トカトントン7 太宰治【終】

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(おしえてください。このおとは、なんでしょう。)

教えて下さい。この音は、なんでしょう。

(そうして、このおとからのがれるには、どうしたらいいのでしょう。)

そうして、この音からのがれるには、どうしたらいいのでしょう。

(わたしはいま、じっさい、このおとのためにみうごきができなくなっています。)

私はいま、実際、この音のために身動きが出来なくなっています。

(どうか、ごへんじをください。)

どうか、ご返事を下さい。

(なおさいごにもうひとことつけくわえさせていただくなら、)

なお最後にもう一言つけ加えさせていただくなら、

(わたしはこのてがみをはんぶんもかかぬうちに、)

私はこの手紙を半分も書かぬうちに、

(もう、とかとんとんが、さかんにきこえてきていたのです。)

もう、トカトントンが、さかんに聞えて来ていたのです。

(こんなてがみをかく、つまらなさ。)

こんな手紙を書く、つまらなさ。

(それでも、がまんしてとにかく、これだけかきました。)

それでも、我慢してとにかく、これだけ書きました。

(そうして、あんまりつまらないから、)

そうして、あんまりつまらないから、

(やけになって、うそばっかりかいたようなきがします。)

やけになって、ウソばっかり書いたような気がします。

(はなえさんなんておんなもいないし、でももみたのじゃないんです。)

花江さんなんて女もいないし、デモも見たのじゃないんです。

(そのほかのことも、たいがいうそのようです。)

その他の事も、たいがいウソのようです。

(しかし、とかとんとんだけは、うそでないようです。)

しかし、トカトントンだけは、ウソでないようです。

(よみかえさず、このままおおくりいたします。けいぐ。)

読みかえさず、このままお送り致します。敬具。

(このきいなるてがみをうけとったぼうさっかは、)

この奇異なる手紙を受け取った某作家は、

(むざんにもむがくむしそうのおとこであったが、つぎのごときへんとうをあたえた。)

むざんにも無学無思想の男であったが、次の如き返答を与えた。

(はいふく。きどったくのうですね。)

拝復。気取った苦悩ですね。

(ぼくは、あまりどうじょうしてはいないんですよ。)

僕は、あまり同情してはいないんですよ。

(じっしのゆびさすところ、じゅうもくのみるところの、)

十指の指差すところ、十目の見るところの、

など

(いかなるべんめいもせいりつしないしゅうたいを、きみはまださけているようですね。)

いかなる弁明も成立しない醜態を、君はまだ避けているようですね。

(しんのしそうは、えいちよりもゆうきをひつようとするものです。)

真の思想は、叡智よりも勇気を必要とするものです。

(またいじゅっしょう、にはち、)

マタイ十章、二八、

(みをころしてれいこんたましいをころしえぬものどもをおそるな、)

「身を殺して霊魂たましいをころし得ぬ者どもを懼るな、

(みとたましいとをげへなにてほろぼしうるものをおそれよ」)

身と霊魂とをゲヘナにて滅し得る者をおそれよ」

(このばあいのおそるは、いけいのいにちかいようです。)

この場合の「懼る」は、「畏敬」の意にちかいようです。

(このいえすのことに、へきれきをかんずることができたら、)

このイエスの言に、霹靂を感ずる事が出来たら、

(きみのげんちょうはやむはずはずです。ふじん。)

君の幻聴は止む筈はずです。不尽。

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