中島敦 光と風と夢 19

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投稿者投稿者神楽@社長推しいいね0お気に入り登録
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中島敦の中編小説です
最後の文章の、「。」が抜けていますが、文字数の制限のためです。
許して下さい(._.)

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問題文

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(こうしたことをみききするにつけ、すてぃヴんすんは、みずからを、)

こうした事を見聞[みきき]するにつけ、スティヴンスンは、自らを、

(なにのやくにもたたぬぶんしとしてせめた。ひさしくとめていたたいむずへのこうかいじょうも)

何の役にも立たぬ文士として責めた。久しく止めていたタイムズへの公開状も

(ふたたびかきはじめられた。にくたいのすいじゃくとせいさくのふかっぱつとにくわえて、じこにたいし、)

再び書始められた。肉体の衰弱と制作の不活溌とに加えて、自己に対し、

(せかいにたいしての、めいじょうしがたいいきどおりが、かれのひびをしはいした。)

世界に対しての、名状し難い憤りが、彼の日々を支配した。

(せんはっぴゃくきゅうじゅうさんねんじゅういちがつばつにち)

十四 一八九三年十一月日

(いやなあまもよいのあさ、おおきなくも。うみのうえにおちたそのきょだいな)

いやな雨もよいの朝、巨[おお]きな雲。海の上に落ちた其の巨大な

(らんがいしょくのかげ。あさしちじだというのに、まだあかりをつけている。)

藍灰色[らんがいしょく]の影。朝七時だというのに、まだ灯をつけている。

(べるはきにーねをひつようとし、ろいどははらをこわし、わたしはしょうしゃたるしょうかっけつ。)

ベルはキニーネを必要とし、ロイドは腹をこわし、私は瀟洒たる小喀血。

(なにかふかいなあさだ。われをとりかこむさくざつせるみじめさのいしき。じぶつそのものに)

何か不快な朝だ。我を取囲む錯雑せる悲惨[みじめさ]の意識。事物そのものに

(ないざいさせるひげきがはたらいてすくいがたいくらさにまでわたしをぬりこめる。)

内在させる悲劇が作用[はたら]いて救い難い暗さに迄私を塗込める。

(せいはつねにびーるときゅうちゅうぎばかりではない。しかし、わたしはけっきょく、)

生は常に麦酒[ビール]と九柱戯ばかりではない。しかし、私は結局、

(じぶつのきゅうきょくのてきせいをしんずる。わたしがいっちょうめざめたときじごくにおちていようとも、)

事物の究極の適正を信ずる。私が一朝眼覚めた時地獄に堕ちていようとも、

(わたしのこのしんねんはかわるまい。しかも、それにかかわらず、いぜんとして)

私の此の信念は変るまい。しかも、それに拘[かから]らず、依然として

(このせいのあゆみはつらい。わたしはわたしのあゆみかたのあやまりをみとめ、けっかのまえにみじめにげんしゅくに)

此の生の歩みは辛い。私は私の歩み方の誤を認め、結果の前に惨めに厳粛に

(こうとうせねばならぬ。・・・・・・・・・・・・さもあればあれ、)

叩頭[こうとう]せねばならぬ。・・・・・・・・・・・・さもあればあれ、

(il faut cultiver son jardin.だ。あわれむべき)

Il faut cultiver son jardin.だ。憐れむべき

(にんげんどものちえのさいごのひょうげんがこれだ。わたしはふたたびわたしの・こころすすまぬせいさくに)

人間共の智慧の最後の表現が之だ。私は再び私の・心進まぬ制作に

(たちかえる。「うぃあ・おヴ・はーみすとん」をまたとりあげ、)

立返る。「ウィア・オヴ・ハーミストン」を又取上げ、

(またもてあましているのだ。「せんと・あいヴす」もちちとしてしんこうしつつある。)

又もてあましているのだ。「セント・アイヴス」も遅々として進行しつつある。

(わたしは、じぶんが、いま、ちてきせいかつをおくるにんげんにつうゆうの、ひとつのてんかんきに)

私は、自分が、今、知的生活を送る人間に通有の、一つの転換期に

など

(あるのだということをしっているがゆえに、ぜつぼうはしない。しかし、わたしが、)

あるのだという事を知っているが故に、絶望はしない。しかし、私が、

(わたしのぶんがくのいきづまりにぶっつかっているのはじじつだ。「せんと・あいヴす」にも)

私の文学の行詰りにぶっつかっているのは事実だ。「セント・アイヴス」にも

(じしんがもてない。やすっぽいろまんすだ。)

自身が持てない。安っぽい小説[ロマンス]だ。

(わかいときに、なぜ、ちゃくじつへいぼんなしょうばいをえらばなかったかと、いま、ふと、)

若い時に、何故、着実平凡な商売を選ばなかったかと、今、ふと、

(そんなきがする。そういうしょうばいにはいっていたら、いまのようなすらんぷのときにも、)

そんな気がする。そういう商売にはいっていたら、今の様なスランプの時にも、

(りっぱにじぶんをささえていけたろうに。)

立派に自分を支えて行けたろうに。

(わたしのぎこうはわたしをみすて、いんすぴれーしょんも、それから、わたしがながいあいだの)

私の技巧は私を見棄て、インスピレーションも、それから、私が永い間の

(えいゆうてきなどりょくによってしゅうとくしたすたいるまでがうしなわれたようにおもえる。)

英雄的な努力によって習得したスタイル迄が失われたように思える。

(すたいるをうしなったさっかはみじめだ。いままでむいしきにはたらかしていたふずいいきんを、)

スタイルを失った作家は惨めだ。今迄無意識に働かしていた不随意筋を、

(いちいちいしをもってうごかさねばならないのだから。)

一々意志を以て動かさねばならないのだから。

(しかし、いっぽう「れっかー」のうれゆきがたいへんよいそうだ。)

しかし、一方「難破船引揚業者[レッカー]」の売行が大変良いそうだ。

(「かとりおーな」(でいヴぃっど・ばるふぉあのかいだい)のほうがふひょうで、)

「カトリオーナ」(デイヴィッド・バルフォアの改題)の方が不評で、

(あんなさくひんのほうがうれるなどとは、ひにくだが、とにかくあまりぜつぼうしないで)

あんな作品の方が売れるなどとは、皮肉だが、兎に角余り絶望しないで

(にばんめばえをまつことにしよう。こんごわたしのけんこうがかいふくして、あたまのほうまで)

二番芽生を待つことにしよう。今後私の健康が回復して、頭の方まで

(こころよくなるようなことは、とうていありえまいが。ただし、ぶんがくなるものは、)

快くなるようなことは、到底あり得まいが。但し、文学なるものは、

(かんがえかたによれば、たしょうびょうてきなぶんぴつにちがいないのだ。えあまそんにいわせれば、)

考え方によれば、多少病的な分泌に違いないのだ。エアマソンに言わせれば、

(ひとのちえはそのひとのもつきぼうのうむたしょうによってはかられるのだそうだから、)

人の智慧は其の人の有つ希望の有無多少によって計られるのだそうだから、

(わたしもきぼうをうしなわぬことにしよう。)

私も希望を失わぬことにしよう。

(だが、わたしは、どうしてもげいじゅつかとしてのじぶんをたいしたものとおもうことができぬ。)

だが、私は、どうしても芸術家としての自分を大したものと思うことが出来ぬ。

(げんかいがあまりにさやかなのだ。わたしはじぶんをたんにむかしふうのしょくにんとかんがえてきた。さて、いま、)

限界が余りに明かなのだ。私は自分を単に昔風の職人と考えて来た。さて、今、

(そのぎじゅつがていかしたとあっては?いまやわたしは、なんのやくにもたたぬやっかいものだ。)

其の技術が低下したとあっては?今や私は、何の役にも立たぬ厄介者だ。

(げんいんはただふたつ。にじゅうねんかんのこっくと、びょうきとだ。このふたつが、ぎゅうにゅうから)

原因は唯二つ。二十年間の刻苦と、病気とだ。この二つが、牛乳から

(くりいむをすっかりしぼりつくしてしまったのだ。・・・・・・・・・・・)

乳精[クリイム]をすっかり絞りつくして了ったのだ。・・・・・・・・・・・

(おとたかく、もりのむこうから、あめがちかづいてくる。たちまち、やねをたたくもうれつなひびき。)

音高く、森の向うから、雨が近附いて来る。忽ち、屋根を叩く猛烈な響。

(しめっただいちのにおい。さわやかに、なにかはいらんどてきなかんじだ。まどからそとをみれば、)

湿った台地の匂。爽やかに、何かハイランド的な感じだ。窓から外を見れば、

(しゅううのすいしょうぼうがばんぶつのうえにはげしいしぶきをたたきつけている。)

驟雨[しゅうう]の水晶棒が万物の上に激しい飛沫を叩きつけている。

(かぜ。かぜがこころよいすずしさをはこんでくる。あめはじきにすぎたが、まだきんじょをおそっている)

風。風が快い涼しさを運んで来る。雨はじきに過ぎたが、まだ近処を襲っている

(おとだけは、ざあーっとさかんにきこえている。あまだれのいってきがにほんすだれをとおして)

音だけは、ザアーッと盛んに聞えている。雨垂の一滴が日本簾を通して

(わたしのかおにはねた。まどのまえをやねから、まだあまみずがおがわのようにおちている。)

私の顔にはねた。窓の前を屋根から、まだ雨水が小川のように落ちている。

(こころよし!それはわたしのこころのなかにあるなにかにこたえるようなものである。なにに?)

快し!それは私の心の中にある何かに応えるようなものである。何に?

(はっきりしない。しょうたくちのあめのふるいきおく?)

はっきりしない。沼沢地の雨の古い記憶?

(わたしはヴぇらんだにでて、あまだれのおとをきく。なにかおしゃべりがしたくなる。なにを?)

私はヴェランダに出て、雨垂の音を聞く。何かおしゃべりがしたくなる。何を?

(なにか、こうかれつなことを。じぶんのがらにもないことを。せかいはひとつの)

何か、こう苛烈なことを。自分の柄にもないことを。世界は一つの

(ごびゅうであることについて、など。なにゆえのごびゅう?べつにしさいはない。)

誤謬[ごびゅう]であることに就いて、など。何故の誤謬?別に仔細はない。

(わたしがさくひんをうまくかけないから。それからまた、だいしょうさまざまの、あまりにおおくの)

私が作品を巧く書けないから。それから又、大小様々の、余りに多くの

(くだらないうるさいことがみみにはいるから。だが、その、うるさいおもにのなかでも、)

下らないうるさい事が耳に入るから。だが、其の、うるさい重荷の中でも、

(たえずしゅうにゅうをえていかねばならぬというえいえんのおもににくらべられるものはない。)

絶えず収入を得て行かねばならぬという永遠の重荷に比べられるものはない。

(いいきもちにねころがって、にねんかんもせいさくからはなれていられるところがあったら!)

いい気持に寝ころがって、二年間も制作から離れていられる所があったら!

(たとえそれがてんきょういんであっても、わたしはいかないであろうか?)

仮令それが癲狂院[てんきょういん]であっても、私は行かないであろうか?

(じゅういちがつばつばつにち)

十一月日

(わがたんじょうびのいわいが、げりのためいっしゅうかんおくれてきょうおこなわれた。じゅうごとうの)

我が誕生日の祝が、下痢のため一週間遅れて今日行われた。十五頭の

(こぶたのむしやき。ひゃくぽんどのぎゅうにく。どうりょうのぶたにく。くだもの。れもねーどのにおい。)

仔豚の蒸焼。百ポンドの牛肉。同量の豚肉。果物。レモネードの匂。

(こーひーのかおり。くられっと・ぬが。かいじょうかいかともに、はな・はな・はな。ろくじゅうの)

コーヒーの香。クラレット・ヌガ。階上階下共に、花・花・花。六十の

(うまつなぎじょうをきゅうせつする。きゃくはひゃくごじゅうにんもきたろうか。さんじごろからきて、)

馬繋ぎ場を急設する。客は百五十人も来たろうか。三時頃から来て、

(ななじにかえった。つなみのしゅうらいのようだ。だいしゅうちょうせうまぬがじぶんのしょうごうの)

七時に帰った。海嘯[つなみ]の襲来のようだ。大酋長セウマヌが自分の称号の

(ひとつをわたしにおくってくれた。)

一つを私に贈って呉れた。

(じゅういちがつばつばつにち)

十一月日

(あぴあへくだり、まちでばしゃをやとって、ふぁにい、べる、ろいどとともにどうどうと)

アピアへ下り、街で馬車を雇って、ファニイ、ベル、ロイドと共に堂々と

(かんごくへのりつけた。またーふぁぶかのしゅうじんたちにかヴぁとたばこのおくりものをするために。)

監獄へ乗りつけた。マターファ部下の囚人達にカヴァと煙草の贈物をする為に。

(めっきてつごうしにかこまれたなかで、われわれは、わがせいじはんたちおよびけいむしょちょう)

鍍金[めっき]鉄格子に囲まれた中で、我々は、わが政治犯達及び刑務所長

(うるむぶらんとしとともにかヴぁをのんだ。しゅうちょうのひとりが、かヴぁをのむとき、)

ウルムブラント氏と共にカヴァを飲んだ。酋長の一人が、カヴァを飲む時、

(まずうでをのばしてさかずきのさけをじょじょにちにそそぎ、きとうのちょうしでこういった。)

先ず腕を伸ばして盃の酒を徐々に地に灌[そそ]ぎ、祈祷の調子で斯う言った。

(「ら・)

「神も此の宴に加わり給わんことを。此の宴に加わり給わんことを。[ラ・

(たうまふあ・え・れ・あとうあ・うあ・またごふいえ・)

タウマフア・エ・レ・アトウア・ウア・マタゴフイエ・]

(れ・ふぇしらふあいが・ねい!ただし、われわれの)

この集まりの美しさよ[レ・フェシラフアイガ・ネイ]!但し、我々の

(おくったのは、すぴっと・あヴぁ(かヴぁ)といわれるかとうひんなのだが。)

贈ったのは、スピット・アヴァ(カヴァ)と云われる下等品なのだが。

(ちかごろ、めしつかいどもがしょうしょうなまけるので(といってもいっぱんのさもあじんとくらべれば)

近頃、召使共が少々怠けるので(といっても一般のサモア人と比べれば

(けっしてたいだとはいえまい。「さもあじんはいっぱんにはしらない。ヴぁいりまの)

決して怠惰とは云えまい。「サモア人は一般に走らない。ヴァイリマの

(しようにんだけはべつだが。」といったいちはくじんのことばに、わたしはほこりをかんずる。))

使用人だけは別だが。」と言った一白人の言葉に、私は誇を感ずる。)

(たろろのつうやくでかれらにこごとをいった。いちばんなまけたおとこのきゅうりょうをはんげんするむね)

タロロの通訳で彼等に小言を言った。一番怠けた男の給料を半減する旨

(いいわたした。そのおとこはおとなしくうなずいて、てれたわらいかたをした。はじめてここへ)

言渡した。其の男は大人しく頷いて、てれた笑い方をした。初めて此処へ

(きたころ、めしつかいのきゅうりょうをろくしりんぐげんじたら、そのおとこはすぐに)

来た頃、召使の給料を六志[シリング]減じたら、其の男は直ぐに

(しごとをとめた。しかし、いまでは、かれらはわたしをしゅうちょうをみなしているらしい。)

仕事を止めた。しかし、今では、彼等は私を酋長を見做しているらしい。

(きゅうきんをへらされたのは、てぃあというろうじんで、さもありょうり(めしつかいたちのための)の)

給金を減らされたのは、ティアという老人で、サモア料理(召使達の為の)の

(こっくだが、じつにかんぺきといっていいくらいみごとなふうぼうのもちぬしだ。むかしなんかいにぶめいを)

コックだが、実に完璧といっていい位見事な風貌の持主だ。昔南海に武名を

(とどろかしたさもあせんしのてんけいとおもわれるたいくとようぼうだ。しかも、これが、)

轟かしたサモア戦士の典型と思われる体躯と容貌だ。しかも、之が、

(はしにもぼうにもかからないやましであろうとは!)

箸にも棒にもかからない山師であろうとは!

(じゅうにがつばつにち)

十二月日

(かいせい、おそろしくあつい。かんごくのしゅうちょうたちにまねかれ、ごご、やけるようなよんまいるはんを)

快晴、恐ろしく暑い。監獄の酋長達に招かれ、午後、灼けるような四哩半を

(きじょう、ごくちゅうのうたげにおもむく。せんじつのへんれいのいみか?かれらはじぶんたちのうら(しんくの)

騎乗、獄中の宴に赴く。先日の返礼の意味か?彼等は自分達のウラ(深紅の

(しゅしをたくさんおにとおしたくびかざり)をはずしてわたしのくびにかけてくれ、「われらの)

種子を沢山緒に通した頸飾)を外して私の頸に掛けて呉れ、「我等の

(ゆいいつのとも」とわたしをよぶ。ごくちゅうのものとしてはすこぶるじゆうなさかんなうたげであった。)

唯一の友」と私を呼ぶ。獄中のものとしては頗る自由な盛んな宴であった。

(たぱじゅうさんまい、うちわさんじゅうまい、ぶたごとう、ぎょるいのやま、たろいものさらにおおきな)

花筵[タパ]十三枚、団扇三十枚、豚五頭、魚類の山、タロ芋の更に大きな

(やまを、みやげとしてもらう。とてももちきれないから、とことわると、かれらのいわく、)

山を、土産として貰う。とても持ちきれないから、と断ると、彼等の曰く、

(「いや、ぜひ、これらのものをつんでらうぺぱおうのいえのまえをとおって)

「いや、是非、之等のものを積んでラウペパ王の家の前を通って

(かえってください。きっと、おうがやきもちをやくから。」と。わたしのくびにかけた)

帰って下さい。屹度、王が嫉妬[やきもち]をやくから。」と。私の頸に掛けた

(うらも、もともとらうぺぱのほしがっていたものだそうだ。おうへのあてつけが)

ウラも、元々ラウペパの欲しがっていたものだそうだ。王へのあてつけが

(しゅうじんしゅうちょうなどのもくてきのひとつなのだ。おくりもののやまをくるまにつみ、あかいくびかざりをつけ、)

囚人酋長等の目的の一つなのだ。贈物の山を車に積み、紅い頸飾りを着け、

(うまにまたがって、さーかすのぎょうれつよろしく、わたしはあぴあのまちのぐんしゅうのきょうたんのなかを)

馬に跨って、サーカスの行列宜しく、私はアピアの街の群集の驚嘆の中を

(ゆうゆうとかえった。おうのいえのまえをもとおったが、はたして、かれがしっとをおぼえたか、どうか)

悠々と帰った。王の家の前をも通ったが、果して、彼が嫉妬を覚えたか、どうか

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