墓 -2- (完)

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師匠シリーズ
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問題文

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(かれはそういってかうんたーのますたーにむきなおると)

彼はそう言ってカウンターのマスターに向き直ると

(じぇすちゃーでみずをたのんだ。)

ジェスチャーで水を頼んだ。

(だれの、とはきかなかった。すぐにわかってしまったからだ。)

誰の、とは訊かなかった。すぐにわかってしまったからだ。

(かなこさんという、ししょうのそのまたししょうにあたるひとだ。)

加奈子さんという、師匠のそのまた師匠にあたる人だ。

(おれはししょうやほかのひとからかのじょにまつわるさまざまなはなしをきくにつれ、)

俺は師匠や他の人から彼女にまつわる様々な話を聞くにつれ、

(まるでふるくからのちじんのようなしんきんかんをいだいていたのだが、)

まるで古くからの知人のような親近感を抱いていたのだが、

(よくかんがえるとかのじょのしゃしんいちまいみたことがないのだ。)

よく考えると彼女の写真一枚見たことがないのだ。

(ひととなりをしったきになっても、おれのなかにいるかのじょはりんかくだけのそんざいだった。)

人となりを知った気になっても、俺の中にいる彼女は輪郭だけの存在だった。

(おはかがあるなんておもいもしなかった。)

お墓があるなんて思いもしなかった。

(もっとひげんじつてきなはるかとおくへきえてしまったようなきがしていた。)

もっと非現実的な遥か遠くへ消えてしまったような気がしていた。

(「いってみますよ」)

「行ってみますよ」

(そういってあたまをさげた。)

そういって頭を下げた。

(かぜはかわいている。)

風は乾いている。

(もうあまつぶひとつおちてきそうにないそらのしたをようやくあるきはじめた。)

もう雨粒一つ落ちてきそうにない空の下をようやく歩き始めた。

(ちずをもういちどひろげる。めざすばしょはもうすこしやまのうえのほうのようだ。)

地図をもう一度広げる。目指す場所はもう少し山の上の方のようだ。

(のぼりつづけると、やがてどうろのほそうがなくなり、わだちのえぐれたあくろになった。)

登り続けると、やがて道路の舗装がなくなり、轍の抉れた悪路になった。

(とちゅう、まえからけいとらがやってきたので、やまかわにへばりついてさけたのだが、)

途中、前から軽トラがやってきたので、山川にへばりついて避けたのだが、

(そのけいとらはかたほうのたいやをちゅうおうのもりあがったぶぶんのはしに)

その軽トラは片方のタイヤを中央の盛り上がった部分の端に

(ひっかかるようにしてはしっていった。)

引っ掛かるようにして走っていった。

(しゃたいがななめにかたむいてふあんていなかっこうにみえたのでふしぎにおもったが、)

車体が斜めに傾いて不安定な格好に見えたので不思議に思ったが、

など

(よくかんがえてみるとえぐれたにほんのわだちにたいやをあわせれば、)

よく考えてみると抉れた日本の轍にタイヤを合わせれば、

(まんなかのえぐれていないぶぶんでしゃたいのはらをするのだ。)

真ん中の抉れていない部分で車体の腹を擦るのだ。

(なるほど。これもとちがらと、そこでくらすちえか。)

なるほど。これも土地柄と、そこで暮らす知恵か。

(おれはそのみちのもりあがったまんなかにのっかってあるいた。)

俺はその道の盛り上がった真ん中に乗っかって歩いた。

(がけがわにはむこうのやまのちゅうふくにひろがるだんだんばたけがみえる。)

崖側には向こうの山の中腹に広がる段々畑が見える。

(こうようのきせつがおわったけれど、くうきはすんでいて、)

紅葉の季節が終わったけれど、空気は澄んでいて、

(ここちよいさんあいのふうけいがとおくまでみわたせる。)

心地よい山あいの風景が遠くまで見渡せる。

(もうすこしすればゆきがきぎをけしょうするだろう。)

もう少しすれば雪が木々を化粧するだろう。

(あせをしたたらせながらあるきつづけると、わかれみちになっているところにでた。)

汗を滴らせながら歩き続けると、わかれ道になっているところに出た。

(かたほうに、めいしょになっているたきがあるというひかえめなかんばんがある。)

片方に、名所になっている滝があるという控えめな看板がある。

(なんとかのたき、よめないじだった。)

ナントカの滝、読めない字だった。

(ちずのとおりだ。たきがないほうのみちをえらばなくてはならない。)

地図の通りだ。滝がない方の道を選ばなくてはならない。

(それがすこしざんねんだった。)

それが少し残念だった。

(とおくへやまばとのこえがする。)

遠くへ山鳩の声がする。

(すいとうでのどをうるおしながらあるきつづけてようやくそこにたどりついた。)

水筒で喉を潤しながら歩き続けてようやくそこにたどり着いた。

(やまのしゃめんをのぼったところにたっている、ささやかなはかいし。)

山の斜面を登ったところに立っている、ささやかな墓石。

(みはらしのよいばしょだ。)

見晴らしの良い場所だ。

(がんかにはふもとのしゅうらくと、そこをわってながれるかわが)

眼下には麓の集落と、そこを割って流れる川が

(ほそいからだをくねらせるへびのようなすがたをたたえている。)

細い身体をくねらせる蛇のような姿を湛えている。

(おれはきのねっこをてすりかわりにしながらなんとかそこへのぼると、)

俺は気の根っこを手すり代わりにしながらなんとかそこへ登ると、

(「はじめまして」といった。)

「はじめまして」と言った。

(こたえるようにきもちのよいかぜがふきぬける。)

応えるように気持ちの良い風が吹き抜ける。

(「よいところですね」)

「よいところですね」

(せまいあしばにただひとつひっそりとたたずむこけのはえたいし。)

狭い足場にただ一つひっそりと佇む苔の生えた石。

(そのりょうわきにははなをそなえるたけづつがあり、かれたしきびがかおをのぞかせていた。)

その両脇には花を供える竹筒があり、枯れたしきびが顔を覗かせていた。

(ししょうもここへおまいりすることがあっただろうか。)

師匠もここへお参りすることがあっただろうか。

(くろずんだおそなえもののあとをみながらふとそうおもった。)

黒ずんだお供え物の跡を見ながらふとそう思った。

(せおってきたりゅっくさっくをおろし、せんこうをとりだす。)

背負ってきたリュックサックを下ろし、線香を取り出す。

(まっちをすってひをつけ、すぐにてをふってけす。)

マッチを擦って火をつけ、すぐに手を振って消す。

(そしてそれをもってぼせきにちかづいたとき、おれははっとしてたちどまった。)

そしてそれを持って墓跡に近づいたとき、俺はハッとして立ち止まった。

(え?)

え?

(なんだこれは。)

なんだこれは。

(すぐにはきづかなかったが、よそうだにしなかったものがそこにあった。)

すぐには気づかなかったが、予想だにしなかったものがそこにあった。

(そのいみがのうにしみこむまでぼせきをぎょうしする。)

その意味が脳に染み込むまで墓石を凝視する。

(だんだんとしんぞうのはくどうがはやくなってくる。)

だんだんと心臓の拍動が速くなってくる。

(え?え?え?)

え?え?え?

(きおくのかぎがおとをたてる。)

記憶のカギが音を立てる。

(なかばみおとしてきたいわかんのしょうたいがれんさするようにかたちをなしていく。)

半ば見落としてきた違和感の正体が連鎖するように形を成していく。

(じゃああれは?じゃあ、あのときは?)

じゃああれは?じゃあ、あの時は?

(きみは。)

君は。

(こんらんするあたまで、ひとつひとつをせいりしようとする。)

混乱する頭で、一つ一つを整理しようとする。

(せんこうのかおりがたちのぼり、ゆらめくふあんていなかこへといざなわれる。)

線香の香りが立ち上り、ゆらめく不安定な過去へといざなわれる。

(きみははらをたてる。なにもしらなかったじぶんに。そんないきかたをしたそのひとに。)

君は腹を立てる。なにも知らなかった自分に。そんな生き方をしたその人に。

(きみはかなしくなる。なにもしらなかったじぶんが。そんないきかたをしたそのひとが。)

君は悲しくなる。なにも知らなかった自分が。そんな生き方をしたその人が。

(てからせんこうがおちる。すにーかーのみしんめにそってありがいっぴきはっている。)

手から線香が落ちる。スニーカーのミシン目にそって蟻が一匹這っている。

(きれいないろのはねをしたとりがたれさがるきのえだにとまっている。)

綺麗な色の羽をした鳥が垂れ下がる木の枝にとまっている。

(どこからかわきみずのながれるおとがきこえてくる。なみだがひとすじだけそらにおちていく。)

どこからか湧き水の流れる音が聞こえてくる。涙が一筋だけ空に落ちていく。

(そうしてきみはさいごにやさしくなる。)

そうして君は最後に優しくなる。

(「あのばか」)

「あのバカ」

(そう。)

そう。

(あのばかに。)

あのバカに。

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