怪人二十面相-9

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問題文

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(なにかいようににらみあったままうごきませんでした。)

何か異様ににらみあったまま動きませんでした。

(「じゃ、あけてみよう。そんなばかなことがあるはずはない。」)

「じゃ、あけてみよう。そんなばかなことがあるはずはない。」

(ぱちんとこばこのふたがひらかれたのです。)

パチンと小箱のふたがひらかれたのです。

(と、どうじにそうたろうしのくちから、)

と、同時に壮太郎氏の口から、

(「あっ。」というさけびごえが、ほとばしりました。)

「アッ。」というさけび声が、ほとばしりました。

(ないのです。くろびろーどのだいざのうえは、)

ないのです。黒ビロードの台座の上は、

(まったくからっぽなのです。)

まったくからっぽなのです。

(ゆいしょぶかいにひゃくまんえんのだいやもんどは、)

由緒深い二百万円のダイヤモンドは、

(まるでじょうはつでもしたように、きえうせていたのでした。)

まるで蒸発でもしたように、消えうせていたのでした。

(まほうつかい)

魔法使い

(しばらくのあいだ、ふたりともだまりこくって、)

しばらくのあいだ、ふたりともだまりこくって、

(あおざめたかおを、みあわせるばかりでしたが、)

青ざめた顔を、見あわせるばかりでしたが、

(やっとそうたろうしは、さもいまいましそうに、)

やっと壮太郎氏は、さもいまいましそうに、

(「ふしぎだ。」)

「ふしぎだ。」

(と、つぶやきました。)

と、つぶやきました。

(「ふしぎですね。」)

「ふしぎですね。」

(そういちくんもおうむがえしにおなじことをつぶやきました。)

壮一君もおうむがえしに同じことをつぶやきました。

(しかし、みょうなことに、そういちくんは、)

しかし、みょうなことに、壮一君は、

(いっこうおどろいたり、しんぱいしたりしているようすが)

いっこうおどろいたり、心配したりしているようすが

(ありません。くちびるのすみに、)

ありません。くちびるのすみに、

など

(なんだかうすわらいのかげさえみえます。)

なんだかうす笑いのかげさえ見えます。

(「とじまりにいじょうはないし、それに、)

「戸じまりに異状はないし、それに、

(だれかがはいってくれば、このわしのめに)

だれかがはいってくれば、このわしの目に

(うつらぬはずはない。まさか、ぞくはゆうれいのように、)

うつらぬはずはない。まさか、賊は幽霊のように、

(どあのかぎあなからではいりしたわけではなかろうからね。」)

ドアのかぎ穴から出はいりしたわけではなかろうからね。」

(「そうですとも、いくらにじゅうめんしょうでも、ゆうれいにばけることは)

「そうですとも、いくら二十面相でも、幽霊に化けることは

(できますまい。」)

できますまい。」

(「すると、このへやにいて、だいやもんどにてをふれることができたのは、)

「すると、この部屋にいて、ダイヤモンドに手をふれることができたのは、

(わしとおまえのほかにはないのだ。」)

わしとおまえのほかにはないのだ。」

(そうたろうしは、なにかうたがわしげなひょうじょうで、じっとわがこのかおをみつめました。)

壮太郎氏は、何かうたがわしげな表情で、じっとわが子の顔を見つめました。

(「そうです。あなたかぼくのほかにはありません。」)

「そうです。あなたかぼくのほかにはありません。」

(そういちくんのうすわらいがだんだんは、にこにこと)

壮一君のうす笑いがだんだんはっきりして、にこにこと

(わらいはじめたのです。)

笑いはじめたのです。

(「おい、そういち、おまえなにをわらっているのだ。なにがおかしいのだ。」)

「おい、壮一、おまえ何を笑っているのだ。何がおかしいのだ。」

(そうたろうしははっとしたように、かおいろをかえてどなりました。)

壮太郎氏はハッとしたように、顔色をかえてどなりました。

(「ぼくはぞくのてなみにかんしんしているのですよ。)

「ぼくは賊の手なみに感心しているのですよ。

(かれはやっぱりえらいですなあ。)

彼はやっぱりえらいですなあ。

(ちゃんとやくそくをまもったじゃありませんか。)

ちゃんと約束を守ったじゃありませんか。

(とえはたえのけいかいを、もののみごとにとっぱしたじゃありませんか」)

十重二十重の警戒を、もののみごとに突破したじゃありませんか」

(「こら、よさんか。おまえは、またぞくをほめあげている。)

「こら、よさんか。おまえは、また賊をほめあげている。

(つまり、ぞくにだしぬかれたわしのかおがおかしいとでもいうのか。」)

つまり、賊に出しぬかれたわしの顔がおかしいとでもいうのか。」

(「そうですよ。あなたがそうして、うろたえているようすが、)

「そうですよ。あなたがそうして、うろたえているようすが、

(じつにゆかいなんですよ。」)

じつにゆかいなんですよ。」

(ああ、これがこたるもののちちにたいすることばでしょうか。)

ああ、これが子たるものの父にたいすることばでしょうか。

(そうたろうしはおこるよりも、あっけにとられてしまいました。)

壮太郎氏はおこるよりも、あっけにとられてしまいました。

(そして、いま、めのまえににやにやわらっているせいねんが、)

そして、今、目の前にニヤニヤ笑っている青年が、

(じぶんのむすこではなく、なにかしら、えたいのしれないにんげんにみえてきました。)

自分のむすこではなく、何かしら、えたいのしれない人間に見えてきました。

(「そういち、そこをうごくんじゃないぞ。」)

「壮一、そこを動くんじゃないぞ。」

(そうたろうしは、こわいかおをしてむすこをにらみつけながら、)

壮太郎氏は、こわい顔をしてむすこをにらみつけながら、

(よびりんをおすために、へやのいっぽうのかべにちかづこうとしました。)

呼びりんをおすために、部屋の一方の壁に近づこうとしました。

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