シャドウワークス

(１０じはんにさむけがして５ふんごにとびおきました)

10時半に寒気がして、5分後に飛び起きました。

(もうとっくにもぬけのからにかわったしゅうせきじょ)

もうとっくに蛻の殻に変わった集積所。

(てをひいてかえりたがったえんじのはははなきました)

手を引いて帰りたがった園児の母は泣きました。

(よれいのざんきょうがかさなりひびいた)

予鈴の残響が重なり響いた。

(むかんしんなままならんぼくたちはかさんどら)

無関心な、ままならん、僕たちはカサンドラ。

(１５ふんおくれのでんしゃにのりこみめをとじました)

15分遅れの電車に乗り込み目を閉じました。

(１０００ねんごにゃほねもなくって)

1000年後にゃ骨もなくって、

(なまえすらのこらぬあほにろうどうのありかたをとかれちまった)

名前すら残らぬ阿呆に労働の在り方を説かれちまった。

(どうようにぼくのかくおんがくもこいびとになげかけたことばすら)

同様に僕の書く音楽も、恋人に投げかけた言葉すら、

(１０００ねんたちゃへどろにすらなれなくてふあんなんだすべてが)

1000年経ちゃヘドロにすらなれなくて不安なんだ、全てが。

(ぼくたちはかさんどら)

僕たちはカサンドラ。

(むかんしんなままただそれでもぼくらはねがった)

無関心なまま、ただそれでも僕らは願った。

(へたくそなかげぼうしぼくたちひかりにおいつけない)

下手くそな影法師、僕たち光に追いつけない。

(またひがじめんにおしつける)

また陽が地面に押し付ける。

(かげぼうしなにかにならないといばしょないからさ)

影法師、何かにならないと居場所無いからさ。

(さあねえふみつぶして)

さあ、ねえ踏み潰して。

(ほらただしくふみにじって)

ほら、正しく踏み躙って。

(あいそわらいこころづかいもほうすらもうまくいかず)

愛想笑い、心遣い、模倣すらも上手くいかず

(たぐりよせたくものいとがつめのさきにつよくささる)

手繰り寄せた蜘蛛の糸が爪の先に強く刺さる。

(あれはなんだあれはなんだあれはひなだ)

あれはなんだ。あれはなんだ。あれは、雛だ。

(そらをまてずあえぎころげそしてぺっしゃんこになった)

空を待てず、喘ぎ、転げ、そしてぺっしゃんこになった。

(まちのぞんだゆうらんせんへそをだしておどるぐせい)

待ち望んだ遊覧船、臍を出して踊る愚生。

(しゅうてんへしゅうてんへはしのしたもかぜはとおる)

終点へ、終点へ、橋の下も風は通る。

(おきのしおめてをのばしてひきこまれたそこできづいた)

沖の潮目手を伸ばして引き込まれた底で気付いた。

(それはさとうがいいなきっとざらめだ)

それは砂糖がいいな、きっとざらめだ。

(きみはぼくのかみをくちゃりくちゃりかみつづけた)

君は僕の髪をくちゃりくちゃり噛み続けた。

(へたくそなかげぼうしぼくたちひかりにおいつけない)

下手くそな影法師、僕たち光に追いつけない。

(またひがじめんにおしつける)

また陽が地面に押し付ける。

(ほらかげぼうしなにかにならないといばしょないからさ)

ほら影法師、何かにならないと居場所ないからさ。

(さあねえふみつぶして)

さあ、ねえ踏み潰して。

(ほらただしくふみにじって)

ほら、正しく踏み躙って。

(ほんとうはこのままで)

本当はこのままで。

(ほんもうはこのままで)

本望はこのままで。