怪人二十面相32

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問題文
(ああ、はたしてぴっぽちゃんはしめいをはたしたのでした。そして)
ああ、はたしてピッポちゃんは使命をはたしたのでした。そして
(こばやしくんのかんがえていたよりもはやく、もうけいかんたいがとうちゃくしたのでした。)
小林君の考えていたよりも早く、もう警官隊が到着したのでした。
(ちかしつで、このさわぎをききつけたしょうねんたんていは、うれしさにとびたつ)
地下室で、このさわぎを聞きつけた少年探偵は、うれしさにとびたつ
(ばかりです。)
ばかりです。
(このふいうちには、さすがのにじゅうめんそうもぎょうてんしないではいられません。)
この不意うちには、さすがの二十面相も仰天しないではいられません。
(「なに?」)
「なに?」
(と、うめいて、すっくとたちあがると、おとしどをしめることもわすれて、)
と、うめいて、スックと立ちあがると、おとし戸をしめることもわすれて、
(いきなりおもてのいりぐちへかけだしました。)
いきなり表の入り口へかけだしました。
(でも、もうそのときはおそかったのです。いりぐちのとを、そとから)
でも、もうそのときはおそかったのです。入り口の戸を、外から
(はげしくたたくおとがきこえてきました。とのそばにもうけてある)
はげしくたたく音が聞こえてきました。戸のそばに設けてある
(のぞきあなにめをあててみますと、そとはせいふくけいかんのひとがきでした。)
のぞき穴に目を当ててみますと、外は制服警官の人がきでした。
(「ちくしょうっ。」)
「ちくしょうっ。」
(にじゅうめんそうは、いかりにみをふるわせながら、こんどはうらぐちにむかって)
二十面相は、怒りに身をふるわせながら、こんどは裏口に向かって
(はしりました。しかし、ちゅうとまでもいかぬうちに、そのうらぐちのどあにも、)
走りました。しかし、中途までも行かぬうちに、その裏口のドアにも、
(はげしくたたくおとがきこえてきたではありませんか。ぞくのそうくつは、)
はげしくたたく音が聞こえてきたではありませんか。賊の巣くつは、
(いまやけいかんたいによって、まったくほういされてしまったのです。)
今や警官隊によって、まったく包囲されてしまったのです。
(「かしら、もうだめです。にげみちはありません。」)
「かしら、もうだめです。逃げ道はありません。」
(こっくがぜつぼうのさけびをあげました。)
コックが絶望のさけびをあげました。
(「しかたがない、にかいだ。」)
「しかたがない、二階だ。」
(にじゅうめんそうは、にかいのやねうらべやへかくれようというのです)
二十面相は、二階の屋根裏部屋へかくれようというのです。
(「とてもだめです。すぐみつかってしまいます。」)
「とてもだめです。すぐ見つかってしまいます。」
(こっくはなきだしそうなこえでわめきました。ぞくはそれにかまわず、)
コックは泣きだしそうな声でわめきました。賊はそれにかまわず、
(いきなりおとこのてをとって、ひきずるようにして、やねうらべやへの)
いきなり男の手をとって、ひきずるようにして、屋根裏部屋への
(かいだんをかけあがりました。)
階段をかけあがりました。
(ふたりのすがたがかいだんにきえるとほどなく、おもてぐちのどあがはげしいおとを)
ふたりの姿が階段に消えるとほどなく、表口のドアがはげしい音を
(たてて、たおれたかとおもうと、すうめいのけいかんがおくないになだれこんで)
たてて、たおれたかとおもうと、数名の警官が屋内になだれこんで
(きました。それとほとんどどうじに、うらぐちのともあいて、それからも)
きました。それとほとんど同時に、裏口の戸もあいて、それからも
(すうめいのせいふくけいかん。)
数名の制服警官。
(しきかんは、けいしちょうのおにとうたわれたなかむらそうさかかりちょうそのひとです。かかりちょうは、)
指揮官は、警視庁の鬼とうたわれた中村捜査係長その人です。係長は、
(おもてとうらのようしょようしょにみはりのけいかんをたたせておいて、のこるぜんいんを)
表と裏の要所要所に見はりの警官を立たせておいて、残る全員を
(さしずして、へやというへやをかたっぱしからそうさくさせました。)
さしずして、部屋という部屋をかたっぱしから捜索させました。
(「あっ、ここだ。ここがちかしつだ。」)
「あっ、ここだ。ここが地下室だ。」
(ひとりのけいかんがれいのおとしどのうえでどなりました。たちまちかけよる)
ひとりの警官が例のおとし戸の上でどなりました。たちまちかけよる
(ひとびと、そこにしゃがんで、うすぐらいちかしつをのぞいていたひとりが、)
人々、そこにしゃがんで、うす暗い地下室をのぞいていたひとりが、
(こばやししょうねんのすがたをみとめて、)
小林少年の姿をみとめて、
(「いる、いる。きみがこばやしくんか。」)
「いる、いる。きみが小林君か。」
(とよびかけますと、まちかまえていたしょうねんは、)
と呼びかけますと、待ちかまえていた少年は、
(「そうです。はやくはしごをおろしてください。」)
「そうです。早くはしごをおろしてください。」
(とさけぶのでした。)
と叫ぶのでした。
(いっぽう、かいかのへやべやは、くまなくそうさくされましたが、ぞくのすがたは)
いっぽう、階下の部屋部屋は、くまなく捜索されましたが、賊の姿は
(どこにもみえません。)
どこにも見えません。
(「こばやしくん、にじゅうめんそうはどこへいったか、きみはしらないか。」)
「小林君、二十面相はどこへ行ったか、きみは知らないか。」
(やっとちかしつからはいあがった、いようないしょうのしょうねんをとらえて、)
やっと地下室からはいあがった、異様な衣装の少年をとらえて、
(なかむらかかりちょうがあわただしくたずねました。)
中村係長があわただしくたずねました。
(「ついいましがたまで、このおとしどのところにいたんです。そとへにげた)
「つい今しがたまで、このおとし戸のところにいたんです。外へ逃げた
(はずはありません。にかいじゃありませんか」)
はずはありません。二階じゃありませんか」
(こばやししょうねんのことばがおわるかおわらぬかに、そのにかいからただならぬ)
小林少年のことばが終わるか終わらぬかに、その二階からただならぬ
(さけびごえがひびいてきました。)
さけび声がひびいてきました。
(「はやくきてくれ、ぞくだ、ぞくをつかまえたぞ!」)
「早く来てくれ、賊だ、賊をつかまえたぞ!」