興覚めの事実。
(ひくつは、はじにあらず。ひがいもうそうといっぱんにいわれているこころのじょうたいは、かならずしも)
卑屈は、恥に非ず。被害妄想と一般に言われている心の状態は、必ずしも
(せいしんびょうでない。じこせいぎょ、けんじょうもうつくしいが、のほほんがおのおうさまもうつくしい。)
精神病でない。自己制御、謙譲も美しいが、のほほん顔の王さまも美しい。
(どちらがかみにちかいか、それはわたしにも、わからない。いろいろおもいつくままに、)
どちらが神に近いか、それは私にも、わからない。いろいろ思いつくままに、
(いいました。つみのいしきということについてもいいました。やがていいんがたって、)
言いました。罪の意識という事に就いても言いました。やがて委員が立って、
(「それでは、これでざだんかいをしゅうりょういたします。」といったら、)
「それでは、之で座談会を終了いたします。」と言ったら、
(なあんだというようなちからないあんどににたわらいごえがちょうしゅうのあいだにひろがりました。)
なあんだというような力ない安堵に似た笑い声が聴衆の間にひろがりました。
(これで、わたしのようじは、すんだのです。いや、それからせいとのゆうしたちと、)
これで、私の用事は、すんだのです。いや、それから生徒の有志たちと、
(まちのいたりやけんというようしょくやでいっしょにばんごはんをいただいて、それから、)
まちのイタリヤ軒という洋食屋で一緒に晩ごはんをいただいて、それから、
(はじめてわたしはじゆうになれるわけなのです。かいじょうからまたはくしゅにおくられてたいしゅつし、)
はじめて私は自由になれるわけなのです。会場からまた拍手に送られて退出し、
(うすぐらいこうちょうしつへいき、しゅにんのせんせいとしばらくはなしをして、こうはくのみずひきできれいに)
薄暗い校長室へ行き、主任の先生と暫く話をして、紅白の水引で綺麗に
(むすばれたかみづつみをいただき、こうもんをでました。もんのそばでは、ご、ろくにんのせいとたちが)
結ばれた紙包をいただき、校門を出ました。門の傍では、五、六人の生徒たちが
(ぼんやりたたずんでいました。「うみをみにいこう。」とわたしのほうからことばをかけて、)
ぼんやり佇んでいました。「海を見に行こう。」と私のほうから言葉を掛けて、
(どんどんかいがんのほうへあるいていきました。せいとたちは、だまってついてきました。)
どんどん海岸のほうへ歩いて行きました。生徒たちは、黙ってついて来ました。
(にほんかい。きみは、にほんかいをみたことがありますか。くろいみず。かたいなみ。)
日本海。君は、日本海を見た事がありますか。黒い水。固い浪。
(さどが、がぎゅうのようにゆったりすいへいせんによこたわっております。そらもひくい。)
佐渡が、臥牛のようにゆったり水平線に横たわって居ります。空も低い。
(かぜのないしずかなゆうぐれでありましたが、そらには、きれぎれのまっくろいくもが)
風の無い静かな夕暮でありましたが、空には、きれぎれの真っ黒い雲が
(およいでいて、いんうつでありました。あらうみやさどに、とくちずさんだばしょうのしょうしんも)
泳いでいて、陰鬱でありました。荒海や佐渡に、と口ずさんだ芭蕉の傷心も
(わかるようなきがいたしましたが、あのじいさんあんがいずるいひとだから、)
わかるような気が致しましたが、あのじいさん案外ずるい人だから、
(やどでねころんできらくにうたっていたのかもしれない。うっかりしんじられません。)
宿で寝ころんで気楽に歌っていたのかも知れない。うっかり信じられません。
(ゆうひがしずみかけています。「きみたちはあさひをみたことがあるかね。あさひもやっぱり)
夕日が沈みかけています。「君たちは朝日を見た事があるかね。朝日もやっぱり
(こんなにおおきいかね。ぼくは、まだあさひをみたことがないんだ。」「ぼくはふじさんに)
こんなに大きいかね。僕は、まだ朝日を見た事が無いんだ。」「僕は富士山に
(のぼったとき、あさひののぼるところをみました。」ひとりのせいとがこたえました。)
登った時、朝日の昇るところを見ました。」ひとりの生徒が答えました。
(「そのとき、どうだったね。やっぱり、こんなにおおきかったかね。こんなぐあいに)
「その時、どうだったね。やっぱり、こんなに大きかったかね。こんな工合いに
(ぶるぶるにえたぎって、ちのようなかんじがあったかね。」「いいえ、どこかちがう)
ぶるぶる煮えたぎって、血のような感じがあったかね。」「いいえ、どこか違う
(ようです。こんなにかなしくありませんでした。」「そうかね、やっぱり、)
ようです。こんなに悲しくありませんでした。」「そうかね、やっぱり、
(ちがうかね。あさひは、やっぱりえらいんだね。しんせんなんだね。ゆうひは、どうも、)
ちがうかね。朝日は、やっぱり偉いんだね。新鮮なんだね。夕日は、どうも、
(すこしなまぐさいね。つかれたさかなのにおいがあるね。」)
少しなまぐさいね。疲れた魚の匂いがあるね。」