死せる魂 4
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | Neil | 7905 | 神 | 8.3 | 95.1% | 591.5 | 4926 | 250 | 92 | 2024/12/26 |
2 | HAKU | 7593 | 神 | 7.8 | 97.2% | 636.6 | 4974 | 140 | 92 | 2024/12/29 |
3 | りく | 5824 | A+ | 6.0 | 96.7% | 837.2 | 5048 | 172 | 92 | 2025/01/16 |
4 | nasara | 3373 | D | 3.5 | 94.5% | 1394.8 | 4994 | 288 | 92 | 2024/12/29 |
5 | tosi73 | 3046 | E++ | 3.4 | 90.1% | 1451.2 | 4965 | 544 | 92 | 2025/01/05 |
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問題文
(あくるひはまるいちにちじゅう、しょほうのほうもんについやされた。)
翌る日はまる一日中、諸方の訪問に費やされた。
(しんらいのたびびとはまずこのまちのおれきれきがたをほうもんした。)
新来の旅人は先ずこの街のお歴々がたを訪問した。
(はじめにけんちじにけいいをひょうした。)
初めに県知事に敬意を表した。
(ちじはちちこふとどうように、あまりふとってもいなければやせてもいないじんぶつで、)
知事はチチコフと同様に、あまり肥ってもいなければ痩せてもいない人物で、
(くびにあんなじゅうじしょうをかけていたが、)
頸にアンナ十字章をかけていたが、
(まだそのうえに、ちかくほしだいじゅしょうをもらうことになっているといううわさであった。)
まだその上に、近く星大授章を貰うことになっているという噂であった。
(そのくせ、だいのおひとよしで、)
その癖、大のお人好しで、
(ときにはじぶんでしゃのきれにししゅうをしていたりさえした。)
時には自分で紗の切れに刺繍をしていたりさえした。
(それからふくちじのところへかおをだし、けんじのところへいき、)
それから副知事のところへ顔を出し、検事のところへ行き、
(さいばんしょちょうのところ、けいさつぶちょうのところ、ちょうぜいだいべんにんのところ、)
裁判所長のところ、警察部長のところ、徴税代弁人のところ、
(かんえいこうじょうかんとくかんのところ・・・・・・)
官営工場監督官のところ……
(いや、これいじょういちいちかぞえあげていたひには、)
いや、これ以上一々かぞえあげていた日には、
(せじょうのゆうりょくしゃをひとりのこらずもうらすることになって、)
世上の有力者を一人残らず網羅することになって、
(とてもできないそうだんだから、ざんねんながらこのへんでやめるが、)
とても出来ない相談だから、残念ながらこの辺でやめるが、
(とにかくこのたびびとは、)
とにかくこの旅人は、
(ほうもんということにかけていじょうなかつやくをしめしたといってもさしつかえなく、)
訪問ということにかけて異常な活躍を示したと言っても差支えなく、
(かれはいむきょくのかんとくからまちのけんせつぎしにまでけいいをひょうしにしこうしたのである。)
彼は医務局の監督から街の建設技師にまで敬意を表しに伺候したのである。
(それでもまだ、だれかほうもんすべきひとはのこっていないかとかんがえながら、)
それでもまだ、誰か訪問すべき人は残っていないかと考えながら、
(ながいことばしゃのなかにすわっていたが、)
長いこと馬車の中に坐っていたが、
(もうこれいじょう、かんりらしいものはまちにいなかった。)
もうこれ以上、官吏らしいものは街にいなかった。
(こうしたゆうりょくしゃたちとのだんごうのあいだに、)
こうした有力者たちとの談合のあいだに、
(かれはじつにてぎわよく、そのひとりひとりにとりいってしまった。)
彼は実に手際よく、その一人々々に取り入ってしまった。
(まずちじにはそれとなしに、このけんへはいるとまるでてんごくへきたようで、)
先ず知事にはそれとなしに、この県へ入るとまるで天国へ来たようで、
(どうろというどうろはいたるところびろーどをしきつめたようだ、)
道路という道路は到るところビロードを敷きつめたようだ、
(それにこういうけんめいなつぶよりのおれきれきをにんようしているとうきょくは)
それにこういう賢明な粒よりのお歴々を任用している当局は
(まことにぜつだいなしょうさんにあたいするなどとほのめかした。)
まことに絶大な賞讃に値するなどと仄めかした。
(またけいさつぶちょうには、しのじゅんさのことでなにかたっぷりとおせじをふりまき、)
また警察部長には、市の巡査のことで何かたっぷりとお世辞を振りまき、
(ふくちじとさいばんしょちょうにたいしては、ふたりともまだごとうかんにすぎなかったのに、)
副知事と裁判所長に対しては、二人ともまだ五等官に過ぎなかったのに、
(だんわのあいだににどまでもわざとまちがえて「かっか」とよんだものだから、)
談話のあいだに二度までもわざと間違えて『閣下』と呼んだものだから、
(それがひどくかれらのぎょいにかなった。)
それがひどく彼等の御意にかなった。
(けっかとして、ちじはさっそくそのばん、)
結果として、知事は早速その晩、
(じぶんのいえのやかいにごらいりんにあずかりたいとしょうたいするし、)
自分の家の夜会に御来臨に預りたいと招待するし、
(ほかのやくにんれんもそれぞれ、あるものはごさんに、)
他の役人連もそれぞれ、或る者は午餐に、
(あるものはぼすとんかるたに、またあるものはおちゃにまねくというしまつであった。)
或る者はボストン骨牌に、また或る者はお茶に招くという始末であった。
(このたびびとはじぶんじしんのみのうえについては、)
この旅人は自分自身の身の上については、
(おおくかたることをどうやらさけているらしく、)
多く語ることをどうやら避けているらしく、
(はなすにしてもひどくひかえめがちな、どっちつかずのおざなりで、)
話すにしてもひどく控え目がちな、どっちつかずの御座形で、
(そんなばあいにはいつもはんでおしたように、)
そんな場合にはいつも判で捺したように、
(じぶんはせけんてきにはまことにつまらぬうじむしどうようのもので、)
自分は世間的には誠につまらぬ蛆虫同様の者で、
(ひとさまからかれこれしんぱいしていただくほどのにんげんではないとか、)
人様からかれこれ心配していただくほどの人間ではないとか、
(これまでにはずいぶんつらいめにもあい、)
これまでにはずいぶん辛い目にもあい、
(しょくせきじょう、せいぎのためにはしのびがたきをもしのび、)
職責上、正義のためには忍び難きをも忍び、
(じぶんのせいめいをねらうようなてきをもおおくもったとか、)
自分の生命を狙うような敵をも多く持ったとか、
(しかしいまはもうあんのんによせいをおくりたいとおもって、あんじゅうのちをもとめているとか、)
しかし今はもう安穏に余世を送りたいと思って、安住の地をもとめているとか、
(はからずもこのまちへやってきたので、なにはさていちりゅうのおれきれきがたに)
図らずもこの街へやって来たので、何はさて一流のお歴々がたに
(けいいをひょうするのをだいいちのぎむだとぞんじましてなどとのべたてるだけであった。)
敬意を表するのを第一の義務だと存じましてなどと述べたてるだけであった。
(で、さっそくちじのやかいへしゅっせきすることをおこたらなかった)
で、さっそく知事の夜会へ出席することを怠らなかった
(このしんらいのじんぶつについて、まちのひとびとがしりえたのはいじょうがぜんぶであった。)
この新来の人物について、街の人々が知り得たのは以上が全部であった。
(ところで、そのやかいにしゅっせきするしたくにかれはたっぷりにじかんのよもかかったが、)
ところで、その夜会に出席する支度に彼はたっぷり二時間の余もかかったが、
(このさいかれがみじまいにはらったにゅうねんさかげんは、)
この際彼が身仕舞いに払った入念さ加減は、
(ちょっとほかにるいのないものであった。)
ちょっと他に類のないものであった。
(しょくごにすこしごすいをとったあと、せんめんのよういをめいじたかれは、)
食後に少し午睡をとった後、洗面の用意を命じた彼は、
(りょうほうのほおをかわるがわる、なかからしたでつっぱりながら、)
両方の頬を代る代る、中から舌でつっぱりながら、
(おそろしくながいことせっけんでみがきたてたが、やがてきゅうじのかたからたおるをとると、)
おそろしく長いこと石鹸で磨き立てたが、やがて給仕の肩からタオルをとると、
(あいてのはなのさきでまずにどばかりぶるるっとはなをならしてから、)
相手の鼻の先で先ず二度ばかりブルルっと鼻を鳴らしてから、
(みみのうしろからてはじめに、そのまるまるしたかおをまんべんなくふきあげた。)
耳の後ろから手始めに、その丸々した顔を満遍なく拭きあげた。
(それからかがみにむかってむねあてをつけ、)
それから鏡に向って胸当をつけ、
(はなのあなからのぞいていたはなげをにほんひっこぬくと、かんぱつをいれず、)
鼻の孔からのぞいていた鼻毛を二本ひっこ抜くと、間髪を入れず、
(ぴかぴかひかるつるこけももいろのえんびふくをつけていた。)
ピカピカ光る蔓苔桃色の燕尾服をつけていた。
(こんなふうにしてみなりをととのえると、かれはじぶんのばしゃにのりこんで、)
こんな風にして身形をととのえると、彼は自分の馬車に乗りこんで、
(まばらにほかげのさしているいえいえのまどのひかりにてらされて、)
まばらに火影のさしている家々の窓の光りに照らされて、
(うっすらとみえるはてしもなくだだっぴろいとおりをゆられていった。)
うっすらと見える涯しもなくだだっ広い通りを揺られて行った。
(ちじのていはしかし、まるでぶとうかいでもあるようにこうこうとあかりがついていた。)
知事の邸はしかし、まるで舞踏会でもあるように煌々と灯りがついていた。
(らんたんをつけたけいばしゃがいくだいもならんでおり、)
ランタンをつけた軽馬車が幾台も並んでおり、
(げんかんまえにはふたりのけんぺいがたっていて、)
玄関前には二人の憲兵が立っていて、
(とおくのほうではぎょしゃのわめきごえがきこえている)
遠くの方では馭者の喚き声が聞こえているーー
(つまり、なにもかもがちゅうもんどおりそなわっていたわけだ。)
つまり、何もかもが注文通り備わっていた訳だ。
(おおひろまへあしをふみいれると、らんぷや、ろうそくや、)
大広間へ足を踏み入れると、ランプや、蝋燭や、
(ふじんれんのいしょうがあまりにもきらきらとひかりかがやいていたので、)
婦人連の衣裳が余りにもキラキラと光り輝いていたので、
(いっしゅんかんちちこふはめをそばめずにはいられなかった。)
一瞬間チチコフは眼を側めずにはいられなかった。
(なにもかもがふんだんにひかりをあびていた。)
何もかもがふんだんに光りを浴びていた。
(くろいえんびふくがあちこちに、かたまりになったりはなればなれになったりして、)
黒い燕尾服があちこちに、塊まりになったり離ればなれになったりして、
(ちらちらしながらゆれうごいていた)
ちらちらしながら揺れ動いていたーー
(それはちょうど、なつもしちがつのあついひざかりにあけはなったまどのまえで、)
それはちょうど、夏も七月の暑い日盛に開けはなった窓の前で、
(としとったじょちゅうがしらがまっしろにかがやいているせいせいとうのぼうをうちくだいて、)
年とった女中頭が真白に輝いている精製糖の棒を打ち砕いて、
(きらきらするかけらにしているとき、)
キラキラする欠片にしているとき、
(そのうえをまいまいとびまわっているはえのようだ。)
その上をまいまい飛び回っている蠅のようだ。
(こどもたちはみんなそのまわりにあつまって、)
子供たちは皆んなそのまわりに集まって、
(つちをふりあげるじょちゅうがしらのこわばったてのうごきを、おもしろそうにみまもっている。)
槌を振りあげる女中頭の強張った手の動きを、面白そうに見まもっている。
(ところが、かるいくうきかぜにのったはえのくうぐんは、さもわれはがおに、)
ところが、軽い空気かぜに乗った蠅の空軍は、さも我は顔に、
(えんりょえしゃくなくまいこんできて、ろうばがしりょくのにぶいうえに、)
遠慮会釈なく舞いこんで来て、老婆が視力の鈍い上に、
(たいようのひかりになやまされているのをいいことにして、)
太陽の光りに悩まされているのをいいことにして、
(このうまいごちそうのうえに、あるいはいっぴきずつはなればなれに、)
この美味い御馳走の上に、或は一匹ずつ離ればなれに、
(あるいはぎっしりかたまってたかりよる。)
或はぎっしり塊まってたかり寄る。
(そうでなくても、ゆくさきざきでおいしいごちそうにありつくことのできるほうじょうななつに)
そうでなくても、ゆく先々で美味しい御馳走にありつくことの出来る豊饒な夏に
(ほうまんしたはえどもは、べつにそれをたべるのがもくてきではなく、)
飽満した蠅どもは、別にそれを食べるのが目的ではなく、
(ただおのれをこじせんがためにさとうのかたまりのうえをいったりきたりして、)
ただ己れを誇示せんがために砂糖の塊まりの上を往ったり来たりして、
(ぜんしなりこうしなりのかたほうのあしでほかのあしをこすったり、)
前肢なり後肢なりの片方の肢で他の肢をこすったり、
(そのあしでじぶんのはねのしたをかいたり、)
その肢で自分の羽の下を掻いたり、
(にほんともぜんしをのばしてじぶんのあたまをこすったりして、)
二本とも前肢を伸ばして自分の頭をこすったりして、
(ここでくるりとむきをかえると、またどこかへとびさってゆくが、)
ここでくるりと向きを変えると、また何処かへ飛び去ってゆくが、
(ふたたびうるさいたいぐんとなってひらいするのである。)
再びうるさい大軍となって飛来するのである。