人間椅子 9(完結)
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問題文
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(とつぜんおてがみをさしあげますむしつけを、いくえにもおゆるしくださいまし。)
突然御手紙を差上げます無躾を、幾重にもお許し下さいまし。
(わたしはひごろ、せんせいのおさくをあいどくしているものでございます。)
私は日頃、先生のお作を愛読しているものでございます。
(べっぷうおおくりいたしましたのは、わたしのまずいそうさくでございます。)
別封お送り致しましたのは、私の拙い創作でございます。
(ごいちらんのうえ、ごひひょうがいただけますれば、このうえのさちはございません。)
御一覧の上、御批評が頂けますれば、此上の幸はございません。
(あるりゆうのために、げんこうのほうは、このてがみをかきますまえにとうかんいたしましたから、)
ある理由の為に、原稿の方は、この手紙を書きます前に投函致しましたから、
(すでにごらんすみかとはいさついたします。いかでございましたでしょうか。)
已に御覧済みかと拝察致します。如何でございましたでしょうか。
(もし、せっさくがいくらかでも、せんせいにかんめいをあたええたとしますれば、)
若し、拙作がいくらかでも、先生に感銘を与え得たとしますれば、
(こんなうれしいことはないのでございますが。)
こんな嬉しいことはないのでございますが。
(げんこうには、わざとはぶいておきましたが、)
原稿には、態と省いて置きましたが、
(ひょうだいは「にんげんいす」とつけたいかんがえでございます。)
表題は「人間椅子」とつけたい考えでございます。
(では、しつれいをかえりみず、おねがいまで。そうそう。)
では、失礼を顧みず、お願いまで。匆々。