怪人二十面相47

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問題文

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(「ごろうじん、あなたはいぜんにあけちこごろうとおあいになったことが)

「ご老人、あなたは以前に明智小五郎とお会いになったことが

(あるのですか。」)

あるのですか。」

(「あったことはない。じゃが、しゃしんをみてよくしっておりますわい。」)

「会ったことはない。じゃが、写真を見てよく知っておりますわい。」

(「しゃしん?しゃしんではちとこころぼそいですねえ。そのしゃしんにぼくがにている)

「写真?写真ではちと心ぼそいですねえ。その写真にぼくが似ている

(とでもおっしゃるのですか。」)

とでもおっしゃるのですか。」

(「・・・・・・・・・・・・。」)

「…………。」

(「ごろうじん、あなたは、にじゅうめんそうがどんなじんぶつかということを、)

「ご老人、あなたは、二十面相がどんな人物かということを、

(おわすれになっていたのですね。にじゅうめんそう、ほら、あいつはへんそうの)

おわすれになっていたのですね。二十面相、ほら、あいつは変装の

(めいじんだったじゃありませんか。」)

名人だったじゃありませんか。」

(「そ、それじゃ、き、きさまは・・・・・・。」)

「そ、それじゃ、き、きさまは……。」

(ろうじんはやっと、ことのしだいがのみこめてきました。そしてがくぜんと)

老人はやっと、事のしだいがのみこめてきました。そしてがくぜんと

(していろをうしなったのでした。)

して色をうしなったのでした。

(「ははは・・・・・・、おわかりになりましたかね。」)

「ハハハ……、おわかりになりましたかね。」

(「いや、いや、そんなばかなことがあるはずはない。わしはしんぶんを)

「いや、いや、そんなばかなことがあるはずはない。わしは新聞を

(みたのじゃ。「いずにっぽう」にちゃんと「あけちたんていしゅうらい」とかいてあった。)

見たのじゃ。『伊豆日報』にちゃんと『明智探偵来修』と書いてあった。

(それから、ふじやのじょちゅうにこのひとだとおしえてくれた。どこにもまちがい)

それから、富士屋の女中にこの人だと教えてくれた。どこにもまちがい

(はないはずじゃ。」)

はないはずじゃ。」

(「ところがおおまちがいがあったのですよ。なぜって、あけちこごろうは、まだ、)

「ところが大まちがいがあったのですよ。なぜって、明智小五郎は、まだ、

(がいこくからかえりゃしないのですからね。」)

外国から帰りゃしないのですからね。」

(「しんぶんがうそをかくはずはない。」)

「新聞がうそを書くはずはない。」

など

(「ところが、うそをかいたのですよ。しゃかいぶのひとりのきしゃが、こちらの)

「ところが、うそを書いたのですよ。社会部のひとりの記者が、こちらの

(けいりゃくにかかってね、へんしゅうちょうにうそのげんこうをわたしたってわけですよ。」)

計略にかかってね、編集長にうその原稿をわたしたってわけですよ。」

(「ふん、それじゃけいじはどうしたんじゃ。まさかけいさつがにせのあけちたんてい)

「フン、それじゃ刑事はどうしたんじゃ。まさか警察がにせの明智探偵

(にごまかされるはずはあるまい。」)

にごまかされるはずはあるまい。」

(ろうじんは、めのまえにたちはだかっているおとこを、あのおそろしいにじゅうめんそう)

老人は、目の前に立ちはだかっている男を、あのおそろしい二十面相

(だとは、しんじたくなかったのです。むりにもあけちこごろうにして)

だとは、信じたくなかったのです。むりにも明智小五郎にして

(おきたかったのです。)

おきたかったのです。

(「ははは・・・・・・、ごろうじん、まだそんなことをかんがえているのですか。)

「ハハハ……、ご老人、まだそんなことを考えているのですか。

(ちのめぐりがわるいじゃありませんか。けいじですって?あ、このおとこですか、)

血のめぐりが悪いじゃありませんか。刑事ですって?あ、この男ですか、

(それからおもてもんうらもんのばんをしたふたりですか、ははは・・・・・・、なにね、ぼくの)

それから表門裏門の番をしたふたりですか、ハハハ……、なにね、ぼくの

(こぶんがちょいとけいじのまねをしただけですよ。」)

子分がちょいと刑事のまねをしただけですよ。」

(ろうじんは、もうしんじまいとしてもしんじないわけにはいきませんでした。)

老人は、もう信じまいとしても信じないわけにはいきませんでした。

(あけちこごろうとばかりにおもいこんでいたおとこが、めいたんていどころか、)

明智小五郎とばかりに思い込んでいた男が、名探偵どころか、

(だいかいとうだったのです。おそれにおそれていたかいとうにじゅうめんそう、そのひと)

大怪盗だったのです。おそれにおそれていた怪盗二十面相、その人

(だったのです。)

だったのです。

(ああ、なんというとびきりのおもいつきでしょう、たんていが、すなわち)

ああ、なんというとびきりの思いつきでしょう、探偵が、すなわち

(とうぞくだったなんて。くさかべろうじんは、ひともあろうににじゅうめんそうにたからもののばんにん)

盗賊だったなんて。日下部老人は、人もあろうに二十面相に宝物の番人

(をたのんだわけでした。)

をたのんだわけでした。

(「ごろうじん、ゆうべのえじぷとたばこのあじはいかがでした。ははは・・・・・・、)

「ご老人、ゆうべのエジプトたばこの味はいかがでした。ハハハ……、

(おもいだしましたか。あのなかにちょっとしたくすりがしかけてあったのですよ。)

思いだしましたか。あの中にちょっとした薬がしかけてあったのですよ。

(ふたりのけいじがへやへはいって、にもつをはこびだし、じどうしゃへつみこむ)

ふたりの刑事が部屋へはいって、荷物を運びだし、自動車へつみこむ

(あいだ、ごろうじんにひとねむりしてほしかったものですからね。あのへやへ)

あいだ、ご老人に一ねむりしてほしかったものですからね。あの部屋へ

(どうしてはいったかとおっしゃるのですか。ははは・・・・・・、)

どうしてはいったかとおっしゃるのですか。ハハハ……、

(わけはありませんよ。あなたのふところから、ちょっとかぎをはいしゃくすれば)

わけはありませんよ。あなたのふところから、ちょっとかぎを拝借すれば

(よかったのですからね。」)

よかったのですからね。」

(にじゅうめんそうは、まるでせけんばなしでもしてるように、おだやかなことばを)

二十面相は、まるで世間話でもしてるように、おだやかなことばを

(つかいました。しかし、ろうじんにしてみれば、いやにていねいすぎるその)

使いました。しかし、老人にしてみれば、いやにていねいすぎるその

(ことばづかいが、いっそうはらだたしかったにちがいありません。)

ことばづかいが、いっそう腹だたしかったにちがいありません。

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