セル

(ゆされたことはかたるごうまんなものがたり)

喩された古都は語る、傲慢な物語｡

(きせたかんきゃくにはてなきたびじをくわせている)

着せた観客に、果て無き旅路を喰わせている｡

(おどれるこういってんのしそたればつねならで)

踊れる紅一点の、始祖たれば常ならで｡

(ゆえにすいぎょをもせずかえりみもせず)

故に水魚を模せず、顧みもせず｡

(よんげんしがきりひらく)

四原子が切拓く､

(てきちょくのじもんじとう)

躑躅の自問自答｡

(ささえるしょくしののどもと)

支える食指の喉元､

(ぜんりゃくにさかれ)

前略に割かれ｡

(みぎにしかすすめぬかささぎは)

右にしか進めぬ鵲は､

(こどうにさよならをつげていた)

鼓動にさよならを告げていた｡

(よろこびはにくのはとなりはてて)

喜びは肉の端と成り果てて､

(ずいはらうせるでした)

髄払うセルでした｡

(くしのはりをかぞえていれば)

櫛の針を数えていれば､

(わたしがみえるのでしょう)

私が見えるのでしょう｡

(けつらくしたしゅうえんとゆめうつつのぼうえんきょう)

欠落した終焉と、ユメウツツの望遠鏡｡

(にせとはんぜずにかせさきのきちをさがしている)

偽と判ぜずに、枷先の既知を探している｡

(こうじんをはいしたしょうのめのくらむえねるぎー)

後塵を拝した抄の、目の眩むエネルギー｡

(ににんばおりすらとぶこすれけなされて)

二人羽織すら翔ぶ、擦れ貶されて｡

(ふきそくなめいめつと)

不規則な明滅と､

(ふるいのうえのしゅいろ)

篩の上の朱色｡

(にしんすうのおとうとたちも)

二進数の弟たちも､

(かいぎゃくにさかれ)

諧謔に裂かれ｡

(こわくのくさのねは)

蠱惑の草の根は､

(いんいちがいちときょうりのゆえんですか)

1×1=1と郷里の所以ですか？

(よろこびはにくのはとなりはてて)

悦びは肉の端と成り果てて､

(ずいわらうせるでした)

瑞嗤うセルでした｡

(くしのはりをかぞえたなら)

櫛の針を数えたなら､

(わたしがみえるでしょうか)

私が見えるでしょうか？

(すべてあなたのせいです)

全てあなたの所為です｡

(ずっとみていた)

ずっと見ていた､

(そらたかくかいろうにとじこめていたの)

天高く回廊に閉じ込めていたの､

(やなぎのさりははやく)

柳の去りは疾く､

(きおくごときゃしゃなけだかきとうに)

記憶ごと華奢な気高き塔に､

(ずいをささげたのか)

髄を捧げたのか？

(よろこびはにくのはとなりはてて)

喜びは肉の端と成り果てて､

(ずいはらうせるでした)

髄払うセルでした｡

(くしのはりをかぞえていれば)

櫛の針を数えていれば､

(わたしがみえるのでしょう)

私が見えるのでしょう｡

(よろこびはにくのはとなりはてて)

悦びは肉の端と成り果てて､

(ずいわらうせるでした)

瑞嗤うセルでした｡

(くしのはりをかぞえたなら)

櫛の針を数えたなら､

(わたしがみえるのでしょう)

私が見えるのでしょう｡

(そのきざみをかけぬけて)

その刻を駆け抜けて､

(せいすいをなげいたでんしょばとは)

盛衰を嘆いた伝書鳩は､

(ふしのこどもだけをのこして)

不死の子供だけを遺して､

(しずかにねむるのですか)

静かに眠るのですか？

(あいしてくれますか)

愛してくれますか？