死せる魂 2
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | berry | 7671 | 神 | 7.8 | 97.9% | 603.9 | 4734 | 101 | 95 | 2024/12/19 |
2 | はく | 7416 | 光 | 7.6 | 97.1% | 626.4 | 4788 | 142 | 95 | 2024/12/19 |
3 | subaru | 7294 | 光 | 7.5 | 96.5% | 627.6 | 4749 | 171 | 95 | 2024/12/17 |
4 | Neil | 7268 | 光 | 7.7 | 94.0% | 611.1 | 4742 | 300 | 95 | 2024/12/10 |
5 | ヌオー | 6168 | A++ | 6.4 | 95.5% | 736.5 | 4765 | 222 | 95 | 2024/12/26 |
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問題文
(こうしてめしつかいたちがおおさわぎをして、いろいろのしまつをつけているあいだに、)
こうして召使たちが大騒ぎをして、色々の始末をつけている間に、
(しんしはしょくどうへでかけていった。)
紳士は食堂へ出掛けて行った。
(そのしょくどうというやつがそもそもどんなものであるかは、)
その食堂という奴が抑々どんなものであるかは、
(およそたびをするほどのひとならだれでもよくしっている。)
凡そ旅をする程の人なら誰でもよく知っている。
(つまりれいによってれいのごとく、ゆせいとりょうをぬったかべはうえのほうがたばこのけむりでくすみ、)
詰り例によって例の如く、油性塗料を塗った壁は上の方が煙草の煙でくすみ、
(したのほうはしゅじゅざったなりょかくのせなかにこすられて、)
下の方は種々雑多な旅客の背中にこすられて、
(てかてかひかっていようといったあんばいだが、りょかくというよりもむしろ、)
てかてか光っていようといった塩梅だが、旅客というよりも寧ろ、
(とちのしょうにんなかまのほうがおおい)
土地の商人仲間の方が多いーー
(というのは、いちのたつひには、)
というのは、市の立つ日には、
(きまってしょうにんなかまがろくにんづれななにんづれでここへやってきては、)
決って商人仲間が六人連れ七人連れで此処へやって来ては、
(おちゃをおきまりのにはいずつのんでいくからである。)
お茶をお決りの二杯ずつ飲んで行くからである。
(それから、かたのごとくすすけたてんじょうと、おなじくすすけたしゃんでりあで、)
それから、型の如く煤けた天井と、同じく煤けたシャンデリアで、
(それにはかっとぐらすがたくさんぶらさがっていて、)
それにはカットグラスが沢山ぶら下がっていて、
(きゅうじがかたのごとく、うみべにつどうとりのかずほどおびただしいちゃわんをのせたぼんを、)
給仕が型の如く、海辺に集う鳥の数ほど夥しい茶碗を載せた盆を、
(だいたんにふりまわしながらすりきれたゆふのうえをかけまわるたんびに、)
大胆に振り廻しながら擦切れた油布の上を駈け廻るたんびに、
(はねあがったり、ちりんちりんおとをたてたりする。)
跳ね上がったり、ちりんちりん音を立てたりする。
(またかべじゅうには、かたどおりのあぶらえがいくつもかけならべてある。)
また壁中には、型通りの油絵が幾つも懸け並べてある。
(つまりなにもかもがどこにでもあるのとおなじちょうしで、)
詰り何もかもが何処にでもあるのと同じ調子で、
(ただひとつちがうのは、なかのいちまいのえにえがかれたにんふが、)
只一つ違うのは、中の一枚の絵に描かれたニンフが、
(おそらくどくしゃもついぞこれまでにみたことがないだろうとおもわれるような、)
恐らく読者も終ぞ此迄に見たことがないだろうと思われるような、
(すばらしくおおきなちぶさをもっているぐらいのものである。)
素晴らしく大きな乳房を持っているぐらいのものである。
(もっとも、こういったへんたいは、)
尤も、こういった変態は、
(だれがいつどこからわがろしあていこくにもたらしたのかけんとうもつかない。)
誰がいつ何処から我がロシア帝国に齎したのか見当もつかない。
(さまざまなれきしがのなかにもしばしばはっけんされるが、)
様々な歴史画の中にもしばしば発見されるが、
(どうかすると、わがていこくのけんかんれんやびじゅつあいこうしゃたちがいたりあへいったさい、)
どうかすると、我が帝国の顕官連や美術愛好者達がイタリアへ行った際、
(あんないにんにそそのかされてかいこんできたえのなかにさえも)
案内人に嗾されて買い込んで来た絵の中にさえも
(ちょいちょいみうけられる。)
ちょいちょい見受けられる。
(しんしはかぶっていたかるつーずをぬぎすてると、)
紳士は被っていたカルツーズを脱ぎ捨てると、
(にじいろのてあみのくびまきをといた)
虹色の毛編の頸巻を解いたーー
(こういうくびまきは、にょうぼうもちのおとこには、さいくんがてずからあんで、)
こういう頸巻は、女房持ちの男には、細君が手ずから編んで、
(ちゃんとまきかたまでおしえてくれるものだが、ひとりものにはいったい、)
ちゃんと巻き方まで教えてくれるものだが、独り者には一体、
(だれがそんなことをしてくれるやら、さくしゃにはさっぱりわからないから、)
誰がそんなことをしてくれるやら、作者にはさっぱり分らないから、
(なんとももうしあげかねるが、)
何とも申し上げ兼ねるが、
(とにかく、さくしゃはまだいちどもそんなくびまきなどまいたおぼえがないので。)
とにかく、作者はまだ一度もそんな頸巻など巻いた覚えがないので。
(さてくびまきをとくと、しんしはしょくじをいいつけた。)
さて頸巻を解くと、紳士は食事を言いつけた。
(で、こういうやどやではおきまりのいろんなりょうり、たとえば、)
で、こういう宿屋ではお決りの色んな料理、例えば、
(わざわざふじのきゃくにそなえていくしゅうかんもしまってあった)
わざわざ不時の客に備えて幾週間も仕舞ってあった
(うずまきがたのにくまんじゅうをそえたしちいだとか、)
渦巻型の肉饅頭を添えたシチイだとか、
(えんどうをあしらったのうみそだとか、きゃべつをそえたちょうづめだとか、)
豌豆をあしらった脳味噌だとか、キャベツを添えた腸詰だとか、
(ぶりゃるかのあぶりにくだとか、きゅうりのしおづけだとか、)
ブリャルカの焙り肉だとか、胡瓜の塩漬だとか、
(おのぞみしだい、いつなんどきでもよういのできている、)
お望み次第、いつなんどきでも用意の出来ている、
(いまもいうあまったるいうずまきがたのにくまんじゅうだとか)
今もいう甘ったるい渦巻型の肉饅頭だとかーー
(そういったりょうりの、あたためなおしたのやつめたいままのがつぎつぎとはこばれるあいだに)
そう言った料理の、暖め直したのや冷たい儘のが次ぎ次ぎと運ばれる間に
(かれはやどやのげなん、つまりぽろうぉいをつかまえて、)
彼は宿屋の下男、詰りポロウォイを捕まえて、
(このやどやはまえにはだれがけいえいしていたのか、いまはだれがもっているのか、)
この宿屋は前には誰が経営していたのか、今は誰が持っているのか、
(しゅうえきはよほどおおいのかとか、)
収益は余程多いのかとか、
(おまえたちのしゅじんはひどいあくとうじゃないのかというような、)
お前達の主人は酷い悪党じゃないのかというような、
(つまらないことをいろいろといただした。)
つまらないことを色々問い糺した。
(それにたいしてきゅうじはかたのごとく、)
それに対して給仕は型の如く、
(「ええもう、だんな、ひどいあくとうでございますよ!」)
『ええもう、旦那、酷い悪党でございますよ!』
(とあいづちをうったものだ。)
と相槌を打ったものだ。
(ちかごろではぶんめいかいかのよーろっぱとおなじようにぶんめいかいかのろしあていこくでも、)
近頃では文明開化のヨーロッパと同じように文明開化のロシア帝国でも、
(りょかんでしょくじをしたためるのに、なにかきゅうじとはなしをするか、)
旅館で食事をしたためるのに、何か給仕と話をするか、
(ときにはおもしろそうにかれらをからかいでもしながらでないと、)
時には面白そうに彼等を揶揄いでもしながらでないと、
(とんとものがおいしくたべられないというかわったごじんがざらにあるもので。)
頓と物が美味しく食べられないという変った御仁がざらにあるもので。
(とはいえ、このしんらいのきゃくは、)
とはいえ、この新来の客は、
(そういったくだらないしつもんばかりならべたわけではない。)
そういった下らない質問ばかり並べた訳ではない。
(かれは、このまちにいるけんちじはだれだとか、さいばんしょちょうはだれだとか、)
彼は、この街にいる県知事は誰だとか、裁判所長は誰だとか、
(けんじはだれだとかいうようなことを、おそろしくめんみつにたずねた)
検事は誰だとかいうようなことを、恐ろしく綿密に訊ねたーー
(つまり、おもだったやくにんのことは、ひとりのこらずききもらさなかったのである。)
詰り、主だった役人のことは、一人残らず訊き洩らさなかったのである。
(が、なおいっそうこまごまと、まんざらむかんしんでもなさそうなちょうしで、)
が、なお一層細々と、まんざら無関心でもなさそうな調子で、
(めぼしいじぬしたちのことをたずねた)
目ぼしい地主たちのことを訊ねたーー
(だれだれはのうどをいくにんもっていて、まちからどのくらいはなれたところにすんでいるか、)
誰々は農奴を幾人持っていて、街からどの位離れた所に住んでいるか、
(どんなせいしつのおとこで、まちへはよほどたびたびでてくるのか、)
どんな性質の男で、街へは余程度々出て来るのか、
(などということをねほりはほりたずねた。)
などということを根掘り葉掘り訊ねた。
(それからまた、このちほうのじょうたいをいろいろとたんねんにきいた)
それからまた、この地方の状態を色々と丹念に訊いたーー
(このけんかになにかびょうきはなかったか、つまりりゅうこうせいのねつびょうとか、)
この県下に何か病気はなかったか、詰り流行性の熱病とか、
(もうれつなまらりやとか、)
猛烈なマラリヤとか、
(てんねんとうといったふうなものがはやらなかったかなどということを、)
天然痘といった風なものが流行らなかったかなどということを、
(どうもやはりただのこうきしんとはおもわれないようなみのいれかたで)
どうも矢張り唯の好奇心とは思われないような身の入れ方で
(ねほりはほりしつもんしたものだ。)
根掘り葉掘り質問したものだ。
(しんしのたいどには、どことなくいかついところがあって、)
紳士の態度には、何処となく厳ついところがあって、
(はなをかむのにもおそろしくおおきなおとをたてる。)
洟を擤むのにも恐ろしく大きな音をたてる。
(いったいどうしてやらかすのかわからないが、)
一体どうしてやらかすのか分らないが、
(かれのはなはまるでらっぱのようなおとをたてるのだ。)
彼の鼻はまるで喇叭のような音をたてるのだ。
(いっけんこのなんのつみもなさそうなしぐさによって、)
一見このなんの罪もなさそうな仕草によって、
(かれはりょかんのきゅうじからただいのそんけいをかちえたものだ。)
彼は旅館の給仕から多大の尊敬を贏ち得たものだ。
(で、きゅうじはそのおとをきくたんびに、かみのけをふりあげるようにして、)
で、給仕はその音を聞くたんびに、髪の毛を振り上げるようにして、
(いっそうしゃんとちょくりつふどうのしせいをとり、はるかのたかみからえしゃくをしながら、)
一層シャンと直立不動の姿勢をとり、遥かの高みから会釈をしながら、
(「なにかごようでございましょうか?」)
『何か御用でございましょうか?』
(とたずねたものである。)
と訊ねたものである。
(しょくじがすむと、しんしはこーひーをいっぱいのみほしてから、)
食事が済むと、紳士は珈琲を一杯飲み干してから、
(ながいすにどっかりこしをおろし、せなかにくっしょんをあてがったが、)
長椅子にどっかり腰をおろし、背中にクッションを充てがったが、
(それがまたろしあのやどやのくっしょんというやつは)
それがまたロシアの宿屋のクッションというやつは
(なかみにふんわりとだんりょくのあるけのかわりに、)
中身にふんわりと弾力のある毛の代りに、
(まるでれんがくずかこいしのようなものがつめこんである。)
まるで煉瓦屑か小石のようなものが詰めこんである。
(やがてのことに、あくびがではじめたので、)
軈てのことに、欠伸が出はじめたので、
(かれはじぶんのへやへあんないするようにいいつけてへやへもどると、)
彼は自分の部屋へ案内するように言いつけて部屋へもどると、
(いきなりよこになって、ちょうどにじかんばかりねむった。)
いきなり横になって、丁度二時間ばかり眠った。
(こうしてひとやすみしてから、りょかんのきゅうじのもとめるままに、)
こうして一休みしてから、旅館の給仕の求める儘に、
(しかるべくけいさつへとどけるため、いちまいのかみきれにかんとうやせいめいなどをかいてわたした。)
然るべく警察へ届けるため、一枚の紙きれに官等や姓名などを書いて渡した。
(きゅうじはかいだんをおりながら、)
給仕は階段を降りながら、
(そのかみきれにかいてあるつぎのようなもじをたどたどしくひろいよみした。)
その紙切れに書いてある次ぎのような文字をたどたどしく拾い読みした。
(「ろくとうかんぱーうぇるいわーのヴぃっちちちこふ。じぬし、しようのためのりょこう」)
『六等官パーウェル・イワーノヴィッチ・チチコフ。地主、私用の為の旅行』
(と。)
と。